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婆ちゃん直伝「里芋の煮ころがし」と、食欲の秋



カランコロンコロ~~~~ン♪

と、万次郎茶屋の出入口に備え付けられたベルが茶屋に鳴り響く中。

普段のこの時間帯には、息子達と一緒に畑仕事で汗水垂らしているはずのタリサ達の年の離れた兄になる。兎族のレムが扉近くに立っており。

そんなレムに気付いた愛満が


「あっ、レムさんじゃないですか!おはようございます。今日は畑仕事お休みなんですか?

あっ、そうだ。良かったら今、最近山背がハマってる昆布茶煎れたんで、レムさんも一緒に飲みませんか?」


と声をかけた所。


申し訳なさそうに畑仕事の合間にちょっとしたお裾分けを渡しに寄っただけだとレムが断りの言葉を述べ。

続けて愛満からはテーブル席に隠れて見えなかったのだが、合計5袋にもなる。何やら大きな麻袋を次々に軽々と担ぎ上げ。万次郎茶屋奥に在る調理場へと運んでくれ。

今年初ものになる。今が旬の野菜のお裾分けだと言い。良かったら自宅や茶屋で食べてくれと手短に話して、あまり長居しては愛満の仕事の邪魔になるからと申し訳なさそうにしながら、愛満が満足にお礼の言葉を伝えられなかった中。

照れ臭そうに苦笑いを浮かべたレムは、足早に万次郎茶屋を後にしたのであった。



◇◇◇◇◇



連日の苦しいほどの暑さから肌寒さを感じる事が増えていき。空がすっかり秋空に変わった異世界の朝倉町に在る万次郎茶屋の台所では、普段ならばこの時間帯。自称万次郎茶屋の看板ボーイなる山背と2人。

まったりとした雰囲気のなか店番をしている所なのだが、何やら愛満が1人。黙々と野菜の下処理を頑張っているご様子で……


「ふぅ~~!……えっーと、コッチの泥を洗い落として水洗いした皮剥きの里芋は、これから蒸し器で蒸すとして

ソッチの皮を剥いて塩揉みした後、水洗いして一口大に切った里芋は茹でるでしょう。」


とある野菜の第一段階の下処理を終え。何やらこの後も、もう一仕事しなくてはいけないご様子で、…………そう、レムが今朝がた大量にお裾分けしてくれた。大量の里芋を前に!

愛満はやり忘れた事がないか独り言をブツブツ呟きながら確認をして、次にやる事を頭の中で手早く段取りを立てていた。



◇◇◇



と言うも、愛満とレムの冒頭のやり取りがあったように、今朝がたタリサ達の年の離れた兄になり。

朝倉町で農業を営む人達の組合の長になるレムから今年初ものになり。お裾分けと言うにしては量が半端なかった。

そう、まさに愛満位なら軽く隠れてしまいそうな。そんな大きな麻袋5袋にパンパンに詰め込まれた。秋が旬の里芋を大量にお裾分けして頂き。

嬉しいと共に里芋の扱いが少々大変な事を婆ちゃんから教わっていた愛満は、せっかく頂い里芋を無駄にしないためにも、大量の里芋の下処理を1人黙々と頑張っていたのであった。


そうして大量の里芋を水洗いしたり。剥きにくい里芋の皮剥きで酷使した両手を軽くプルプルさせていたりすると、途中心配した山背が厨房内へと顔を出してくれたりして


「よ、愛満や。お主大丈夫なのか?何やら1人で大量の里芋を処理すると言っておったのじゃが。

って、よ、愛満!お主腕が小刻みにプルプル震えて、何やら痙攣しておるぞ!」


「あっ、山背。店番ありがとう。うん、大丈夫。心配してくれて、ありがとうね。

ほら、せっかくレムさんから秋が旬の里芋を5袋も頂いた訳じゃん。食べ物は粗末に出来ないし。

それより何より一番は、レムさん達がせっかく真心込めて育ててくれた里芋になる訳だから、悪くなる前に下処理を終えたいと欲張ちゃってさぁ…………。

ハハハァーーー、………こうして情けなくも腕がプルプルしちゃってる訳なんだよ。」


愛満が照れ笑いと言うか、苦笑いを浮かべながら返すと


「そうか、そうか!それは良い心掛けなのじゃ!偉い偉い!

うんうん、ワシもまた店番頑張るからの。愛満、お主も里芋の調理頑張るのじゃぞ!」


との、何やら少々上から目線とも感じる言葉を山背が残して、また万次郎茶屋の店番へと戻ったりする中。


今だ腕をプルプルさせながらも、そこは働き者の愛満。

大量の皮付きの里芋を蒸し器で蒸し始めたり。

これまた皮を剥いた大量の里芋を大鍋で茹で始めたりと、自身が後々使いやすいようにと里芋の下処理を黙々と行っていき。


「ふぅ~~!それにしても婆ちゃんから里芋の事教わっとって本当に良かった。

確か里芋って乾燥と寒さに弱いらしいんだよな。

だから普通、里芋を保存する時は、新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所や野菜室に保存しておいたりするらしいんだけど、冷蔵庫なんかに長期間保存しておくと、たまに低温障害なんかで里芋が傷む事もあるって婆ちゃんが言ってたし。

そうならない為にと言うか、茹でたり蒸したり加熱したりして里芋を冷凍してしまえば軽く1ヶ月は持ってくれるし。

最初、魔法袋に保存しておこうかとも思ったけど、後々の使いやすさを考えると、ちょっと無理してでも一変に下処理をしちゃった方が、俺的には楽だからもう一踏ん張り頑張りますか!」


自身に気合いを入れ直して、今度は大鍋に昆布と鰹節でとった出汁や里芋、砂糖を加え。落し蓋をした後、鍋を強火にかけ。

煮たったら今度は火を弱火に弱めたり。里芋に竹串を刺してすっと通るまでコトコト煮つつ。


合間に明日の軽食用のトンカツに衣を付けたり。お味噌汁の具材の蕪や油揚げを切り。明日用に下拵えをしたり。


途中、鍋の様子を確認して里芋が煮え所に醤油を加え。

里芋に煮汁がむらなくしみるように箸で時々上下に返したりしながら、鍋の中の煮汁がほぼなくなるまで煮つめ。

仕上げに婆ちゃん直伝の、その名も『鍋揺らし』事。大鍋を揺すって鍋の中の里芋を転がしながら、汁気がほとんどなくなるまで煮詰めていき。里芋へとツヤや照りを出して、愛満が大好きな祖母から習った。婆ちゃん直伝の『里芋の煮ころがし』をコトコトと煮ていった。



◇◇◇◇◇



一方、今日も元気良く苺忍者隊本拠地で資金集めの内職をしていたタリサ達が、本日何体目かになる『秋限定のはりぐるみ』を作り終え。長時間同じ体制で、少しこわばってしまった体を解すように屈伸運動をしたりする中。


長時間の内職仕事で喉が乾いただろうと、苺忍者隊・隊長になる愛之助が気をきかせ。

自身を含め。タリサ達が大好きなカルピスの秋限定になる『葡萄カルピス』を作ってあげたりしていた所。

苺忍者隊本拠地の建物内へと、何やら美味しそうな匂いが立ち込めて来て


「クンクン、クンクン…………う~~~~ん♪何か美味しそうな匂いがしてきた!」


「クンクン、クンクンクン……本当へけっねぇ~♪

う~~ん、………あっ、コレはへけっ!愛満の煮物の匂いへけっよ♪

……へけっ、へけっ♪………………はぁ~~♪本当に美味しそうな匂いへけっねぇ~~♪何だかお腹すいてきたへけっよ!」


「クンクンクンクン………本当じゃあ!僕のおにゃかをくすぐるようにゃ、大好きな愛満の煮物の匂いがしてきちゃねぇ♪クンクンクン♪」


「クンクンクン、クンクンクン………うんうん!本当でござるね。

これは兄者の愛満が作ってくれる煮物の匂いでござるよ!

はぁ~~……………この醤油や砂糖が使用された、何とも言えない煮物の匂いがまた堪らないでござるよ♪

はぁ~~♪何やら拙者もお腹が空いてきたでござる。」


食いしん坊4人組のお腹が騒ぎ始め。何やら4人の中で素早いアイコンタクトを取り合うと、やおらテーブルの上の物を黙々と、また手早く片付けていき。

片付けを終えた4人は、一言も言葉を話す事もなく。足早に万次郎茶屋へと移動し始める。



◇◇◇



そうして万次郎茶屋に帰って来た愛之助達が足早に茶屋へと足を踏み入れると


「おっ!何じゃあ愛之助達、もうお帰りか?確かに今日は夕方まで本拠地の方で過ごすのではなかったのか?」


つい先程まで居たお客さんの接客を終えた山背が、万次郎茶屋へと帰って来た愛之助達を不思議そうに出迎えてくれたのだが、すっかり頭の中は愛満がコトコト煮ているであろう。

美味しい香りを放つ煮物の事でいっぱいの愛之助達は、そんな山背の事を軽くスルーし。

何やら美味しそうな匂いを放つ現況の元へと、愛満が居るであろう台所へと足早に移動して


「よしよし!里芋の煮ころがし、煮汁もほぼなくなるまで煮た事だし。

後、ちゃんと婆ちゃんに教わったとおり。最後に里芋にツヤや照りが出るように煮詰めたから、これで『里芋の煮ころがし』は完了だね。

……えっーと…………後は、このまま里芋が冷めるのを待って冷蔵庫になおしたら『里芋の煮ころがし』と『薄切り蓮根とホタテの酢の物』で、明日の軽食の小鉢はバッチリだし。

主菜にはトンカツの下拵えも終えているから、他にし忘れた事はないはず、……………うん、大丈夫なはず………。

………あっ、そうだ。『里芋の煮ころがし』久しぶりに作った事だから、少し味見してみようかなぁ?」


との、愛満の独り言が台所から聞こえてくる中。


タイミングバッチリの味見の場面に出くわした愛之助達は、嬉しそうに4人で、少々悪い笑みを浮かべ顔を見合わせ。

ニコニコと満面の笑みを浮かべて台所へと足を踏み入れると、ちゃっかり『里芋の煮ころがし』の味見する権利を見事勝ち取り。


「ハァ~里芋の煮ころがしって、お肉や魚介が入ってないのに何でこんなに美味しいんだろうねぇ♪

それに里芋に醤油なんかの味がしみこんでて、スゴくご飯に良く合いそう!

うんうん、本当に美味しいよ、愛満!」


「おいちいねぇ~~♪」


「本当に美味しいへけっね。それに全部の里芋が綺麗に6角形の形をしているへけっし。そんな里芋達がまるで黄金色と言うへけっか、醤油色に染められているへけっよ♪

へけっ、へけっ♪口に入れると里芋がホロッと崩れて、本当に美味しいへけっよ♪」


「皆が言うとおりでござるね。この里芋の煮ころがし、本当に美味しいでござるね!

この里芋独特のぬめりと言うでござるか、そんな里芋独特の食感も楽しめるでござるし。

何より一番は、里芋一つ一つに丁寧な下拵えが施され。手間隙惜しまず丁寧に煮てあるんだろうなと言う事が解るでござるよ!

うんうん、料理とは愛情とも言うでござるし。煮物が美味しいと言う事は、本当の意味での料理上手な事だと拙者思うでござるよ!

やはり拙者の兄者は本当にスゴいでござるね~~♪」


との、幸せそうにしみじみと味見させてもらった『里芋の煮ころがし』の感想を述べるの愛之助達なのであった。



◇◇◇◇◇



こうして沢山の里芋の下処理を無事終えた愛満を含め。1人店番を頑張ってくれた山背。端正込めて秋が旬の里芋を真心込めて育ててくれ。愛満達へとお裾分けしてくれたレムやその家族。

愛之助達、食いしん坊4人組の食欲の秋真っ只中のとある日の1日が、ほのぼのとした雰囲気のなか過ぎていく。




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