塩ちゃんこ鍋と冒険者と白熊族のエケセ
その日 冒険者で珍しい白熊族のエケセは、古くから付き合いがあり。
気が合う冒険者仲間のテネトと共に、怪我や古傷に効くといわれる。朝倉村にある風呂屋・松乃の大浴場に朝早くからのんびり入浴していた。
するとエケセの隣で、風呂屋の番頭のアルサに習ったという入浴スタイルのタオルを頭にのせてくつろいでいたテネトが
「なぁ、エケセ。この村に来て3日、少しは古傷の痛みはひいたか?俺の方は、この村から帰って依頼中に少しヘマして怪我した傷があっという間になくなってるのを今朝気づいて驚たよ。
それにちょっと来ない間に新しい店がたくさん増えてるし、店の値段も通りすがりチラッと見たが町の値段の半額以下の値段設定で驚いよ。
はぁ~、やっぱり朝倉の店はどの店も安くて旨くそうで最高だよなぁー!」
熱く話しかけてくるのだが、あまりの温泉の気持ち良さに、ついつい眠気に誘われていたエケセは、
「…………ぅん?あぁ、本当だよな……」
言葉少なく返すのみなのであった。
しかしエケセも、始めテネトから朝倉村の話や利用料、食堂の値段などを聞いた時、古傷の痛みに効く事やあまりの値段の安さ、サービスの数々に。
ただでさえ先の戦争で物流が不安定な今、そんな事が出来るものかと半信半疑で疑い。
テネトと一緒に朝倉村へとやって来たのだが、風呂屋・松乃の風呂に入り。
それからずっと松乃に滞在し、風呂を満喫しているのだが1日目目から、あれだけ慢性的にくる古傷の痛みに苦しんでいたのが、痛みが徐々にひいていき。
3日目にはあれだけ疼いていた痛みが全くなくなり、他にも体の不調も感じなくなっている事に驚き、感動していたのだ。
そしてその後、すっかり気に入ったサウナと水風呂のセットを楽しみ。眠気もぶっ飛んだエケセは、まだまだ話し足りない様子のテネトと話し。
今日で朝倉村に来てわずか3日目なのだが、あの日半信半疑ながらもテネトの誘いのり。テネトと一緒に朝倉村へとやって来て、本当良かったとしみじみ感謝の言葉を伝える。
するとその言葉に照れくさそうに笑いながらも喜んだテネトが『旨くて安い、エケセが見た事もないような珍しい料理を奢ってあげるぜ』と自信満々に話し。
風呂を上がると松乃が無料で貸してくれ、気に入ったら購入もでき。幅広いサイズや色、柄などが楽しめ。
そのままの格好で街中を探索できる。風呂上がりにピッタリの浴衣と暖かな半纏に着替え、テネトが太鼓判を推す、とある店へと移動するのであった。
◇◇◇◇◇
チリーン、チリーン♪
「「「「「いらっしゃいませ(でござる。・アルヨ。)(いらちゃいまちぇ。)」」」」」
テネト紹介のお店に着き、店の扉を開けると人間族や兎族、ササ族に出迎えられる。
「こんにちわ、久しぶりです。前にドワーフの凱希丸さんと一緒に来た冒険者のテネトですけど」
「あっ!テネトさん、お久しぶりです。ちゃんと覚えてますよ。また村に来てくれたんですね。ありがとうございます。
どうです?だいぶお店も増えて、村の雰囲気変わってたでしょう?
あっ、お連れの方も朝倉村にようこそ。
僕はこの和菓子やお茶、軽食を楽しめる万次郎茶屋の主人 愛満です。気軽に愛満と呼んで下さいね。
隣にいるのが弟の愛之助、友人の兎族のタリサとマヤラ、ササ族の黛藍になります。」
「本当に!見た事もない美味しそうな店や土産なんかにピッタリな店が増えてて、驚いたよ。
それから隣にいるのが、俺が町で一番信頼してる。同じ冒険者仲間の白熊族のエケセになるよ。
見た目は高い身長と男くさい顔してるから、冷たそうに見えるけど、面倒見がよく優しい奴だから、俺ともどもよろしく頼みます。」
店内にいる黒髪黒目の小柄で、ちまっこい茶屋主人の愛満と喋り、エケセの事を紹介をしてくれる。
「この前はテーブル席でしたけど、今日はテーブル席、座敷の炬燵席どちらにしますか?
最近まだ寒いんで、座敷の炬燵席も利用できるようにしてるんですよ。」
愛満に座る席を質問され、テネトも初体験の座敷にある炬燵席を選び。テネト イチオシの軽食のまぐれと和菓子セットを各2人前づつ注文する。
するとテネトとエケセが炬燵席に座るのを見た愛之助達が、テネト達の隣の炬燵に座り、話しかけてくる。
「エケセさん こんにちわ。僕 兎族のタリサだよ。隣にいるのが弟のマヤラていうんだ。よろしくね。
それからテネト 久しぶり。また冒険者の話し聞かせてよ。」
「こんちわ。ぼくマヤラよろちくね。」
「エケセさん、こんにちわでござる。拙者 愛之助という者でござる。よろしくでござるね。
テネトも久しぶりでござるね。今度はどのくらい村にいるでござるか?」
「エケセさん、テネトさん 初めましてアルね。僕はササ族の黛藍アルよ。よろしくアルね。」
改めて自己紹介した4人は、テネト達の注文の品が来るまでの間。テネトやエケセから、わくわくドキドキする冒険話を前みたいにねだり。また話を聞かせてもらうのだった。
◇◇◇◇◇
その後、6人の話が盛り上がりワイワイ騒いでいると奥の方の部屋から愛之助を呼ぶ声が聞こえ。
しばらくして愛之助が戻ってくると、白い板のような物をテーブルの真ん中に置いたり。テネトやエケセの前に、見た事も無い美しい作りの食器やお箸などを並べてくれる。
そうして愛之助がテーブルセットを終え。また奥の部屋へと戻って行くと奥から愛満がモクモクと白い湯気を上げる鍋を持って戻って来る。
「お待たせしました。こちら野菜たっぷりの『塩ちゃんこ鍋』になります。
他に『白米』や『鶏団子の照り焼き』、『大根とハムの千切りサラダ』、『いんげんの白胡麻和え』など、すぐに持ってくるので暖かいうちに食べて下さいね。」
話し、鍋の蓋を開けてくれ。奥へと戻って行く。
「うわー!具だくさんで旨そうな料理だな。エケセ、愛満もああ言ってた事だし、さっそく食べようぜ。」
初めて見る鍋料理に興奮した様子のテネトがエケセに話しかけ。レモン水のお代わりを持って来てくれた愛之助に教わりながら、取り皿にこんもりと熱々の塩ちゃんこ鍋を盛り、食べ始め。
「 旨い!テネト この料理、食べなれた塩味なのにいろんな素材の味の旨味が出ていて、あっさりしているようでコクがあり、実に旨いぞ!
それに入ってる鶏もも肉という肉も、いつも町で食べる焼きすぎていて噛みきれない肉と違い。ほどよい噛みごたえで柔らかく、噛んだら肉汁溢れ出てきて旨すぎる!
あと下処理がちゃんとしっかりしてあるのか、生臭さい肉が1個も無く、いくらでも喰える旨さだ!」
「 エケセ、肉も旨いがこのキャベツと言う野菜やニラ、エノキ、椎茸という野菜も適度に歯ごたえがあり旨いしぞ!
それに豆腐という白いプルプルした食感の奴も味がしみて、熱々ながら旨い。」
2人が夢中で鍋を食べていると愛満がテネト達の元へ戻って来て、2人の前にお茶碗にこんもりとつがれた真っ白のツヤツヤした白米やテリテリした鶏団子の照り焼き等をテーブルにどんどん並べ。
「鶏団子の照り焼きは、横にある温泉卵に絡めながら食べると美味しいですよ。塩ちゃんこ鍋も鍋の中身が無くなったら言ってくださいね。〆のラーメンの細麺を入れて塩ラーメン風にしますから」
美味しく食べる方法や鍋の〆などを教えてもらい。
このままでも十分美味しい鍋や料理なのに、更に美味しく食べれるのかとテネト達は驚き、ビックリしながらも、新たに来た料理と共に鍋の〆まで美味しく食べ。
デザートがわりの和菓子セットを食して、宿の風呂屋・松乃に帰るのだった。
◇◇◇◇◇
松乃に帰って来た2人は、またのんびり風呂につかりながら
「あーぁ、本当に〆まで旨かったなぁ~。
しかも あの料理、俺の初来店の祝い料理でスペシャル版だから、今日は無料で食わしてくれるなんて、本当にサービス満点な店だぜ。なぁテネト。明日の昼は金を払って万次郎茶屋で飯を食おうぜ。」
「本当に旨かったし、サービス満点の店だよな。
俺の時も、この村に住んでるドワーフの凱希丸さんに連れて行ってもらったんだけど、今まで食べた事ない旨さの『ネギ塩豚丼』をタダで食べさせてもらったんだぜ。
あんな旨くてサービス満点な店が潰れてもらっちゃ困るから、エケセの言う通り、明日は金を払って食いに行こうな。」
満足そうに話し。テネトとエケセの朝倉村での充実した1日が過ぎていくのであった。