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具だくさんダゴ汁とコプリ族と奴隷



3月3日のひな祭りパーティーも村の皆からの『楽しかった』や『また、やりたい』等のたくさん喜びの言葉と共に大成功に終わり。


村人で集まりイベントをするのも親交を深めたり。種族を越えて絆が深まりしていいねぇなどと、愛之助達と話していた愛満は、その日も朝早くからの仕込みや日課を終え。

万次郎茶屋前の山道を掃除しながら、開店準備をしていた。


すると突然、愛満の目の前に薄汚れていて、痩せぎみのひどく疲れた様子の小柄な体格にエルフ族のように耳が細長く。

肌の色が緑色の幼い容姿の男女や幼い子供達、赤ん坊を抱いた女性等のどこか怯えた様子の15~6人の大勢な人達が現れ。


そのうちの1人の男性がおずおずとした様子で、ビックリして呆然と立ち尽くす愛満に話しかけてくる。


「すいませんコプ。私達コプリ族の者なのコプが、この辺りに私達が住んで大丈夫な土地はあるコプでしょうか?

どんな場所でも大丈夫コプです。住ませてもらえる土地さえ与えてくださるコプなら、必死に働きますコプ。

何卒、何卒、私達を住ませてもらえないコプでしょうか。」


痩せ細った小さな体で、何度も頭を下げながら愛満にお願いするのであった。



初め突然音もなく現れた大勢のコプリ族の人達にビックリした愛満であったが、驚きながらも彼らの話を聞き。

服装や彼らの様子を見ていて、かなり長い旅をして朝倉村にたどり着いた事や、何やらただ事ではない様子だと考えを導きだすと、すぐにさま店内にいる愛之助を呼び寄せ。


コプリ族一人一人に、自身が使える生活魔法で体や服の汚れなどがとれるクリーン魔法や怪我や病気等がないか治療系の魔法を使い、身体中くまなく調べ。

終わった人から次々と温かな万次郎茶屋の店内へと案内する。


途中、今日は美容室が休みで部屋でくつろいでいた美樹や、包子屋の開店準備をしていた黛藍も、この騒ぎに何事かと驚きながら店内に出てきてくれ。

愛満や愛之助から簡単な話を聞くと、自分達も何か手伝える事はないかと言ってくれ。


コプリ族の世話を手伝ってもらいながら、寒さで震えている幼い子供や体の弱い人から順番に愛満宅のお風呂に入ってもらい。

風呂上がりには、愛満チートで調達して来たコプリ族用の新しいキッズサイズの服一式へと着替えてもらい。

また広々した万次郎茶屋店内へと戻って来てもらったりしながら、愛之助が用意したお茶やお茶菓子を食べてもらい。

16人全てのコプリ族が、交代で入浴をすませるのであった。



◇◇◇◇◇



そうして大人数だったため時間はかかったのだが、なんとな16人全員がポカポカと白い湯気をあげ。

みんな最初に比べて、いくばくか緊張のとけた表情でお風呂から上がり。


愛満達が用意した真新しく暖かな服に包まれ、茶屋店内にある座敷の炬燵に入り。愛之助が振る舞ったほうじ茶や初めて食べる甘い和菓子、蜜柑などを食べ。

幼い子供達は、お風呂の途中にやって来た兎族のタリサやマヤラ、愛之助達と見た事もない面白いテーブルゲームで、みんな仲良く遊んだりしながら、コプリ族の者達は夢見心地でくっろいでいた。


すると何処からともなくお腹をくすぐる美味しそうな匂いがただよってきて。大きな鍋を持った愛満とお皿いっぱいにのったおにぎりなどを持った美樹と黛藍が台所から戻ってくる。


「どうですか?お風呂に入って、だいぶ寒さや疲れは落ち着きましたか?」


愛満はコプリ族の者達に話しかけ。コプリ族がお風呂に入ってる間に大急ぎで作り、準備したおにぎりや常備菜の煮物、あえ物、漬物の盛り合わせなどを振る舞い。

自身が持って来た大鍋の中身をお椀につぎ分け。仕上げに小ネギをパラリとのせ、出来立て熱々の腹持ち良い『ダゴ汁』を一人一人に配っていき。


「お腹が空いてると思ったので、おにぎりやダゴ汁を作ってきました。

鍋いっぱいに作ってあるので、おかわりもたくさんありますから、皆さん 火傷しないようにゆっくり食べて下さいね。」


お腹を空かせたコプリ族の皆に食べるようにニコニコと微笑みながら進める。

しかしコプリ族の者達は、ヨダレを垂らさんばかりに目の前の料理を凝視しているのにもかかわらず。遠慮や緊張して誰一人料理に手をつけようとはせず。


「みんな美味しいから食べよう!早く食べなくちゃ僕が食べ尽くしちゃうよ!」


「おいちいよ。おなきゃぽかぽかちゅるよ。ちゃべよ!ちゃべよ!」

※『美味しいよ。お腹がポカポカになるよ。食べよう!食べよう!』


ホカホカと白い湯気上げる美味しそうで、初めて見る料理の数々を目の前にして極度に緊張し。なかなか料理に手が出せずにいるコプリ族の皆に気づいたタリサとマヤラは、少々おどけながらも、皆が食べやすいようにと場の雰囲気を和ませ。

おにぎりやダゴ汁を美味しそうにモリモリと食べ初める。


するとそれを見ていた先程までタリサやマヤラと遊んでいたコプリ族の子供達から一人二人と恐る恐る食べ初め。

最後はコプリ族みんなが久しぶりの美味しいご飯に夢中になりながら、モグモグと食べ進めていき。


「美味しいコプ!この白い塊のダゴというのが、プルプルした歯ごたえで、やみつきになるコプ。」


「フウフウ……ハフハフ………美味しいコプ!

私は、この木の根みたいに見えるゴボウと言う根菜や、ねっとりした口当たりの芋の里芋が好きコプ。」


「うわー!こんなに具材がたくさん入ったスープ、はじめて食べるコプ!

それに村では、めったに食べられなかったお肉が、たくさん入ってるコプ。僕、この豚バラ肉というお肉が、大好きコプ!」


「私は、この茶色のスープが、風味豊かな味わいで、好きコプ。何で味つけしてるだろうコプ?」


「俺は、このおにぎりが、美味しくて好きコプ。

それに今食べてるおにぎりとさっき食べたおにぎりの中身が違うコプ!」


などのコプリ族の嬉しい感想を聞きながら、愛満達も大人のコプリ族達がゆっくりご飯を食べれるように、まだ一人で上手にご飯を食べられない幼い子供が、ダゴ汁等で火傷をしないように子供達を見ている黛藍達と共に、食事の手伝いをしてあげる。



◇◇◇◇◇



そうして、お腹いっぱいになった子供達がコクリコクリと頭をフラフラさせ眠りそうだったので、炬燵や炬燵近くに座布団を敷布団がわりに並べてあげ。

毛布とチャンチャンコを掛けて眠らせてあげていると、初めに愛満に声かけてきた男性や他5人のコプリ族の男女が、愛満の元へとやって来て、これからの事を相談したいと緊張した面持ちで話しかけられる。


そのため愛満達は子供達が寝ている炬燵を離れ。テーブル席へと移動して、これからの事や朝倉村に来たコプリ族の皆に何があったのかなどを詳しく聞く事になる。


「先ほどからコプリ族の私達のために本当にありがとうございますコプ。私達コプリ族は……………」


朝倉村にやって来たコプリ族の話を聞きと

彼らは愛満達が住んでいるチャソ王国に無謀に戦いを挑んだり。美樹を無理矢理召喚したクコン王国の とある貴族に、コプリ族独特の技術に目をつけられ奴隷として拐われ。無理矢理連れてこられたコプリ族の者達になり。


先の戦争で、自分達の主人にあたるクコン王国の貴族やその息子達が戦場で戦いに敗れ亡くなり。

ある日突然、自分達に無理矢理かけられていた拘束魔法が消え。

その貴族の家やクコン王国がゴタゴタしてる最中に、命からがらなんとか逃げ出し、気がつけば朝倉村にたどり着いていたらしい。


そして自分達コプリ族は、肌の色や背格好がゴブリン族に似ていた事で、人族の者達から昔は酷い迫害や差別を受けていたのだが

それがいつしか耳の形や顔立ちがエルフ族に似ている等の理由で、今度は手のひらを返したように人族から奴隷として狙われだし。


本来コプリ族とは臆病で者で、争い事や暴力、喧嘩などを極端に嫌う性質のため争いを恐れ、仲間同士で集まり暮らしているらしい。


そんななか、いつもはコプリ族の隠れ里で皆で力を合わせ、隠れ住んでいるのだが、たまに仕事で使う草花等を採取しなくてはいけない為。

コプリ族独自の自分の姿を自然に同化させる特殊な魔法を施し。里近くの森で、その材料を採取していたところ、その魔法を見破れる高度の魔術師を連れた貴族に拐われ。

同化の魔法や逃げ出せなくなる拘束の魔法をかけられる。


そのため貴族からの忌々しい拘束の魔法も解け。

なんとかクコン王国や貴族の元から逃げ出せたものの、隠れ里に帰りたくても帰り道も里の場所も解らず。

途方にくれ、ただ自然豊かな森を目指して旅をしていたらしい。

そんななか、たまたま店の前を掃除している愛満を見付け。何故か解らないが同化の魔法を解き、声をかけていたらしいとの事だった。



そしてそもそもクコン王国の貴族がコプリ族達を拐った理由は、コプリ族独自の織物や染め物技術に目をつけ。

その技術を使って金儲けを企んでいたらしく。囚われていた小屋の中には真新しい機織り器や染め物に使う道具が多々あり。


しかし運が良いのか悪いのか、そんな矢先にチャソ王国との戦争が始まり。

コプリ族を捕らえたクコン王国の貴族も王国で決められた貴族の義務とやらで、戦争に行かなくてはいけなくなったらしく。

そんな国中がゴタゴタしていた事もあり。

幸運なのか不運なのか解らないが、拐われたコプリ族の者達は、囚われた小屋に入れられたまま、貴族の家族や使用人達からにも忘れ去られ。そのため奴隷商などにも売られずに助かったらしい。


ちなみにコプリ族の者達、その小屋を逃げ出す際に『もったいない』との精神から、ちゃっかりと囚われた時に持っていた。

草花を採取する際に使用している魔法袋に、最先端の機織り器や染め物道具などを全て詰め込み、貰って逃げてきたらしい。


なのでこの村に住ませてもらえるならば、出来れば里でしていた機織りや染め物の仕事を生業として、生活していきたいとお願いされる。

そうすれば隠れ里の誰かがいつか気づいてくれ、自分達を訪ねて来てくれたり、無事を知らせられるからとの考えを教えてくれる。



などのコプリ族の者達の話を聞き。愛満達4人は、それぞれがクコン王国に怒りがわいており。


美樹は犯人が違うとはいえ、同じクコン王国の人間に無理矢理連れてこられるという、同じ体験をしたコプリ族を何処か自分自身と重ねてしまい。

何やら近親感もわいてきて、他人事とも思えず。忘れようとしていたクコン王国への怒りが沸き上がってきていた。


一方、美樹の親友の黛藍も美樹がこの世界に無理矢理連れて来られた経緯をわずかながら知っており。

元からクコン王国が大嫌いなため。

クコン王国の貴族の身勝手な振る舞いに、国が違えど同じ貴族として、改めてクコン王国の在り方に怒りを覚えていた。


そして愛満と愛之助の2人も、帰りたくても帰れないコプリ族の者達の気持ちを考えるとやりきれない思いや悲しい気持ちで胸いっぱいになり。

美樹達同様クコン王国に怒りを覚えながら、朝倉村にいるコプリ族の者達が安全に住める場所や生活等を話し合い始める。



◇◇◇◇◇



その後、みんなで話し合った末にだした結論が、万次郎茶屋の横に細長く広い造りで、山道に面した所から店舗、作業場、その奥に3階建てで中庭も有り、和の雰囲気になる。

漆喰の白壁が美しいマンション風の住居が続く、木目と漆喰が美しい、京町屋風の建物を愛満が建ててあげる事が決まる。


実は始め、辛い想いをしたコプリ族の者達を昔住んでいた故郷と同じ、静かで自然豊かな神社の奥の森の辺りに建てようかと話していたところ。

同じクコン王国に辛い思いをさせられた被害者仲間だがら、何か困った事があったら、直ぐにでも力を貸せるよう。自分が住んでる家か職場近くに建てて欲しいと美樹にお願いされ。


そして黛藍からも、この先何があるか解らず。

争い事などこれぽっちも出来ないコプリ族の者達が、また身を狙われる事があるかもしれないからと心配し。何あった時に近くの方がコプリ族の危険をすぐに察知できるからと力説され。

結果、コプリ族達の住まいや仕事場が、万次郎茶屋横の空き地へと建てる事が決まったのだった。


他にも、せっかくコプリ族の皆が頑張って作り上げた反物や染め物を自分達の手で売る方が、お客さんのニーズや創作意欲にも繋がり良いだろうと、村の皆から大人気の美容室を経営している美樹からのアドバイスもあり。

コプリ族が手作りした反物と染め物をコプリ族自身が販売する店舗もつける事が決定する。



◇◇◇◇◇



こうして、朝倉村に新しい種族のコプリ族の16人と新しい呉服屋風なお店が仲間入りするのであった。






◆◆◆オマケ◆◆◆



そして、その何年ヵ後。朝倉村に住むコプリ族が作る村独自の反物の柄や染め物が有名になり。

しばらくして朝倉村に住むコプリ族達を探していた隠れ里の家族が、朝倉村のある山から2つ離れたコプリ族の山から訪ねて来て、涙の再会をはたすのであった。

…………………………意外と近かったコプリ族の隠れ里。


その後も、隠れ里に住むコプリ族と朝倉村では、隠れ里のコプリ族から、新しい織物のデザインや染め物技術の勉強がしたいと朝倉村を訪れるコプリ族が現れ。

朝倉村からも、隠れ里に昔ながらのデザインや染め物なとの伝統技術のを学びたいとの要望があり。

朝倉村と隠れ里の間で、交換留学生の行き来が始まる。


そしてさらには、朝倉村のコプリ族の人達に大人気の味噌が隠れ里のコプリ族たちにも、その美味しさが伝わり。

ついにはコプリ族全体のソウルフードにまで、味噌は上り詰める。


そうして朝倉村と隠れ里の親交が深まり。

その結果コプリ族全体の機織り、染め物技術、味噌作り、味噌料理が格段に向上し。

コプリ族以外からも人気を博し、コプリ族の者達が安心安全に暮らせる世界へと変化していくのであった。




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