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『リコッタチーズパンケーキの苺スペシャル』と苺忍者隊と純喫茶



その日、3月なのに風がビュ~ビュ~吹いて肌寒い気温の中。

温ったか温々(ぬくぬく)の適温温度に設定されている万次郎茶屋内では、座敷の炬燵の上でホットプレートを使い。

愛満が『ふあふあリコッタチーズのパンケーキ』を可愛い弟愛之助が率いる苺忍者隊の隊員達の為、せっせと焼いてあげていた。


「はい。リコッタチーズのパンケーキ焼けたよ。

お好みで用意した苺の果肉ゴロゴロの苺ソースや生の苺、苺味の生クリーム、粉砂糖、苺のふあふあバター等をトッピングして食べてね。」


有り余っている苺を消費する為。ほとんど苺尽くしのトッピングになるのだが、苺好きの苺忍者隊の愛之助達は小躍りするほど喜び。

コレでもかとパンケーキの上に苺をふんだんに使い、山盛りに盛り付けするとモグモグ食べ始め。


「美味しい~♪愛満、すん~ごい美味しいよ!

パンケーキがすごく軽くてフアフアな食感をだし。苺たっぷりのトッピングも全部大好き!」


おいちいね(美味しね)ちっとり(しっとり)ふあふあちて(して)、おくちのにゃかでちゅぐなくなりゅ(消えちゃうの)!」


「本当に美味しいでござる!

いつも食べているホットケーキも美味しいでござるが、このパンケーキとやらは食感に口どけ、味も全て、いつも食べてるホットケーキと何やら一味違う気がするでござるよ。

それに加え、拙者が大好きな苺がたっぷりで食べられ、拙者幸せでござる♪」


「うんうん、このパンケーキふあふあした食感アルね。それにパンケーキの生地に入ってるチーズのコクや僅かな塩気が感じられて味のメリハリが楽しめるアルよ♪

……モグモグ…………モグモグ…………ハァ~~♪口の中で溶けて美味しいアルよ!」


口の回りにトッピング用の苺の生クリームや粉砂糖をつけたタリサやマヤラ、愛之助、黛藍達、万次郎茶屋メンバーが初めて食べるパンケーキの美味しさを口々にパンケーキを焼いている愛満に伝え、話していると。


始めナイフやフォークの使い方を愛之助達に教えてもらい。今はナイフやフォークを上手に使って、満面の笑みと共にパンケーキを食べていた。苺忍者隊、隊員のケンタウロス族のタクや妖精族のルルナ達が


「……お、美味しいね。パンケーキも皆が言うように美味しかったんだけどね。

僕、苺大好きだから、生の苺は瑞々し(みずみずし)くて、果汁たっぷりでジューシーな甘さがあって、スゴく美味しかったんだ。

それに苺のソースも果肉がゴロゴロ入ってて、生の苺とはまた違う。柔らかな舌触りと苺の粒々の種がアクセントになってて、違う食感の苺を楽しめて美味しかったよ。」


「本当に美味しい~の♪

ねぇねぇ、愛満。苺ってスゴいね!だってね、そのまま食べても美味しいのに、調理してもこんなに美味しいだもん!

このパンケーキもコクがあってね、口の中で直ぐに溶けちゃうの!ルルナこれ好き♪」


初めて朝倉村にやって来た時より力強い声で、自分の意見を話せるようになったタクや。

小さな体全部使って、美味しさを表してくれるルルナ達の話を聞き。

そんな苺忍者隊の皆の姿を微笑ましそうに見ていた愛満は


「ウヮ~~、嬉しいな♪皆がそんなに喜んでくれて良かった。

あのね、実はこっち(異世界)に来てからパンケーキを焼く時は、愛之助達も言ってたんだけど…………僕、洋菓子関係のお菓子を作るのが苦手になるんだ。

だからさぁ……いつも失敗しないように魔法(ホットケーキ)の粉を使って、皆にホットケーキを焼いてたんだ。」


料理や和菓子作りが得意な反面。

山奥に有る小さな村で育った愛満は、ケーキやタルト、パイ菓子等の街のケーキ(洋菓子)屋さんのお菓子(洋菓子)が気軽に口に出来なかった為。

洋菓子全般のお菓子作りに少々苦手意識が有る事を照れくさそうに話。

ホットケーキを作る(焼く)さいなどは、簡単に美味しく出来るホットケーキミックス使っていたと告白。


(ちなみに和菓子や生菓子等の和菓子作りが得意な訳は、和菓子は愛満の爺ちゃん、婆ちゃんの好物になり。

父や母の仕事関係の人達が(愛満の実家)を訪れるさい。接客をするのは主に祖母になり。

締め切りを大いに過ぎてる時など、祖母が優しく父や母に声をかけ。それとなく焚き付けてくれ。素晴らしい品物が仕上がり。

そんな事から(愛満の実家)に来る仕事関係の人達は、祖母に敬意を表し。

祖母の好きな和菓子や生菓子をわざわざ選び。手土産として山奥に有る、小さな辺鄙な村へと持参して来てくれ。

そのため愛満は、幼い頃から洋菓子よりも和菓子や生菓子を食べる機会が多く。食べ慣れていて、大好きな婆ちゃんや爺ちゃんの為も有り。和菓子作りが得意になっていた。)


「だからさぁ、ちょっと僕も頑張って。

たまには気分を変えてね。リコッタチーズを使った『パンケーキ』を作ってみたんだ。

それに今日作った『リコッタチーズのパンケーキ』はね。

リコッタチーズを生地に加えて作ってるから、ちょっとしょっぱいって言うか、塩気が感じられ。苺たっぷりの甘めのトッピングでも、最後まで美味しく食べれるかなぁと思ったんだ。

後、愛之助の言う通り。いつも食べているホットケーキより。このパンケーキに使ってる薄力粉の量が凄く少なくてね。だから味も食感も全然違うと思うんだ。

あっ、まだまだ沢山パンケーキ生地も有るから、みんな遠慮しないでいっぱい食べてね。」


まだまだボールに余ったパンケーキ生地を使い。ホットプレートで愛之助達絶賛の『パンケーキ』を焼いていた所。

万次郎茶屋の扉に取り付けたベルが鳴り。茶屋へのお客さんの訪れを知らせる。



◇◇◇◇◇



チリーン、チリーン♪



「いらっしゃいませ~♪」


「いらっしゃいませでござるよ!」


愛満と愛之助の2人が茶屋入口に駆け寄り、万次郎茶屋へのお客さんを出迎える。

すると何やらオドオドした様子のケンタウロス族の男女が茶屋へと入って来て


「あ、あの、こんにちわ。今日こちらでお世話になっているタクの父親のヤマトになります。隣に居るのが妻のナコです。」


苺忍者隊隊員の1人、タクの父親だと名乗り。横に立つケンタウロス族の女性を自身の妻だと紹介してくれ。


「こんにちわ。タクの母のナコになります。

それに、その節は私どもケンタウロス族一同を無条件で助けて頂き、本当に感謝の言葉しかありません。ありがとうございます。」


妻のナコも愛満達に頭を下げながら、ケンタウロス族の者達を助けてくれた事を改めてお礼の言葉を述べる。


すると茶屋にやって来た両親に気付いたタクや。

愛満達は気付いてなかったのだが、タクの父親のヤマトの背中に少々偉そうにチョコンと座っている自身の祖父に気付いたルルナが


「あっ!お父さんにお母さんだ!どうしたの?お父さん達もパンケーキ食べに来たの?」


「じいじだ!じいじもパンケーキ食べに来たの?」


両親や祖父の来店に気付き。『パンケーキ』を食べる手を止め、嬉しそうに近づいて来る。

そんな自身の息子のタクや、その友人のルルナの姿を見て、ヤマトは優しく話し掛け。


「ごめんね、タクにルルナ君。

おじさん達、ちょっと愛満さんに大事な話があるから、もうしばらく向こうでタリサ君達といてくれるかなぁ?」


お願いすると聞き分けの良いタクとルルナの2人は、『解った!』と元気良く返事して。

また仲良く元居た席へと戻り。お皿に残った『パンケーキ』を食べ始め。


タクやルルナの2人を見送った愛満達は、立ち話も何だからと万次郎茶屋内にケンタウロス族の為にセッティングされた。

茶屋内一角の床に厚手のカーペットが敷かれ。クッションやテーブル等がバランス良く設置された席へとヤマト達3人を案内して、早速ヤマト達との大人の話し合いが始まり。


「…どっこいしょと……こんにちわなのじゃ。ワシは妖精族のルルナの祖父でササナじゃ。

実はワシ達が今日訪ねて来たのは、愛満さんにお願いがあって訪ねさせてもらったのじゃが、少々お時間をいただいてもよろしいじゃろうか?」


タクの父親の方にチョコンと座っていた。動作が少々年寄りくさい妖精族でピクシー族のルルナの祖父ササナが話始め。


「こ、こんにちわ。はい、大丈夫です!」


何やら少々重たい空気に包まれ。愛満が何事かと不安そうな表情を浮かべる中。

ササナが矢継ぎ早に今日万次郎茶屋へとやって来た訳を話始め(相談し始め)


「実はワシもヤマトさんも可愛い孫や息子達の願いを聞いてのう。庭の一角に苺畑を作ったのは良いじゃが………………。

こぅ~~~、なんじゃ、毎日毎日。…………………そう!毎日、毎日苺が畑に実り過ぎておるのじゃ!

しかもまたコレが消費する量と収穫する量の比率が全く合わず、苺が家中に溢れておるのじゃよ!」


昔、何処かで聞いたような悩みを打ち明けられ。

アレ?コレは何やら前にもこんな相談受けた事あるようなぁ………と愛満は1人考え込み。

そうだ!コレは少し前に起きた『プチ米騒動』の時と同じだとハッと思い出し。

さらにタクやルルナ達の家族経由の苺や苺畑の相談(話)から、とある人物の事を思い浮かべ。


「………………………………そうですか、それは何と言うか、………きっと、多分、いや絶対、家の苺忍者隊の者が関係してる事だと思います。本当に!本~当に(ほんと~うに)、ご迷惑かけてしまってすいません!」


まさか自宅庭の苺畑やタリサ達の所の苺畑の他に、村に苺畑が有る事を知らなかった愛満は、テーブルに頭(額)を擦り付けるようにして謝罪の言葉を伝え。


かなり身近な。そう、とある愛の字が名前につく人がこの件に深く関わっていると直感で思い。

まさか愛が名前に付く人達、大好物で大好きな苺を無限に繁殖させてるとは思わず。

それに加え。愛満が長になる朝倉村に住む大切な、本来守るべき村人達に迷惑かけてるとも知らず。

愛満は低姿勢に、そして念入りに、さらに心を込めて、繰り返し謝罪をするのであった。



◇◇◇◇◇



そうして、愛満の突然の謝罪や姿に驚いたヤマトやナコの2人が慌てて止めに入ったり。

ササナが苺忍者隊とは何の事かと興味津々な様子で聞いてきたりと、少々ゴタゴタがあった後。4人は無事和解し。


何とか気を取り直した愛満は、現在ヤマト家やササナ家に有り余る苺をどうするかを考えに考え。

今だ美味しそうに『パンケーキ』をパクパク食べるタリサやタク達の姿を目にし。何やら思い付いた様子で、


「あの~、………突然何なんですが、確かヤマトさんとナコさんはケンタウロス族の皆さんで運営している果樹園で働いてらっしゃるんでしたよね?

それからササナさんは失礼ですが、何もしてらしゃらなかったですよね。」


突然ヤマト達3人の現在の仕事関係や生活面等の現状を確認。間違いないと返事を貰い。各家に有り余ってる苺を上手に消化する方法を話始め。


「あの、ならどうですか。その有り余っている苺を使って『苺菓子』を主に提供する純喫茶をやりませんか?

あっ、もちろん!皆さんが了解してくれるなら働くお店も僕が責任を持って準備しますし。

住む家にしても仕事先に通いやすいよう。うちの万次郎茶屋のように店舗と自宅が合わさった形に建てる予定です。

それに皆さんに営んでもらいたい純喫茶は、酒類を一切扱わないお店になり。

店内は基本禁煙で、簡単な軽食や苺を主に使った洋菓子、飲み物等を提供して、1人客の女性のお客さんでも気軽にお店に入れ。

店に来たお客さんが寛げるよう。店内には上品な音色(音楽)が流れ。

木目調の落ち着いた雰囲気のゆっくり出来るお店になるんですが……………どうでしょう?」


基本、苺をふんだんに使用したデザート(洋菓子)等を販売する店になり。


幼い子供のタクを育てるヤマト家族や、妖精族特有の小さな体になるササナの事を配慮。

安全安心が合言葉の禁酒、喫煙の店になる純喫茶をやってみないかとヤマト達に訪ねる。


すると突然の愛満からの思わぬ提案に驚いたヤマト達であったが、次第に不安そうな表情を浮かべ。


「ほ、本当に良いんですか!?

うちは夫婦揃って料理好きになりますし。それはもう、本当に有難い(ありがたい)話になるんですが………。

それに実は、村が襲われる前までは夫婦揃って飲食店を細々と村で営んでおりまして。

お金が貯まったら、またこちらの村でも小さな店をやりたいねと2人で話していたんです。

ですから、私達にとっては先程も申した通り、本当に有難い(ありがたい)話になるんですが……………本当によろしいですか?

あっ、もし苺畑の件を気にしてるなら、本当にもう、全然大丈夫ですし。

気にしてませんから、責任をとろうなんて滅多な事考えないで下さいね。本当に大丈夫でからね。」


「そうですよ。いくら問題の苺畑が苺忍者隊の皆の提案から広められたとしても、それは家のタクも関わった事ですし。

そこまで愛満さん1人が全責任を背負い(しょい)こむようなかたちで、責任を取らなくても良いんですよ。

それに私と夫が店をやっていたと言っても、村人相手の本当に小さな店ですし。

こんなスゴい村でお店を開いても、もしかしたら直ぐに潰れちゃうかも知れませんよ。

後、第一に!私達ケンタウロス族の命の恩人でもある愛満さんに、これ以上迷惑はかけれません。

だから愛満さんも苺畑の事で、私達に迷惑をかけたなんて思わないで下さい。

逆に、あんなに美味しい苺をお腹いっぱい食べれて、タクと共に喜んだくらいなんですから」


タクの両親のヤマトとナコが自分達の考え交えながら話し。さらには愛満を気遣ってくれる。


そんなヤマトやナコの気遣いに感謝しながら愛満は微笑みを浮かべ。


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。

苺畑で迷惑かけたお礼に提案している話でもないので、安心して下さい。

それにナコさんがお店が直ぐに駄目になるかもと心配されてましたが、お店が駄目だった時は僕が力になりますので、頼りないかもしれないですけど、それも安心して下さい。」


ヤマトやナコに心配しないでと話。さらに続けて


「それにですね。茶屋に遊びに来た時、タクが良く。お父さんとお母さんは料理上手で、何を食べてもスゴく美味しいと話してくれたんです。

他にも、お母さんが忙しい合間に焼いてくれる焼き菓子は、他にはないくらいの美味しさなんだよとも教えてくれて。

だからいつか僕もお父さんやお母さん達みたいに、皆を喜ばせられるような美味しい料理を作れるようになるんだとも言ってました。」


ヤマトとナコの息子になるタクが万次郎茶屋に遊びに来たおり。両親の事を嬉しそうに話していた事を伝え。

今までずっと黙って話を聞いていたルルナの祖父ササナにも


「それにルルナも、家の爺ちゃん(じいじ)は、皆が嫌がる細かい作業の魔法でも、あっという間に終わらせて

文句一つ言わない、立派でスゴい人になるんだからと良く嬉しそうに話してくれるんです。」


それぞれの息子や孫達が愛満に話てくれた(教えてくれ)事を伝え。


「だからですね。

タクから、お父さんは特に手先が器用だと聞いてるますし。

お母さんの作る焼き菓子は、他にはない美味しさだとも聞いてます。

ササナさんにしても細かい作業が得意だとルルナから聞いてるので、きっと純喫茶を営む事になっても上手く行くと思うし。大丈夫だと思うんですよ。」


3人が純喫茶を営む事に何の問題もないと思うと話。

愛満の話を聞いたナコは、言葉をつまらせながら


「…………そうだったんですか………………タク、そんな事を…………ありがとうございます、………本当にありがとう。

前の村に居る時だって、朝倉村に来た今も、普段仕事にかまけてタクの事そんなに構ってあげれなかったのに…………………」


大粒の涙を流して話。そんな妻のナコに寄り添うように座るヤマトも瞳に涙を貯め。


「愛満さん、タクの話を教えてくれてありがとうございます。

あの子は昔から優しくて、忙しい私達に遠慮し。いつもワガママ1つ言わない子だったんです。

だから自分の将来の夢も話した事も無ければ、タクが将来料理人を目指してる事も知りませんでしたし。

私達が作った料理や妻が作った焼き菓子を楽しみにしてくれてる事など気付きませんでした。

それに昔、タクがお店の手伝いをやりたいと言ってくれた時も、まだタクも幼く、怪我などしたら危ないからとロクにとりあいもしませんでした。」


前の村に住んでいた時のお店での出来事を思い出したのかヤマトは悔やみながら、実に苦しそうに話。何やら決意した様子で


「愛満さん!こんな自分達ですが一生懸命頑張りますので、先程のお店の話、よろしくお願いします。」


「私もです。戦争で毎日の暮らしが大変だからと……………私、あの子の母親なのに、………タクの優しさに甘えていたのかもしれません。

愛満さん、私からもお願いします。

タクの為になるかは解らないけど、主人やササナさんと一緒にタクが大好きな苺を使ったお菓子を作り。一生懸命お店を頑張ります!」


長期間の戦争や、そんな戦争の影響で大量の魔獣から村を襲われ。つい最近まで生きる気力をなくし。

ここ最近、息子のタクへと焼き菓子1つさえ満足に焼いてあげていなかった事をナコは思い出し。そんな息子に報いるようにヤル気を取り戻した様子で決意を述べ。


何やら安心した様子のヤマトが大きなため息をつき。


「ハァ~~~~………本当に良かった。実はこちらに来る前にソルトと朱冴さんに相談したんですよ。

そしたら朱冴さんが愛満さんに相談したら、だいたいの問題は一発で解決すると教えて頂いきまして」


改めて今回の問題を愛満に相談して良かったとヤマトがしみじみ頷く中。

ヤマト達の話が終わったと感じたササナが、自分の番とばかりに話始め。


「ワシも来て良かったのじゃ。

家中が苺で溢れておって、罰として婆さんから毎食苺を出され。今、苺ばっかり食べとるのじゃ………。

じゃがな、優しいルルナだけが、じいじだけでは可哀想じゃからと、ワシと一緒に苺を食べてくれるのじゃ…………あぁ、なんと優しい心の持ち主なのじゃ、ルルナ!

愛満さんや、お主もルルナからにじみ出る心根の優しい持ち主だと解るじゃろう!」


鬼気迫る表情で愛満の顔付近に飛んで来て、詰め寄り問い掛け。


「も、も、もちろんです。ルルナは本当に優しい子ですよね。」


愛満がそんなササナの姿に驚きながらも、何とかササナからの問い掛けに答える。

だが次の瞬間、何やら急にションボリした様子のササナが


「そうなのじゃ。ルルナは本当に心根優しい子なのじゃ。

じゃがな、……そんなルルナが大好きな苺を毎日一緒に食べておるのじゃが……………苺好きのルルナには辛くないらしく。毎日毎日喜んで食べておのじゃ。

じゃが、ワシは………ワシは…………もう…………ツラいのじゃ!!

いくら年寄りと言ってもじゃ!毎食の苺や薄味は飽きるのじゃ!

ワシもたまにはガッツリ濃い味の肉が食いたいのじゃ!

この前だって家族みんなの休みが珍しくあったからと、久しぶりに風呂屋・松乃に行き。

温泉を満喫した後、みんなで食事処で飯を食べる事にしたら!

何がお爺ちゃんは年だから健康の為に『ささ身のホイル焼き』にしましたよ、じゃ!

ワシも皆と同じ、揚げたて熱々のトンカツが食いたかったのじゃ!

そもそも婆さんもトンカツ食っておったじゃないか!!

なぜワシだけ年寄り扱いするのじゃ!婆さんがトンカツならワシにもトンカツ食わせろじゃ!!」


最後の方は愚痴になっていたササナの話を片耳に聞き。

愛満は、ケンタウロス族のヤマト夫婦とお店や自宅、苺を使った店に出すレシピ等のテキパキと話し合っていく。



◇◇◇◇◇



「と、このように絞り袋と絞り口を使って『苺のショートケーキ』はデコレーションします。

すいません。僕、和菓子作りなら得意なんですが洋菓子になるとなかなか上手くいかなくて

けど、ヤマトさん。初めてスポンジケーキを焼き。ホールケーキを丸々1個デコレーションしたのに、先程見せたケーキ作り本の表紙そっくりで上手ですね。

さっき作り終えた『リコッタチーズのパンケーキ』にしても、生地作りから焼くまで上手く出来てましたし。

まるでケーキ職人みたいなプロの出来栄えですよ。」


「本当ですか!ありがとうございます。

自分体は大きいんですが、7人の女姉妹の末っ子に産まれまして、姉達と遊んでるうちに細かい作業や料理作りが好きになり。気が付いたら手先が器用になってたんですよ。

しかし洋菓子と言う菓子を初めて作りましたが、お菓子作りは料理作りとはまた違って、奥が深く楽しいですね。」


愛満指導の元。ヤマトが初めて作った。

プロが作ったかのような素晴らしい出来栄えのホール状の『苺のショートケーキ』を前に、愛満はヤマトを絶賛。


そしてヤマトの隣の作業台で『苺のロールケーキ』や『苺タルトケーキ』を作っていたナコとササナの完成品を見て


「ウヮ~~~!ナコさんの『苺のロールケーキ』も、ササナさんの『苺のタルトケーキ』もプロのケーキ屋さんが作ったかのような出来映えで凄く上手です!

『苺のロールケーキ』て苺を綺麗に真ん中に巻くのが、少々コツがいってですね。

そのコツをつかむまで凄く難しくて、なかなか上手に巻けないんですよ。恥ずかしながら僕も、今だに苦手なんです。

なのにナコさんは1回でコツをつかんで、上手に巻けていて、本当に凄いです!

それにササナさんも上手く魔法を使いながら『苺のタルトケーキ』を作っていて、飾り付けも綺麗で美味しそうだし。

苺もツヤツヤ光輝いていて、本当素晴らしいです!う~~ん♪まるで苺のお花畑みたいです。

しかし3人とも本当に凄いですね。これなら3人とも、明日からでもお店開店できますよ。」


洋菓子作りが苦手な愛満は、少々興奮気味な様子でナコやササナ達を褒め称え。

恥ずかしそうに笑うナコと自慢げなササナとの両極端な反応をする中。


先程から台所入口付近で、大好きな苺を使った洋菓子作りに興味津々な様子の苺忍者隊の姿がチラチラ見え隠れしていて。

苦笑いを浮かべた愛満は


「それじゃ、せっかくですから。

この出来立ての『苺菓子』を先程から出入口で覗き込んでいる苺忍者隊の皆と一緒に試食しましょうか?」


提案し。苺忍者隊の者達が、自分達も食べられると知って、本日2度目の小躍りを披露して


「ヤッタ~!苺祭りだー!」


「苺のお菓子が食べられる!嬉しい~♪」


「いちご!いちご!」


「ヤッタ!お父さんとお母さんが作った苺のお菓子が食べられる♪」


「ヤッタ~~!苺のお菓子でござるよ。楽しみでござる!」


「苺のお菓子が1日に2度食べられるなんて、本日幸せアルね!」


大喜ぶする苺忍者隊メンバーと愛満、黛藍、ヤマト夫婦、ササナ達は、完成したばかりの『苺の洋菓子』の見た目、香り、味の感想、意見等を細かく交換し。大満足のなか試食会を終え。

まだまだ工夫する点も多々有るのだが、苺大好きな苺忍者隊達からの太鼓判を貰い。


愛満の(チート)で建てた。

ケンタウロス族のヤマト夫婦や、妖精族のササナが快適に作業、働ける調理場、作業場、店舗に加え。

ヤマト家族が住む事になる。ケンタウロス使用の自宅。ササナ要望のササナの別宅になる建物を約束通り。

その日のうちに手早くパパッと建てあげるのであった。



◇◇◇◇◇



ちなみにどんなお店(純喫茶)かと言うと

2階建ての高さの吹き抜けで、ケンタウロス族でも広々動き回れる作業場と調理場

純喫茶風な造りの店内で、基本和モダン風な造りの体の大きなケンタウロス族や巨人族にも対応可能な広々した純喫茶店になり。


ヤマト達家族が住む自宅は店奥になり。

店同様、吹き抜けの広々したケンタウロス族使用の平屋建てで

元ヤマト家所有のたわわに実る苺畑を愛満の(チート)を使い。新しい家の庭へと移転してある。


そしてルルナ家の苺畑も同様、同じ庭に間隔を開けて移転済みで、その2つの苺畑に挟まれるよう。

一見大きな巨木にしか見えないのだが、内部が5階建てのピクシー族サイズの豪邸をササナの為に建築してあげていた。



◇◇◇◇◇



こうして朝倉村に甘党好き老若男女達に加え。特に可愛い物好きな若い女性達から大歓迎を受ける事になる。

新しいお店『純喫茶』が華々しく開店し、村へと仲間入りした。



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