『チョコフォンデュ』と大慌ての歓迎会
その日、朝早くから愛満と愛之助の2人は、台所の中をちょこまかと忙しなく動き回っていた。
と言うのも、実は昨日の夜に愛之助とショッピングチートを使い。
普段良く利用している、愛満の実家近くの町に在る大型スーパーではなく。愛満が姉に誘われ1度だけ来店した事がある。
都市に在る、海外の巨大ショッピングスーパーを初めて2人で利用したのだが、そこでバレンタインシーズンな事もあり。
愛之助大好きなマイ○ロちゃんカラーのパステルピンクでいて、業務用チョコフォンデュのチョコツリーマシンのラージサイズが、特設会場のバレンタインコーナーの片隅で販売されており。
そのパッケージや本体を一目見た瞬間、愛之助がすんごーく欲しがり。
明日はバレンタインデーだからと、タリサが好きな『チョコ味』のチョコツリーに加え。
マヤラが好きな『ホワイトチョコ味』のホワイトチョコツリーの2つのツリーを用意して、村の皆でチョコレートを楽しもうと力説し始め。
更には、万次郎茶屋に村の皆を呼び。
何やら愛満宅にある書庫から、独自に仕入れた情報曰く、パリピーばりにワイワイガヤガヤと皆で楽しむ為。
このチョコフォンデュのチョコツリーマシンを使い。『チョコフォンデュパーティー』をしながら、バレンタインデーのパーティーを開催しよう等と言って
『クリスマス』と『バレンタイン』をゴチャ混ぜに覚えた様子で、自信満々に愛満へと提案してきたのであった。
しかし、いつもは可愛い弟の愛之助のやりたい事には、基本ふたつ返事でゴーサインを出してきた愛満であったのだが、今回ばかりはチョコフォンデュ器がチョコツリーの名に恥じないだけあって、何故か業務用の一番大きなラージサイズしかお店に置いてなく。
その大きさが全体で110cmもあり。4段のツリー部分だけでも84cmもあって………………。
147cmの小柄な身長でいて、ちまっ子な愛満には、買った後の出し入れするだけでも、なかなか酷な話になりそうな事は目に見えていて……………。
暫くの間、その場に立ち尽くし悩みに悩んでいた愛満であったのだが、愛満の隣で不安そうに八文字に下がった愛之助の眉毛を見た瞬間、愛満は自身無意識のうちに首を上下に動かしてしまっており。
そんな愛満のオッケーサインに、その場をピョンピョン跳び跳ね喜びを表す愛之助へと、今さらやっぱり駄目だとも言い出せず。
苦笑いを浮かべる事しか出来ない、弟に甘いお兄ちゃんなのであった。
◇◇◇◇◇
そうして結局、調達した2つの業務用チョコフォンデュのチョコツリーを使用し。
バレンタインパーティーを開催する事にした愛満達であったのだが、こちらの世界には、そもそもバレンタインというイベントが無い為。
バレンタインパーティーと言っても、村の皆もイマイチ理解ができないだろうと考えた愛満は、ちょうど兎族のアルフ一族の皆が村に引っ越しして来てくれたお祝いを含め。
昨日の今日になるのだが、ドワーフ族の凱希丸が村に定住を決めてくれた事を祝い。
愛之助イチオシのチョコフォンデュやごちそう等を用意して、万次郎茶屋を会場にした。歓迎会なるものを急遽開催する事を決めた。
よってその為、愛満と愛之助の2人は今日の朝早くから、…………いや、愛満に至っては昨日の深夜から、凱希丸の家を建ててあげる約束の時間まで、手や自身が使える力をフルに使い。
茶屋内をバレンタイン風に、主に愛之助が大好きなマ○メロちゃん仕様で可愛らしく飾り付けたり。
主に愛満がパーティー料理や、その他の準備をしたりと、村の皆に歓迎会を楽しんでもらう為の下準備を頑張り。
2人が慌ただしくも一生懸命パーティーの下準備を何とか無事終わらせ。
凱希丸との約束の10時前10分、9時50分には待ち合わせ場所になる万次郎茶屋前に出て、凱希丸がやって来るのを待つ事になる。
◇◇◇◇◇
「フゥ~~~!何とか時間内に歓迎会の準備終えれて良かったでござるね、愛満。」
「本当だね、愛之助。
…………ハァ~~、けど本当に良かった。昨日の今日で決めた歓迎会だから、一時はどうなるかと思ったけど、人間ガムシャラに、…………そう!まさに無我夢中でやれば何とかなるもんなんだね。」
何やらやり遂げた感に道溢れた様子の愛之助と、目の下にうっすらとクマが出来、少々寝不足&お疲れ気味の様子の愛満の2人が万次郎茶屋前に置かれた長椅子に座り。
待ち合わせ相手の凱希丸がやって来るのを待ちながら、お喋りしていた。
そうしていると、それから2~3分もしないうちに風呂屋の方からタリサとマヤラの2人が元気よく走って来るのが見え。
その少し後ろを凱希丸とタリサとマヤラの父親アルフ達が、親しくなった様子で何やら楽しそうにお喋りしつつ。ゆったりとした足取りで茶屋の方へ歩いて来ていた。
「愛満~、愛之助~おはよう。今日も遊びに来たよ~!」
「おちゃよう~!マヤラもおちょびにきちゃよ~。」
先行組のタリサとマヤラの2人が、茶屋前の長椅子に座り凱希丸が来るのを待っていた愛満や愛之助に元気良く抱き付き。嬉しそうに朝の挨拶をする。
「タリサ、マヤラおはよう。2人とも今日も元気いっぱいだね。」
「おはようでござるよ!2人とも走って来たでござるから頬っぺたが真っ赤かでござるよ。」
今日も1秒でも早く愛満や愛之助に会いたいと、元気良く自宅から走って来たタリサとマヤラの姿を微笑ましそうに見つめ。
真っ赤になったリンゴ頬っぺの可愛いらしい2人の頬を撫でながら愛満達が朝の挨拶を返す。
そしてタリサ達より少し遅れて凱希丸とアルフが茶屋へと到着し。
「あっ!アルフさんも凱希丸さんもおはようございます。」
「おはようございますでござるよ!」
「おはようございますだっぺ。今日は朝早くからお世話になるだっぺよ。よろしくだっぺ。」
「おはようございます。今朝も冷えますねぇ。」
お互いに朝の挨拶を済ませ。少々世間話等をした後、タリサやマヤラを万次郎茶屋に届ける為。
出勤前に自宅から茶屋に立ち寄った『風呂屋・松乃』へと出勤するアルフを4人で見送りつつ。
歓迎会の関係上から茶屋内ではなく。万次郎茶屋前に設置されたテーブル席へと移り。凱希丸に住居兼店舗の場所を決めてもらうために話し合う事にした。
するとすっかり手足がのびのびと伸ばせる『風呂屋・松乃』の温泉を気に入った様子の凱希丸が、少々遠慮気味に
出来る事ならば、これから毎日でも『風呂屋・松乃』へと風呂に入りに通いたいと思っているので…………。
叶うのであれば、これから自分が住む事になる場所は『風呂屋・松乃』の前に空いている空き地か、徒歩圏内で歩いて行ける風呂屋に近い場所が良いとお願いされる。
しかし『万次郎茶屋』や愛満と愛之助達が毎朝お参りに行ってる『朝倉神社』、『風呂屋・松乃』が建っている場所は、山道に面して奥に広大な土地が有り。
どの建物も広々としていて、大きく縦長な作りになっているのだが、凱希丸が希望する山道を面した風呂屋前の場所は、後ろが段々畑と言うか、緩い傾斜になった奥行くが余り無い土地になり。
家や店を建てるにしても、万次郎茶屋の半分くらいの大きさや広さにしかならず。
昨日の話し合いで凱希丸が希望した家や店等を建てる事が難しく。愛満の力を使っても、なかなか難しかった。
その為、またまた急遽、凱希丸と話し合い。
昨日、凱希丸との話し合いの中では平屋建ての家を希望だったのたが、話し合いの末、2階建ての店舗件住居に変更して
1階には、広々した店舗と作業場、バタイの為の広めの厩舎、キッチン兼食堂、客室、トイレ
2階には、凱希丸の寝室や生活スペース、客室、トイレ等の間取りで建築する事を決め。
【ちなみに愛満と凱希丸の話し合いの内容はと言うと
凱希丸の希望にそって無理に平屋建ての建物にして詰め込んでしまうと土地の立地上、凱希丸の店舗や作業場、バタイの厩舎等が大変狭くなってしまい。
この先、少々息苦しい生活になってしまうかもしれないですよと愛満が凱希丸へと説明。
それならば、凱希丸もバタイものびのびと暮らせる2階建てにしてはどうですかと愛満が提案し。
愛満お手製の2階建住居に住むタリサ、マヤラ達の応援もあり。
凱希丸から相棒のバタイと一緒に暮らせるなら、どんな家でも大丈夫だっぺとの最終希望を貰い。
凱希丸が希望する風呂屋前に愛満の力を使い。チャッチャッと凱希丸希望の店舗件自宅を建築したのであった。】
その後、凱希望の意見等を取り入れつつ。内装等を少しづつ修正し。
万次郎茶屋や風呂屋・松乃にも引けをとらない、渋味のある京町屋風の2階建ての店舗兼自宅が完成。
他にもサプライズプレゼントとして、凱希丸には大好きなお風呂を室内風呂と共に
室内風呂から行き来できる大人2~3人は楽々に入浴出来る露天風呂を造ってあげ。
バタイには凱希丸の自宅1階にある厩舎から、1匹でも自由に行き来できるように工夫して造った出入口と共に、ソコから緩やかな坂の先の段下になる。
広大な土地に安全の為に木の柵で囲い、水飲み場等を設置した。
バタイが思いきり走り回っても大丈夫な、広大な放牧地をプレゼントした。
その後、皆で完成したばかりの住居兼店舗とバタイの為の放牧地を見て回っていると凱希丸が
「すげ~っぺ!こんな見た事もない立派で美しい家、本当にオラが貰って良いっぺか?
しかもオラだけじゃなく。バタイの為にこんな立派な放牧地まで造ってくれて………………。
オ、オラ、………愛満や愛之助達の為にこの場所が賑わうように頑張って働くっぺ!
ありがとだっぺ、本当にありがとだっぺ!」
涙を流しながら喜んでくれ。
そんな凱希丸の姿を見て、愛満は凱希丸の力になれて良かったと嬉しくなる。
そうしてタリサ達の父親アルフには、朝のうちに歓迎会のお誘いの招待状を渡しいたのだが、凱希丸にも夕方から皆の歓迎会をするので万次郎茶屋に来て下さいと伝え。
新居になる自宅へと『風呂屋・松乃』の厩舎から、この後移動して来る事になり。歓迎会に参加できないバタイの為。
愛満達は、バタイが好きな林檎や人参、小松菜、藁等の様々な新鮮野菜の盛り合わせを凱希丸へと預け。
早速荷下ろしをするという凱希丸を1人残して、愛満達は茶屋へと戻る事にする。
ちなみに荷下ろしを手伝いましょうかと愛満達が声かけしたのだが、目敏く愛満の目の下のクマ等からお疲れ気味の様子に気づいた凱希丸から、これ以上愛満達の優しさに甘えられないっぺよと、笑顔で断られるていた。
◇◇◇◇◇
その後、万次郎茶屋に戻って来た愛満達は、タリサ、マヤラ達2人にも歓迎会下準備を少しお手伝いして貰いながら、茶屋内 座敷スペース(小上がり畳コーナー)を兎族の小さい子供達用の空間にしたり。
チョコフォンデュに使う『苺』のヘタを取っ手もらったり。
ちょっと愛満が目を離した隙に、口をパンパンに膨らませた3匹の子兎が居り。
その為、また新たな苺を調達しなくてはならなくなったり。
ちょっとした可愛いアクシデントがあったなか。
なんとか参加者全員を満足させれる料理や菓子、飲み物がテーブルの上々に並び終え。
歓迎会が始まる夕方前には、全ての準備を終わらせた4人であった。
ちなみに歓迎会に参加する人達がやって来る前に愛之助の強い願いから、愛之助イチオシのチョコフォンデュ チョコツリーの『チョコ味』、『ホワイトチョコ味』の2つのツリーを愛之助とタリサ、マヤラ達3人の手で起動させてあげる事にした所。
ツリーの上からキラキラ光沢放つ液体のチョコが、まるでベールのようにキラキラと光輝きながら流れ落ちていき。
ソレと共に濃厚な香り放つチョコ液が、甘く心をくすぐる美味しそうな匂いを放ちながら動き出す光景に
大きなチョコツリーを初めて見た驚きと迫力と共に、3人は口を開きぱなしで呆然と立ち尽くしてしまい。
そんな愛之助達の可愛らしい姿に、愛満はついつい笑みが溢れてしまうなか。
茶目っ気たっぷりの愛満が、何やら思い付いたとばかりに開きぱなしの3人の口の中にチョコフォンデュした『苺』や『ベビーカステラ』、『マシュマロ』をつこむ。
すると突然の事に驚いた様子の3人であったが、何やら甘い味わいに、愛之助達は口をモグモグと無言で上下させながら瞳をキラキラさせ。
何やら復活した様子で、口々に『美味し~い!』、『おいち~い!』、『美味しいでござるよ!』と叫び。元気良くピョンピョンと跳び跳ね始め。
埃が立ったり、転けて怪我したら危ないからと座敷スペースへと一時待機を命じられるのであった。
◇◇◇◇◇
そうして、まだまだ元気が有り余る様子のタリサ達3人と愛満が座敷スペースでお喋りしつつ。歓迎会参加者達が来るのを待っていた所。
暫くしないうちに『風呂屋・松乃』の勤務を終えた兎族の者達、幼い子供を抱いた兎族の人達が、続々と風が冷たい寒空の下、万次郎茶屋へと集まってくれ。
「え~皆さん!
本日はお寒い中、万次郎茶屋へとお集まり頂きありがとうございますでござるよ。
今日は、皆さんがこの場所に移り住んでくれた事への歓迎の意味を込めた歓迎会になるでござるから、大いに飲んで、食べて、楽しんで帰ってほしいでござるよ。
え~それでは、あまり長々とした乾杯の挨拶は嫌われるでござるから、この辺で、乾杯!!!」
「乾杯~♪」
「乾杯ー!」
「乾杯~☆」
「乾杯ー♪」
「乾杯~!」
愛之助の乾杯の合図の下、愛之助提案の歓迎会は華々しく開催され。
色々な料理を沢山食べられるようにと愛満が考えた『ビュッフェスタイル』は、参加者達に大いに喜ばれ。
それぞれ思い思いに料理や飲物を取り。各々好きなテーブル席やカウンター席に座り。楽しげに食べたり、飲んだりして過ごしていたり。
甘い物好きな男性や女性・子供達等は、存在感あふれるチョコフォンデュコーナーに目が釘付けになり。
一口サイズに準備された『苺』や『バナナ』、『キウイ』・『プチシュー』等々の甘系をフォンデュしたり。
変わり種で『ギザギザポテチ』の甘しょっぱ系をフォンデュしたり。
高度な者などは、別の場所に置いてある『バニラアイスクリーム』や『濃厚抹茶アイス』を器にこん盛りと盛って戻って
チョコフォンデュコーナーの『チョコ』や『ホワイトチョコ』をアイスクリームにかけ。
チョコ液の温と共にアイスクリームの冷を口の中でコラボさせ楽しんだり。
とある『カステラ』好きのあのお方は、甘党のある人を誘って、まずはカステラをそのまま楽しみ。
次にカステラの間にアイスクリームを挟んだり。羊羮を挟んだり。
2種類のチョコ液をそれぞれカステラにかけて、チョコ液染み染みのカステラを味変して楽しんだり。
まさに思い思いの場所で、参加者達みんなが初めて食べる料理や甘味、飲み物に舌鼓打ちながら歓迎会を楽しんでいたのであった。
そんな沢山の村人達の楽しいや、美味しい等の幸せの笑顔の花が咲き乱れた万次郎茶屋から、辺り一面にキラキラした目に見えぬ物が夜空に舞い上がり。
誰にも気づかぬまま。村全体を含め、辺り位置目の山々を優しく包み込み、温かく光輝いていた。
登場人物
・愛満
ここ最近、弟の可愛いさに連敗中の少々ダメなお兄ちゃん。
・愛之助
女神様一族から愛満の為に授けられたガーディアン…………なのだが、ほとんど弟のように愛満から可愛いがられている。
マイ○ロちゃん大好きなガリーな青年。
・タリサ
マヤラの兄で、兎族の少年。寒さにも負けず、今日も元気に万次郎茶屋に出勤。
・マヤラ
タリサの弟で、兎族の幼児。寒さにも負けず、今日も元気に万次郎茶屋に出勤。
・アルフ
タリサとマヤラの父親。風呂屋・松乃に勤める、頼れる番頭さん。
・凱希丸
ドーワフ族の綺麗好きで、オシャレなちっこいおじさん。
お酒が苦手で、大の甘党。
愛満達の強い薦めから、村に住むこと決断する。
・アルフ一族の皆さん