和菓子『関西風・桜餅』とお花見とお重
その日 万次郎茶屋の台所では、前日から泊まっていた。
愛之助達苺忍者隊の隊員や仕事が休みの美樹、黛藍達が楽しそうに愛満お手製のある箱を覗き込み。何やらニコニコと楽しそうに微笑んでいた。
「うわー!美味しそうだね。僕の好きな海老フライが入ってる。」
「マヤラのちゅきなタコしゃんウィンニャーもはいちぇる!」
「ルルナの好きな甘い玉子焼きも入ってるよ!」
「僕の好きな照り焼きチキンも入ってる!」
「拙者の好きなベーコンのアスパラ巻きも入ってるでござる。」
「俺の好きなハンバーグも入ってるぜ!」
粗熱をとるため、作業台に広げているお重を覗き込んでは、自分達の好物が詰め込まれている事に一喜一憂しては喜び。
最後に愛満が作り終えたあるモノが詰め込まれたお重を見て、更に飛び跳ね喜ぶ。
「桜餅だ!美味しそう!ねぇ愛満、コレ桜餅でしょう?」
「桜の良い匂いがするね。美味しそう!」
「ねぇねぇ、ルルナ!こっちのお重の桜餅は、苺が飛び出て包まれているよ♪美味しそう!」
「桜の花と同じの色合いで、可愛い和菓子だね。」
タリサ達が『桜餅』の事を話していると調理を終え。粗熱がとれたお重を風呂敷で包んでいた愛満が
「みんなお待たせ。お弁当も作り終えたから早速お花見に行こうか!」
愛之助達が昨日の夜から興奮して楽しみにしていた。咲き誇る沢山の桜を見ながらのお花見が始まるのであった。
◇◇◇◇◇
その後、万次郎茶屋近くの桜並木までの道のりの途中、 花夜達右理家族を迎えに行き。
ちょっとした遠足のように楽しみながら、春に変わりゆく風景を愛で、のんびりした歩みでお花見をする目的地に到着した。
目的地に着いた愛満達は、座り心地を良くするためのウレタンマットを敷いた上に触り心地の良い、お花見用の特別な赤い色の布シートを敷き。
寒さ等で花夜の体の節々が痛くならないように座布団やクッション、厚手のひざ掛け等を出しながら、お花見の準備をしていく。
そうしているとタリサ達チビッ子組は、おいかけっこや持参したボール、縄跳び等を使い。楽しそうに笑い声をあげながら遊び始める。
そんなタリサ達を横目に見ながら準備を終えた愛満達は、シートの上に寒さ対策をバッチリ終えた花夜や花夜の姉達の朝霞達と一緒に、シート近くに自生しているシロツメクサを使い。
昔、祖母や姉から習った『シロツメクサの花かんむり』の作り方を教えてあげる。
「そうそう、軸にした花の茎にひっかけて巻き付けていくんだよ。
そしたら花の位置をずらしながら編んでいって、自分の好きな長さの所で茎をしばるか、編み込んで輪にしたら花かんむりの完成だよ。」
「愛満、コレで大丈夫?」
「愛満、私のもコレで大丈夫?」
「どれどれ………うん、皆上手だよ。
それにしても花夜は本当に手先が器用だね。途中とちゅうにクローバーを加えて編み込んでるんだもんね。バランス良く出来ていて、豪華で可愛いね♪
もちろん朝霞と遥南、北瀬の花かんむりも上手に出来ていて可愛いよ。
あっ、そうだ!どうせなら、後でアクセサリー作りに使える造花の草花を持ってきてあげるから、このシロツメクサの花かんむりを作ったみたいに自分達の用の髪飾りを作ってみたら楽しいよ。」
まだまだこの世界には数少ない女の子用の髪飾りを自分の手で作ってみないかと提案する。
「本当に!!良いの?ありがとう、愛満!」
「えっ!髪飾りって、私達の手で作れるの!?」
「ほ、本当に良いんですか?いつもすいません。」
「……ぼ、く……も…お…ね、え…ちゃ…ん、た…ち…の…た、め…に…か、み…か…ざ、り…つ…くっ…て、あ…げ、る……」
愛満に誉められ、はにかみながら嬉しそうに微笑んでいた花夜は、アクセサリー作りの話を聞き。驚きながら朝霞達と4人で喜ぶ合う。
「花夜 良かったわね。」
「……う、ん…あ…り、が……と…う…あ…さ、か…お…ね、え…ちゃ…ん…た、の…し……み…だ…ね…
かん……せ……い……し…たら…あ、さ…か、お……ね…え…ちゃ…ん…と…は…る…か…ちゃ…ん…と…き…た、せ…ちゃ…ん…に…ぷ…れ…ぜ、ん…と…す、る…ね…」
「本当に、やったー!ありがとう、花夜ちゃん。」
「花夜ちゃん、ありがとう。楽しみに待ってるね♪」
「花夜、ありがとう。でも無理しないで、ゆっくりで良いからね。」
朝霞達3人は、花夜からの髪飾りを楽しみにしながら、お喋りに花を咲かせる。
そうして各自が思い思いにのんびりとすごしていると朝倉学園のチャイムが鳴り、お昼の時間を知らせてくれた。
すると遠くの方からタリサ達の声が聞こえて来て
「愛満~~お腹すいた~!」
「おなかちゅいた~!」
「お弁当~♪お弁当~~♪楽しいなぁ~~!」
「お弁当も桜餅楽しみだね。」
動き回ってお腹を空かせた食いしん坊達が、愛満達がいるシートへお弁当を目指し、全速力で息をきらしながら戻って来る。
「こらこら!シートに上がる前に体に付いた葉っぱを払って上がるんだよ。それからおしぼりを2枚渡すから顔と手を拭いてね。」
全身を使って全力で遊び転げ回ったタリサ達は、愛満に注意を受けながら、皆の楽しみなお弁当の時間が始り。
朝、おかずの段のお重しか見ていなかったタリサ達は、愛満が広げる様々なお握りが詰まったお重を覗き込み、歓喜の声をあげる。
「うわ~『グリンピースご飯のお握り』だ!僕、グリンピースご飯大好き♪」
「あぁ!ルルナが好きな『菜っ葉おむすび』もあるよ。」
「拙者が好きな『タケノコのお握り』も入ってるでござるよ♪」
「シの好きな『シラスと大葉のお握り』が入ってるニャゴ!
今日は朝から孫達の世話で、老体にムチうって疲れたニャゴから、なんとか逃げ出して桜の木の上で日向ぼっこしていたニャゴ。
そしたら好物にありつけるなんて、なんてラッキーな日ニャゴよ♪」
「マヤラのしゅきなおいぎりもある!」
「やはり噂を聞き付け、愛満達のお花見会場に来て良かったでやんす!
なんたって私の大好きな『いなり寿司』がお重一杯に詰まって、出会えたでやんすから♪
はぁ~~~~幸せでやんす♪このお重のいなり寿司は私1人だけの物でやんす!誰にも渡さないでやんすよ!
フッフフフフ~♪こんなに沢山のいなり寿司が食べられるなんて、幸せでやんす!」
「あっ!俺の好きな『肉巻きお握り』も入ってる♪愛満、ありがとうね。
それにこんなにいろんな種類のお握りやおかずを作るの大変だっでしょう?いつも本当にありがとう!」
若干人数が増えた気がするが、愛満達は気にせず。
多目に作ったお重いっぱいのお握りやおかずを満開の桜の花を愛でながら、皆で仲良く食べ進めていく。
そしてお弁当を腹に詰め込んだ愛之助やタリサ達は、待ちに待った桜餅にありつけ。
「『桜餅』美味しいね♪口に入れると粒々した餅と粒あんが一体になって、なんとも言えない美味しさだね。」
「本当に美味しいね。お餅と粒あんとほど良く塩気の効いた桜の葉が良く合ってる♪」
「ちゃくらもち おいちいね!」
「うん♪マヤラ、ちゃくらもちおいちいね。」
「普通の桜餅も美味しいでござるが、拙者は苺の桜餅が好きでござるよ。
お餅のモチモチ感と苺の酸味とこし餡の甘みがクセになる美味しさでござる♪」
「桜餅でやんすか?………おぉー!初めて食べるお餅の食感でやんすね。
それにこのピンクのお餅に巻かれた桜の葉が とんでもなく香り高い食材でやんす。私、この香り好きでやんすよ。」
桜の葉の塩漬けを巻いた『桜餅』を口々に誉めてくれる。そんな皆にお礼の言葉をのべながら
「ありがとう。みんな『桜餅』を気に入ってくれたみたいで、お誉めの言葉をもらえて嬉しいよ。
今日の桜餅はね、お弁当用に皆の好きなお握りやおかずをいろんな種類作る予定だったから、簡単に作れる道明寺粉を使って、僕の好きな『関西風の桜餅』を作ることにしたんだ。
道明寺粉は扱いが簡単で、今日だって電子レンジで手抜きして簡単に作ったんだ。
それに電子レンジで手軽に作れて失敗知らずで、食べたい時に直ぐに作れるから、僕の気に入ってる和菓子の材料でもあるんだ。」
今日は愛之助達が前々から楽しみにしていたお花見のため、各々の好物を1つでも多くお重へと入れてあげたいと考えた愛満は、朝早くから頑張り。
お茶菓子にも、せっかくのお花見だからと時間がないなか、季節感を取り入れた『桜餅』を道明寺粉を使い作ってくれたのだ。
「へぇー!道明寺粉てスゴい便利なんだね。」
「道明寺粉スゴいね。けど愛満もスゴいよ!朝早くから、僕たちのためにお弁当や桜餅作り頑張ってくれたんでしょう。ありがとう、スゴく美味しかったよ!」
「そうでござる!愛満、お弁当も桜餅も美味しかったでござるよ。いつも美味しいご飯におやつありがとうでござるね。」
「僕も僕も!愛満、いつも美味しいご飯と菓子ありがとう~!」
「マヤラも!よしみちゅ、いちゅもあいがとう!」
「桜餅も旨いニャゴ♪ありがとうニャゴ♪」
愛満は、皆からお礼の言葉に包まれるのであった。
◇◇◇◇◇
こうして美味しい桜餅を食べながら、愛満達の楽しいお花見の時間が過ぎていくのであった。




