鰯の梅煮とケットシーのポポロ
その日 朝倉村に住むケットシーで、真っ黒な毛並みが美しいポポロは、自宅の縁側で日課の日向ぼっこをしながら、のんびりと空に浮かんだ雲を見ていた。
「あれはポポロが大好きニャ魚みたいニャ雲だニャ♪
あっちはイカみたいだニャ!その隣は海老で、その隣は秋刀魚みたいな細長い雲だニャね~♪。
ニャー美味しそうだニャ♪………う~ニャ~♪お魚みたいな雲を見てたら、なんだかお腹がすいてきたニャンね。
ニャニャ、ニャニーーャ………ニャン!!愛満の所に魚を食べに行くだニャン!」
雲を見ながらの日向ぼっこを満期し。お腹のすいたポポロは、いつものように愛満の所に魚料理をおねだりに出かけるのであった。
◇◇◇◇◇
一方 ポポロが目指す万次郎茶屋では、お昼の時間が近くなり。いつものように愛満が台所でお昼ご飯を仕上げていた。
すると勉強で頭を使ったり、遊び疲れてお腹をすかせた愛之助達が美味しそうな匂いにつられて台所へと集まって来る。
「愛満 お腹すいた~!今日のお昼ご飯は何?」
「拙者もお腹がすいたでござる。今日のお昼ご飯は何でござるか?何を煮てるでござるか?」
「おいちょうなにおい♪なにをにちぇるの?」
「今日のお昼ごはんはね『鰯の梅煮』だよ。
今日仕入れに行ったら新鮮な鰯がたくさん売ってたから、梅干しと生姜を使って、甘めの味付けで煮たんだ。」
午前中のうちに自身の持つ力を使い。新鮮な鰯を仕入れてきた愛満が、今日のお昼ご飯の主菜を教えてあげる。
そんな『鰯の梅煮』の煮込まれるお腹をくすぐる良い匂いにお腹がペコペコなタリサ達は
「鰯の梅煮、いい匂いだね~♪」
「おしゃかなしゃん、いいにおい♪マヤラもたべれりゅ?」
「もちろん。マヤラも食べられるよ。
今日の鰯の梅煮はね。この前仕入れた炊飯器型の圧力なべを使って煮たから、短時間で骨までホロリと柔らかいし。煮汁もトロ~リとして美味しいだよ。
それにマヤラが心配な魚の骨は、ちゃんと取ってあげるから心配しないんで大丈夫だよ。
またこの前みたいに骨が喉に刺さっても、直ぐに取ってあげるから安心して大丈夫だよ。」
「あい。よしみちゅ あいがとう。おしゃかなしゃん、たのちみじゃね。」
「お昼ご飯 楽しみ♪早く食べたいね!」
「お魚ニャ~♪ポポロもお昼ご飯 楽しみだニャ♪」
「本当に楽しみでござるね。愛満、他のお昼ご飯は何でござるか?」
「他はね。今日の朝に美樹から、昼ご飯は海鮮系の和食が食べたいとリクエストを受けたから『お刺身の盛り合わせ』と『海老とサーモンの生春巻き』『タコの唐揚げ』、『ホタテと葱のグラタン』、『まげまげとイカとワカメの酢味噌あえ』、『エビマヨ』、『子持ちししゃもの揚げ春巻き』
『鮪と長芋のネバネバサラダ風』、『鰯のつみれ汁』だよ。
みんな悪いけど、出来上がった料理からテーブルに運んでくれる?」
今日のお昼ご飯を発表した愛満は、愛之助達にいつものようにお手伝いをお願いする。
「了解 タリサお手伝いするね!あ~ぁ、美味しそう、早くお昼ご飯食べたい~♪」
「マヤラもおてちゅだいちゅる!おはちはこぶ。マヤラもごはんたのちみ!」
「ポポロもお手伝いするニャ。それにしても今日はいい時に来たニャ!お魚楽しみだニャ~♪」
「拙者は、エビマヨを運ぶでござるね。
…………それにしてもエビマヨ美味しそうでござる♪拙者エビマヨ大好きでござるよ!
甘酸っぱいマヨソースに、衣をつけて揚げられた海老がカリプリとして、いくらでも食べれるでござるよ♪」
いつものように愛之助達がお昼ご飯の手伝いをしてくれるなか、鰯の梅煮の魚の身を傷つけないように大皿に盛り付け。
誰かに運んでもらおうと愛満が顔を上げると、新しい料理を運ぶ為に台所に戻って来たポポロが立っていた。
「あれ、ポポロ。お昼ご飯食べに来たんだね?全然気づかなかったよ。直ぐに気付かずにゴメンね。
それにご飯のお手伝いもありがとう。ご飯、もう少しで食べれるから待っててね。」
「大丈夫ニャ。ポポロ、もう少し待てるニャよ。
それにしても今日は、本当にラッキーな日だニャ。あんなにいっぱいの魚料理が食べれるニャもん♪ニャニャ♪ニャン~♪」
ポポロが大好きな魚介料理がたくさん食べれる事にニャニャと鼻歌を唄いだしたりしながら、お昼ご飯の準備が整う。
ちなみに愛満達が、ポポロがふらりとやって来ても驚かなかった訳は、朝倉村に住むケットシー達は、よくふらりと万次郎茶屋へとやって来ては、普通に万次郎茶屋や愛満宅に上がり込み。
朝昼晩のご飯や魚料理をねだる事が、今までに多々あり。
その事に慣れてしまった愛満達は、ポポロの登場にもたいして驚きもしなかったのであった。
◇◇◇◇◇
そうして美樹達もお昼ご飯を食べに戻ってきて、いつものように楽しいお昼ご飯の時間が始まる。
「本当だ!鰯の梅煮 身も骨もホロリと柔らかいね。それに甘めの味付けで美味しい♪」
「マヤラもおいちい!おしゃかなのほねこわくにゃいよ♪」
「俺 刺身とかは好きなんだけどさぁ。
1度昔の彼女が手料理で作ってくれた鯖の味噌煮が、生煮えの生臭さという、ありえないダブルパンチにあってよ。
彼女の手前、不味いとは言えねえし。
残すのもしのびなくてよ。
我慢して食ったんだけど、しばらくしてから上かも下からも激流が止まらないというすさまじい症状に見舞われて、夜中の緊急病院に運ばるという黒歴史があったんだよ。
それからどうしても煮魚系が食えなくなっちまったんだけど、このはじめて食った『鰯の梅煮』
梅や生姜の風味がほのかにあって、鰯の生臭さがまったくなくて本当に旨いなぁー!さすが愛満だぜ!」
ポロリと美樹の悲しき黒歴史が暴露される。
そして『鰯の梅煮』を食べるのに夢中で、美樹の話を聞いてなかった愛之助や黛藍、ポポロ達が
「本当に美味しいでござるね。一緒に煮てある梅干しも、煮汁の旨味をふくんでおって美味でござるよ♪」
「うん、うん♪美味しいアルね♪この煮魚なら、黛藍なら骨ごとボリボリ食べれるアルよ!」
「美味しいニャ~♪鰯に味が染み込んでいて、まったりとコクのあるトロ~リとした煮汁と、鰯の身が口の中でとろけるように広がって、至福の時間だニャン♪
それに鰯の身が柔らかくてふあふあだニャ。ニ~ャ♪やっぱり煮魚は、美味しくて最高ニャンね♪」
口々に『鰯の梅煮』の美味しさを褒めてくれる。そんな皆の感想を聞いた愛満は嬉しそうに
「みんなありがとう。今日の『鰯の梅煮』はね。この前仕入れたばかりの炊飯器型の圧力鍋で煮たから、時間も手間もかからなかったし。
お釜型の鍋に具材の鰯や調味料を入れて、スイッチ押すだけで、あとは圧力鍋 任せの簡単料理なんだ。」
「圧力鍋でござるか?」
「へぇ~!圧力鍋の炊飯器型が出たんだ。さすが『もの作りの国』だぜ!俺の故郷は!」
「本当にスゴいよね。
僕 昔から圧力鍋の圧力を逃がすのが本当に苦手てで、怖いって言うか、…使えなかったんだ。
だけど、この前この炊飯器型の圧力鍋を見つけてからは、説明書読んだら、使い方も簡単だし。楽チンだから大助かりだよ。
本当に簡単で、圧力鍋に材料を入れてスイッチ押すだけで、あとは勝手に作ってくれるんだから!」
炊飯器型の圧力鍋の便利さや、楽チンさ等を少々興奮気味に愛満が話していると。話を聞いていたポポロが、何かニャムニャムと考え込みながら
「愛満、その炊飯器型の圧力鍋は、ポポロでも使えるかニャ?」
「うん?ポポロどうしたの?
まぁ、ポポロでも簡単に使えると思うよけど、どうして?」
「ポポロ、毎日美味しい煮魚食べたいニャ。それでね、皆にも美味しい煮魚食べてほしいのニャン!
だからポポロ、煮魚屋さんやってみたいのニャン。…………ダメかニャ?ポポロには、無理かニャ。」
心配そうに愛満に聞いてくる。
ポポロの話を聞いた愛満は、何やらヤル気満々な様子のポポロに、なんと返事していいのか思い悩んでいると。近くで話を聞いていた愛之助達が
「ポポロが営む煮魚屋さんなら、美味しい煮魚が出来るでござるね。」
「愛之助の言う通り!ポポロが営む煮魚屋さんなら、村の皆が絶対買いに来てくれるはずだよ!」
「ポポロ がんびゃれ!マヤラ おうえんちてる!」
「それはいいアルね!ポポロ頑張るアルよ。黛藍も頑張ってるんだから、ポポロも頑張れば、十分煮魚のお店屋さんやれるアルよ!」
「おっ!ポポロ、煮魚屋さんやるのか?
ポポロが煮魚屋さんなるなら、俺 昼飯買いに行くぜ!」
口々に皆が激励の言葉をかける。そんな激励の言葉の数々に更にヤル気をみせるポポロを見ながら、考え込んでいた愛満は
「ポポロ 煮魚屋さんやりたいの?」
「うん。ポポロやってみたい。ダメかニャ?」
「……う~ん。………よし、解った!ポポロの煮魚屋さん、造ってあげるね。
それから煮魚だけだとアレだから、ポポロが火傷をしないような焼き魚のグリルを探して、焼き魚と煮魚を販売できるようにしてあげるよ。
そのかわり!味見をしすぎてお店にだす商品が無くなるなんてしちゃダメだよ。いい?」
「本当かニャ!?やったニャー!!ポポロのお店が出来るニャ。煮魚に焼き魚ニャ♪ポポロ頑張るニャ!愛満ありがとうニャ。大好きだニャン♪」
考え込んだ難しい顔から、最後の方は優しく微笑み。愛満はポポロのお店の件を承諾する。
すると大喜びのポポロは、愛満に抱きついたり。タリサ達とテーブルの回りをピョンピョン飛び跳ね。最後は喜びの歌を歌い始めるのであった。
◇◇◇◇◇
こうして、万次郎茶屋の斜め前に、愛満チートで建てれた店舗兼自宅のケットシーのポポロが営む。
美味しい煮魚や焼魚を販売する。魚をくわえた黒猫が目印の焼き・煮魚屋さんの『焼き魚・煮魚のポポロのお店』が、ケットシー達や魚好きな人達に歓迎されるなか、朝倉村に仲間入りするのである。




