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和菓子『豆大福』と人族のコリンと下駄



4月も近い、その日も風が冷たい。

まだまだ肌寒い朝倉村の万次郎茶屋では、最近7人の小人族が呼び寄せ。村へと移住して来た人族のコリンと愛満達が和やかな雰囲気のなか炬燵に入り、お茶を楽しんでいた。



◇◇◇◇◇



「へぇ~、コリン。蒼一郎達が住んでた隣の家に住んでたんだね。」


「そうそう、蒼一郎達がロト爺ちゃんとカラ婆ちゃんと一緒に営んでた靴屋の隣で、俺の親父とお袋が雑貨屋をやってるんだよ。

それで家が子沢山で、兄ちゃんや姉ちゃん達ともだいぶ年の離れた末っ子の俺は、仕事や勉強に忙しい家族達に相手にされず。

毎日暇をもてあましていたところ、優しいロト爺ちゃんとカラ婆ちゃん達から声をかけられ。

それから毎日のように靴屋に遊びに行っては、ロト爺ちゃんとカラ婆ちゃんに可愛がられ。その関係で蒼一郎達とも仲良くなったんだ。」


愛満から振る舞われた、コリンが最近ハマってる緑茶を一口飲み。満足そうに頷くと、また話を続け。


「で、その内にロト爺ちゃんや蒼一郎達が楽しそうに靴作りをしているのを見て、俺も靴職人になりたいと思い出してさぁ。

ロト爺ちゃんの知り合いの親方の所に、住み込みで修行に行く事にしたんだ。

でも、本当はロト爺ちゃん達に靴作りを習いたかったけど、その頃にはロト爺ちゃん年で、靴職人を引退してたから無理だったんだ。」


実に残念そうにコリンは話す。そんなコリンの肩をマヤラが優しく叩く。


「それで靴職人の修行も無事に終え、一年間の恩返し奉公をしてたら、ある日 母ちゃんからロト爺ちゃんとカラ婆ちゃんが亡くなったと知らせる手紙が届いてさぁ!

ビックリしながらも親方に相談して、恩返し奉公を早目に切り上げさせてもらい。

急いで故郷に帰ろうと準備してたら、また母ちゃんから手紙が届いて、今度は冒険者になると言って家を飛び出したきり

何十年も便りの無かったロト爺ちゃんとカラ婆ちゃんの1人息子が嫁さんを連れて突然帰って来てやら、真面目になって嫁さんの実家の街で店を開いてるやら

2人の葬儀を終えたら直ぐに家を売り出して帰って行ったと書いてあったんだ。」


コリンの話を聞いていて、何やらニヤニヤ笑っていたタリサが


「へぇ~~!蒼一郎達の話していた息子さんって、冒険者になるために家を飛び出すなんて昔やんちゃしてたんだね!若気のいたりとか………プッププ~~♪

だって普通、冒険者になるために家から飛び出さないもんだよ!」


蒼一郎達の件で何やらシコリがあるのか、タリサは見知らぬ息子さんを華麗にディスる。そんなタリサの話しにコリンは苦笑いしながら


「まぁ、そう言ってやるなよ。あの人もいろいろあったと思うから……………。あっ、俺もガキの頃にあっただけだから、どんな人か知らないけど……アハハハハ~~!」


いくら知らなかったからといえ、コリンの中でもよく覚えていない息子さんへの蒼一郎達へのおこないに、少しばかりは思うところがあるらしく、やはり少しディスる。


「でさぁ、最初ロト爺ちゃんとカラ婆ちゃんが亡くなったとしても、あの家には蒼一郎達が住んでいるのに、どうなってるんだって訳が解らなくて心配して急いで実家に帰ってみたんだよ。

そしたら隣は、俺の兄ちゃん夫婦が買い取って食べ物屋を営んでいてさ。

どうなってんのか解らなくて、兄ちゃん達に聞いたら、兄ちゃん達が慌てて買い取った時には、蒼一郎達が居なくなってた後みたいで……

兄ちゃん夫婦も蒼一郎達の事をスゴく心配してたんだけど、何処に行ったか解らないと謝られたんだ。」


「あちゃあ~~!一足違いになったんでござるね。」


「うん、後で蒼一郎達に聞いたら、兄ちゃん達が買い取った1日前に出ていったみたいで……。

けど兄ちゃん達も、もともと自分達の飲食店を開店する為に貯めていた貯金を使って、無理して売り出された爺ちゃん達の店を買ったらしくて………蒼一郎達が居ないからと言って、そんな兄ちゃん達を責める事も出来ないだろう。

それから俺も実家に帰って来て、蒼一郎達の行き先や元気なのかが心配で、毎日いろいろ探してたんだけど、いっこうに消息もつかめなくて………。

自分のこれからの事についてもどうして良い解らなくて悩んでいたら、ある日探してる蒼一郎達から手紙が来て、今に繋がったと訳さ!」


「そうでござったか、それは良かったでござるね!」


「本当にまた出会えて良かったね!」


「よかちゃ、よかちゃ!」


コリンの話を聞き。結末が解っていたのにホッとした様子の愛之助やタリサ、マヤラの3人は手を叩き、拍手してコリン達の再開を喜ぶ。

そんな愛之助達からの拍手に、何やら照れくさそうに照れ笑いを浮かべたコリンは、お茶菓子の『豆大福』を食べ。


「しかし、この豆大福旨いなぁ!こんな旨い菓子、食べた事無いぜ!

ほんのり甘しょっぱい味がクセになるし、この豆のホッコリした食感やモチモチした餅生地が癖になる!それに粒あんがぎっしり入って、得した気分になるぜ。」


豆大福の感想をのべ、緑茶を美味しそうに飲むと、タリサ達にも食べるように進める。

するとコリン話しに夢中で豆大福の事を忘れていた愛之助達は、豆大福の事を思い出した様子でニコニコと笑いながら食べ始める。


「う~ん♪美味しい、タリサ 豆大福好き!

苺大福も大好きだけど、豆大福は中の豆がプチプチして、面白くて美味しい!」


「タリサもちゅき!みゃめ おいちいね。」

※『タリサも好き!豆 美味しいね。』


「拙者も大福の中では一番苺大福が好きでござるが、豆大福もゴロゴロと主張する豆の食感や愛満が作った美味しい粒あんと餅、豆のバランスが良く!1つに包まれ美味しく、甘しょっぱく好きでござる♪

それに甘味と爽やかな渋味が程良くマッチした煎茶が良く合うでござる。」


愛之助達が美味しい、美味しいと豆大福の事を誉めていると、お茶のおかわりを取り入っていた愛之助が戻って来て


「ありがとう、皆が美味しいと言ってくれて嬉しいよ。まだまだ豆大福のお代わりあるから、お腹を壊さない程度に食べてね。」


話し、みんなの湯飲みにお代わりのお茶を煎れてあげる。


するとお茶のお代わりを取りに愛満が台所に行く姿を何気なく見ていたコリンは、カランコロンと歩くたびに綺麗な音を奏でる愛満の足元に目がいき、興味をもつ。


「はい、お茶のお代わりどうぞ。コリンもおかわり、どうぞ。」


「ありがとう。ところで愛満、ちょっと質問しても大丈夫?」


「うん。大丈夫だけど、どうしたの?」


「さっき愛満が履いてたのって、何て言う靴なの?作り方は?履き心地は良いの?」


気になった下駄の事を矢継ぎ早に質問される。そんなコリンの様子に愛満が少し驚いたものの


「あぁ、これ?これはね、下駄と言う履き物になるんだよ。

僕も詳しく解らないから説明できないけど、簡単に説明すると木をくりぬいて歯を作りつけ、花緒をすげた履き物だよ。後は…………う~ん……。」


下駄の事を詳しく解らない愛満が悩んでいると、愛之助が助け船をだしてくれ。


「愛満、下駄の事で悩んでいるでござるか?

それならば、書庫に下駄の作り方等が写真付きで詳しく書いてある書物があったでござるよ。持って来るでござるか?」


「うん。お願いしても大丈夫?それからありがとうね、愛之助。」


愛之助が書庫から持って来てくれた下駄(げた)作りの本を愛満の(チート)で、こちらの世界の言葉に変えた同じ本を1冊生み出し、コリンにプレゼントすると興味津々で読み出し始めた。


「………ほぉ~~!こうして作るんだ、面白そう!……………へぇ~~!………ふんふん…………あぁ、ねぇ。

愛満、この下駄ってスゴいね!花緒を変えれば雰囲気が変わって、全然別の物に見えるな。

それに下駄の形も男性と女性用で違い、クールでカッコいいな!

あとさぁ、この本に下駄を履いて載ってる男性の服装が、和装店の右里さんが着てる服に似ているよな!

あれ?ならさぁ、右里さんの所の服を着て、下駄を履いたら俺もあんな風にカッコよくなるのかしれないよな!………よし、決めた!俺、下駄職人になるぜ!」


「えっ!コリン、急になに言い出すの?

そりゃあ、下駄は楽チンだし、風情があってカッコいいけど………僕達だって作り方解らないし、しかも誰に下駄作り学ぶの?」


コリンの急な下駄職人を目指す宣言に驚き。

この世界には下駄作りを教えてくれる人がいないのに、どうするのかとコリンに質問すると。コリンは不適に笑い、何かを取り出す。


「フッフフ、ジャジャーン!!何と下駄作りの書籍の他にDVDが書庫にあったらしいんだ。

愛之助が苺忍者隊の隊員用に下駄を作ってあげる約束で、DVDプレイヤーとセットでプレゼントしてくれたんだよ。なので今日から俺の下駄作りの親方は、書籍とDVDになったぜ!」


コリンは自信満々で愛満に説明する。

そうしてしばらくの間、コリンの急に芽生えた下駄愛の話を聞きながら『豆大福』を堪能するコリン達でなのあった。



◇◇◇◇◇



その後、小人族の蒼一郎達が待つ靴屋に愛満が包んでくれたお土産の『豆大福』と一緒に持ち帰った下駄作りの書籍やDVDを見た小人族の蒼一郎達も下駄作りと、甘しょっぱい味の『豆大福』にドハマりし。

皆で試行錯誤しながら下駄作りを頑張ったコリン達は、この世界初の下駄を靴屋で売り出す。



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