おからサラダとお母さんとガーディアンの愛之助
「ふぅ~♪出来た!………よしよし、ちょっと味見味見と………うん!美味しい。」
その日愛満は、いつものように万次郎茶屋の台所で茶屋で出す商品の1つ。気まぐれ軽食の通称『まぐれ』のおかずを作っていた。
すると日課の勉強を終えた愛之助達がトコトコやって来て
「あっ!ポテトサラダでござるか?愛満、拙者も味見したいでござるよ!味見味見♪う~ん、なんて素晴らしい言葉でござろう~♪」
「ポテトサラダ?タリサも味見したい!味見♪味見♪」
「ぽちぇとちゃらだ!マヤラも!あちゅみ♪あちゅみ♪」
出来立てのポテトサラダの味見をねだり。苦笑いを浮かべる愛満から小皿にポテトサラダを取り分けてもらうと、早速3人は味見をし始め。
「………モグモグ、モグモグ………うん、美味しい!けど、これポテトサラダ?
ポテトサラダに似てるけど、何か全然違うね。…………味は美味しいだよ……けど、………愛満、失敗しちゃった?
……あっ、解った!新種のじゃが芋使ったんでしょう?だからいつもと食感や味が違うんだよね?」
「…………おいちいね。ちっとりしてる。じぇも、こりぇじゃがいも?|にゃんかじゃがいもじゃないようにゃ?………う~ん、にゃんだろう?………わかんにゃいや。」
「………お、美味しいでござるね!
いつも食べてるまったり濃厚なポテトサラダと違って、さっぱりした味わいに、しっとりした舌触りでござるよ。
それにサラダの具材の細い千切り人参、キャベツ、三色蒲鉾、あらみじんのブロッコリーとじゃが芋らしきモノがマヨネーズと合わさり。何だかホッとする味でごさるよ。」
少々しどろもどろになりながら味見したサラダの感想を愛之助達が教えてくれる中。
実は愛之助達3人は、一見大好きなポテトサラダに見えるサラダを嬉しそうにニコニコ微笑みながら仲良く味見したのだが。愛満から味見用に受け取ったポテトサラダらしきサラダを食べた瞬間。
いつものポテトサラダとは味も食感も違い。『コレはポテトサラダではない』と舌からの教えに脳が困惑し、固まってしまい。
しばらくの間 無言で味見皿を見詰め、何やら3人で考え込み。ポテトサラダらしきモノが入ったボールと愛満を交互にチラチラ見つめ続け。
このポテトサラダは失敗作ではないか、愛満に何かあったのか等、愛之助達が心配した表情を浮かべたのだが
愛満は、いつものように優しい微笑みを浮かべ続けたまま。完成したばかりのポテトサラダをサラダ菜と共に小鉢に盛り付け始め。
サラダの見た目も綺麗で、ただポテトサラダとは違う美味しさや食感になるサラダを見詰め続け。
何とか頭の中で、あのサラダは失敗作ではなく。自分達が食べた事のない新種のじゃが芋かマヨネーズかを使って作った新作のポテトサラダなんだろうと、短い時間で考えをまとめ。
愛之助、タリサ、マヤラ達3人はサラダを作った愛満を気遣いつつ。あのような感想の言葉をのべたのであった。
そんな3人の一連の反応を見ていた愛満は、笑ってはいけないと思いながらも、ついつい笑みがこぼれ。
必死でこぼれてしまう笑みを堪えながら
「…クスクス…………ゴホン!
えっとね。この愛之助達が『ポテトサラダ』だと勘違いしているサラダはね。じゃが芋じゃなくて『おから』を使って作った『おからサラダ』になるんだよ。
ポテトサラダを作る時に『じゃが芋』を使う所をかわりに『おから』を使ってね。
電子レンジでチンした『おから』を使い。
あら熱をとった『おから』に、スライサーで切った生の人参、キャベツ、茹でて粗みじん切りにしたブロッコリー、彩りに千切りにした三色蒲鉾を加え。
マヨネーズと塩で味付けして、混ぜ合わせて作ったのが『おからサラダ』になるんだよ。」
愛之助達が『ポテトサラダ』と勘違いしたサラダが、じゃが芋のかわりに『おから』を使って作った『おからサラダ』だと。簡単な『おからサラダ』の作り方を交えながら説明し。さらに続けて
「それにね、おからは安いし。ポテトサラダよりアッサリさっぱりしてて、軽い口当たりで僕達の母さんが大好きでね。
良く婆ちゃんが母さんや僕達家族の為にと作ってくれていたんだ。
だからこの前、黛藍と光紅さんが2人のお母さんの話をしているのを聞いていて、僕も久しぶりに母さんの事を思い出してね。
何か母さんの好物の『おからサラダ』を食べたくなったと言うか、作りたくなって作ってみたんだ。」
少し照れ笑いをしつつ。どこか懐かしそうに微笑む愛満が『おからサラダ』や自身の母親の事を話す。
するとサラダの正体が『おから』だと解ったタリサとマヤラの2人は
「へぇー、おからだったんだ!全然気づかなかった。
けど『おから』と言われれば『おから』の食感だよね。それに愛満と愛之助のお母さんの好きな食べ物なんだね。」
「おかりゃ?おかりゃてにゃに?」
「マヤラ、おから解らないの?忘れちゃったのかなぁ~?
ほら、おからはね。この前愛満が作ってくれて食べた『卯の花』に入ってた食材と同じヤツだよ。
確か、お味噌汁で良く食べる豆腐を作る時に出る食材になるんだよ。この前愛満や愛之助が簡単にだけど教えてくれたじゃん。」
「あっ!そうじゃったね。マヤラ、|コロッちょわしゅれてちゃ《コロッと忘れてた》。にいたん、しゅごいね!
あっ!けじょ、よしみちゅとあいのちゅけのかあたんってじょんなひと?
マヤラあちゃことないからおちえて、おちえて!」
『おから』にピンとこなかったマヤラに兄のタリサが『おから』の事を教えてあげ。遅ればせながらマヤラが『おから』の事を思い出した様子のなか。
会った事無い愛満達の母親に興味を持った様子のマヤラが、どんな人なのかと興味津々な様子で愛満達に質問する。
そんなマヤラの様子に愛満の顔に苦笑いや笑みがこぼれるなか
「そうだねぇ~。僕の母さんは、太陽みたいで小さな巨人と周りから言われるような人になるかな。」
「太陽?小さな巨人?」
「そう。太陽みたいにその場にいるだけで周りや人をパッと明るくして幸せな気持ちにしてくれるような人になるんだ。
それから曲がった事が大嫌いで、裏表がなく、人の悪口も言わない人で
僕と同じように小さく小柄な体格なのに、自分より大きな体格な人にも間違ってると思ったら果敢に挑んでいく。度胸のすわった喜怒哀楽がハッキリした、少々血の気が多い。まさに小さな巨人なんだ。
後はそうだねぇ~。………何かお母さんの事で伝えた方が良い事があるかと言えば、う~ん。………あっ!煙草は喉か弱くてあまり好きじゃないから吸わない事と村一番歌が上手くて。
そこまでお酒は好きではないんだけど、妙にお酒に強い事かなぁ?」
「へぇー!愛満と愛之助のお母さん、スゴい人なんだねぇ。小さいのに自分より大きな人に挑んでいくなんてスゴいや!」
愛満から母親の話を聞き。タリサが何やら大きく頷きながらスゴい、スゴいと話して愛之助に声をかける。
しかし愛満の母親の話になってから口ごもり黙っていた愛之助は、何やら力なく小さな声で
「……いゃ………拙者…本当は……愛満の弟では……な」
「そうでしょう!愛之助の髪質はね。お母さんそっくりでサラサラで綺麗なんだよ。
他にも愛之助の切れ長のすっーとした瞳は、母さんの瞳そっくりだし。綺麗な鼻筋は父さん似になるんだ。
耳の形にしても爺ちゃんの耳の形に似てるし。笑う時に頬っぺにできるエクボは、婆ちゃん譲りでそっくりなんだよ。
あっ、そうだ。その笑う時に頬っぺにできるエクボは姉ちゃんも婆ちゃんから譲り受けたモノになるから、そう言ったら姉ちゃん似にもなるのかなぁ?
だからね。僕の方がちょびっとだけ!本当にちょびっとだけ身長が低いけど、愛之助は僕達家族の大切な大切な可愛い末っ子の弟なんだよ。」
愛之助の言葉を遮るように話始めた愛満は、少々身長詐欺をしながら優しく愛之助の頭を撫で。愛之助の中の家族に似た箇所を一つ一つ話ながら、最後は大切な大切な弟だと話して愛之助をギュッーと抱き締めた。
すると話を聞いていたタリサも愛満の真似をして、隣に座る弟のマヤラをギュッーと抱き締め。
「僕も父さんも母さんも兄ちゃんも姉ちゃんもその家族もみ~~んな大好き!!
それに愛満と同じで、大切な大切な弟のマヤラの事は世界で一番大切で可愛い弟になるだ!!ねぇ~マヤラ♪」
「あい!マヤラもにいたんのことだ~~いちゅきー!!
あいのちゅけは?あいのちゅけは、にいたんの|よしみちゅのことちゅき《愛満の事好き》?」
「………せ、拙者も!拙者も父上も母上もお祖父様、お婆様、兄上、姉上達の事が大好きでござるし。拙者の家族みん~な好きでござるよ!
それに愛満は、大好きで自慢の……本当に自慢の兄者なるでござるよ!!」
瞳を真っ赤にして満面の笑みを浮かべた愛之助は、愛満に抱きつき返しながら自分も兄者の愛満の事が大好きだと話し。
4人の顔に笑顔が溢れ。その溢れた笑顔から人には見えないキラキラ光輝く何かが空に舞い上がり。朝倉村を優しく包み込んでいく。
◇◇◇◇◇
こうして、今日も仲の良い愛満兄弟とタリサ兄弟の何気無い1日が過ぎていくのであった。