和菓子『うずらの玉子』とホワイトデー
その日 万次郎茶屋では、愛満達4人がホワイトデーへのお返しでもある和菓子『うずらの玉子』を作っていた。
このマシュマロの中に黄身餡が隠された作りの和菓子『うずらの玉子』
出来上がった形が、本物の茹でたうずらの玉子を思わせる形をしており。コースターチで形作りするさいに本物のうずらの玉子を使用する事から『うずらの玉子』と愛満が命名したのだ。
「愛満、こっちのうずらの玉子固まったからコーンスターチから取り出すね。」
「とりだちゅね。」
「タリサ、マヤラありがとう。僕の方は、今作ってるので最後だから片付けちゃうね。こっちもマシュマロが冷めたらお願いね。」
手伝いしてくれるタリサとマヤラにお礼を言葉を伝え。
和菓子『うずらの玉子』を作り終えた愛満は、マシュマロ生地が入っていたボールや黄身餡を並べていたバットなどを流しで洗い始める。
そして、幼いマヤラでさえお手伝いを頑張ってくれているなか、ただ1人、何やらコソコソと完成したばかりの『うずらの玉子』に細工をしている様子の愛之助が
「愛満、うずらの玉子たくさんできたでござるね。
それに白や桜色、黄色、若草色の可愛らしい春の色合いが良いでござるし。本物と同じうずらの卵サイズの小ささでラブリーでござる♪」
洗い物を頑張っている愛満に話しかけ、目の前にあるカラフルな色合いの『うずらの玉子』をうっとり見つめ。またコソコソと何やら作業を再開するのであった。
◇◇◇◇◇
そうして、大量の和菓子『うずらの玉子』を作り終えた愛満達は、出来立ての『うずらの玉子』と人肌ほどに温めた『ホット苺ミルク』を持ち。
台所から茶屋内に移動すると愛之助達3人は、何やらキャッキャッと美味しそうに笑い合い、うずらの玉子を食べていた。
一方愛満は、3人とは別のテーブル席に座り。先ほどから黙々と桜色に染めた可愛らしい『手ぬぐい』、小さな竹籠の中にバランス良く盛られた和菓子『うずらの玉子』を合わせ。
ホワイトデーのお返しとして、一緒にラッピングしていた。
するとうずらの玉子やホット苺ミルクを一通り満喫した様子の愛之助が何やら不思議そうな顔をして
「愛満、このまわりの白や桜色したフアフアしたマシュマロは、この前食べたマシュマロと同じでござるか?」
数日前にマシュマロココアで飲み、食べたマシュマロと今日のマシュマロが同じ食べ物なのかと質問する。
そんな愛之助の質問に、どうしてそんな事を聞くのか質問の意味が解らない愛満が聞くと
「うん、そうだけど、どうして?」
「そうでござるか……………う~~ん、あの時のマシュマロには何の風味も無かったはずでござるが…………………まぁ、美味しかったから良いでござるか!」
1人で自己簡潔した様子の愛之助が満足そうに頷く。
逆に、今だ不思議そうに愛之助の質問の意味が解らない様子の愛満は放置されたまま、愛之助は更に話し続け。
「愛満、このマシュマロには、ほのかにレモンの風味がして美味しいでござるね♪
あっ!それからマシュマロ生地に包まれた黄身餡の事でござるが、白餡に茹で玉子の黄身だけを混ぜたものが黄餡になるのでござるね!
拙者、愛満が白餡に茹で玉子の黄身を加えて、黄身餡を作り始めた時は、何をしているのかとビックリしたでござるよ!!
そう!この驚きをダンスで表現するならば!」
最近、愛之助達がハマっている漫画の真似をして、いかにその時 驚いたのかを3人でクルクル回り躍りだしながら、身ぶり手振り付きで、ややオーバーリアクションなダンスで愛満に伝え。
一通り踊り終わると3人は満足そうに頷き。何事も無かったかのようにビックリした表情のまま固まる愛満へと話しかけ。
「でも、食べてみたら意外に美味しいでござるね♪
それにしても愛満、今日はそんなにいっぱいのラッピングしておるでござるが、何かお祝い事でもあるのでござるか?」
「おいちい♪このたみゃご、ふあふあちておいちいね。いちごミルクもおいちい。マヤラいちごもたみゃごもちゅきよ。」
「本当に美味しいね!玉子の中の黄身餡がなめらかな舌触りでしっとりしていて美味しいし。食べやすい大きさで、何個でも食べられちゃうよ!
それにそれに!『うずらの玉子』一つ一つに愛之助が描いてくれたヒヨコのピヨちゃんが可愛いんだよ!
さっき真似して踊った漫画の主人公の相棒でね。黄色いふあふあの可愛いらしい小さなボディながら、敵をボコボコにやっけるんだよ!」
愛之助が『うずらの玉子』に描いたヒヨコのピヨちゃんを見せるため愛満のテーブル席にやって来て、ヒヨコのピヨがいかにスゴいのかを教えてくれる。
「………………………でね、でね、ヒヨコのピヨちゃんは、本当にスゴいんだよ!……ふぅ~~いっぱい話したら、何だか喉乾いてきちゃった。
それにしても愛満もいっぱいラッピング頑張ったね!スゴーく可愛いよ♪」
タリサの声で覚めぬ驚きから覚醒した愛満は、ぎこちなく微笑み。
「3人ともありがとうね。まず愛之助が感じたマシュマロの違いはね。今日のマシュマロ生地にはレモン汁を加えて作ってあるから、愛之助達が感じたように、マシュマロからレモンの風味がしてるんだよ。
他にも黄身餡に使う茹で玉子の黄身も、茹ですぎた茹で玉子の黒ずんだ黄身を使ちゃうとね。
この『黄身餡』みたいに綺麗な色合いの黄色にならずに、くすんだ色の黄身餡なちゃうんだよ。」
愛満が座るテーブル席の空いた席にちゃっかり座り。愛之助が自分達のテーブルから運んで来きた『うずらの玉子』を3人がパクパク食べながら、目の前のテーブルに広がる。
色とりどりの『うずらの玉子』が入った籠盛り
数日前に愛之助達と一緒に、コプリ族の工房で、村に自生する桜の木の花が咲く前の小枝を使い。染めさせてもらった『手ぬぐい』を一緒にセットして、ラッピング作業しながら話してくれる愛満を眺め。何やらまた疑問が浮かんだ様子の愛之助が質問する。
「愛満、そもそもホワイトデーとは何なのでござるか?」
「あれ?愛之助、この前カレンダーを見て、美樹に質問して教えてもらってなかった?
ホワイトデーはね、2月14日のバレンタインデーにチョコをタリサやマヤラ達から貰ったでしょう?
だからホワイトデーにはね、そのお返しにマッシュマロや飴、クッキー、ハンカチなんかをチョコをくれた人にお返しするんだよ。」
「ホワイトデーには、お返しをするでござるか!?」
「ホワイトデー!」
「あかえち!」
「うん。まぁ、そもそもホワイトデーは日本が発祥になるんだけど、贈り物をいただいたらお返しするという日本人ならではの感性をもとに、菓子業界が提案したことから生まれた風習になるんだけどね。」
数日前の夜に、美樹が愛之助へと説明してあげていた。某外国の司教が絡んだ恋愛系の話とは違う。
日本発祥のホワイトデーの云われを説明をしてあげると愛満の話を聞き。愛之助達は何やら驚き、頭を抱えて悩みだす。
そんな3人の様子に、愛満が心配して声をかける。
「どうしたの3人とも?急に考え込み出して…………あっ、もしかしてホワイトデーのお返しの事?」
「そうでござる………愛満、どうしょうでござる。拙者、タリサやマヤラへのホワイトデーのお返し、何も準備してないでござるよ!」
「タリサも愛満達に何も準備してない!!」
「マヤラも!」
『うずらの玉子』を食べる手を止め、困り顔の3人が愛満にどうしたら良いかと話す。すると何やらニヤリと笑った愛満が
「フッフフ。大丈夫だよ、愛之助、タリサ、マヤラ。
僕を誰だと思ってるの?3人の頼れるお兄ちゃんだよ。
そんな事もあろうかと愛之助用は、愛之助が好きなマイ○ロちゃんがワンポイントに刺繍された。
春物のシンプルなシャツを手ぬぐいを染める時に一緒に桜色に染めたでしょう。
それをちゃんと愛之助のホワイトデーのお返し用にと、アーモンドフィッシュの詰め合わせと一緒にラッピングして準備してあるんだよ。
タリサ用とマヤラ用も、その時一緒にタリサとマヤラがグルクルと糸で縫い締めたり、巻き締めたりして絞り染めした『ハンカチと煎餅セット』、『Τシャツと金平糖セット』を準備してあるから安心して大丈夫だよ。」
3人に内緒で愛満が準備していたホワイトデーのお返しセットの事を教える。
「本当でござるか!?ありがとうでござる。
しかし愛満は本当にすごいでござるね。さすが拙者の頼れる兄じゃでござるよ!
それにずっと謎でござった。あんなにたくさんあった、一生懸命染めたシャツが突然消えた訳も解ったでござる。
愛満、本当に助かったでござる。かたじけないでござるよ。」
「僕も!愛満、ありがとう。」
「マヤラも!よしみちゅ、ありがと。」
愛之助達3人が口々にお礼の言葉をのべるなか、4人で仲良く話し。
ホワイトデーのお返しを兼ねた、新しく朝倉村にやって来た村人達への引っ越し祝い品にもなる。
沢山のラッピング作業を終えた愛満は、さっそく愛之助やタリサ、マヤラ達4人で村にある家々を回り。ホワイトデーのお返し(引っ越し祝い品)を渡していくのであった。