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ピザとピザ釜と男の秘密基地



その日、前日に愛之助から愛満のある企みを聞き、お店を急遽定休日にした美樹と黛藍の2人に加え。

お花見の帰りにタリサから情報が漏れ、愛満のある企みの話を聞いた。食いしん坊の苺忍者隊の隊員達は、その日のうちに家族や両親を必死に説得し、承諾を得て朝倉学園を休んでいた。


そうして美樹達や苺忍者隊の隊員達は、ドワーフの喜多丸家族を朝倉村に歓迎するさいに愛満の(チート)を使い、巨大な『かまくら』をイメージして建てた。

3階建てと同じ大きさや高さの雪のように白い、真っ白なドーム型の建物に来ていた。


実は喜多丸家族の歓迎会後に、このドーム型の建物をどうするかと1人悩んでいたのだ。

最初は、歓迎会後に魔法で更地に戻せば良いと思い。シンプルな造りの『かまくら型』で建てたのだが、見ているうちに日本人特有のもったいない精神がムクムクと沸き上がり。


いつしか愛満の夢でもあるアルモノを作り焼くさいにドーム前の空き地とコラボして利用出来るのではないかと思いつき。

その日はそのままにして帰ったのだ。



◇◇◇◇◇



「愛満、熱くないの?大丈夫?」


「ピザ釜大きいねぇ!大丈夫、愛満?」


「火傷しないように気を付けるアルよ!」


「愛満、本当に大丈夫でござるか?火傷しないように気を付けるでござるよ!」


ピザ釜から上がる炎の熱気で、愛満が火傷しないかと心配なタリサ達は、口々に愛満へと声をかける。

そんなタリサ達の心配の言葉に愛満は、イキイキとした笑顔で


「うん!心配してくれてありがとう。ピザ釜から上がる炎の熱気なんかは魔法で上手く調節してるから大丈夫だよ!ありがとね!」


ピザ釜でどんどんピザを焼いていく。そんな愛満の何時にもないイキイキして、楽しそうな姿に愛之助達が


「愛満はピザまで焼けるでござるか!スゴいでござるね。拙者には難しくて、ピザを焦がしそうで怖いでござるよ。

う~~~ん♪しかしピザが焼ける匂いとは、チーズが焼ける匂いやピザにトッピングした具材が焼ける匂いがして、お腹をくすぐる美味しそうな匂いでござるね♪拙者、待ちきれないででござるよ。」


「びじゃ♪ぴじゃ♪おいちいマヤラのぴじゃ~♪」


「くぅ~~~~♪こっちの世界に無理矢理連れて来られ、ピザが食える日がくるなんて思っても見なかったぜ!夢みたいだ!!」


もう2度とピザを食べれる日などこないと思っていた美樹は、ピザのお供(相棒)のキンキンに冷えたビールを片手に嬉しそうに吠える。


「日本にいる時は、デリバリーのピザでもピザ屋の本格的なピザでも、下手したら電話一本で普通になんでも食えてたから、それが普通すぎて、あん時は何とも思わなかったぜ。

けど、今思えば電話一本で食い物が手に入るなんて、かなり贅沢な事だったんだよなぁ!

それに食う事に貪欲な日本では、わざわざ本場に行かなくても世界各国の料理が国内で近場で食えてたし。はぁ~~~~懐かしいぜ!」


ついつい日本を思い出し、美樹がしんみりするなか1人ノリツッコミして


「………いやいや!しんみりしてる場合じゃないから!

今日は焼き立て熱々の本格的な釜焼きピザが食えるんだぜ!何だか心が踊ってワクワクするぜ。」


ピザが焼けてもいないのに、1人ビールをゴクゴク飲み干す。

そんな何時にない、はしゃいだ様子の美樹の姿を横目に見ながら黛藍が、愛満達から教えてもらったピザの作り方に驚く。


「自分の好きな具材をいろいろトッピングして焼いて食べるアルなんて、ピザとは面白い食べ物アルね!」



◇◇◇◇◇



そう!愛満の企みとはピザ釜とピザの事である。

もともと地球で愛満が住んでいた田舎の地域には、ピザ屋さんなるオシャレなお店など一軒も無く。

冷凍ピザを焼いて食べては、テレビや漫画等でチーズがビョ~ンとのびるピザ釜などで美味しそうに焼かれた、本格的なピザを食べる主人公などを目にしては、密かに憧れていたのだ。


そこで異世界に移住して、自分の家を持ったらピザを焼くためのピザ釜を作ろうと考えており。

カードで家を出した後、いろいろ自分なりに考え。

ピザ釜の場所を家の一角にある畑の隣に、焼きたてのピザを食べれるようにテラス席等を含め造る気満々だったのだが、苺好きな愛之助の熱い要望により、その夢は儚くも敗れ。


今は、自分達で食べる少量の野菜を作っている畑を残す以外、愛之助が厳重に管理、手入れしている。

腰ぐらいの高さの苺棚のマイ○ロさん仕様の可愛らしい作りの温室風な苺畑が広がっているのである。


なので歓迎会後に閃いた愛満は、村人が寝静まった深夜にコソコソ1人やって来て。

ドーム型のかまくら建物前の空き地に、1度にピザが何枚も焼ける大きさのピザ釜や、焼きたての熱々ピザを直ぐに食べれるよう。

ゆったりのんびりできる造りのソファーやテーブル等を並べたテラス席、雨風を防げる和モダンなオシャレな造るの屋根等を自身の(チート)を使い造りだしたのだ。


そうして何やらヤル気が出て、調子に乗った愛満は、かまくらの建物内を遊び心を取り入れ。

ラセン階段のついたロフトや、ロフトから降りる際に使える滑り台、鉄棒やブランコ、ハンモック。

壁の丸みをおびたカーブを利用し作った、ロッククライミングが出来る壁などを思い付くままに装備し。


他にも広々した対面式キッチンやミストが出る豪華なお風呂、5~6人用のサウナ、日本が誇る高機能の洋式トイレなど、愛満好みの遊び心を取り入れた。

和風の造りで、今日からでも直ぐに生活出来る。

愛満が少年の頃に憧れた夢があれもこれもと『てんこ盛り』に詰まった。愛満特製の男の秘密基地に装いをガラリと様変わりさせるのであった。



◇◇◇◇◇



そうして今日、愛満念願のピザ釜や力作の秘密基地達が、愛之助達にお披露目された後。

早速、各自がトッピングしたいちから作ったピザ生地を使い、ピザを何枚も焼き上げていた。


「うわ~♪僕がトッピングしたツナとコーンのピザ美味しそう!」


「マヤラのぴじゃもおいちちょう~♪」


「僕のピザも美味しそう!」


「拙者のピザも美味しそうでござるよ。」


愛満が茶屋で準備してきた2種類のピザ生地やトッピング用の具材を使い。

ピザ釜近くの作業台で、各自が好きなようにトッピングしては、愛満が次々と焼き上げたピザを振る舞う。


「ほらほら、みんな!

自分のトッピングしたピザが焼き上がったのが嬉しいのは解るけど、焼きたてのピザは、熱々とろ~りのチーズなんかが美味しいんだから、ピザが焼き上がった人からドンドン食べ始めるんだよ。

それにピザなら次々に焼き上がっていくんだから、せっかくの焼き立てピザがもったいないよ!」


始めて見る、美味しそうなピザを自慢しあったり。じっーと見つめては、なかなか食べ始めないタリサ達に、愛満は焼きたの美味しいうちに食べるように進める。


すると何やら興奮した様子でピザを一口食べたタリサ達は、初めて食べるピザのあまりの美味しさにピョンピョン跳び跳ね。

驚き喜びを表現しながら、あとは夢中で2枚、3切と続けてピザを食べる。


そしてそこからは、タリサ達食いしん坊の本領発揮で、他の人がトッピングした、自分のピザとは違う美味しそうなピザが気になり始め。


「愛之助とマヤラのピザも美味しそうだね。何をトッピングしたの?

僕のはね、ボリューム満点のナポリ生地に。

トマトとツナマヨ、たっぷりのコーンにチーズをトッピングして焼いてもらった『たっぷりコーンとツナトマトピザ』だよ!

朝採りのみずみずしいトマトがソースみたいで、たっぷりトッピングしたコーンとトマトが、自然な甘みが口の中に広がって、ツナマヨの旨味と合わさり、スゴ~く美味しいんだから!

ね!美味しそうでしょう、食べてみたくない?一切れ交換しようよ♪」


「にいたんのピジャおいちょう!マヤラもこうかんちゅる♪

にいたんマヤラのはね、カリェショスにタコしゃんウィンニャーをたくしゃんのしぇたんやよ。おいちょうでちょう!あいのちゅけのは?」

※『兄ちゃんのピザ美味しそう!マヤラも交換する♪

兄ちゃん マヤラのピザはね、カレーソースを塗ったピザ生地にタコさんウィンナーをたくさんのせたんだよ。美味しそうでしょう!愛之助のは?』


「良いでござるね!交換しようよでござるよ♪

拙者のピザは美味しいでこざるよ!

なんたってナポリ生地に照り焼きソースを塗り。照り焼きチキンと新玉ねぎ、コーン、マヨネーズ、チーズをトッピングして、愛満に焼いてもらったでござるよ。

それに焼き上がりには、刻み海苔をトッピングしたでござるから、海苔の風味がプラスされ、食欲がそそるでござる!

味の方も照り焼きソースの甘めの味付けや、鶏モモ肉のジューシーさ!

チーズの塩気やコーンの甘さが、食べごたえあるピザ生地と良く合っているでござるし。

その全てが口の中で合わさり、実に美味しいでござるよ!」


愛之助達が自分のトッピングしたピザがいかに美味しいか自慢しあっていると、話を聞いていた他の者達も話に加わり。


「僕も僕も!皆のピザ食べたいから交換する♪

僕のピザはね、前に愛満がお握りの具材で食べさしてくれた明太子を使い。

サクッと軽いクリスピー生地にホワイトソースを塗って、マッシュポテトと明太子、コーン、マヨネーズ、チーズをトッピングして焼いてもらったんだ!

それで愛之助と同じで、焼き上がりに刻み海苔をトッピングしたんだ。

クリスピー生地だからピザ生地がサクッと軽いし。ホワイトソースやチーズの濃厚さと、ピリッと辛い明太子やコーンの甘さが合わさって、本当に美味しいんだから、食べてみてよ♪」


「おっ、良いなぁ!俺のも交換しようぜ。

俺のピザは、向こうで良く食ってたピザ生地にオリーブオイルベースのソースを塗って、輪切りのトマトを重ならないように並べ。

にんにくと玉ねぎをのせ、ドライバジルをふって、ちぎったモッツァレラチーズをまんべんなくちらし、ブラックペッパーをふりかけ焼き上げ、最後に生のバジルをちらした『マルゲリータ』になるぜ。

熱々の生地にトマトの酸味とチーズが良く絡み。シンプルながら旨いんだぜ♪」


自分のトッピングしたピザがいかに美味しいか等をあちらこちらで力説し始め。

各自力作のピザを交換しては味比べなどをし、ピザ会を楽しみ、愛満主催のピザ釜のお披露目会は、幕を閉じる。



◇◇◇◇◇



その後、ピザを堪能した苺忍者隊の隊員達から、ピザと言う食べ物の美味しさが村中に広がり。

村人達からの要望で、もう1度村人達を招いたピザ会を開かなくては、いけなくなってしまい。


そのピザ会で、愛満はピザを一人で何十枚も焼く事になり。

途中、ピザ焼きに疲れてしまった愛満は、ピザ焼きに興味をもった様子の新しく朝倉村の一員になった。

元冒険者パーティーで、体力自慢のアスマとカイム、チハヤの3人にピザ焼きのコツ等を教えバトンタッチする。

そうすると体力自慢の3人は、楽しそうに絶妙な焼き加減の美味しそうなピザを村人の注文通りにドンドン焼き上げていく。


そんな3人を焼きたて熱々のピザと持参したコーラを飲みながら、愛満がのんびりとピザ会を楽しんでいた所。

今回も美容室を臨時休業し、朝早くからテラス席でピザ会を楽しんでいたホロ酔い加減の美樹から、故郷でのピザのお店や配達の話を聞いた村人達が愛満の元へと集まって来て。


初めて食べる美味しいピザを堪能し。ピザと炭酸ジュース、ピザとビールの組み合わせにハマった村人達から、持ち帰りや配達も出来るピザのお店を出して欲しいと懇願される。



◇◇◇◇◇



そうして更にその後、ただ力作のピザ釜や秘密基地を自慢したかっただけの愛満の企みは裏目に出てしまい。

愛満の涙と断腸の思いの決断で、愛満念願のピザ釜と住居にもなる男の秘密基地は、ピザ焼きをマスターした元冒険者パーティーのアスマ達5人に譲り渡す事になり。

秘密基地は少し手を加え、アマス達の住居になり


朝倉村にお持ち帰りと朝倉村内なら配達もして貰える『ピザ屋』さんが仲間入りするのであった。



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