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チキンクリームドリアと小鼠族のチーズ



その日万次郎茶屋では、念願の夢だったピザ釜と秘密基地を失った愛満が喪失感たっぷりに1人店番をしていた。


「はぁ~~~~~~~~~……………あれで良かったんだよ。

だってアスマさん達も村の皆も喜んでいたし、ピザだって自分で焼かなくても、アスマさん達にお願いしたら熱々の美味しいピザが食べられるんだし…………あれで良かったんだよ…………良かったんだよ……はぁ~~~」


愛之助達が花夜の家で、一緒に勉強するために出かけていて、お客さんも居ない。

1人の茶屋内で、ついつい少し大きめの独り言を呟いてる愛満は次の瞬間、何か閃いたらしく突然椅子から立ち上がり。


「………そうだ!そうしたらいっそうの事、僕が食べたいお店をどんどん村に建てちゃって、誰かにお願いして村全体を食の都にしちゃえば良いんだよ!!

そしたら美味しい食べ物を気軽に食べれるし、村のみんなも喜ぶし、僕も食べたい物が直ぐに食べれるし!これは一石二鳥じゃん♪」


1人ナイスアイデアと納得している愛満であった。


しかしすでに愛満達が知らないだけで、村人達や村を訪れる冒険者達からは、朝倉村と言えば

『安くてザービスが行き届き、治安も良く。

村人達も親切な人ばかりで、夜道でも安心安全で、のんびりできる温泉やお土産、老若男女に喜ばれる雑貨や生活用品が安く買え。

見た事もない美味しい料理やお菓子が腹いっぱい、格安で食べられる。あの村こそ食の都になる!』

言われるほどに認識され、噂されている村になっているのだ。



◇◇◇◇◇



そうしていると愛満が何やらそうか、そうかと1人頷いていると来客を知らせるお店扉のベルが鳴り。


チリーン、チリーン♪


「いらっしゃいませ。」


愛満がお客さんを出迎える。するとそこには、愛満より小さな130cmぐらいの小柄な体格の少年3人が、少しオドオドした様子で立っていた。


「……あ、ああああの、こちらのお店は愛満さんのお店ですかチュ?」


「うん、はじめまして僕か愛満だよ。何かご用かなぁ?」


「はは、はじめまして。ぼ、僕は小鼠族のササと言いますチュ。こちらの村では、珍しい料理を出していると聞いたチュ。

そ、それで良かったら僕達の村で作っている食材を使ってもらえないかと思ってやって来ましたチュ。」


「珍しい食材?何だろう?気になるな。

そうだ!良かったら、その食材見せてもらえないかなぁ?

あっ、その前に立ち話もなんだから、こっちのテーブル席で話そうか。」


3人を連れ、茶屋内のテーブル席へとお招きし。お茶やお茶菓子を振る舞い。早速3人が言う、珍しい食材を見せてもらう。


「ありがとうチュ。それではコレが、僕 小鼠族秘伝の『チーチー』だチュ。」


ササがテーブルに取り出した物は、愛満が最近良く見ていた『チーズの塊』であった。


「うわーチーズだ!こっちにもチーズが存在したんだね。少し食べさせて貰ってもいいかなぁ?」


目の前に置かれたチーズを見て、興奮した様子の愛満が味見をしても良いかと訪ねる。

すると3人は嬉しそうに微笑み、味見をさせてくれる。


「どうぞ、どうぞチュ。」


「………うんうん、美味しい!濃厚でいて、それでいて後味さっぱりなチーズだね!うん、コレは良いね。」


「美味しいチュでしょう!僕達、小鼠族のチーズは世界一美味しいチュよ!」


ササがチーズを誉めてくれた愛満に嬉しそうに話し。

すっかりササ達のチーズが気に入った様子の愛満は、ササ達にチーズの取引をしたいと取引を持ち掛ける。

するとササの隣に座っていた少年が、何やら驚き、心配した様子で


「ほ、本当に取引してくれるチュか?良いチュか?僕達 小鼠族チュよ!」


「馬鹿!ノノ余計な事を言うんじゃないチュ!」


小鼠族だからと言う意味が解らない愛満は、3人に小鼠族だから何なのと質問する。

そうするとササのもう片方に座るノノを叱ったムムが落胆した様子で


「小鼠族は、詐欺師や盗人が多いズル賢いと言われる鼠族を体格を小さくしただけで、平凡な容姿など良く似ているチュ。

だから他の種族には違いが解らず、鼠族と小鼠族は同じ種族だと勘違いされて嫌われているチュ…………けど、信じてほしいチュ。

僕達小鼠族は臆病者がほとんどで、詐欺や盗みなんてたいそれた事、恐ろしくて出来ないチュ!」


「そうチュ、そうチュ!そんな恐ろしい事、僕達小鼠族には到底出来ないチュよ。

なのに町の人達は、僕達を見たら石を投げてきたり、文句を言ってきたりするチュ。…………僕達何もしてないチュのに……。」


「本当にひどいだチュ!町は恐ろしい場所だチュ。あんな恐ろしい場所、2度と行きたくないチュ!」


3人の切々な思いの話を聞いた愛満は、こんな優しそうな3人をここまで怖がらせる会った事も無い街の人達に怒りを覚え。


「そうな!なんてひどい事をするだろうね、許せないよ!

3人とも大丈夫だよ!この村ではそんな酷い事する人達は居ないと思うし。もしそんな事をする人が居たら僕に言ってね。僕がコテンパンに懲らしめてやるから!

それに小鼠族だからとかの理由で、チーズの取引を取り消したりしないから安心して大丈夫だよ。

それにササ達は何処からやって来たの?街の人がそうなら、君達の住んでいる所は安全なの?」


小鼠族の事を心配した愛満が、3人に聞く。

するとササが、自分達小鼠族は町の中で暮らすと嫌がらせをされたり、商品を売ってもらえない等、満足に買い物も出来ず。迫害を受ける事が多く。


今はササの父親とノノの父親、ムムの父親の3兄弟の3家族

その両親で、ササ達の祖父母を交えた37人で、安全のためにまとまって住み。


街外れに『チーチー》を作るためのモーモーや、その子供の子モーモーを合わせた、59匹と一緒に自給自足の暮らしているとの事。


しかし先の戦争で、モーモーの餌になる草や新鮮な飲み水が急激に無くなっていき。

育てている野菜も徐々に育ちにくくなるなど、苦しい生活におちいっているようで、わずかな望みをかけ。

愛満の所へとササ達3人は、大きく重い『チーチー』を抱え、売りに来たそうであった。



◇◇◇◇◇



そんなササ達の話を聞いた愛満は、反対側の山面が手付かずな事もあり。

それならば、迫害を受ける小鼠族の保護や取引もしやすいように朝倉村にモーモーも含めて移住してくるように3人に提案する。


もちろん、いつものように愛満の(チート)を使い。

ササ達3家族分の自宅、モーモーを飼育するための広々した牧場地、作業場等を無料で建ててあげるとも約束する。


すると突然の話に驚き、固まっていた3人であったが、次の瞬間には涙を流して大喜びし、愛満の提案を受け入れるのであった。


そうしていると花夜宅で勉強を終え。お昼ご飯を食べに帰って来た腹ペコ3人組は、初めて会う小鼠族の3人にビックリしながらもお互いに自己紹介をして、あっという間に仲良くなり。


6人がお喋りに夢中になってる間に愛満は、ササ達3人が持ってきたチーズを使い。

もうすぐ帰って来る美樹や黛藍の分も含めた。火傷注意の熱々のとある食べ物をお昼ご飯にと作り始めるのであった。



◇◇◇◇◇



「はーい!みんなお昼ご飯出来たよ。」


愛之助達に手伝ってもらいながら愛満は、お昼ご飯を乗せたお盆を持ち。ササ達3人や美樹と黛藍が座るテーブルに戻ってくる。


「お待たせしました。今日のお昼は、ササ達が持ってきてくれたチーチーを使った『チキンクリームドリア』だよ。

焼きたて熱々だから、口の中を火傷しないように気を付けて食べてね。」


メインのドリアや春野菜をたっぷり使ったスープやサラダ等を置いていき。

いつものようにタリサとマヤラのかけ声のもと『いただきま~す。』と食事の挨拶をして、ササとノノとムム達3人を交えた、お昼ご飯が始まる。


「うわー美味しそうチュ!コレが僕達のチーズを使った料理チュか?」


「うん、そうだよ。小鼠族のササとノノ、ムムや皆の家族が一緒懸命作ったチーズを使ってるから、いつもより美味しいはずだよ。」


愛満と話しながら、初めて見る美味しそうな料理の数々に興奮気味のササ達であったが、さっそく熱々のドリアを目の前に座る愛之助の見よう見真似で、一口分スープンにとり。

『フーフー、フーフー』と冷ましながら食べたササ達は、椅子から飛び上がらんばかりに


「美味し~いチュ!白いのが熱々トロトロなんだけど、下の赤い粒々したのと口の中で合わさって、すごく美味しいチュ!」


「美味しいチュ!美味しいチュ!こんな美味しいの食べた事無いチュ。」


「チュ~。頬っぺた落ちそうだチュ。」


「そうでござろう!そうでござろう!

なんてたって愛満が作るご飯は、全て美味しいでござるからね!

そうだ、ササ殿!白いのは『ホワイトソース』でござるよ。

下の赤い粒々は、新玉ねぎやピーマン、人参、コーンと白米を炒め合わせて作った『ケチャップライス』と言うお米を使った料理でござるよ。

この『チキンクリームドリア』は、耐熱皿にケチャップライスを敷いて、ホワイトソースをかけ。

中央に香ばしく皮目を焼いたモモ肉を同じフライパンで更に少量の料理酒で蒸し焼きにして、その1枚のモモ肉を2cm幅なそぎ切りにしてのせ。

その上にササ達のチーズを混ぜ合わせたホワイトソースを掛けて焼き上げているでござるよ。」


ホワイトソースから全て愛満お手製のチキンクリームドリアを誉めるササ達の話を聞いた愛之助は、大好きな兄の料理を誉められ。

嬉しそうにニコニコ笑うと、愛満の手伝いで見ていたドリアの作り方などをササ達に誇らしげに説明してあげる。


「えーぇ!すごいこった料理チュね。だからこんなに美味しいチュね。納得チュ。」


「本当に僕達の作ったチーズと合っていて、美味しいチュね!」


「モモ肉美味しいチュ!しっとりジューシーで、いくらでも食べれるチュ。……………あっ!もちろん僕達のチーズがあってからこその美味しさチュからね。」


ササとノノ、ムム達3人も負けじと自分達家族と作るチーズの美味しさを誇らしげに愛之助達に話し。楽しいお昼ご飯の時間は過ぎていく。



◇◇◇◇◇



その後も愛満のおもてなしは続き。

チキンクリームドリアや初めて食べる甘い和菓子、渋いなかに甘味のある緑茶をお腹いっぱいになるまで満喫し。

愛満家自慢の檜風呂まで堪能して、新品の服まで貰った夢見心地のササ達3人であったが、愛満が泊まっていくように誘うのを家で待つ家族に、今回の移住話しを早くしてあげたいと断り。


沢山のお土産と共に、愛満が手配してくれた荷馬車に乗り。

その日のうちに家族の待つ家に帰り着くと2日後には、家族を連れ村へと戻って来て、改めて愛満達と自宅や牧場地の要望等を話したり、下見したりする。

そうして1週間以内には、一族の皆とモーモー達を連れ、朝倉村に移住して来る。


ちなみにその時に小鼠族が連れて来たモーモーが、パステルピンク色の牛柄の牛である事に愛満や美樹達が驚くと言うハプニングがあったとか、なかったとか……………。


こうして朝倉村に、小鼠族のササ、ノノ、ムムの一族とパステルピンクのモーモー達

小鼠族が手作りする『チーチー』ならぬチーズ等を販売する『モーモー屋』さんが、村の新しい一員、お店として仲間入りするのであった。




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