松竹梅の和三盆クッキーと冒険者パーティーのアスマ
その日 万次郎茶屋には、すっかり愛満達と顔馴染みの冒険者のテネトとテネトの叔父だと言う。
男性5人の冒険者パーティーのメンバーが愛満を訪ねてやって来ていた。
◇◇◇◇◇
「忙しい時にごめんね、愛満。
実は、叔父さん達のパーティーが冒険者を引退する事が決まってね。のんびり生活する場所を探しているんだ。
そこで、朝倉村なら村の人達みんな暖かくて優しい人ばかりだし、のんびり出来る温泉もあり。
珍しくて美味しい食べ物がたくさんあるから、オススメだと思って紹介がてら、皆で温泉に入りに来たんだよ。」
テネトが叔父を含めた5人を連れ、村へとやって来た訳を話す。そんなテネト達にお茶やお茶菓子を振る舞っていた愛満は、テネトが村を誉めてくれた事を誇らしくもあり嬉しそうに
「そうだったんだ。それは数ある街の中から、朝倉村を選んでいただき感謝の言葉しかないね、ありがとう。
それでうちの街の自慢の温泉や町の雰囲気などはどうでしたか?」
テネトの叔父やパーティーメンバーに愛満が声をかけ。5人は、朝倉村の気に入った場所や温泉の感想等を話してくれる。
すると和やかな雰囲気のなか、テネトがおずおずと
「………それで、どうかな?手紙でも相談したんだけど、村の何処かに叔父さん達を住まわせてもらえないか?」
テネトが前もって愛満に手紙で相談してくれいた。叔父達の移住の話を切り出す。
そんな緊張した様子のテネトを安心させるように愛満は優しく微笑み。
「もちろん!村に新しい住民が増えるのはありがたい事だし、5人とも大歓迎だよ。」
愛満がテネト達6人に伝えると、拍子抜けするほど簡単に認証された事に6人は驚き、呆気にとられる。
普通、村などに冒険者などが移住するさいには外者を嫌ったり。冒険者にある乱暴者等のイメージから、村に住まわれるのを嫌がり。幾ばくかの金や家畜などを渡し、村への移住が決まる事も多々あり。
テネトの叔父達も、今回少しは金銭を要求されるだろうと考えていたのだ。
なのでそんな事など全く知らない愛満達は、逆にテネト達が何をそんなに驚いているのかと驚き。意味が解らずいるとテネトがコソッと教えてくれ。
そんな訳だったのかと愛満と愛之助は笑い飛ばし。
テネトの叔父達の移住を許した訳は、テネトの叔父だと言う男性や他のパーティーメンバー達と挨拶や自己紹介を交わしたさい。
5人の話す言葉やしぐさ一つ一つから現れる人を思いやれる優しい人柄や、良い印象受け。
直感ではあるが、悪い人達では無いと愛満も愛之助も感じたためだと伝える。
と言っても、そもそもテネトからの手紙を読んだ時点で愛之助と話し合い、いろいろ2人で考えた結果。
村に元冒険者になるにしても戦える人達が住んでくれる事は、戦えない愛満達にとっては心強く。
顔馴染みでもあるテネトの叔父という事も高いポイントで、愛満達は心良く5人を村へと受け入れたのであった。
◇◇◇◇◇
その後、5人の住む場所や村に移住した後の仕事を何をするかなど7人で話し合うのだが5人とも冒険者時代にかなりの金額のお金を稼ぎ。
ギルドに貯めてあるとかで、余生はのんびり暮らしたいと5人の一致した意見を話してくれる。
そうしてトントン拍子に話が進んでいったのだが、念願の自分達の永住の住みかになる家だがらか、5人それぞれの希望や思い入れ、願望も多く。
5人が住む家の話になると5人の意見がまとまらず。そのため建てる家の場所さえ決められずにいた。
愛満達が困っていると、テネトの叔父でもあるリーダーが
「こんなに5人の意見がまとまらないなか、焦って建ててもっても、後々5人の中にしこりが残ってしまうかもしれないだろ。
それにこうして愛満にも迷惑をかけ、申し訳ない気持ちでいっぱいだぜ。
だからよ。それならば、しばらくの間5人が気に入った風呂屋・松乃に泊まり。ゆっくり決めていこうじゃないか。
焦らなくても俺達にはたくさんの長い時間があるのだから、大丈夫だよな。」
みんなに声をかけ。改めて5人を交え、焦らずのんびりと家の間取りや場所を決める事にする。
◇◇◇◇◇
そうしてなんとかいつもと勝手が違う、村への移住話しがまとまり。
少しホッとした愛満は、すっかり冷めてしまったお茶を飲みながら、改めて朝倉村の村人になった5人を見て、やはり何やら違和感を感じてしまう。
実はテネトの叔父であるアスマは、人族でいうところ年が50代前半になり。
冒険者らしく人間離れしたがっしりした筋肉質の体格に、190cm近くの高い高身長になるのだが、顔にはまったくシワがなく。
まだまだ年若いテネトに良く似た男らしい顔立ちの20代後半の容姿をしており。
だから最初、愛満も愛之助も茶屋を訪れたアスマの事をテネトの兄弟だと勘違いしてしまったほどなのだ。
そのためテネトがアスマを叔父だと紹介してくれた時、あまりのアスマ達の若い容姿に、愛之助と2人、不躾にも不思議な顔をしてしまう。
そんな愛満達の不思議な表情に気づいたのか、アスマ達が苦笑いしながらも自身達の若い容姿の訳を話してくれる。
◇◇◇◇◇
それはアスマ達がまだまだ若く。5人が駆け出しの冒険者時代だった昔にさかのぼる。
その日もいつものように5人がギルドで、その日受ける依頼を探していると。
突然なんの前触れもなく、その場にいるギルド全員の冒険者へ。レベルに関係なく、緊急依頼が発動される。
何やら邪気のせいで魔獣になってしまったドラゴンが街の近くで暴れしており。少し前に街に入り。
街を破壊しながら、街の中心部へと進んでいるとの事。
そのため街の被害や民間人への被害が大きくなる前に、民間人への安全な場所への誘導や保護。ドラゴン退治への依頼であった。
そのため5人もまだまだ駆け出しの冒険者であったのだが、街の人達を守る為、ドラゴン退治は高レベルの冒険者に任せ。
必至で街の人達を安全な場所へと誘導や保護をしていた。
ところが運の悪い事に、5人がいた場所にドラゴンが進んで来てしまい。5人も戦う事になり。
力を合わせ、無我夢中で戦ったらしいのだが、巨大な体格のドラゴンの前では5人はあまり非力で、ドラゴンは強く、狂暴であった。
そのため5人や他の冒険者達は、瀕死の傷を負いながらも必死で痛みをこらえ。
街や街の人達を守るため戦っていると、ギルドマスターが何とかドラゴンに渾身の一撃を加え、倒してくれたらしい。
しかしその時には、5人や他の冒険者達はその場から起き上がれないほどに疲労困憊しており。
意識が薄れゆくなか5人が固まって倒れている所に、またまた運悪く。ギルドマスターの渾身の一撃を受けたドラゴンの巨体が倒れてきてしまい。
意識のない5人は、ドラゴンの血を全身に浴びてしまう。
そして、その時に大量のドラゴン血が5人の瀕死の傷口や口から体内に入ってしまったらしい。
その後、ドラゴンを倒した事を知った避難していた街の人達から助け出された5人は治療を受け。
一命をとりとめたらしいのだが、それ以来気がつけば5人とも容姿が変わらず。体も衰え知らずで、年を取らなくなったらしく。
逆に身体能力や視力や聴力が異様に良くなり。
他にも今は止まったのだが、年々瞳の色や髪の色が明るい色合いに変わっていったりしたらしい。
そしてギルドマスターの調べでは、アスマ達の他にも魔獣になったドラゴンの血を浴び、体質や身体能力が劇的に変わった者達がいたらしく。
どうやらあの時に大量の魔獣になったドラゴンの血が体内に入った者達は体や種族など体内の効能が変わり、進化してしまったらしい。
そしてそのため、事件後更に良くなった記憶力をくしし、パーティー内で地図を作成したり。弓を使い、矢に魔法をかけて敵を倒す。
朝倉町に住むエルフ族のリーフのように穏やかな口調の頭脳派のエルフ族のイアンは、すらりとした身長に細身だが筋肉質の体格に、年とともに白く白銀になってくる髪色を若さの証、銀色のまま保ち。エルフ族特有の綺麗で、若々しい顔立ちのままである。
パーティーメンバー3人目になる狼族のカイムも、若々しくハリのある肌や細マッチョの筋肉を変わらず保ち。
年をとるとともに本来失われていく耳や尻尾の艶が失われないまま、サラサラ艶々と光沢を保ち続け。
事件後、更に鋭くなった聴覚と嗅覚をくしし。耳と鼻で異変を察知するなどパーティーをサポートしている。
あらゆる武器を使いこなすスタンダードな前衛職の『戦士』になる。
4人目の妖精族でフェリー族のキオもフェリー族特有の人族と同じ背格好をしていて、金髪のクルクルした癖っ毛の髪型と背中の羽が似合う。可愛らしい少年の見た目のまま年を取らず。
事件後、更に威力がパワーアップした得意の魔法を使い。剣に魔法をかけ、前衛から後衛までのポジションを幅広くカバーして戦う『魔法剣士』になる。
最後のパーティーメンバーになる5人目の人族のチハヤも、優しそうな人畜無害の穏やかな表情を浮かべ。
20代前半の好青年の見た目のままの本年齢50代後半の人物になり。
パーティーに欠かせない回復・治療担当の『白魔導師』になり。
細身の体格に白いローブと杖を持っており。見た目穏やかで優しそうな印象をもつが、ひとたび戦いとなると杖に内蔵された鈍器じょうになった。
隠された短剣で、敵をバッサバッサと倒してしまう二面性をもつ。
◇◇◇◇◇
などのアスマ達の冒険話をいろいろ聞かせてもらい。
系統や見た目が全然違う5人のパーティーメンバーなのに、長い年月を過ごしていても仲の良い様子の5人に愛満達が感激していると、エルフ族のイアンが
「実は私達、王都の学園で学んだ同級生になるんですよ。
ですが各々の実家が子沢山だった事もあり。個室の寮の部屋を借りるのは金銭的に苦しく。
そこで個室よりは安い上がりの大部屋の5人部屋へと入る事になりまして、その縁で仲良くなった5人なんです。
最初は各々の若く、種族が違ったりと生活の違いもあり。衝突もありましたが、いつしか無二の親友になり。
卒業後は5人でパーティーを組み。事件後もへこたれずに切磋琢磨しながら、己の技を磨き。
助け合ってきた大切な家族になったんです。」
5人の繋がりを教えてくれ。更にアスマが
「そうそう、だから、ある程度のレベルに達したし。
老後をのんびり暮らせるくらいの金も5人で稼いだから、体が動けるうちに冒険業を引退して、何処か良い場所に家を構え。
昔みたいに面白おかしく余生を楽しく過ごそうと、皆で話し合って決めたんです。」
冒険業を引退する訳や交流のある甥のテネトに相談した訳を話してくれる。
そうしてすっかり話し込んでいると、飲み干したお茶やお茶菓子のお代わりが無い事に愛之助が気づき。
気をきかせてくれ。新しいお代わりのお茶と最近自分が気に入っている焼き菓子の和三盆クッキーが詰まったお重を持ってきてくれる。
「うわー!何この焼き菓子はじめて見る。三種類の味があるの?旨そうだねぇ♪」
「本当ですね。こんなに可愛らしい形の焼き菓子は初めて見ました。」
「本当だなぁ。しかし、この村はお菓子にしても食べ物にしても 見た目も味もこっていて、目でも舌でも楽しめて奥深いなぁ!
王都では、こんな旨いもん なかなか食えねえぞ。」
「本当に可愛らしくて、美味しそうだね。」
初めて見る松、竹、梅の3種類の抜き型で抜いた可愛らしい形の和三盆クッキーに興味津々の5人は、まず始めにクッキーに使われた和三盆のお砂糖を味見させられ。愛之助から皿に盛られた和三盆を受け取り。
和三盆クッキーの特長や松竹梅の型の意味など訳が解らぬまま、進められるがままに食べ始め。
「あっ!このクッキー、噛んだとたん口の中でホロッと崩れますよ!こんなに柔らかいクッキーがあるんですね。驚きました。
それにいつも食べているクッキーは、日持ちさせる為に焼き固めてあるので、下手したら歯が折れるんじゃないかと思うくらい硬く。美味しいと感じた事は、なかたんですがクッキーて、こんなに美味しい食べ物なんですね。」
驚きの声をあげ。更に他のメンバー達も
「俺、松の形の和三盆クッキーを食ったけど、一口サイズの茶色の松の形がしゃれてるし。
この和三盆て言うの?この砂糖(和三盆)独特の風味と品のよい甘さが旨いな♪」
「クッキー美味しいなー!これなら年で歯が弱ったギルドのじいさんも食べれる柔らかさだぜ。」
「竹の形の和三盆クッキーを食べましたけど、抹茶の風味と和三盆の品のよい甘さが合わさって、ついつい手が伸びてしまいますね。」
「僕は、可愛いい梅の形の和三盆クッキー食べたけど、ココア味が美味しくて、口の中でホロッと崩れるホロホロ感がたまらない!クッキーて、こんなに美味しいお菓子だったんだね♪」
和三盆の風味や品のよい甘さ。可愛らしい形などで、和三盆クッキーを気に入った様子の5人は、一口サイズで食べやすい事もあり。ついつい手が伸びてしまい。
お重いっぱいに詰まっていた。愛之助の秘蔵の隠し菓子の和三盆クッキーは、愛之助が気付いた時には、綺麗さっぱりと食べ尽くされていたのであった。