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和菓子『苺の錦玉羮』と、黛藍の姉君とパンダ雑貨のお店


その日も苺大好きの苺忍者隊の隊員達は、苺フェスタ開催中の各店舗をパトロールして、ちょこちょこと味見と言う名の試食をさせてもらいながら万次郎茶屋へと帰って来る。


チリーン、チリーン♪


「「「「ただいま(でござるよ。)」」」」


「皆お帰り。他のお店はどうだった?賑わってた?」


苺フェスタ3日目の客足を気にしている愛満が愛之助達に質問する。


「大丈夫でござるよ、愛満。どの店もお客さんは入っていたでござるし。多かった方だと思うでござるよ。

それに混雑しない程度に各店舗賑わっていたでござるよ!」


「そうそう!それにね。じいじ達のお店、若い女のお客さん達がいっぱい居たんだよ。

みんなニコニコして、幸せそうにパンケーキ食べてた♪」


「リメル兄ちゃんのプリン店もね!冒険者のお兄ちゃんやお姉ちゃん達が持ち帰り用のプリンを沢山買っていってくれてたよ!

それからリメル兄ちゃんがね。この前、愛満が作ってくれた(時間)が緩やかになるカップって言うの?

それのおかげで賞味期限の短いプリンが、まさかの1ヶ月も日持ちしてくれるようになったからね。

お土産として買って帰る冒険者のお客さん達が沢山増えたって喜んでたし。愛満に『ありがとう』って伝えてって言ってよ!」


との、学校や仕事の為。この場に居ないケンタウルス族のタクや包子屋の黛藍を除いた苺忍者隊の4人の話を聞き。

『苺フェスタ』が人気を得ている事に愛満はホッとひと安心する。



◇◇◇◇◇



そうしてその後、味見と言う名の試食を各店で繰り返してきたはずなのだが、小腹が空いたと話す愛之助達へと、愛満お手製の『苺ヨーグルトジュース』や『苺クッキー』を振る舞い。

万次郎茶屋でも苺フェスを開催しているものの、…………悲しいかな。今の時間帯。何故か人っ子一人お客さんの居ない万次郎茶屋内で、のんびりと(くつろ)いでいた所。

茶屋の(出入り口)に備え付けられた来客を知らせるベルが勢い良く鳴り響き。お客さんの訪れを知らせてくれる。


チリーン、チリーン♪


「「いらっしゃいませ。(でござるよ。)」」


愛満と愛之助の2人が、いつものように万次郎茶屋へ訪れてくれたお客さんを出迎える為。来店の挨拶をしながら出入り口に目を向けると、………………。


そこには!出入り口近くに仲良く並んで立っている。ササ族の黛藍(タイラン)に良く似た。大きさの違う6人のパンダが綺麗な服を着て2本足で立っており。

そのうち一人は頬にピンク色の頬紅だったり。同じくピンク色の口紅だったりと、可愛らしくお化粧しており。

そのお化粧をした1人のパンダちゃんが何かを探すように、茶屋内をキョロキョロと見渡していた。


そんな黛藍に良く似たササ族の姿に、これはきっと、たぶん黛藍と同じ種族のササ族の人だろうと考えた(導きだした)愛満は、6人の中で一番大きい体格の2メートルを越えたササ族の人物に声をかけ。


「いらっしゃいませ。私、万次郎茶屋の主人 愛満と申しますが、誰かお探しですか?」


「あっ!失礼したでアルよ。私、ササ族の曙紅(シューホン)アル。

隣におりますのが我が妻、光紅(ワンホン)アルね。

そして妻の横に居るのが愛すべき4人の息子。長男の桃紅(クオホン)、次男の花紅(ホアホン)、三男の梅紅(メイホン)、四男の竹紅(チューホン)になるアルよ。

それで矢継ぎ早に申し訳ないのだが、こちらに妻の弟の黛藍(タイラン)がお世話になっていると聞いたアルが、何処に居るアルか?」


やはり黛藍の関係者だったと言うか、黛藍のお姉さん家族だったのかと愛満は思いながら、その場を愛之助に任せつつ。

茶屋店内を増築して造った黛藍の城。持ち帰り専用の『包子屋』へと黛藍を呼びに行き。

その時タリサにも万次郎茶屋、目の前の美樹がオーナー兼店長を勤める美容室へと美樹を呼んで来てと欲しいとも頼み。


説明する時間ももったいないと愛満に連れられるまま。一旦、『包子』屋を準備中にして茶屋内へと移動して来た黛藍は


「ワ、光紅姉さん!?それに曙紅兄さん達もアルか!?ど、どうしたアル!?何かあったアルか???

それにいつ朝倉村へやって来たアルか?仕事は大丈夫アルのか?

あっ、それとも朝倉村に遊びに来たアルのか?」


目を白黒させながら、頭にはハテナ?マークを飛ばしまくりで、何かあったのかと姉の光紅達へと質問するのだが、そんな黛藍の姿を愛情溢れる笑みを浮かべ。

微笑ましそうに見ていた黛藍の姉・光紅は、我慢できないとばかりに勢い良く黛藍へと抱き付き。


「黛藍、会いたかったアルよ!!!

黛藍が王都から居なくなってからアルね。私を始め。夫の曙紅も子供達もみ~んな寂しくて、寂しくて、………………子供達も日に日に元気がなくなっていったアルよ。

それに2週間に1度の美樹君が送ってくれる手紙でアルね。

黛藍が毎日元気に楽しそうに朝倉村で暮らしているのを読んで安心してたアルが、やっぱり黛藍の顔を見なくちゃ毎日の活力がでなかったアルよ。」


いかに黛藍に会えなかった日々が身を引き裂かれるような思いで辛かったか等を切々と話し。

何やら今度は、始めて訪れた朝倉村の事を誉め始め。


「それにしても黛藍。この朝倉村って何だか村全体がの~んびりとしていてアルね。

ゆったりとした雰囲気でいて、安心感に包まれる不思議な村でアルね♪

村の人達も皆、実におっとりとした優しそうな人達ばかりアルし。常日頃ギスギスした雰囲気の貴族街の王都とは大違いアルよ!」


今だ黛藍に抱き付いたままの格好で楽しそうに話し。おもむろに黛藍の耳に口を近づけ。何やらコソコソと


「それにここだけの話しアルね。この村の領主でいて、村長の愛満とさっき少し話したアルが、穏やかな雰囲気の優しそうな人アルし。

私の勘では、愛満なる人物は、何やら未知の強大な(パワー)を持ってるもののアルね。それを悪い事に使う事など考えず。

まさに人が良すぎる程の、言葉は悪いでアルが、馬鹿正直でいて心根の優しい、人畜無害な良い人アルよ!

うんうん!そんな人物の元で黛藍が暮らしていると思うと、実に安心したアルよ。」


可愛い可愛い、大切な弟の黛藍が住んでいる。朝倉村を納める領主・愛満の自分なりの評価を黛藍にだけ聞こえるように述べ。


【ちなみに黛藍に負けず劣らずの可愛らしいパンダ姿の光紅と言うか光紅家族は、その可愛らしい姿で愛満達をすでにメロメロにさせており。

パンダ好きの人が多い。日本人の愛満始め。短時間の中、すでに呼び捨てに出来る関係へと仲を深めていた。】


「それでアルね、黛藍。実は村に来る前に夫の曙紅や子供達、家族6人で話し合ったアルが、私達家族もこの村に住む事に決めて村にやって来たアルよ。」


「…………………ふぇ、!?」


黛藍も寝耳に水の。家族全員での姉家族の朝倉村への突然の移住なる爆弾発言をして


「それにアル!さっき愛之助達から聞いたアルが、曙紅の友人のタイタンさん始め。

お父様のご友人になるリーフおじ様達が朝倉村に素晴らしい学園を開いたそうじゃないアルか!

しかも村を納める領主・愛満が主になり動いた事案から、やたら滅多な事が起きなければ学園が頓挫(とんざ)する(潰れる)事もないアルし!

うんうん!これはもう天の御導きアルよ!

出発前、お父様達が心配していた子供達の学業の問題も無事解決したアルし。私達絶対に朝倉村に住むアル!

(黛藍に聞こえないように小声でコソっと)そして大好きな黛藍を思い向くままに独り占めして愛でるアルよ♪」


何やらここ最近、光紅の心を悩ませていた難題か解決したと喜ぶ光紅は、控え目に大好きな叔父・黛藍の背中に頬擦りしていた息子達を含め。改めて嬉しそうに弟、黛藍へと抱き付く。


そんな姉家族を始め。実家の両親、祖父母、兄妹家族に抱き付かれる事が王都に居た時には日常茶飯事だった黛藍は、前後から抱き付かれる事など気にした様子も見せず。


「…………………………………よ、美樹からの手紙アルか!?……な、何それアルか!聞いてないアルよ!

そ、それに家族皆で朝倉村に引っ越して来るアル!?………む、村に住むアルって!?…………いったい全体どうなってるアルか???」


黛藍が知らなかった美樹から王都に住む家族(黛藍の実家・唐家)への、黛藍の日常を伝える(報告する)手紙を始め。

あまりにも急な話の数々にビックリした様子で口をワナワナさせながら、必死に姉の話した内容を理解しょうと頑張っていた所。


タリサに呼ばれた美樹が慌てた様子で万次郎茶屋へと入って来て。

慌てふためいている美樹の少々、乱暴な扉の開け方に、いつもより激しくベルが鳴り驚き。


日本の動物園でもなかなか見る事の出来ないであろう。

はっきり言って、150㎝代の小柄なパンダ同士のじゃれあいにしか見えていなかった。可愛らしい黛藍と光紅の2人のパンダ姿に加え。

今は光紅の子供達のチビッ子パンダも加わったササ族の姿に、幸せそうにほのぼのとした雰囲気で見ていた愛満達はハッと我にかえり。


少々決まり悪そうに苦笑いを浮かべた愛満が、曙紅達家族に振る舞うお茶やお茶菓子を準備する為。小走りで台所へと歩いて行き。


何やらドヤ顔で、光紅達から朝倉村に引っ越して来たとの話を聞いた美樹が驚き。言葉にならない声を上げ。

目を白黒させながら、今だ軽くパニック中の黛藍と何度も顔を見合わせ驚いている中。


大人達の話し合いが終わったと思ったタリサやマヤラ、ルルナ達チビッ子組が可愛いらしい見た目の子パンダ、光紅の息子達を誘い。

元王都住まいになる貴族の桃紅達でも見た事も聞いた事もないような。見慣れぬ物が多々有る万次郎茶屋内を案内と言う名のプチ冒険を始め。

いつしか楽しそうに店内を駆け回って遊び始める。


そんな『キャキャ、キャキャ』との子供達の楽しそうな声が茶屋内へと響き渡る中。

お茶やお茶菓子の準備を終えた愛満が、人数分のお茶やお茶菓子が乗ったワゴンを押しながら戻って来て。

今だ立ち話を続けている光紅達をテーブル席へと誘い。


「すいません、お待たせしました。

皆さん、たくさんお話して喉が乾いていると思うので、お茶とお茶菓子お持ちしましたので、良かったら召し上がって下さい。」


それぞれの前にお茶やお茶菓子を置き、振る舞う。


すると初めて見た可愛いらしい見た目の和菓子が気になった様子のタリサが、コッソリと愛満へ質問をして


「うわ~美味しそう!苺だ、苺!

ねぇ、愛満。この苺のお菓子と言うか、苺を使った和菓子初めて見たんだけど、何て言う和菓子なの?

それに僕の大好きな苺が丸々一個入ってて、回りのゼリー?寒天みたいなのがキラキラ光輝いて綺麗だね♪」


「ありがとう、タリサ。あのね、この和菓子は『苺の錦玉羮(きんぎょくかん)』と言ってね。

寒天や水飴なんかを使っていて、苺をまるごと一粒閉じこめてあるんだ。

それに今回、少し工夫をしていてね。

見た目でも楽しめるように可愛らしく。苺が閉じ込められた下の層と言うか、下の部分の生地()島縞(しましま)模様になってて。

白餡と、白餡を苺風味に味付けした餡を使って、白とピンクの水羊羹になっているんだ。」


愛満がタリサに苺を使った錦玉(きんぎょく)の説明をしていると、早速『苺の錦玉羮』を食べた他の者達が次々に


「まぁ、美味しいアルね、コレ!」


「美味しいアル!お母さん、コレすごく美味しいアルよ!」


「……おっー。なにアルかこれ?……」


「美味しいアル!キラキラして綺麗アルし!

しかもピンクと白の可愛らしい見た目と共に、赤いのが甘くて美味しかったアルよ♪」


『錦玉羮』と共に『苺』の美味しさに曙紅家族や、苺忍者隊が感動していると。

自信満々に黛藍が、姉の光紅家族へ村の特産になる『苺』や、開催中の『苺フェスタ』の事などを嬉しそうに教えて上げ。


更には自身が所属する『苺忍者隊』のバッチ等を(少々)自慢しながら説明等をして、バッチや忍者服を触らせて上げながら、見せて上げていると

甥っ子達から『スゲーアルね!』や、『黛藍おじちゃま、僕も苺忍者隊に入りたいアルよ!』

『僕も、僕も!苺忍者隊に入りたいアル!』、『タイタイ、しょれ、チューにちょうらい。』等と羨ましがられ。

どうしたら『苺忍者隊』に入会出来るか等を教えて上げる。


そうしていると光紅が、黛藍が現在身に付けている仕事用のエプロンや帽子に興味を示し。


「あら黛藍、それ可愛いアルね!何処で買ったアルか?」


「あっ、これアルか?コレはアルね。何処にも売ってない非売品になるアルよ。可愛いアルよね~♪

何でも僕達ササ族にとても似てアルんだけども、全然別の生き物らしくアルね。

愛之助曰く、『笹』なる食べ物が好きな『パンダ』と言う生き物になるらしいアルよ。

前に愛之助が、この『パンダ』なる生き物が画かれたTシャツを着ていてアルね。あまりの可愛いさに黛藍が気に入り。愛之助にお願いして色々作ってもらったアルよ!

あっ、他にもパンダグッズ色々有るけど、姉さん見るアルか?」


「えっ!本当アルか?見る見る!持って来てアル!!」


「解った。ちょっと待つアルね。大急ぎで取ってくるアルよ!」


と黛藍が話して、集めていると言うか、愛満や愛之助達から日々貢いでもらっている。沢山のパンダグッズを部屋から持って来て、光紅に見せた所。

かなり興奮した様子の光紅が突然立ち上がり。隣に座る夫の曙紅を見ながら


「曙紅、決めたアル!!

私、曙紅が朝倉学園で働くとして、暇な時間をどうしょうか考えていたアルが、この村でこの『パンダ』と言う生き物の雑貨を作って売り出すアルよ!

うんうん!私の勘が告げているアルよ!この『パンダ』と言う生き物をモチーフにした雑貨、絶対人気が出るアルよ!

それに私の勘、外れたためしがないアルね!」


自信満々に宣言して、そんな愛する妻の光紅を優しい瞳で見ていた曙紅は穏やかな声で


「そうアルか、なら僕は賛成アルよ。

それに光紅がやりたい事をノビノビしてる方が光紅の為にも家族の為にも良いと思うアルし。

前々から言ってたアルが、子育てや家事は夫婦2人で協力してするものアルから、どちらかが、どちらかだけに重荷を背負わすのは違うと思うアルから、光紅、応援するアルよ。」


妻の考えを受け入れ、応援し。


「曙紅!!ありがとアル!やっぱり曙紅は光紅にはもったいないぐらいの素晴らしい旦那様アルよ!」


「いいや。光紅こそ僕にはもったいないくらいの素晴らしい奥さんアルよ。」


「いいえ!曙紅こそアル!」


いきなり始まった。永遠に続きそうなラブラブオーラの光紅と曙紅のやりとりを驚きながら呆然と見ていた愛満達に、慣れた様子の黛藍や美樹達が


「愛満、ごめんアルよ。光紅姉さんと曙紅兄さん、ああなったら (しばら)くの間、2人の世界からでてこないアルよ。

だから2人の事はほっといて、決めなくちゃいけない事を僕達で話し合おうアルよ。」


「そうそう!俺も始めて見た時は、今の愛満達みたい何事かと驚いたけど、姉様達がああなったら軽く2~3時間は終わらないから、ほっとくのが一番だぜ。」


黛藍や美樹の言葉に、ほっといて良いのだろうかと思いながらも、少しホッとした様子で愛満達は頷き。

お互いをベタ誉めの甘い言葉と共に、雰囲気を撒き散らしている光紅と曙紅の2人をほっとき。


黛藍や美樹や黛藍の4人の甥っ子達を交え。どの辺りに店舗兼自宅を建てるか、子供部屋等はどんな部屋が良いか等を話し合い。

それでも余った時間で、今度は愛之助や苺忍者隊も交えてパンダ雑貨のデザイン等を考えたりしながら、朝倉村に新しいササ族の村人が仲間入りするのであった。




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