筍のホイル焼きと竹の子掘りと7人の小人族と靴屋さん
まだまだ肌寒いある日の事。万次郎茶屋を定休日にした愛満達は、ぎっしり詰まったお弁当を持ち。茶屋近くにある竹林に竹の子掘りに出掛けていた。
◇◇◇◇◇
「どう!僕にかかればコレくらいの竹の子を見つけて掘り起こすなんて、朝飯前だよ!」
「大きい竹の子だよ!愛之助もマヤラも僕達スゴい?」
「うん、うん!タリサも和調も上手に竹の子掘り出せてスゴいでござるよ!立派でござる!」
「にいたんもかずたんもちょうずね♪ちゃけのこおおいきね!」
タリサと黒エルフ族の和調達2人が自分達で見つけ出し、掘り出した大きな竹の子を抱え。何やら誇らしそうに愛之助とマヤラの2人に、竹の子との戦い結果を見せながら話しかける。
すると、そんな2人の活躍に愛之助達2人はスゴい、スゴいと褒め称える。
そして、少し離れた竹林でも店を定休日にした美樹と黛藍に加え、妖精族のルルナ、ケンタウルス族のタク達4人が、力を合わせて竹の子堀りをしていた。
「美樹!こっちにも竹の子の頭がちょっと見えてるよ!」
「何処だ?ルルナ」
「やったー!取れた!取れた!僕と黛藍の2人で、竹の子掘り出せたよ♪」
「タク、上手に取れたアルね。すごいアルよ!」
このように4人つづに2班別れ。竹林の中で、あちらこちらの地面からちょこっと飛び出した竹の子の頭を見つけては、慎重に掘り起こし、竹の子を収穫して、思い思いに竹の子掘りを楽しんでいる。
一方 愛満はと言うと、8人が次々に掘り出し、持ってくる大量の竹の子を前に、竹の子のアク抜きや下処理などを自身の魔法で造りだした。
キャンプ場にあるような簡単な作りの洗い場や調理台、焼き場などの野外調理場で、魔法を上手く使い。
1人せっせと、この後に食べられる竹の子料理に思いをはせ、楽しそうに作業していた。
◇◇◇◇◇
そうして、9人が思い思いに竹の子に夢中になっていると、朝倉学園のお昼の時間を知らせる鐘が鳴り。
愛満が下処理しながら隣で作っていた。香ばしく焼いた『焼おにぎり』や『筍のホイル焼き』、刻んだ竹の子入りの鶏団子が良い味出している『鶏団子汁』が美味しそうな匂いを辺り一面にただよわせていた。
「みんな~お昼ご飯だよ~!竹の子掘り終えて、お昼ご飯食べよう~!」
広大な竹林の中で楽しそうに竹の子堀りをしている8人へと愛満は力を使い、風にのせて声を届ける。
そんな愛満の声が聞こえた8人は、いそいそと竹の子堀りで使用した道具を片付け。お腹を空かせて愛満の元へと駆けて来る。
「愛満、お腹空いた~!
あっ、そうだ!愛満 僕ね、1人で竹の子10本も見つけて掘り出したんだよ!偉い?」
「よしみちゅ、マヤラもちゃけのこ2こもとっちゃよ!がんばっちゃ!ちゅごい?」
「愛満兄ちゃん!僕は竹の子20本以上も見つけたんだよ!」
「僕は12本もたけのこ掘り出して、収穫したよ!」
「ルルナも竹の子見つけるの頑張った♪」
「愛満!拙者も沢山の竹の子掘り出したし、運ぶの頑張ったでござるよ♪」
愛満の元へ駆け寄って来たチビッ子組の子供達が、口々に自身の頑張りや竹の子掘りの結果を愛満へと伝え。嬉しそうに愛満に抱き付く。
そんな子供達の頭を一人一人優しく撫でながら、愛満が子供達はと話しかける。
「みんな頑張ったね、本当に沢山の竹の子ありがとね。
みんなが頑張って掘り出してくれた美味しい竹の子を使って、明日の夜はごちそうを作るんだよ!
だから明日の夕方に、タリサやマヤラ、和調、タク、ルルナの家族を万次郎茶屋へとお招きして、竹の子料理でおもてなしする予定だから、みんなお腹を空かせて茶屋に食べに来てね。」
「嬉しい!明日が楽しみ~♪」
「しょうにゃの!たのちみ~♪」
「本当に?良いの!?ヤッタースゴく楽しみ♪」
「愛満達と一緒にご飯が食べれる!スゴい~楽しみ♪」
「やったー♪ルルナ 明日がスゴい楽しみ♪」
「みんなでごちそう食べられるでござるね!楽しみでござるよ♪」
チビッ子組の子供達が明日の夜の食事会の事を聞き。嬉しそうにはしゃぐなか。
美樹や黛藍の大人組の2人は、竹の子掘りで冷えた体を愛満が作ってくれた熱々の鶏団子汁の汁を飲みながらホッと一息ついていた。
「あぁ~~!うめー!冷えた体や五臓六腑に鶏団子の旨味がギュッと詰まった汁が染みて、本当に旨いぜ!」
「はぁ~~~本当に美味しいアルね。この何だか懐かしさを感じる味噌の風味や旨味が最高アル!」
その後みんなで、熱々の焼おにぎりや筍のホイル焼き、鶏団子汁などに加え。持参したお重いっぱいの唐揚げやウィンナー、玉子焼き、ミートボールなどのおかずをモリモリ食べいると、何処からともなく小さな話し声が愛満の耳へと聞こえてくる。
愛満は、最初空耳かと首をかしげ、周囲をキョロキョロと見渡したのだが、自分達意外に人影も無く。
やはり気のせいかと思っていたところ、良く耳をすませていると何やら愛満達が座るベンチの下から、やはり声が聞こえてくる。
「よしコロ!皆 無事に帰ってきたコロな。ご苦労コロ。
では、各自成果の報告をするコロよ!まずは、次男桜二郎からコロ。」
「おうコロ!蒼一郎兄ちゃん。俺は焼きおにぎりというもの2個貰って来たコロ!
最初は焼き色がついた見た目に、ものすごく熱いんじゃないかと覚悟したコロが、時間がたったおかげなのかほんのり温かいくらいで、そんなに熱くなく無事持って帰ってこれたコロよ!」
小人族の次男桜二郎が長男の蒼一郎へと報告する。
そして、隣に立つ三男の龍三郎が続けて報告し始め。年の功から順番に四男の幸四郎、五男の新五郎達も報告する。
「俺は筍のホイル焼きと言うものを3切れ貰って来たコロ!」
「私も美味しそうな黄色い玉子焼きを2切れ貰って来ましたコロ。」
「僕はベーコンのアスパラ巻きと言うのを貰って来たコロよ。」
3人がテンポ良く次々に報告し。最後に幼さが残る六男の恋六郎と七男の藤七郎の2人が自身達の頑張った結果を報告する。
「恋六は、ミニハンバーグを貰って来たコロ。」
「七は苺を貰ったコロ。兄ちゃんは、何を貰って来たコロ?」
一番末っ子の藤七郎が長男の蒼一郎の戦利品の結果を聞く。
「俺か?俺は、旨そうな唐揚げというの貰って来たコロよ!
よし!それじゃあ、久しぶりのごちそうだコロ!皆で、美味しい食べるコロ!」
弟6人達に伝え、久しぶりのごちそうになるご飯を仲良くみんなで分けながら食べ進めていく。そんななか、蒼一郎が何やら残念そうにポッりと
「しかしコロ、あの鶏団子汁と言うものは、本当に旨そうだったコロ。それにみんな美味しそうに飲んでいて、本当にうらやましいコロよ。
はぁ~~~だが、あの熱々の汁物を小人族の俺達がバレずに貰ってくるには危険だし、難しすぎるコロ。」
鶏団子汁が食べれない事を残念そうに悔やみながら、7人は『旨いコロ!旨いコロ!』、『美味しいコロ♪美味しいコロ♪』と嬉しそうに話し、久しぶりのごちそうを食べ進める。
◇◇◇◇◇
そんな何やら微笑ましい7人兄弟の小人族の話を、もうしばらく耳をすませ、愛満が聞いていると。
どうやら7人は、街で人族の靴屋を営む老夫婦の所に、住み込みの靴職人として一緒働き住んでいたところ、ある日老夫婦が相次ぎ老衰の為に亡くなり。
別の街に住む息子夫婦が慌てた様子で妻を連れ、何十年かぶりに故郷へと帰って来たのだが、どうやら妻の実家が街で自分の店を構えているようで、長い時間 店を閉める事が出来ず。
自分の店がある街から、両親が暮らしていた街は馬車で片道10日もかかるため、そう何日も街に滞在出来ず。
良く確認もしないまま、住み込みで働いていた7人の従業員の小人族の兄弟に気づかずに、老夫婦が住んでいた実家でもある店舗兼自宅を売り払ってしまい。そのまま慌てた様子で帰って行き。
7人はどうする事も出来ないまま、新天地を探すために旅をしていたらしく。
そこで人があまり来なさそうな、静かで安全な住みかに良さそうな竹林を発見。
そのうちの一番太く、立派な竹を兄弟力を合わせ住居に変えたらしい。
そうして何故竹林に7人が居るのかや、住んでいる事、いま食べているご飯が久しぶりの食事になる事
生活が落ち着いたら、また靴屋の仕事をやりたいらしい事などが7人の話で解り。
愛満は小人族の7人を脅かさないように気を付けながら、先ほど蒼一郎が食べたいと呟いていた『鶏団子汁』を使って、静かに声をかける事にした。
◇◇◇◇◇
すると初めは驚いていたもののの、見事『鶏団子汁』で釣られた7人の小人達は、改めてテーブルの上へと招待され。
愛満が魔法で用意した7人用のミニチュアの炬燵や敷物、座布団の上に座ると愛満達から分けて貰ったご飯を美味しそうに食べ始める。
「いやいや、ありがとコロ。感謝するコロ。
最近、山菜や木の実ばかりでコロ。街にいる頃のような食事に弟達も俺も飢えてたんだコロ。」
お互いの自己紹介を終え、だいぶ打ち解けた様子の小人族の長男蒼一郎が愛満達に感謝の言葉をのべ。新たに貰ったご飯をモリモリと食べ進め。
「いやーしかしコロ、俺達が家にしてる竹が小さい頃は、こんなに旨いなんて知らなかったコロ!」
「本当だよなコロ!焼くだけで、こんなにシャキシャキのホクホクの旨さなんて知らなかったコロ!」
「しかし、成長するとあんなに硬く丈夫な竹になるコロに、幼少期はこんなに柔らかく美味しい食べ物だなんて、不思議な植物コロね!」
「美味しいコロねぇ。この醤油というものと合わさって、香ばしさもあるコロ。」
「僕は、この鶏団子汁が一番美味しいコロ♪
いろいろな野菜や柔らかい鶏団子が入っていて、美味しさが凝縮されてるコロよ。」
「恋六は、筍の頭の方の柔らかいところが好き!」
「恋六は柔らかい頭の方が好きコロか、俺は下の方の歯ごたえがあるシャキシャキした所が好きコロよ。」
7人が幸せそうに食べ、おしゃべりしながら、小さな小人族の体の何処に消えたか解らないほどの沢山のご飯を食べ終える。
そうして、お腹一杯で満足しているところ申し訳ないのであるが、小人族7人兄弟のこれからの事を話し合う事にした。
その話し合いの結果
7人の小人族兄弟は、朝倉村の山道通りで靴屋を営む事が決まり。
靴作りを小人族の7兄弟が行い、お客さんなどとの接客は、小人族7兄弟の信頼できる友人を村へと呼び寄せ。
一緒に靴屋を営なんでいきたいとのお願いをされたので、愛満は7人の考えを尊重する事にする。
そして他にも、今住んでいる竹の家を7人とも気に入ったので、出来る事ならば、今住んでいるような家に住みたいとの事。
そのくらいの事ならば何て事ないので、その場で了承して話がまとまった愛満達は、さっそくタケノコ掘りやお昼ご飯の片付けを終え。
7人の小人族兄弟や新たに来る人のためにと、店舗兼自宅を愛満の魔法を使い建ててあげる。
◇◇◇◇◇
こうして、朝倉村初の青々した巨大な竹に見える。3階建ての竹の形をした7人の小人族の靴屋やと小人族の兄弟が、朝倉村の一員へと仲間入りしたのであった。