焼き鳥と兎族のラトス
「大将!この店の焼き鳥は旨いでござるねぇ。
拙者は、塩コショウで味付けされて香ばしく焼かれた『豚バラ串』とカリカリに焼かれた『タレ味の鶏皮』が好きでござるよ。」
「愛之助殿は、豚バラと鶏皮がお気にめしたか。
タリサ殿は、タレ味の香ばしい『ねぎま』と塩味のコリコリした『砂肝』が好きでござる!
そうでござった!大将、お銚子を1本おかわり頼むでござる!」
「やきとりおいちいでごじゃるね。マヤラじょのは、ちゅくねがしゅきでごじゃる。よは、まんじょくじゃまんじょくじゃ!
そうじゃ、ラトスどのはまんじょくでごじゃるか?おいちいでじゃるか?」
※『焼き鳥美味しいでござるね。マヤラ殿は、『つくね』が好きでござる。余は満足じゃ、満足じゃ!
そうだ、ラトス殿は満足でござるか?美味しいでござるか?』
「うん、旨いなぁ!どれも旨いけど、やっぱり一番は食べなれた『鶏もも串』の塩味とタレ味が良いなぁ。
それにしてもこの『焼き鳥』と言う料理、いつも食べてる鶏肉より口の中で噛むたびにジュワッと肉汁が溢れてきて、しっかりした噛みごたえもあって、本当旨いなぁ!
う~~~ん、炭火で焼くとこうも違うのか!」
目の前にある焼き鳥を見つめながら、兎族のラトスがしみじみ呟き。更に焼き鳥皿の隣に置かれた、赤いミニトマトの串焼きを見て
「それにいつもは生で冷やして食べだけのミニトマトが、豚バラ肉に巻かれていて、串に刺され、食いやすいし。
香ばしく焼かれたミニトマトが口の中ではじけ、豚バラ肉の旨味や添えてある粒マスタードも合わさり、新しい味わいで旨い!
焼き鳥に添えてあるざく切りの春キャベツにしも、酢じょう油と言うタレ?がかかっていて、焼き鳥を食べてこってりした口の中をサッパリさせてくれ。焼き鳥との相性もバッチリだ!
それにしても、このお銚子とお猪口も面白いなぁ~♪」
今朝、愛満達と観賞した時代劇のワンシーンの真似をしたがった愛之助達の為に、愛満お手製の焼き鳥、お銚子に入った林檎ジュース、お猪口を用意してあげ。
愛満家でのお泊まりセットの1つの甚平に着替え。愛之助の私物のオモチャの刀を小脇にさしたタリサ達は、ノリノリで時代劇ごっこを楽しんでいるのだ。
そして、たまたま愛満を訪ねて来ていた。タリサとマヤラのかなり年の離れた兄で、鶏肉担当のライの息子ラトスも可哀想に巻き込まれるなか。
愛之助やタリサ達は、愛満の事を『大将』と呼び。何度目かになるお銚子のおかわりを要求する。
「はいはい。お客さん、お銚子のおかわりですね。…………はい、どうぞ、お銚子1本です。」
「おっ!大将ありがとよ!おっとと……カッー!酒は旨いなぁー!」
「にいたん、これりんごじゅーちゅじゃよ。りんごじゅーちゅをおちゃけなんていっちぇる。にいたんおかちいの クスクス」
※『兄ちゃん、これ林檎ジュースだよ。林檎ジュースをお酒何て言ってる。兄ちゃんおかしの クスクス』
「マヤラ、ダメでござるよ!今、拙者達は時代劇に出てくる少々達の悪い若侍の設定でござるよ。」
「あっ!しょうだった!マヤラじょのもじゅー……ちゃう、おちゃけ、おちゃけと。」
※『あっ!そうだった!マヤラ殿もジュー……違う、お酒、お酒と。』
愛之助達3人は、何やら少々達の悪い若侍なる者を演じつつ、寸劇を楽しでいた。
「ラトス、せっかく急がしいなか僕を訪ねて来てくれたのに、巻き込んじゃって本当ごめんね。
愛之助達3人も少し落ち着いたみたいだから、今のうちに別のテーブルで話そうか?」
タリサ達の遊びに付き合ってあげている愛満は、巻き添えになっているラトスに謝りながら、離れたテーブルで落ち着いて話をするためにラトスを誘う。
◇◇◇◇◇
「本当、今日は愛之助達の遊びに巻き込んじゃってごめんね、ラトス。………それで、僕に相談って何かなぁ?」
愛之助達から離れたテーブル席へと移動して来た愛満は、ラトスが訪ねて来た訳を聞く。
「うん。……………実は…俺も親父や兄貴達が汗水たらして、大事に育ててる鶏肉を使ってお店をやりたいと思ってて……。
それに黄金唐揚げ店では、モモ肉やむね肉を主に使うから、それ以外の素材を使用出来ないかなぁと思って……………。
なぁ、愛満。それでさっき愛之助達と遊んでて考えたんだけど…あの、…さっき食べさせてもらった『焼き鳥』と言う料理、俺でも作れるか?」
何やら覚悟を決めたような真剣な表情のラトスが愛満へと質問する。
そんなラトスの問い掛けに、唐揚げ店では基本モモ肉やむね肉しか使用しない事を今更思い出し、申し訳なさそうに謝り。
「そうだよねぇ。唐揚げはモモ肉やむね肉が主だもんね…………そこまで気がまわらなかった、ごめんね。
それからラトスが焼き鳥屋ねぇ……う~ん…………うん!
ラトスは手先も器用だし、社交的で明るく頑張り屋さんだから大丈夫だと思うよ!
それでラトス、焼き鳥屋さんをするにしても、お店は店内でも食べれるようにする?それとも持ち帰り専用?お酒類は提供するようにする?
その条件次第で、いろいろお店の方向性や決める事が変わるから、ちょっと話し合って決めよっか。」
「うん、よろしくお願いします。」
ラトスに持ち掛け。2人でお店の事やこれからの事をいろいろ話し合うのであった。
◇◇◇◇◇
そうしてその後、しばらくの間ラトスと愛満の2人は様々な事を話し合い。
・焼き鳥は店内でも食べれ、持ち帰りも出来る
・お酒類は、シャル家から仕入れて提供する
・鶏のレバー等の部位は、焼き鳥の他に甘辛く煮たレバー煮にして販売する
・愛之助のお願いで、豚バラ串も中華料理屋の高穂から仕入れて販売する
・様々な村の新鮮野菜を使って、女性客や野菜好きなお客さんに喜ばれる野菜串も販売する
等の事が話し合いで決まる。
◇◇◇◇◇
「そうそう。ラトス、上手だね。
具材を串に刺す時に串が見えないようにつめて刺してね。じゃないと見えてる串の部分が、焼いてる時に燃えて折れちゃうから。
それから、今仕込んでる肉と野菜の串物になるのが
・白ネギを豚バラ肉で巻いた『豚バラ白ネギ串』
・さっき食べたミニトマトを豚バラ肉で巻いた『豚バラトマト串』
・同じミニトマトを使って作る。ミニトマトのヘタを切ってストロー等で穴を開けて、そこに溶けるチーズを絞り袋で絞り入れた『トマチー串』
つくね串のつくねタネに一手間加えて使って作る。
・蓮根の穴につくねタネを詰めた『蓮根つくね串』
・椎茸に粗みじん切りした枝豆を加えたつくねタネを詰めた『椎茸つくね串』
・さっきのトマチー串のつくねバージョンの『トマトつくね串』
・つくねダネに粗みじん切りした海老を加えたタネをピーマンで巻いて作る『海老ピーマン串』
・ししとうに切り込みをいれ、つくねタネや明太子を少量詰めた『ししとうつくね串』、『ししとう明太串』
大吉村のベーコンを使って作る。
・うずらの卵やアスパラガス、エノキをベーコンで巻いた『ベーコンうずら串』、『ベーコンアスパラ串』、『ベーコンエノキ串』になるよ。
それにね、最初に野菜だけの白ネギ串、椎茸串、ししとう串、銀杏串等の串物を仕込んでから、肉野菜串、肉串を仕込んでいけば、続けて作業出来るから楽だよ。
焼き鳥の仕込みも慣れてきたら1日どのくらい仕込めば良いか解ってくるから心配しなくても大丈夫だよ。」
愛満は自分が調べた焼き鳥の刺し方や焼き方をラトスに丁寧に教えてあげるのであった。
◇◇◇◇◇
こうして、愛満チートで建てた風情ある建物に赤い提灯と暖簾が目印になる。
炭火で焼く、焼き場がついた店舗兼自宅を建築してもらい。
女性や子供連れでも気軽に入れ、お酒好きや肉好きの人達にも喜ばれる。
ラトスが経営する『焼き鳥屋』が、朝倉村に仲間入りする。




