「オレンジほうじ茶」と元旦恒例・ご来光
「ウヒャ~~~、今朝も一段と寒いでござるね、愛満。」
「本当だね、愛之助。
はい、少しでも暖をとれるように『オレンジほうじ茶』持ってきたから、コレ飲んで風邪を引かないように暖まってね。」
まだまだ空が薄暗い、元旦のその日。
愛満と愛之助の2人は、寒さ対策で全体的にモコモコした出で立ちで、自宅から持参して来た水筒に詰め込まれた『オレンジほうじ茶』入りの水筒を愛之助へと渡し。
愛満へとお礼の言葉を伝えつつ。白い湯気上げる『オレンジほうじ茶』を一口飲んだ愛之助が
「う~~ん♪オレンジの香りが良いでござるねぇ♪
それにオレンジと言うでござるか、柑橘系ならではの爽やかな甘さや香りがほうじ茶とも良く合い。体の芯からポカポカしてくるでござるよ!」
体温まる『オレンジほうじ茶』の感想を話。
「それは良かった。実はこの『オレンジほうじ茶』ね。
水筒の中に輪切りにしたオレンジ煮が入ってて、そのオレンジの煮た物も食べれるんだ。」
「えっ!本当でござるか!?それは良いでござるね。
それにオレンジ煮と言えば、確かこの前、お節料理を作るさい、何やら小鍋でコトコト煮ていたアレでござるか?」
「おっ!良く見てたね、愛之助。そうそう、アレだよ。
あのオレンジの皮を塩で擦り洗いしてね。
輪切りにしたオレンジと、水と砂糖で作ったシロップで、弱火で10から15分煮たオレンジ煮になるんだ。
で、そんなオレンジ煮をほうじ茶に加えたのが、この『オレンジほうじ茶』になるんだよ。」
何やら最近、愛満がハマっているらしい。
甘く煮たフルーツを飲み物に入れ。その甘味と共にシロップの甘み。飲み物に溶け込んだフルーティーな香りが、普段飲み慣れた飲み物を変身させてくれる。
そんな『煮フルーツ茶』の良さを語り始め。
朝倉町の町内が一望でき。街一番の見晴らしの良い小高い場所のベンチに座った2人は、ご近所迷惑にならないよう小声でコソコソとお喋りしていた。
◇◇◇◇◇
と言うのも毎年女神様の力で、お正月の三が日の間実家の在る故郷へと里帰りできる愛満は、自身の弟でもある愛之助を連れ。
元旦の日の短いの間、実家へと里帰りしており。
コチラの世界での家族でもある美樹や、まだ幼い光貴達に気を使って、まだ空も薄暗い時間から家を出。
標高の高い山々が連なる立地に存在する朝倉町で愛之助と2人。
毎年『ご来光』を拝んでから実家へと帰省して、お昼前には異世界に在る自宅へと帰っていたのであった。
◇◇◇◇◇
そうして今年もまた愛之助と2人。初日の出が空に昇るのを待っていると愛之助が
「ふぅ~~~。それにしても今年はご来光が見えるでござるかね?
去年は初日の出に雲がかかり。綺麗なご来光が見えなかったでござるもんね。」
去年も愛満と2人で見た。元旦にはつきものの。
見渡しが良い山の上などで初日の出を拝む『ご来光』が楽しみな様子の愛之助が去年の事を振り返りつつ。
密かに大好きな兄者の愛満を一人占め出来ている事に心を弾ませながら、嬉しそうに愛満へと話し掛ける。
するとそんな愛之助の問い掛けに、持参した『オレンジほうじ茶』をチビチビ飲んで暖をとっていた愛満が
「本当だね。今年は天気も良いみたいだから、綺麗なご来光が見えたら良いねぇ。」
と返事を返してくれ。
愛満の返事に気を良くした様子の愛之助が、更に話を続けて
「そうでござるよね!
それにそもそも『ご来光』とは、拙者達のように標高が高い山の上で見る朝日を全て、確か初日の出に限らず『ご来光』と呼ぶのでござるもんね!」
何やら自信満々の様子で、自身も去年愛満から教えてもらった『ご来光』の意味を得意気に話し始め。
「それに確か山頂から雲を見下ろすと、雲に人影が映り。
その人影のまわりに光が雲や霧の粒に乱反射してでござるね。虹のような輪が広がり『ブロッケン現象』が起こる事があり。
その様子がまるで背中に光の輪を背負った仏様のように見えた事から、仏様の『ご来迎』にかけて、山の上で迎える朝日を『ご来光』と呼ぶようになったでござるよね。」
最後には何やら愛満に確認するように聞いてきて
そんな愛之助の姿を微笑ましそうに話を聞いていた愛満が、空になった愛之助の水筒を受け取り。鞄の中になおしつつ。
「そうそう。それにそもそも、お正月にご来光を拝むようになったのは明治以降になってね。
それまでの新年の朝にはご来光ではなく。東西南北の神様を拝む『四方拝』が主流だったんだよ。」
今では元旦の朝にはつきものの。初日の出を拝む『ご来光』ではなく。東西南北の神様を拝む『四方拝』が主流立ったと教えてくれ。
「あっ、けどね。現在でもお正月の宮中祭祀では『四方拝』を行っているそうなんだ。」
何気無い普段のお喋りを楽しみ。
その後、今年も仲良く『ご来光』を拝む事が出来た2人は、愛満達の帰りを首を長くして待ってくれている。異世界での大切な人達の為。
甥っ子や姪っ子達の健やかな成長を喜びつつ。お年玉を手渡して、逆に婆ちゃん達からは自家製の漬物や手料理、お菓子等々、両手一杯の手土産を手渡され。
今ではすっかり住み慣れてしまった。異世界に在る自宅へと足早に帰るのであった。




