卯の花とおからのコロッケと田の神の日
昨日の強風が嘘のような晴れやかな天気のなか、頭の先から爪先まで愛之助がフルコーディネートした。
愛之助が大好きなマ○メロちゃんがワンポイントで、刺繍やプリントされた新品の運動服とスニーカーのお揃いの格好の4人は、午前中の朝早い時間から、朝倉村がある山の頂上を目指し、散歩に来ていた。
◇◇◇◇◇
「♪~♪♪~~♪♪~♪~♪♪♪~~♪♪」
「ぷゅ~ぷゅ~~ぷゅ~~~」
「違うよ、マヤラ。口をこうしてね、♪~~♪~♪♪♪~~♪~~~♪と、こうゆうふうに口笛は吹くんだよ。」
「ぷゅ~~ぶぅ~ぷゅ~~、……はぁ~~!もう!マヤラくちぶゅえじょうじゅにふけにゃい!」
「マヤラ、大丈夫だよ!僕も昔は上手く口笛吹けなかったんだから、少しはづつ練習して上手くなっていけば良いんだよ!
それに僕はマヤラのお兄ちゃんなんだから、たった1度の練習で、僕より上手く口笛吹けたらショックだよ、イヒヒヒ~~!
だから、しょげてないで一緒練習頑張ろうよ、ねっ!」
「………にいたん、……あい、マヤラがんばりゅ!」
散歩の途中にタリサが吹く上手な口笛に、マヤラがタリサのように上手に口笛が吹けない事でいじけ。そんなマヤラをお兄ちゃんのタリサが上手に励ます。
そんなタリサ達の仲の良い兄弟の様子を少し後ろをのんびり歩きながら、愛満達は微笑ましそうに見つめ。
久しぶり愛満と時間を気にせずに、ゆっくり話せる事を嬉しそうな様子の愛之助が、愛満へと話しかける。
「愛満、風がまだ少し肌寒いでござるが、今日のようにポカポカ陽気のなかの散歩は気持ちが良いでござるね。散歩は楽しいでござる♪」
「本当だね、こんなポカポカ陽気久しぶりだもんね。
それに太陽のお日様の下での散歩は、何だか体の中がリフレッシュする気がして気持ち良いね!」
「そうでござるね。気持ち良いでござるね♪」
愛之助達が何気無い話を長々していると愛之助が、疑問に思っていた事を質問する。
「しかし愛満、今日は何故こんな朝早くから散歩するのでござるか?もう少し温かい気温になる昼過ぎてはも、拙者3時のおやつ我慢できるでござるよ。」
日々の日課の3時のおやつの関係で朝早くから散歩に出掛けていると考えた愛之助が話す。
そんな甘い物大好きな愛之助に質問に、思わず愛満は笑みがこぼれ。
「違うよ、愛之助。3時のおやつのために朝早くから散歩にてでるんじゃないんだ。
4月8日の今日はね、田の神の日や山の神の日になるからなんだよ。」
「田の神の日?山の神の日?でござるか?」
愛満が話した田の神の日や山の神の日の意味が解らない愛之助は、不思議そうに首をかしげる。
「そう、田の神の日も山の神のの日だよ。僕も詳しくは解らないんだけどね。
婆ちゃんに小さい頃に教わった話では、田んぼの神様が冬の間はお山に移動されて、お山の神様になっているから、そろそろ田植えが始まる頃に綺麗な格好をして、山に登り、お山の神様に
『そろそろ田んぼが始まりますので、よろしくお願いします。』とご挨拶とお願いをする習慣があるんだって。」
「ご挨拶とお願いでござるか?」
「うん、そうだよ。
元々うちの婆ちゃんの実家がある米の名産地で、米農家が多い地区では、昔からずっーと行われてきた習慣だったらしく。
爺ちゃんの所にお嫁に来ても、その習慣が抜けなかった婆ちゃんが爺ちゃんに教え。それからうちの家でも毎年おこなう習慣になったんだ。
他にもその行き帰りに、野山に咲いてる卯の花を摘んで帰って家族人数分の竹の花筒にさして飾ったりしてたんだ。
だから僕も小さい頃からこの習慣に慣れ親しんでるから、今日は野山に咲いてる花を摘み、万次郎茶屋にでも飾ろうと思った訳なのさ。」
愛満も幼い頃に不思議に思い、婆ちゃんや爺ちゃんから習った話を愛之助に話してあげる。
すると何やら感心したような愛之助が大きく頷き。
「ほぉ~~!何だか素朴でいて、素敵な習慣でござるね!」
愛之助が話していると愛満達の元へやって来て、愛之助と一緒に愛満の話を聞いていたタリサ達が
「ウツギの花?ウツギの花て、どんな花?」
「どんにゃはにゃ?マヤラもとれる?」
「ウツギの花はね、白い小花をたくさんつけた可愛いらしい花になるんだ。何処と無く鈴蘭の花に似てるかな?
あっ、と言っても鈴蘭の花もタリサ達 解らないもんね…………う~~ん、こっちの花では何に似てるかな………解らん!
まぁけど、この辺りじゃ見かけないから、竹の花筒にさすのは自生してる季節の草花で大丈夫だと思うよ。」
「そうだね!前に愛満が言ってた臨機応変だね!」
「そうでござるよ!この前読んだ漫画の主人公が言っていた、無いものばかりを追い求めるな、臨機応変にでござるね!」
「りんきおうちぇん!」
4人は楽しそうにお喋りしながら、途中見つけた野山に咲く花を摘み。万次郎茶屋へと帰って行った。
◇◇◇◇◇
チリーン、チリーン♪
「ただいま~!タリサが帰って来たよ!」
「たらいま~!マヤラもかえちゅってきちゃよ♪」
散歩を終えて万次郎茶屋に帰って来たタリサ達が、元気良く茶屋内に入り。
茶屋で店番をしてくれていた、最近愛満家に住む事になった亀族の山背が4人を出迎える。
「山背、店番ありがとう。お客さん誰か来た?」
「お帰りなのじゃ。客は誰も来ておらんのじゃ。
それより散歩は楽しかったかのう~?
外の様子で、変わった所などなかったかのう~?
昨日は、前の晩から打ち付けるような雨や強風が1日中吹き荒れておったから、ワシのような小さき者が、飛ばされやしないかと心配しとたのじゃ!
一応、念のために1日中ワシの渾身の力作で、地下1階 5層6階建ての頑丈な城の中で、過ごしていたのじゃが
いくら頑丈な造りであっても、城に打ち付ける雨風の音が煩くて、煩くて、昼寝するにしても、おちおち眠れなかったのじゃ。
それにあんなに強い雨風なら、村のあちらこちらで被害が出てないか心配であっでのう~。」
昨日の激しい強風後を心配していた山背が、愛之助達に質問する。
「山背、ただいまでござるよ。
本当でござるね!昨日の雨風は、まるで台風のようで本当に恐ろしかったでござる。
拙者も村の皆や農作物等が被害を受けておらぬか、心配してヒヤヒヤしておったでござる。
だがら散歩中意識して見てたでござるが、村の皆も農作物や草花も特に被害は出てないようであったでござるよ、ひと安心でござるね。」
「散歩スゴ~~く楽しかったよ♪
後、畑仕事してる兄ちゃん達と途中会ったけど、普通に畑仕事してて被害なんかは特に無かったみたい。」
「たのちかったよ♪にいたんたち、ちごとちてた。」
「そうか、被害は無かったのじゃな。それは本当に良かったのじゃ。」
山背と愛之助達がお喋りを始めたので、愛満は摘んできた花が萎れる前に準備しておいた細い竹の花筒に花を生け。茶屋内の窓際へと花筒を飾り。
4月8日に愛満家で必ず食べていた、婆ちゃん直伝のある食べ物をお昼ご飯に作り始める。
◇◇◇◇◇
そうして愛満が台所でお昼ご飯作りの作業していると勉強を終えたタリサ達がやって来て
「愛満、美味しそうな匂いがするね。何作ってるの?」
「おいちちょうね♪」
「本当に良い匂いがするのじゃ。」
「…クンクン…良い匂いでござるね♪
今日は散歩して体をたくさん動かしたでござるから、お昼ご飯が楽しみでござるよ!」
愛満に話しかけたり、お昼ご飯を質問してくる。
「今作ってるこの料理はね『卯の花』だよ。タリサ達は前に食べた事あるでしょう。」
「卯の花?…………あっ、知ってる!前に愛満が作ってくれて食べた料理だね。あの料理美味しかった。……………けど、何で今日のお昼ご飯に卯の花なの?」
散歩でお腹をペコペコに空かせ。気分的にはモリモリとお肉が食べたい気分のタリサは、前に食べた事のある『卯の花』を思い出し。他にお肉料理も見当たらない事からガッカリした様子で、どうして『卯の花』なのかと質問する。
「ありゃ、なんかごめんね。
いやね、僕の実家では4月8日には必ず『卯の花』を食べてたんだよ。」
「毎年?」
「うん、毎年。それでね、何で4月8日に卯の花を食べてたかって言うと、僕も始め解らなくて、後で解ったんだけど。
摘んで来た『卯の花』と『おから』で作った『卯の花』をかけた。爺ちゃんのダジャレか、親父ギャグから始まった我が家だけの習慣らしいんだ。
だから今日のお昼ご飯は、むき身のアサリを使った『卯の花』と甘辛く味付けした鶏そぼろを加えた『おからコロッケ』を作ったんだよ。
あっ、そうだ!おからコロッケを揚げるついでに、冷凍庫にストックしてある下味済の『鶏の唐揚げ』も揚げてあげるね。」
タリサのガッカリした様子から察した愛満は、下味して冷凍庫にストックしてある『鶏の唐揚げ』を一緒に揚げてあげると話す。
そんな愛満の姿に申し訳なさそうな様子のタリサが頭を下げ。
「……愛満、ごめんね。卯の花やおからが嫌いな訳じゃないんだよ。」
話し、元気を無くしてしまう。
すると何処と無く気まずくなった雰囲気に、愛之助が少しでも場の雰囲気を盛り上げようとおちゃらけて
「そうでござるよね!拙者もおからは、安くて!美味しくて!お腹がふくれて!の最高の食材でござるから、台好きでござるよ!
それに良質の繊維質を多く含んでいるでござるから、便秘を防いで体調を整えてくれ、ダイエットにも良いと言われているでござるよ。みんな知っておったでござるか?」
話し、山背もそれにのってくれ、1人ノリツッコミで
「ほぉ~~~おからとは、そんなにスゴい食べ物なんじゃな!知らんかったのう~。それはぜひ、食べみたいもんじゃ!何処に行けば食えるのじゃ?
て、今日の昼には食えるんじゃったな!アッハハハ~~~~♪」
◇◇◇◇◇
その後、何とかタリサも元気を取り戻し。いつもの雰囲気に戻ったなか、愛之助達がお手伝いをかって出てくれ。
「愛満、拙者もお手伝いするでござるよ、何をお手伝いすれば良いでござるか?」
「タリサもお手伝いする!!」
「マヤラも!マヤラもおてちゅだいちゅる!」
3人が元気にお手伝いしてくれるなか、深手をおった様子の山背が、そっと愛満に近付いて来て
「………ワシも手伝いするのじゃ。しかし愛満、そなたの祖父は、ワシが言うのも何じゃが、いささかダジャレの質が低いのう。」
「ありがとう。それから山背、僕も前々から爺ちゃんのダジャレや親父ギャグの質は、低いんじゃないかと疑ってたんだけど、やっぱりそうだったんだね……………じゃあ!気をとりなおして、愛之助達にはコロッケを丸めてもらおうかなぁ。山背は、僕と一緒にコロッケの衣つけをお願いするね。」
向こうでは、毎日聞いていて、自分は面白いと思っていた祖父のダジャレや親父ギャグが、あんまり面白くないんだと再認識した愛満は、気をとりなおし。
早速、ほどよく冷めたコロッケタネを使い、コロッケを仕上げていくのであった。
◇◇◇◇◇
そうして美樹達の帰って来る時間にあわせ。
揚げたて熱々の『卯の花』や『おからコロッケ』、『鶏の唐揚げ』、『筍と鶏もも肉の煮物』、『フキ煮のおかか和え』、『春キャベツとコーンビーフ炒め』、『春キャベツとスモークサーモンのサラダ』、『新玉ねぎの明太マヨあえ』、『春キャベツと新玉ねぎのお味噌汁』等の和食中心になる
気持ち料理にお肉を足し。愛之助やタリサ、マヤラ、山背がハマっている『春キャベツ』をふんだんに使った。
色鮮やかな献立の美味しそうな料理がテーブルいっぱいに並び。お腹ペコペコのタリサ達が待ちに待ったお昼ご飯の時間が始まるのであった。




