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和菓子『琥珀金魚』と、和装店の看板娘の売り子さん



夏には付き物の猛暑日が続き。日々の暑さが辛い日本同様。異世界の朝倉町でも、ここ連日の酷暑日が続いており。


異世界の朝倉町に住む女性達の間では、お休みの日の甘味屋さんで食べる。体の中から冷やしてくれる。冷たくて甘い食べ物を食べるプチ贅沢が、何やら急に流行り始め。


朝倉町に在る甘味屋の一つ。『万次郎茶屋』でも当然


「はいはい、お待たせしましたのじゃあ。仁子(にこ)注文の『苺練乳かき氷』と『お抹茶』セット

和子(わこ)注文の『小豆玄米パフェ』と『玄米ラテ』セットなのじゃあ。

じゃあ、コレでご注文の品は以上で間違いないかのう?

ではでは、ごゆっくりどうぞなのじゃあ。

…………………はぁ~~~、……それにしても今日は女性のお客さん達が多いのう~。…………………何でなのじゃあ???」


「山背、お願い~!()番テーブルさんご注文の『檸檬フレンチカステラのアイスクリーム添え』と『アイス大福のぜんざい仕立て』、『苺サイダー』、『カルピス』完成したから持って行ってー!」


自称万次郎茶屋の看板ボーイ・山背が、いつになく女性客で賑わう茶屋内を不思議そうに見渡しつつ。

首を傾げながら、時々サボりつつ。………嘘、程々に?…………いや、山背なりに愛満と2人。茶屋のお仕事(接客)を頑張っていたのであった。



◇◇◇◇◇



「はい、お待たせしました。ご注文の品の和菓子『琥珀金魚』と『苺ミルク』だよ。

それにしても朝霞(あさか)北瀬(きたせ)遥南(はるか)も浴衣が良く似合ってるね。

こんな暑い日には、涼しげな見た目の浴衣の人を見ていると、こっちの方まで涼しく感じてくるよ。

うんうん!その朝霞が着てる涼しげな色合いの淡い水色の朝顔(あさがお)柄の浴衣も夏にピッタリで可愛いし。

北瀬が着てる元気が貰えるような。満開に咲き誇る向日葵(ひまわり)柄の黄色い浴衣も、また可愛らしいし。

遥南が着てる淡いピンク色の苺柄の浴衣も、優しい色合いと相まって遥南に良く似合ってて可愛いね。

それに苺柄の中に白い苺の小花も描かれてて、それもまた良いんだよね。」


お客さんで賑わっていた茶屋内も落ち着き。一段落した様子の愛満が、愛之助やタリサ達の友達にして、苺忍者隊の隊員でもある北瀬や遥南。

北瀬や遥南の姉になる朝霞達が注文した和菓子を3人の前に置いて上げながら、可愛い浴衣姿の3人の小さなお姫様をサラリと嫌味なく誉めて上げる。

【ちなみに愛満。小さい子供や年配の女性ならば、何の考えなしに素直に誉められます。】


するとそんな愛満からのお褒めの声に、しっかり者のお姉さんの朝霞は照れくさそうに頬を染め。

おしゃまな北瀬や遥南達は嬉しそうに笑みを浮かべて、少々興奮気味に鼻の穴を膨らませながら


「さっ~~~すが~、愛満!解ってるぅ~~~!!!

そう!そうなの!このお父さんが作った浴衣、本当に可愛くてね!着心地も最高だし!

まず何よりも一番!私達の為にお父さんが生地から選んでね。作ってくれた浴衣になるのよ!」


「そうそう!そうなのよ!」


朝倉町で和装店を営む。大好きな父親の右里が自分達の為に作ってくれた浴衣を誇らしそうに愛満に見せ。

何やら遥南が(おもむろ)に席を立ち。浴衣の帯を外して、浴衣を脱ぎ始め。


「……あっ!ちょっと遥南、いくら今は女性のお客さんがチラホラとしか居ないと言っても、男の僕が居るんだし……ちょっとちょっと!」


『男の僕が』の部分で軽く遥南や周りの女性のお客さんから苦笑いと言うか、微笑ましそうに笑みを浮かべられながら、愛満が止める間もなく。帯を取り、浴衣を脱いだ遥南が


「ほら、見てよ愛満!この浴衣ね。愛満がお父さんに教えてくれたツーウェイ浴衣って言うの?

そんな上下に分かれたツーウェイの浴衣になっててね。

ワンピースの上に、下っ腹位までの長さの浴衣を羽織り。軽くて柔らかい帯で結んであるだけだから、本当に動きやすくて着るのも簡単なのよ♪

後、慣れるまでは少し動きにくい浴衣の裾?って言うの?

そんな浴衣の足回りの部分がワンピースのスカート部分にあたるから、足回りもスゴく楽だし。

チョコチョコと動き回ってしまう子供の私達には本当にピッタリな浴衣?服?になる訳なのよ!」


突然『ツーウェイ浴衣』なる浴衣の説明を力説し始め。

黙って椅子に座り遥南の姿を見ていた北瀬も遥南に釣られるように席を立ち。遥南と同じように浴衣を脱ぎ。

浴衣の下(トップス)に着ている向日葵柄の可愛らしいワンピースを周りの席の女性客達に良く見えるように一度その場でクルリと回り。


「そうそう。それに実は、ここだけの話。

この『ツーウェイ浴衣』。去年から家のお父さんが営む和装店で売り出し始めた品になるんだけどね。

すでに一部のオシャレさん達の間では密かに噂になってるみたいで……………。

だからね、そんなオシャレさんな人達の要望なんかが沢山あってね。

去年の冬からお父さんや朝霞姉ちゃん達が頑張ってくれて、今年から家の(和装店)で、このツーウェイ浴衣の『大人番2WAYタイプの浴衣』を売り出し始めたんだよ。……ここだけの話ね!

けどさぁ~、オシャレさんな愛満がそこまで誉めてくれるんだもん!

うんうん!これはオシャレ好きな人達には欠かせない一品になる気と言うか、予感がビンビンするんだよねぇ~♪

ねぇ、遥南。遥南もそう思わない?」


「うんうん!絶対なるわよ、北瀬!私もそんな気がするもの!

それにね!このツーウェイ浴衣なら夏の間、(朝倉町)のあちらコチラで開催されている夏祭りにも気軽に着ていけるし。

お洗濯も簡単そうで、普段使いの時にはトップスというか、上の浴衣を脱いで、今の私達みたいにワンピース姿で着る事も出来るでしょう。

それにワンピースと一言に言っても、ワンピースの胸元がゴ、…ゴム?……………えっとゴムと一緒に生地を縫い込んでて、生地が段々によっててね。生地が伸び縮みするゴ………ゴムの何だったけ?」


「(コソコソ)遥南、ゴムシャーリングだよ」


「そうそう!胸元がゴムシャーリングになっててね!

更には肩紐(かたひも)が調整・取り外し可能になってるから浴衣バージョンやワンピースバージョンにプラスして、肩紐を外したワンピース姿にもなれるしね!

お財布にも優しい一石二鳥ならぬ、一石三鳥の品になる訳よ!」


との、何やらちょっとしたテレビショッピングばりのツーウェイ浴衣の説明、売り込みのような出来事?お喋り?…………遥南と北瀬の話が無事修了し。北瀬達2人が周りの女性客の反応を確認しつつ。

愛満が思わず遥南達の空いてるテーブル席に座り。2人のやりとりを楽しそうに北瀬達の姉、朝霞と一緒に見ていた中。


満足そうに大きく頷いた遥南と北瀬の2人は、元居た席に戻り着席し。愛満が持って来てくれた注文の品、和菓子『琥珀金魚』に向き合うと


「ハァ~~~♪さっきも商品ケースの所で見て思ったけど、この『琥珀金魚』本当に綺麗で可愛いわよねぇ~♪」


「本当、本当♪この涼しげな、水のような透明な生地の中で泳いでる赤い金魚や、水面に浮いているみたいに見える。上に乗った緑の葉っぱが夏ぽくて、また良いのよねぇ♪」


先程の事がなかったかのように、まずは和菓子『琥珀金魚』の見た目を楽しみ。

お次は皿に添えられたフォークを使って『琥珀金魚』を食べる為。『琥珀金魚』の琥珀羮の生地の部分にフォークを差し込み。


【※子供でも食べやすいようにと、万次郎茶屋ではお子さんを始め。大人の方でも声をかけて頂ければ、木製のフォークを和菓子に添えて茶屋内で提供しております。】


「あっ、見た目が水の中で金魚が泳いでるから、この透明な部分ゼリーみたいに柔らかいと言うか、プルプルしてるのかと思ったんだけど、けっこう弾力があるんだね、遥南。」


「本当だね、北瀬。

……………う~~~ん♪それにしてもいつ食べても愛満が作る和菓子は美味しいねぇ♪

この和菓子『琥珀金魚』にしても上品な甘さで最高だし!

それにこの透明な生地の部分と違って、中に埋め込まれ赤い金魚の部分も食感や風味が違って美味しい~!」


「うんうん!遥南の言うとおり。一つの和菓子で食感が2つ楽しめて最高だよね!

後、見た目からも暑い夏の時期に涼感が楽しめて、本当に夏にピッタリの和菓子だよ♪

ねぇねぇ、愛満。この和菓子『琥珀金魚』、家の『ツーウェイ浴衣』のように一石二鳥になる最高の和菓子だね!」


和菓子『琥珀金魚』を食べて満足気な様子の北瀬が、北瀬達の姿を優しく、微笑ましそうに見守っていた愛満に話し掛け。


【ここで注意!

愛満が北瀬達を優しく見守っていた訳は、なかなか会えない姉の娘。姪っ子の姿と北瀬達の姿をダブらせていた為であって。

姪っ子と言うか、北瀬達の弟・花夜の事もあり。愛満にとって北瀬達は年の離れた妹のような感じで接しており。

決して【()】から始まる人物ではありません。

むしろ自身の見た目が幼すぎ。この前なんか町への旅行客のお子さんから同い年と思われ。タメ口で話し掛けられ。年を聞かれた程で………………。

ある年齢を境に身長も伸び悩んでおり。その事にも日々悩んでいた。】


遥南も、遥南達を優しい眼差しで見てくれていた姉の朝霞に和菓子『琥珀金魚』を食べてみてよと進める中。


「あのね、北瀬。この和菓子『琥珀金魚』は、実は僕の故郷の有名な羊羮(ようかん)を販売しているお店と言うか、僕も故郷に居た時好きだった和菓子屋さんが7月限定で販売している商品を参考にしててね。」


何やら北瀬に和菓子『琥珀金魚』の事を質問された様子の愛満が、自身お手製の『琥珀金魚』の簡単な説明を話始め。


「その羊羮の有名な和菓子屋さんの7月限定の和菓子が、水面に浮かぶ青葉の陰を金魚が泳ぐさまと言うか、寒天に砂糖を加え固めた『琥珀羮(こはくかん)』の中にね。

白餡を使った練切(ねりきり)の金魚が泳ぐ様子を表していたんだけど

家の和菓子『琥珀金魚』は、同じく練切(ねりきり)で作った。僕が好きな赤の出目金が池の水面を泳いでる所に、池近くに生えている木の青葉が水面に落ちてきた所を表しているんだ。

だからアチラのお店の和菓子のデザインと言うか、和菓子の作り方が琥珀羮の中に金魚と一緒に青葉が沈んでいるデザインだとするとね。

家の和菓子は琥珀羮の上と言うか、水面の上に青葉が乗っているデザインになってるんだよ。」


将来、姉の朝霞同様。父親が営む和装店で働きたいと常々言っている北瀬の為。北瀬がここ最近一番勉強している。和菓子のデザインの違いを愛満なりに解りやすいように教えてあげ。

更に付け加えるように


「あ、後、家の茶屋も本当は和菓子『琥珀金魚』7月限定の商品になるはずだったんだけどさぁ。

お客さん達から子供の浴衣なんかに良く使われている。金魚がモチーフになった和菓子の見た目が可愛いからって、孫が来た時に金魚柄の浴衣を着た孫に食べさせたいってお願いされてね。

本当は7月いっぱいで販売を終える所を、今年から夏限定の和菓子に格上げした。ちょっと珍しい和菓子になるんだ。

だからって言う訳じゃないけど、ここだけの話。

(コソコソ)僕、ここ毎日練切(ねりきり)で、赤い出目金(でめきん)作りを頑張っている訳んだよ。」


愛満が内緒話のように、面白おかしそうに少しおチャラケながら、ほんのり赤く色づいた爪先を見せながら北瀬に話していた所。


何やら一組の万次郎茶屋に来ていた。朝倉町への旅行客のお客さんが実に申し訳なさそうな様子で朝霞達のテーブル席へとやって来て、朝霞達へと遠慮がちに声をかけ。

朝霞達が着ていてる『ツーウェイ浴衣』を興味津々な様子で見つめつつ。

見た目からして、かなり高貴な身分の年配のご婦人や、その娘さん達だろうと予想される中。

幾人かのお付きの者らしき人と一緒に、その服は何処に行けば買えるのかと朝霞達が子供だからと馬鹿にした様子もなく。横柄な態度もとらず。

逆にコチラの方が申し訳なくなるほど優しく丁寧(フレンドリー)に接してくれ。


改めて北瀬達の『ツーウェイ浴衣』の説明を聞き。北瀬達自慢の『ツーウェイ浴衣』を親子共々気に入り。

それはそれは、かなりの数の柄や色違いの『ツーウェイ浴衣』を大人用から子供用まで幅広くお買い求め下さり。

更には、そんな『ツーウェイ浴衣』着用の時に使用できる。和小物やアクセサリー類等を大人買いされる。



◇◇◇◇◇



こうして、酷暑厳しいとある日の朝倉町の1日が過ぎていくのであった。





【登場人物】


北瀬(きたせ)

朝倉町で和装店を営む右里の娘

父親の右里が切ってくれる『おかっぱ』の髪型がお気に入り

将来、父親のお店で働くのが夢


遥南(はるな)

朝倉町で和装店を営む右里の娘


朝霞(あさか)

朝倉町で和装店を営む右里の娘

父親の右里が営む店でお手伝いしている

しっかり者の心優しき女の子


愛満(よしみつ)

山背(やませ)

ここ最近の酷暑にも負けず、今日も万次郎茶屋で頑張って働いているご様子


仁子(にこ)

朝倉町で、お茶畑からお茶屋を営む『抹茶』好きの女性


和子(わこ)

仁子の妹

『玄米茶』好き


・愛之助、タリサ、マヤラ、光貴

今回、愛之助が運営するプールに友達と一緒に皆で遊びにお出掛していた



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