お好み焼きとみっくちゅじゅーちゅとケンタウルス族
その日もいつものように愛満達が万次郎茶屋で、お客さんの来店を待っていると朱冴が訪ねて来る。
チリーン、チリーン♪
「おはようでやんす。愛満 ちょっと話があるでやんすけど、ちょっと外に出てもらってもいいでやんすか?」
「おはよう 朱冴。話し?うん、丈夫だけど、どうしたの?」
「はいでやんす。話があるのは私じゃなくてソルトでやんす。」
朱冴言われ。不思議に思いながらも茶屋の外に出ると、朱冴の相棒ソルトが立っていた。
「おはよう ソルト。僕に話って何?」
「ほら、ソルト。愛満を呼んできてあげたでやんすから早く話すでやんす!!愛満だって暇じゃないでやんすよ!」
「ブルブルーブールブルブルブルブールーブルーブル」
「なんでやんすと!愛満には馬語は解らないだろう。これだから朱冴はおバカなんだからでやんすと!
ちょっとソルト!私はおバカじゃないでやんす、ちょっとマイペースなだけやんす!」
「ブールーブルブルブルーブルーブルブル」
「あっ!またおバカと言ってるでやんすね!」
朱冴とソルトの口喧嘩がヒートアップしてくるなか、愛満はチートを使い。ソルトの話してる馬の言葉を人間でも解るように魔法をかける。
すると魔法をかけられた事に気づいてないソルトと朱冴の少々微笑ましい低レベルの喧嘩の内容が聞こえてくる。
「朱冴はおバカに決まってるだろう。この前だって僕のおやつの大事な林檎ぶちまけるし、たまにブラッシングや散歩に行きたいのに部屋の扉開けるの忘れちゃうし……はぁ~~~~……ね、解った?おバカでしょう。」
「むきーでやんすよ!悔しいでやんす。そうだ!そんなこと言ってるでやんすと、ソルトの大好物なこの村の大きな桃をあげないでやんすよ!」
「いいよ。それなら青那にお願するか、放牧地に自生してるオレンジ色の桃の実を食べたら良いもんね。
それに放牧地にはオレンジ色の桃の実や蜜柑の他にも、放牧地周辺だけに自生している。
バナナやパイナップル、キウイ、マンゴーなんかのいろんな種類の果実がいっぱい実ってるから、毎日食べ放題だしね。
それに愛之助に頼んで、魔法で作って貰ったキャベツ畑や地面掘ってたら出てきた、ネバネバしてシャキシャキした歯ごたえの長細い芋も食べ放題なんだからね。」
「えっ!そんなに生えてたでやんすか?知らなかったでやんす。ソルト、今度一緒にマンゴー取りに行こうでやんす!マンゴー美味しいでやんすもんね~♪」
2人の『喧嘩するほど仲が良い』話が終わりそうにないなか。
2人の話を聞いてクスクスと笑いが止まらない愛満がソルトに声をかけ、魔法のことを話す。
「えっ!本当に僕の言葉解るの愛満?」
「うん。ちゃんと解るから相談事教えてソルト。」
「やったー!ありがとう、愛満。
実はね、凱希丸さん家のバタイと家の下の放牧地から抜け出し。この前近くの山に自生してる山葡萄を食べに散歩してたら、たまたま怪我したケンタウルス族の子供を見つけたんだ。」
ソルトが愛満と話していると一緒に話を聞いていた朱冴がソルトの話しに割り込んできて
「あっ!ほら、やっぱり放牧地抜け出していたじゃないでやんすか!この前聞い時は、1週間分のおやつの林檎をかけてもそんな事してないと言い張っていたでやんすのに!」
プンプンと怒った様子でソルトに文句を言う。すると自分の大切な話に割り込んできた朱冴に、ソルトがめんどくさそうに話しかけ。
「もう~~~、朱冴うるさいよ!僕は今、愛満と話しているでしょう!ちょっと静かにしていてよ。
ねぇ、ちょっと愛満。朱冴にいなり寿司でも渡して黙られておいてくれない?」
朱冴を黙らせる最終兵器でもある『いなり寿司』を愛満へとお願いして召喚する。
「はぁ~~~、やっとうるさい朱冴を黙らせられたよ!
…えっと、どこまで話したっけ?……あぁ、そうそう。
その男の子の怪我事態はたいしたことなかったから、バタイと2人で薬草を使って治療してあげてね。
両親の元に返してあげたんだけど、どうもその子が住む村は、先の戦争で冒険者が減り。
討伐依頼であふれた魔獣の群れに元の里を襲われ。勇敢に戦ったんだけど魔獣の数が多すぎて命からがら逃げ。やっと見つけた仮の里らしいんだ。」
「戦争の影響でそんな事が起きてたなんて………」
ソルトの話しに愛満がショックを受けるなか、更にソルトは話を続け。
「だからね。村にいる大人の人や子供達、老人達なんかの村のみんな、長旅の疲れや魔獣に襲われたショック、食料も乏しい事もあり。
村と言えないくらいの雨風をかろうじて防げる簡単な作りの小屋が有るくらいで、全体的にみんな覇気がなく、疲れてる様子だったんだよ。
僕もバタイもとっても心配で、自分達のおやつの林檎や桃なんかの食べ物を持っては、あの子達の村を訪ねて、会いに行ってるんだけど、なかなか村作りも生活も厳しそうで…………。」
「そっか……多分みんな、体もだけど、心も疲れはてちゃって、何をしたら良いか考えられなくなっちゃたんだろうね。」
ソルトの話しに愛満が悲しそうに呟くとソルトも同意するように頷き。
「だからね、愛満。バタイと話して、愛満に相談したら僕達の時みたいに何とかして助けてあげられるんじゃないかと考えてね。
朱冴に頼んで愛満に相談してるんだ。
どうかな、愛満?あの子やケンタウルス族の皆のことを助けてあげられないかなぁ?
助けてくれるなら僕達の大切なキャベツ畑だって、果物園だって、あの子達に分けたあげるから!ねっ、愛満お願い!」
「私からもお願いしますでやんす!滅多にないソルトのワガママでやんす!私もケンタウルス族の人達を助けてくれるなら、愛満のお手製の『いなり寿司』1ヶ月我慢するでやんす!」
ソルトは必死に愛満へと頼み込む。そんな必死な様子のソルトを見て、今まで愛満お手製の『いなり寿司』をモグモグ食べていた朱冴も何度も頭を下げ。大好きないなり寿司を1ヶ月も我慢すると宣言し頼み込む。
そんなソルトと朱冴の2人を安心させるように愛満は優しく微笑み。
「もちろんだとも!ソルトも朱冴も安心して、ちゃんとケンタウルス族の皆の事を助けてみせるから。それにソルト、ケンタウルス族の皆の事、今まで守っていてくれて、教えてくれてありがとう。朱冴もありがとうね。後は、僕に任せて!」
その後、愛之助も交え話し合い。直ぐにでもケンタウルス族を助けに行こうと、何処かへ駆け出しそうになるソルトを落ち着かせ。ソルト案内の元、愛満達はケンタウルス族の皆を助けに村へと向かう事にする。
「それじゃあ早速で悪いけど、ソルトが話してくれたケンタウルス族のみんなが住んでる里に案内してくれるかなぁ?」
「任せて!村への案内なら無用だよ!
愛満ならきっとそう言ってくれると思って、ケンタウルス族の皆のには、2日前のうちにバタイと一緒に詳しい話や説明をしてね。
今は、放牧地に建つ僕達の別荘の小屋にバタイと一緒に待ってもらってるんだよ!じゃあ、さっそく放牧地に行こう!」
「えっ!?」
「ござる!?」
「でやんす!?」
3人が思わず声をあげ。やけに手回しの早いソルトとバタイの手際の良さに驚き。感心しながらタリサとマヤラも加わった愛満達は、ソルトの案内の元、バタイとケンタウルス族の者達が待つ放牧地にへと移動する。
◇◇◇◇」
そして、放牧地の小屋に着いた愛満達が目にしたものは、頬がこけ。目の下にはクマができ、衰弱した様子の覇気がない3~40人のケンタウルス族の老若男女達の姿であった。
その姿を見た愛満と愛之助は、慌ててケンタウルス族に近より。チートを使いながら怪我や病気、体調状態などをどんどん調べていく。
すると体の弱い老人や子供達の数名の者が、最近の寒さの影響からか風邪を引いており、力を使い治療する。
しかしほとんどの者が心に悲しみや生きる気力を無くしていて、他にも大人達が栄養失調におちいっていたりと体の傷や病気は治せても、心の傷まで全て取り払う事や治せる事はなかった。
そこで考えた愛満と愛之助の2人は、小屋近くの空き地にケンタウルス族やソルト、バタイ等の四足歩行で、大柄な体格の者達が入浴できる。
基本、放牧地を利用する者達が入浴する。放牧地からのみの出入りになる。
露天風呂タイプの立ち湯スタイルや座った体制でゆっくり入浴できる2種類のタイプの温泉を造り出し。
ケンタウルス族や大柄な体格の種族の者達、意思疏通が出来る者達が利用する事になる。
室内用で露天風呂付きの立ち湯スタイルの温泉、座った体勢でゆったり入浴出来る2種類の温泉を造り出し。
(基本放牧地の方の露天風呂と風呂形は同じになる。)
更には大人用や子供用の深さの違う広々した様々な温泉、ゆったり体を洗える洗い場をそれぞれに造り。
平屋建てになる大きく立派な温泉施設を愛満は建築する。
そして愛之助達案内の元、ケンタウルス族の皆や喋れるソルトやバタイ達を完成したばかりの室内にある温泉へと入浴させ。
その間に愛満は、温泉施設内にある。
大勢のケンタウルス族やソルト達がのんびり休憩できる。床暖房付きの休憩室で、休憩室隣のケンタウルス仕様の広々したキッチンにこもり。
覇気がないケンタウルス族の皆を元気づけるため、目で見て!鼻で香り!耳で音を楽しむ!
皆がワクワクと食欲そそり、楽しくなる料理の下ごしらえの準備などを手際良くしながら、皆が風呂から上がってくるのを楽しみに待っていた。
すると暫くしてお風呂から上がり、リラックスした様子のソルトや愛之助達と一緒にケンタウルス族の者達が休憩室へと戻って来る。
「ふぅ~♪温泉とやらに初めて入浴したけど気持ち良かった!
朱冴いつもあんな気持ち良い思いしてたのズルい!僕なんていつも冷たい川や湖での水風呂だったんだよ!」
「何を言ってるでやんすか、ソルト!私だって野宿の時やお金が心もとなかった時は、一緒に川や湖で水風呂に入っていたでないではやんすか!」
「何言ってるんだよ!朱冴が一緒に水風呂に入るのは、暑い時期だけでしょう!僕なんて、暑い時期も寒い時期もずっーーと水風呂だったんだから!
寒い時なんてホントに辛かったんだからね!ねぇ、バタイもそうだったでしょう!」
お風呂上がりでサッパリしたソルトがブツブツ朱冴に愚痴りつつ。ソルトと同じように話せるようにしてもらったバタイへと話しかけ。
「……自分も暑い時期は水風呂であったのだが……………寒い時期になると凱希丸がお湯にしてくれ。温かい布なので綺麗になるまで何度も拭いてくれていた………………」
「!!!!!!!!」
「!!!!!!」
片や、そんな事をしてもらえるのかと驚きの表情を浮かべる1頭がいたり。
片や、その手があったのかと自分が気づかなかった方法に驚きの表情を浮かべる1人がいるなか。
1頭と1人に目を合わさないように気まずそうに目線を下げるバタイなのであった。
そんな1人と2頭のやり取りを尻目に、元気一杯の愛之助達が
「愛満、拙者働いてお腹空いたでごるよ!もうお腹ペコペコでござるよ!」
「マヤラもポンポンちゅいた~!」
「僕もお腹空いた~!タクもお腹空いたよねぇ?」
タリサがお風呂場で仲良くなったタクと言うケンタウルス族の子供に話しかける。
「……う、う、うん。ぼ、僕もお腹空いた。」
「フッフフ~~~~まぁ、ちょっと待ってて。今から目からも鼻からも耳までも。そう!そして五臓六腑を刺激する美味しい料理を作ってあげるから!」
愛満はどこか不敵に微笑み。やおらねじり鉢巻を頭に巻くと、目の前にあるチートで生み出した巨大な鉄板を前に、何かをどんどん焼き始める。
そんな愛満の姿に、何が始まったのかと皆が注目するなか、どんどん平らな丸い形のモノを鉄板の上に作り並べていき。
ジュージューと美味しそうな焼き音があがりだしたら、器用に2本のヘラを使って、ひっくり返すというパフォーマンスをおこない。
丸い形のモノが焼き上がったら、香ばしい匂いを放つお好み焼きソースをハケでたっぷり塗り。
勢いよくマヨネーズの線を描き、磯の香りする青のり、お好み焼きの上で踊る鰹節をバランス良く散らし。
ケンタウルス族の者達の目線を釘付けの中、あっという間に鉄板いっぱいの『お好み焼き』を作り上げたのであった。
◇◇◇◇◇
「皆さん お待たせしました。少し早いですが、お昼ご飯の『お好み焼き』になります。
おかわりもどんどん焼きますので、遠慮しないでお腹いっぱい食べて下さいね。」
愛満が廻りの人達に声をかけ。
愛満がお皿に取り分けた皿いっぱいに乗った『お好み焼き』を朱冴や手伝いに来てくれた青那達がケンタウルス族の者達へと手渡して行く。
そして更に、だいぶ前に放牧地近くの空き地へと愛満の力を使って自生させた。
大量のバナナや桃、パイナップル等の果実や牛乳の実を使って作った。よく冷えた『みっくちゅじゅーちゅ』も配ってもらい。
一人一人が熱々のお好み焼きや、ほどよい甘味で、冷えて美味しいミックスジュースを飲み食いし。
良く解らない安堵感に包まれ。無意識に溢れた1人の笑顔が隣の者へと移り。また別の隣の者へと移ていき。いつしかその場にいる全ての人達の顔に笑顔が溢れていた。
そして、少し元気を取り戻した様子の幾人かの料理好きなケンタウルス族の者達が、お好み焼きを焼いている愛満の元を訪れ。
お好み焼きの焼き方を愛満から習い。器用に2本のヘラを使用して、お好み焼きを焼き始め。
更には身長の高さを利用して、素晴らしいマヨネーズかけのパフォーマンスを披露し出す。
その為、鉄板会場での居場所を失った少々やさぐれ気味の愛満は、ミキサー前にパフォーマンスの場を移し。
「なんだい!なんだい!僕のマヨネーズかけのパフォーマンスだって拍手喝采でスゴかったんだから!」
ついつい愚痴りながら、ミックスジュースを作っていると鉄板会場で、またマヨネーズかけのパフォーマンスが披露され、大きな声援が上がる。
「………………くそ~~!悔しくないんだかね!そう、悔しくなんかないんだか!……………嘘!やっぱり悔しい!何、あの声援!やっぱり高さか、身長なのか!」
身長の事になると心が極端に狭くなる傾向のある愛満が、1人ブツブツ悔しい気持ち愚痴りながらミックスジュースを作り。
子供達へと配り、その純粋な姿に心を癒されていると、ミックスジュースの美味しさの虜になった様子の幾人かのケンタウルス族の者達が、又もや愛之助の元へと訪れ。
愛満からミックスジュースの作り方を習い。
他に置いてある村自生の果実をいろいろ組み合わせたりして、更なる美味しいミックスジュースを作りだし。子供達の人気をかっさらう。
そのため、ここでもまた愛満が少々やさぐれるなか、気づかぬうちに不思議とケンタウルス族の者達の瞳の奥に生きるエネルギーがみなぎっていくのであった。
◇◇◇◇◇
そうして、ケンタウルス族の長や愛満と愛之助、兎族のアルフなどの村の代表者を交え話し合った所。
ケンタウルス族からの要望で、バタイやソルト達の放牧地横に、ケンタウルス族の為の頑丈な長屋風な造りの住宅地が愛満の力で建築され。
心配していた仕事などは、今まで手付かずだった朝倉村に自生しているバナナやパイナップル、キャベツ、山芋などの畑を綺麗に整備し直し。その畑や果樹園を管理、生産して、兎族のレム家が営む八百屋などへと卸す事が決まったり。
他にもケンタウルスの者達やバタイやソルトが好んで食べていた。前の村近くから持って来た葡萄や山葡萄の苗木を植え。葡萄畑の管理、生産。
愛満が後先考えずにケンタウルス族やバタイやソルトの為だけに建てた。巨大で平屋立ての温泉施設も『風呂屋・松乃』が有るため、どう利用しょうか愛満が頭を悩ませていたところ
『風呂屋・松乃』の番頭でもある兎族のアルフから、こんな立派な施設活用しないのは、もったいないと説得され。
更には『風呂屋・松乃』を訪れてくたざるお客様の中に、種族がら体が大きく、様々な理由から松乃を利用できず。
お客様に申し訳ないと思いながらも泣く泣くお断りしなければならない時があり。
そんなお客様達も利用できそうな巨大な温泉施設に、是非とも『風呂屋・松乃』の2号官として、温泉宿をオープンさせてほしいと熱く訴えられる。
その為、温泉施設内を宿へと改装し。ケンタウルス族の中から働きたい者を探しだし。
『風呂屋・松乃』の2号官にあたる温泉宿の『風呂屋』を開業させる。
そして飲食店の方でも、ソルトや『お好み焼き』や『みっくちゅじゅーちゅ』を飲み食いした村の人達からの強い希望により。
ケンタウルス族の者達の新たな大好物となったお好み焼きを販売する『鉄板 お好み焼き屋』
様々な組み合わせのミックスジュースやスムージーを販売する『みっくちゅじゅーちゅ屋』
が、愛満の力でケンタウルス族の者達が広々と働ける店舗が建てられる。
ソルトやバタイの紹介で、朝倉村の新な村人としてケンタウルス族40人名が仲間入りするのであった。