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「あぶあバーグ」と初午の日の相談事


「いかがですか~~~♪寿司職人・亮平父ちゃん特製の『いなり寿司』お持ち帰り出来ますよ~♪」


「スゴく美味しいですよぉ~~~♪」


「いらしゃいませ~、いらしゃいませ~♪

米屋特製、『いなり巾着』いかがですか~~~!一度御賞味下さい~~~♪」


何やらアチラこちらの店で、お店独自のいなり寿司の売り込み(販売)に熱が入る中。


日本で言う所の初午(はつうま)の日。

2月最初の第1(うま)の日を『初午(はつうま)』と呼び。

日本各地に在る、農業の神様『稲荷神』を祀る稲荷神社では、この日に五穀豊穣や商売繁盛を願い『初午祭』が行われており。


愛満が治める朝倉町でも、何やら初午と言うか、稲荷神社繋がりで、稲荷神社等に良くお供えされてある『油揚げ』と共に…………とある人物が大好物になるアル食べ物……………と言うか、先程話に上がっていた『いなり寿司』を大々的に取り上げ。

とある人物事、いつもはヤル気の無さがチラチラ見栄隠れしている狐族の朱冴が考えた。

去年の初午の日のお店独自の種類様々な『いなり寿司』の販売に味をしめ。

町全体を巻き込んだ『いなり寿司選手権』なるものが開催されており。

朝倉町に在る飲食店では、一日限定になるのだが、思い思いの『いなり寿司』が販売されていて

『いなり寿司選手権』本部テントで気に入ったお店の『いなり寿司』に投票すると、ちょっとした粗品が貰える事になっていた。


その為、街には『いなり寿司選手権』の噂を聞きつけた。大勢の『いなり寿司』が好きな人達が集まっており。

ここだけの話。朱冴繋がりで狐族の者達が少々……………いや、かなり多いいのだが、いつになく、いなり寿司熱フィーバーで、町全体が賑わっていたのであった。



◇◇◇◇◇



そうして愛満が亭主を勤める万次郎茶屋では、いなり寿司合戦が行われている最中(さなか)

愛満の茶飲み友達の1人になり。

その人が普段お世話をしている。とあるお方が大好物の『いなり寿司』を食べ歩く為、側使え2人を従え(巻き込み)、街を探索している中。

時間に余裕が出来た事もあり。久しぶりに愛満とまったりお茶の時間を楽しみつつ。お喋りに花を咲かせていた所。

茶飲み友達が常々心配している心配事が、何かの拍子で話の話題になった事もあって、物知りの愛満へと相談していた。


「そうなんだ。やっぱり若様、『いなり寿司』や『油揚げ』しか食べないんだね。…………う~~~ん、それは困るよね。

それにどちらかと言えば、出汁(だし)や醤油系統の味付けが好きになるんだね。

だから街の子供達が好きなハンバーグやオムライス、唐揚げ何かに工夫して、野菜やお肉を食べてもらおうにも見向きもしないんだ。

…………う~~~ん、それはそれは稲実(いなみ)婆ちゃんと共に稲造(いなぞう)も、毎日の若様の食事事情には頭を悩ませる訳だ。

本当、大変そうだね。」


銀色の狐耳や尻尾と共に、愛満と変わらない位の小柄な体格でいて、可愛らしい着物姿の稲実(いなみ)婆ちゃん事。

愛満が夢か現実か解らないなか建てたらしい。某○田の信○様の建てたお城そっくりになり。そんなお城そっくりな城に住む。

城の主となる若様達と仲良く暮らす。若様の婆やになる、稲実(いなみ)婆ちゃんからの『いなり寿司』と『油揚げ』しか食べてくれない。

若様の偏食気味な食生活の相談を受けて、それは大変だと愛満が頭を悩ませていると


「そうなのよ、愛満ちゃん。

それにね。前に孫の稲成(いねなり)稲造(いなぞう)達が話したかもしれないけど、基本若様は空気中に漂う気を取り込めれば食事をしなくても大丈夫なんだけれど………。

こちらの世界に渡る為に色々無理をした私や夫、稲成や稲造達は、僅かばかりは口から物を食べて気を取り込まなければ、今は生きていけないくらいまで力が弱まってしまってる訳だし。

そんな私達の食事姿を見ていて、若様も食事を取りたがるんだけれど、若様の好きな『いなり寿司』や『油揚げ』しか選り好みして食べようとしない訳なのよ。

……………ハァ~、まぁねぇ、頭ではそれで大丈夫だとは解っているんだけれど、………やっぱり若様の体の為には、『いなり寿司』や『油揚げ』以外にも野菜やお肉を食べさせた方が良いとかとも考えてしまって、……………どうしたら良いと思う、愛満ちゃん?

若様の好きなようにさせていても良いのかしら?」


稲実婆ちゃんもどうしたら一番良いのか解らないといった様子で話。

そんな稲実(いなみ)の話に相槌をうちながら、お婆ちゃん子でもある愛満は、稲実(いなみ)婆ちゃんの力になろうと必死で考え。


「そうだよねぇ~。いくら気を取り込めば大丈夫だと解っていても、毎日『いなり寿司』と『油揚げ』しか食べないのを見ていた心配になっちゃうよねぇ。

………う~~~ん、どうしたら一番良いんだろうねぇ、稲実(いなみ)婆ちゃん。」


「うんうん、本当よねぇ~。」


若様の偏食気味な食事生活を議題に2人、頭を悩ませていると、何やら思い出し様子の愛満が声を上げ。


「………………あっ、そうだ!

稲実(いなみ)婆ちゃん、確かね。この前、若様が茶屋にタリサ達と遊びに来た時、お昼ご飯をご馳走したんだ。そしたらその時、油揚げを使った『油揚げとしめじの炒め煮』を出したんだけど、若様ペロリと全部食べてくれてね。

だからさぁ、きっと油揚げが使われた料理なら、少しは抵抗なく食べれると思うんだ。

だから、ここは1つ。油揚げを使った料理を作ってみて、一度若様に食べてもらってみたらどうかなぁと思うんだけど………稲実(いなみ)婆ちゃん、どう思う?」


「油揚げを使った料理ねぇ~…………………考えもしなかったわ。

私達もアチラの世界では基本食事などしなくて良かったから、料理などしたこともなくて、油揚げを使った調理法などもあまり知らないのよ。

それにアチラでもたまにお供えされて食べてた『いなり寿司』や『油揚げ』も、そのまま気を取り込んで(食べてい)ただけだし。

こちらに来てからは、『いなり寿司』は亮平さんの所やコペイさん達の所で買うだけで

『油揚げ』にしても、稲造(いなぞう)が朱冴さんから聞いた食べ方の軽く焼いてお醤油をかけて食べるだけだったから、試してみるのも良いかもねぇ。」


愛満の提案に賛成して、茶屋の店番を山背へと頼むと、2人は愛満宅の台所へと移動して、若様の為の油揚げを使用した料理作りを始めるのであった。



◇◇◇◇◇



「そうそう、みじん切りにした玉ねぎや人参、椎茸をね。

バターで軽く炒めて、粗熱を取るため、少しフライパンの中で広げて置いておくんだ。

で、その間にボウルの中にさっき準備しておいた合い挽き肉、溶き卵、塩コショウを入れて、粘りが出るまで手で練り混ぜるんだよ。」


愛満は、料理初心者の稲実(いなみ)婆ちゃんに少しでも解りやすいように心がけながら説明しつつ。

何やら油揚げを使っていて、若様が食べてくれるような、若様好みの味付けのアレンジ油揚げ料理の作り方を一生懸命教えて(説明して)いた。


「愛満ちゃん、お肉の混ぜ具合、コレで大丈夫?」


「どれどれ、………うんうん、それで大丈夫だよ。さすが稲実(いなみ)婆ちゃん、バッチリだよ!

じゃあ、粘りが出るまでお肉を練り混ぜたから、次はさっき牛乳を加えてしっとりさせたパン粉と、粗熱を取った野菜類をお肉が入ったボウルに加えてね。全体がなじむまで混ぜ合わせるんだよ。」


稲実(いなみ)婆ちゃんに優しく話しかけつつ。

自分のタネを混ぜ終えた愛満は、手早く大根おろしをすりおろして、軽く水気を切り。


今回の料理の主役にもなる『油揚げ』を冷蔵庫から取り出して、お肉を混ぜ終えた稲実(いなみ)婆ちゃんと共に、菜箸を一本使い。

油揚げの上に菜箸を一本のせ、両手で押さえながら転がして、包丁で油揚げを横半分に切り。

切り口から破れないようにゆっくりと油揚げの内側に指を使って、角までしっかりと開き。

油揚げを袋状にして、先程作った『あぶあバーグ』のタネが詰め込みやすいように油揚げの口を外側に少し折り返して、油揚げ一切れに『あぶあバーグ』のタネを1/4量ずつ詰め込み。

最後は、開いた油揚げの口を軽く閉じ。


また少し緊張気味の稲実(いなみ)婆ちゃんの緊張を解くよう、少々おどけた口調で、手はしっかりと油揚げにバーグのタネを詰め込みつつ。


「あのね、稲実(いなみ)婆ちゃん。

この『あぶあバーグ』、実は家の美樹がハンバーグが大好きで、何かハンバーグを使って酒のつまみになるような物が出来ないかとリクエストされて作った料理になるんだ。

だからバーグのタネと言いつつ。作る手順はハンバーグのタネを作るのとあんまり変わらないし。

今回は玉ねぎや人参、椎茸を肉ダネに加えているけど、春にはみじん切りの竹の子や夏先なんかはスナップエンドウでしょう。

それに秋にはキノコ類は勿論の事。蓮根や牛蒡(こぼう)なんかをプラスしても、歯応えや旨味がプラスされて美味しいんだよ。

あぁ、そうそう。少しサプライズ感を加えるなら、1つだけ当たりが有るとか言って、うずらの卵を肉ダネの中に隠して油揚げの中に詰め込んでみるのも若様の興味を引くかも知れないね。」


今回作っている油揚げ料理が、そもそも美樹のリクエストから誕生した料理だと話。


「へぇ~~、そうなの。それは勉強になるわねぇ。愛満ちゃん、ありがとう。

けど、それにしても愛満ちゃんは本当に偉いわねぇ。だって食べる人の事をいろいろ考えながら料理してるんだもの。

うんうん、偉い偉い!偉いわ♪」


愛満の話に稲実(いなみ)婆ちゃんが『偉い偉い』と言って誉めてくれる中。

照れくさそうに照れ笑いを浮かべた愛満は、話題を変えるように慌てた様子で話を続けて


「……そ、そうかなぁ~、エヘヘヘ…………エヘヘヘへ~~~~♪♪

…………あぁ、そうだ!あのね、この後はね。タネを詰め込んだ油揚げを中火で、フライパンで焼き色がつくまで両面こんがりと焼いてね。

その後、火を弱火に弱めてからフライパンに蓋をして、ときどき返しながら蒸し焼きにして中まで火を通し。

お好みでと言うか、食べやすいように『あぶあバーグ』を縦半分に切ったりして、お皿に盛り付け。

準備しておいた大根おろしや小ネギをのせて、ポン酢醤油をかけて食べる事になるんだ。

他にも、今日はポン酢醤油にして食べるけど、蒸し焼きの時にすき焼きのタレでサッと煮絡めても作っても美味しいんだよ。」


今回作った大根おろしとポン酢醤油で食べる『あぶあバーグ』の他、すき焼きのタレで煮絡めて作る『あぶあバーグ』も有る事を伝え。

若様の為の油揚げを使った、お料理教室の時間は過ぎていくのであった。



◇◇◇◇◇



ちなみにその日の夜。稲実(いなみ)婆ちゃん&愛満お手製の『あぶあバーグ』を見た若様は、自身が大好きな油揚げを使った見た事もない料理に興味を引かれ。

一口食べるとお気に召した様子で、『あぶあバーグ』を見事完食され。

まだまだ『いなり寿司』や『油揚げ』以外は食べようとはしないものの。

目に見えて『油揚げ』を使用したと解る料理には興味を示し始め。

その後、油揚げを使った料理ならば進んで食べるようになったらしい。



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