「海鮮味噌汁」と、正月飾りと餅つき
日に日に寒さが厳しく感じる今日この頃。
子供から大人まで楽しんだクリスマスを無事終えた異世界に在る万次郎茶屋では何やら、とある業者の人達が声を掛け合いながら町一番の大通りを飾り付けている様子で
「良いぞ、良いぞ!その調子。
……あっ、いきすぎちまったか、…………えっ~と悪ぃ、後もうちょっと右に3歩戻ってくれ。」
との、日本でも馴染み深い。赤や緑、ピンクや青等の色様々な、大変カラフルな色合いの作業服風な衣服に加え。頭に黄色のヘルメットを着用した。
まるでボディビルダーのような筋肉ムキムキでいて、2メートルは軽く越える大柄な体格が目を引く。巨人族になり。
朝倉町で力仕事からイベント関係の飾り付け等々の仕事を幅広く受け持ってくれている。『朝倉組』の親方クアマリが巨大門松を持つ同じ巨大族の者達に指示を出しながら朝倉町出入り口へと正月用の巨大門松を設置しており。
そんなクアマリ達の近くでは、同じ朝倉組に勤める手先の器用な猿族の者達が、山背の友人になる竹細工職人の丈山が作り上げてくれた。正月用の巨大なしめ縄を朝倉町出入り口に設置された巨大ウェルカム看板へと飾りつけしてくれていて
「あれ?なぁ、トウェイン。ここに飾る正月用のしめ縄って、本当にコレでいいのか?」
すっかり顔馴染みになっている。朝倉町に店を構える。美容師の美樹に染めてもらった。本人自慢の銀色の髪をソフトモヒカンにした猿族のモレッツが隣で作業している同僚のトウェインへと声をかけると
「えっ、お前何も聞いてなかったのかよ?今朝の朝礼の時に親方やオーナーの愛満が来て言ってただろう。
町内の店の入り口に飾り付ける正月飾りは『しめ縄』にするけど、町の顔とも言えるこの場所にはオーナーの愛満たっての希望で、千年生きるといわれるらしい。
何でも愛満のほうの故郷の鳥の一種になり。縁起物の代表格になる。鶴ちゅう鳥がモデルになった、この『鶴形』のしめ縄を飾るって言ってただろう。」
少し呆れた様子のトウェインが黙々と巨大しめ縄を飾り付ける為の器具を看板へと備え付けながらモレッツへと教えてあげた所。
何やらすっとぼけした表情を浮かべたモレッツが、少々大袈裟な様子で相づちをうちながら
「…あぁ!!確かそんなこと言ってたな!」
わざとらしく今 思い出したとはがりに言って、まるで話の話題を変えるかのように『鶴形』のしめ縄に飾り付けられた唐辛子を指差しながら
「なぁなぁ!それより鶴形に刺さってる、この唐辛子は何でなんだ?」
「あぁ、今度は唐辛子の事かよ?えっ~と、……確かそれは俺も詳しくは知らねぇんだけどよ。
何かその唐辛子が付いてる所は鶴の嘴になるらしく。魔除けの意味をもつ赤い唐辛子を付けてるんだと。
けど今回の『鶴形』のしめ縄はデカいから、鶴の嘴に見立てた所に唐辛子が付いた枝を加えさせてるらしいぜ。」
いつになく質問の多いモレッツに呆れつつ。こちらも何やら思い出した様子でボソッとトウェインが
「あれ?けど確か愛満についてきた愛之助がボソッと言ってたのを思い出すと、鶴と言ってる(でござる)が、ぱっと見、孔雀が羽?を広げたような姿にも見える(でござるよ)って言ってたような………………。
まぁ、鶴でも孔雀でもどっちでも良いか。俺にとってみれば縁起物にはかわりないんだから、…………それより一刻も早く正月飾りを無事飾り付け終えて、愛満が作ってくれてるはずの蟹や海老、貝や魚がゴロゴロ入ってる『海鮮味噌汁』を早く食いてぇぜ。
あれ、絶対旨えはずだぜ!
だって今日の為にわざわざ愛満が準備してくれたと愛之助が言ってたもんな!
はぁ~~、それにしても今日は一段とクソ寒ぃぜ!」
少々大きな独り言を呟きながら、鶴形のしめ縄を巨大ウェルカム看板へと無事飾り付け終え。
ついこないだまでのクリスマス仕様の飾りつけから一変。クアマリが親方を勤める『朝倉組』のお陰で、町は正月仕様へと今日一日ですっかり様変わりしたのであった。
◇◇◇◇◇
そうしてクアマリ達の頑張りで、町のあちらこちらに正月用の門松やしめ縄が飾り付けられるなか。愛満が店主を勤める万次郎茶屋にも正月用の門松やしめ縄が飾り付けられており。
今日のように一段と肌寒い日に正月飾りを飾り付けてくれている『朝倉組』の者達の為にと考え。
この日の為に準備した蟹や海老、貝や魚等々の具材が山盛りに盛り込まれ。それをシンプルに味噌で味付けし、味噌汁風にしたてあげた。
大鍋で作っている愛満の元へと、何やら光貴とタリサの2人がトコトコ仲良くやって来て
「ねぇねぇ、愛満!正月飾り見てきたけど、今年の正月飾りも立派でカッコいいね!」
「キュキュって編み込まれたワラがカッコ良かったへけっよ!」
万次郎茶屋の出入り口に飾り付けられた。たわわに実った米が付いたワラが編み込まれ。そこに赤い実を付けた南天や柚子、紙垂等で飾り付けられた『しめ縄』や『門松』を見て来た2人は、口々にカッコいいと嬉しそうに誉めてくれ。
何やら期待がこもった瞳を輝かせ。愛満が作っている大鍋の中身を気にしながら
「けどへけっ。そもそも何故、正月に門松や締切を飾るへけっか?」
「あっ!それ僕も思った。
…………けどさぁ~、確か前に愛満に教えてもらった気もしたから、僕、聞くに聞けなかったんだ。
…………愛満、もし前に教えてくれてたらゴメンね。」
最後は申し訳なさそうにタリサと光貴が愛満へと頭を下げ。質問するのだが
「えぇ、そんな事気にしてたの?全然、気にしなくても良いのに。
それに子供はそんな事気にしないで、自分が不思議に思った事は遠慮なんかせずに何度でも大人の僕や回りの人達に質問して大丈夫なんだよ。
それにね。正月に飾る門松やしめ縄は、お正月に降りてきてくださる年神様が迷わないようにと飾るものなんだよ。」
2人の頭を優しく撫でてあげながら大鍋の火を止め。台所内のちゃぶ台へと誘い。2人の大好きなカルピスジュースを振る舞いながら
「だから本当は、この家や店を営む僕が縁起良く、また心を込めて飾るのが一番なんだけど、…………。
まだまだこの町にも僕の故郷の正月飾りを知らない人達が居ると思うんだ。
だからね、そんな人達に無理矢理 正月飾りを飾り付けるようにお願いするのも心苦しいし。先の戦争でいろいろと沢山の物を失い。今現在必死に頑張ろうとしている人達にお金や気を使わせるのかもどうかと思ってさ。
それなら僕がオーナーと言うか、代表を勤めざるおえなかった『朝倉組』の皆に依頼してね。クリスマスの時のように町全体に正月飾りを飾り付けてもらえるようにしたんだ。」
と言って、いつものごとく。雇用の事等の相談が町長の愛満へとあったさい。
それならば、町で多彩に開催しているイベントの時などに働いてくれる人達を雇う事にして、雇用を生み出してしまえと考えた愛満のアイディア?閃き?から生まれたイベント会社になる。その名も『朝倉組』に頼んだ訳を教えてくれ。
【そうです!いつものごとく、始め巨大族のクアマリに会社を任せようとした所。いつものように断られ。
気がつけば何社目になる自身がオーナー、代表を勤める会社が増える事になったという訳です。】
「あっ、それからね。12月の29日に正月飾りを飾るのは『二重苦』に通じると言われて縁起が悪いとされていてね。
他にも30日に正月飾りをすると慌ただしい一年になるとも言われていて。
また31日は一夜かざりといって『たった1日だけ飾るのでは失礼』とか『事前に準備ができない御葬式の飾りと一緒になるので縁起が悪い』と言う理由で避けられたりしているんだ、
だから正月飾りをするのは、28日より前が良いと言われているんだよ。
後、正月につきものの『餅つき』も同じ理由で29日や31日には行わない方が良いと言われていてね。
もともと『苦をつく』ということから、9のつく日には餅つきを行わないしきたりがある地方や家もあるんだ。」
と教えてくれ。正月飾りを飾り終えた『朝倉組』が茶屋にやって来たと教えに来てくれた愛之助達と一緒に。
今年最後の仕事納めにして、朝から続いた外仕事で体の芯から冷えきってしまったであろうクアマリ達を労う為。熱々の『海鮮味噌汁』を振る舞うのであった。




