「黒蜜ホットミルク」と大掃除
「うんしょ、うんしょ、どっこいしょ!」
「うんちょ、うんちょ、どっこいちょ!」
「へけっしょ、へけっしょ、どっこいしょへけっ!」
あいにくの曇り空のその日。
愛満達が暮らす愛満宅ではタリサやマヤラ、光貴達チビッ子3人組が、何やら古新聞片手に窓拭き掃除を頑張っていて
「頑張れ頑張れ♪窓拭き頑張れ~~~♪」
「がんばるじょ、がんばるじょ!まどふきがんばるじょ!!」
「へけっへけっ!窓拭き頑張るへけっ~~~♪」
との可愛らしい歌声と共に、窓を一生懸命拭いている音が愛満宅に響いていた。
「………………ふぅ~~~、窓拭きって、本当大変へけっね!けど後ちょっとで終わるへけっ。
へけっへけっ、後ちょっと♪後ちょっと♪3人で頑張るへけっよ!」
そうしてタリサ達3人が黙々と愛満宅・室内の窓拭き掃除に性を出していた所。
「タリサ、マヤラ、光貴。室内の窓拭き掃除の方の具合はどんな調子でござるか?もう終わりそうでござるか?
拙者の方は外の窓拭き掃除終えたでござるから、良かったらお手伝いしょうでござろうか?」
タリサ達3人と1人離れ。大イベントのクリスマスや正月を前にタリサ達チビッ子組3人が風邪等を引いては可哀想だからと考え。
寒空の下、1人。外の窓拭き掃除を頑張っていた愛之助が自身が担当した外の窓拭き掃除を終えた事を伝え。
まだ終わっていない様子のタリサ達へと窓拭き掃除をお手伝いしょうかと声をかけた。
するとそんな愛之助の話に『ありがとう』と嬉しそうに笑みを溢しながら、タイミング良く窓拭き掃除を終えたタリサ達は、自分達も無事窓拭き掃除を終えれた事を嬉しそうに伝え。
新たなミッションを伝え聞くんだとばかりに、1人台所掃除に性を出している愛満の元へと移動するのであった。
◇◇◇◇◇
「愛満、愛満!僕達ね、愛満にお願いされた窓拭き掃除バッチリ終わらせてきたよ!次は何処をお掃除したらいい?
それともお台所のお掃除、僕達もお手伝いしょうか?」
少しでも大好きな愛満の助けになればとヤル気満々の様子のタリサが窓拭き掃除を終えた事を伝え。
次は何処を掃除すれば良いのかと質問して、何やら腕捲りをしながら愛満が1人掃除を頑張っている台所掃除をお手伝いしょうかと話。
「それは良いでござるね!タリサ、ナイスアイデアでござるよ!」
「へけっへけっ!それは良いアイデアへけっよ。
で、愛満。台所の何処の掃除をお手伝いしたら良いへけっか?」
「よしみつ、よしみつ!マヤラもおてちゅだいガンバるよ!」
タリサの話に大きく頷きながら同意した様子の愛之助達も口々に台所掃除をお手伝いすると話始め。
そんな愛之助達の話に嬉しそうに笑みを浮かべた愛満は、何やらゴム製のガス管と言うか、ガス管ならぬ火魔石管にマイメロちゃん柄のアルミ箔を巻く手を止め。愛之助達の方へと振り返り。
◇◇◇◇◇
と、少々お時間をもらえるならば、愛満が可愛らしいマ○メロちゃん柄のアルミ箔を巻いていたガス管ならぬ、火魔石管が何かと言うと。
愛満の記憶?考え?を元に力を使って建てられた愛満邸は、見た目や家の構造等が何故か愛満の父方の祖父母が住む京町屋が元に出来ており。
そんな愛満邸の家の内部と言うか、愛満邸の台所等は、愛満が昔から慣れ親しみ使い慣れた。
とある年に祖母の誕生日に兄妹4人でお金を出しあい。床暖房や水回り。火力の関係からガスコンロのままが良いとの祖母の意見等々を取り入れたりしつつ。最新型のキッチンへとリフォームした。
リフォーム済みの実家の台所が、長屋特有の台所と上手く組み合わされた台所になっていて
更に加えて異世界に在る愛満邸の台所は、何故かシンク等の高さが愛満のサイズピッタリに造られており。
調理器具や調味料等を収納していた場所が同じだったりして、愛満お気に入りの台所になるのだった。
しかも最近、日頃頑張っている自分自身へのご褒美だと言いつつ。
自身の力を使って、万次郎茶屋専用の調理場を新たに設けており。
そんな愛満お気に入りの自宅台所には異世界らしいと言うか、異世界ぽっく?
実家で使用していたガスではなく。魔獣から採取でき。
今ではギルド等で気軽に買える『火魔石』を使用したコンロになっていて。
コンロ下の棚には、何やら可愛らしい見た目の小さなミニチュアサイズのガスボンベのような物が2つ並んで置いてあり。
ガスボンベの蓋を開けると、中に火魔石を収納出来るようになっていた。
またガスボンベとコンロが、日本のガスコンロを使われているご家庭では良く見かける光景になるかと思うのだが、ゴム製のガス管で繋がっていて
【備え付けではなく、気軽に取り外し出来るタイプの置き方タイプのガスコンロになります。】
自宅台所の大掃除をしていた愛満は、何故かゴム製のガス管に可愛らしいマイ○ロちゃん柄のアルミ箔を巻いていたのであった。
◇◇◇◇◇
「えっ!もう窓拭き掃除終えてくれたの、………タリサもマヤラも光貴も愛之助も、み~~んな頑張ってくれて有り難うね!本当に助かったよ。
あっ、そうだ。窓拭き掃除を頑張ってくれたご褒美じゃないけど、昨日作った『黒蜜』を使って美味しい『ホットミルク』作ってあげるから畳コーナ休憩室で待ってて。」
寒いなか窓拭き掃除を頑張ってくれたタリサ達を誉めてくれ。
大仕事を頑張ってくれたご褒美じゃないけれどと話ながら、ご褒美変わりの『黒蜜ホットミルク』を作り。
台所隅の休憩室事、2畳の畳が敷かれ。寒い冬の今の時期には、温かな炬燵が設置された畳コーナーで冷えた体を暖めるように促し。
ぬくぬくの温ったか炬燵で愛之助達が冷えきった体を温まる中、白い湯気上がるホットミルクのカップが乗ったお盆を持った愛満がやって来て
「はい、お待たせ。『黒蜜ホットミルク』だよ。
まぁ、黒蜜ホットミルクと言ってもまだ黒蜜が入ってない。ただのホット牛乳になってるだけだから、お好みの量の黒蜜を各々でカップに入れてね。
別に持って来た。この『きな粉』や『すり胡麻』、『抹茶』、『シナモン』、『苺パウダー』なんかを加え。思い思いにカスタマイズして飲んでね。
あっ、けどくれぐれも火傷しないように気を付けながら混ぜてね。」
それぞれの前に『ホットミルク』と共にスプーンをセットで置いてくれ。テーブルの真ん中に黒蜜やトッピング用のきな粉、すり胡麻等々の可愛らしい瓶に入った粉類を置き。
くれぐれも火傷しないようにと愛之助達に声をかけながら、また台所掃除へと戻って行き。
そんな愛満を笑顔で見送った愛之助達は
「うーん、そうでござるね。………やっはり苺好きの苺忍者隊・隊長の拙者としては、ここは苺パウダーのトッピングが妥当でござるよなぁー……………。
けど黒蜜ホットミルク的には相性の良いきな粉が良いようなぁ………………。」
「えっーーーと、黒蜜を入れたホットミルクでしょう。
ならきっと、どっちかと言うか和よりな味わいになると思うんだ。
だからね、ここは絶対!そう、餡子が合うはずなんだよ。うん!絶対餡子しかありえない!
と、言う訳だから、ここは一つ。茶屋に行って店番している山背から粒餡&お餅入りの最中を一つ貰ってこ~よを!」
「そうへけっね。黒蜜ホットミルクへけっでしょう~……………うーん、そうへけっね。…………………ここはオーソドックスに抹茶をトッピングするへけっか」
「うーん、まようにゃ~!………………うーん、じょれにしょう………………。キナコ?………いやいや、すりゴマ?………うーん、それともまっちゃ?
いやいや、ここはぼうけんちてシナモン?
……いや、やっぱりだいちゅきないちごちゃんにちゅる?」
愛之助達4人はトッピング選びに大いに頭を悩ませ。
また思い思いに楽しみながら、その後 口の上に白い髭を付けつつ。自身お手製の『黒蜜ホットミルク』を味わい。
『黒蜜ホットミルク』を飲み干して、お腹の芯から温まった様子のタリサが、何やら愛満の方を気にしてチラチラ視線を送る中。
1人台所掃除を黙々とこなしている愛満の元へとコッソリ近付いて行き。
他の皆に分からないようにと細心の注意を払いつつ。濡れ布巾で冷蔵庫の外側の扉を拭き掃除している愛満へと話し掛け。
「ねぇねぇ、愛満。冷蔵庫の拭き掃除なら僕でも出来るから、お手伝いしょうか?
って、なんかこの辺り少しビール臭いねぇ。あっ、もしかして冷蔵庫の中でビールが溢れちゃったの?
うーん、山背が飲み残したビールをそのまま冷蔵庫の中になおしちゃったのかなぁ?後で山背注意しておこうか?」
1人店番を頑張ってくれている山背が要らぬ容疑をかけられる中。
タリサの話を可笑しそうに聞いていた愛満が笑いを噛み殺した様子で
「あ、ありがとう、タリサ。
けど、このビールの臭いは山背が飲み残したビールのせいじゃないだよ。
それにね。そもそも山背はビールを飲み残さないし。逆に最近、美樹と一緒に飲み過ぎてるくらいだから、もうそろそろ黛藍から雷が落ちる予定なんだ。
後、ココを拭き終わったら冷蔵庫の拭き掃除は終わりだから大丈夫だよ。心配してくれてありがとね。」
クリスマスや師走が近付き。最近少々………いや、かなり飲み過ぎなご様子な山背と美樹の2人に近々黛藍からの雷が落ちる事が判明する中。
「それにこのビールの臭いはね。僕も婆ちゃんから習った掃除の仕方の1つになるんだけど、ビールには油汚れを落とせる作用があるらしくて、確かビールに含まれるアルコールとビタミンEだったかな?
何か、その成分のおかげでカビ取りや消臭、除菌。冷蔵庫や家具についた手垢なんかが簡単に落とせるみたいでね。
ほら、仏壇用にミニ缶サイズのビールを半年くらいお供えしてたでしょう。だからそのミニビール缶の中身を使ってね。
(愛満的には)日頃お世話になっている台所を清める意味合いも兼ねて、こうして台所掃除に使ちゃってるんだ。」
「へぇ~~、そうだったんだ!全然知らなかった。
けど、山背達が美味しそうに飲んでるビールにそんな使い方があったんだね。スゴいや!」
愛満も祖母から習った。ビールを使用した掃除方の一つを説明しながらタリサと2人、お喋りしていた所。
何やら慌てた様子の光貴が2人の元へとやって来て
「愛満、愛満!ええっとへけっ、ええっと、ええっと、………………あっ!あのねへけっね。
さっき台所で管にアルミ箔を巻いてたへけっが、どうしてへけっ?何か意味があるへけっか?」
少々タリサに恨めしげな眼差しを向けつつ。なんとか絞り出すように愛満へと話し掛ける話題を見つけ出した様子で、ホッとため息をついて、愛満へと質問を投げ掛ける。
そんな光貴の様子に何かあったのかと不思議そうに首を傾げた愛満は、それでもしっかり光貴からの質問に答え始め。
「あぁ、それはね。ほら、毎日料理をする場所でもある火魔石コンロ周りって油が飛び散りやすいでしょう。
それになかなか掃除をするにしても大変だし。ゴム製の火魔石は油にも弱いしね。
だから実家での癖でね。巻いてるだけで火魔石官に油を通さないし。巻くだけで火魔石管を保護でき。
汚くなったら新しいアルミ箔を取り替えるだけで台所を綺麗に保てるから、コッチでもこをして火魔石管にアルミ箔を癖で巻いてるんだ。」
少し照れくさそうに。これも実家に居る時、祖母から習った掃除方の一つ。火魔石管にアルミ箔を巻く意味を教えてくれ。
そんな愛満の話に満面の笑みを浮かべた光貴が、今まさに返事を返そうとする何とも言えないタイミングで、口の上に真っ白なお髭を生やしたマヤラが、タリサと光貴の間に割り込み。
ニョキっと顔を出して
「よしみつ、よしみつ!あのね、あのね!」
つい先程、誰か同じような人の姿を見たような気が多々する中。
マヤラが愛満へと必死な様子で話し掛けてきて
「えっ~と、………そうだ!あのね、さっきマヤラたちがまどふきのおてつだいしてたでしょう。
でね、マヤラずっとふしぎにおもってたんだけど、どうしてまどをしんぶんしでふくの?
ぎゃくにまどがよごれるんじゃないの?」
先程マヤラ達がお手伝いしてくれていた。窓拭き掃除を何故新聞紙を使ってするかのを質問され。
いつにない質問の嵐と言うか、何やらかまってちゃんな様子のマヤラ達に何かあったのかと不思議に思いつつ。
台所掃除を中断して、使用していたゴム手袋を外し。
手洗いをしてから、近くに重ねて置いてあった丸椅子を3つ取り出してタリサ達に座るようにすすめ。自身はマヤラを膝の上に乗せて座り。
「あのね、窓ガラスを新聞紙を使って掃除する訳はね。
簡単に説明すると、新聞紙にインクされた文字と言うか、インクがガラスのツヤを引き出してくれるパワーがあるらしくて
さっきマヤラ達が窓掃除のお手伝いをしてくれたように丸めた新聞紙に水につけ。軽く絞ってガラスの汚れを拭き取ってね。
後は乾いた新聞紙でから拭きをすれば、窓はピカピカになるし。インクの力で汚れがつきにくくなるんだよ。」
マヤラから質問された窓拭き掃除を新聞紙でする訳を幼いマヤラでも解るように簡単に教えてくれ。更に話を続け。
「それにね。今日は窓拭き掃除にピッタリな曇り空な事もあって、本当にナイスタイミングな窓拭き掃除日和だったんだよ。」
「くもりぞらなのにそうじするひにピッタリなの?」
「えっ?曇り空なのに窓拭き掃除する日にピッタリなの?なんで?」
「へけっ?普通、掃除日和と言ったら晴れの日じゃないへけっか?何でへけっ??」
愛満の話にマヤラ達が不思議そうに首を傾げる中。
「そうそう。どうせ掃除するなら、お日様ニコニコのお天気日和の日が良いと思うよね。
けどね。窓拭き掃除をする時は、実は湿度の多い明け方や曇り空の日に掃除するのがオススメなんだよ。
って言っても、実は僕も婆ちゃんから教わったんだけどね。」
茶目っ気たっぷりに最後に自身も祖母から習った掃除方の一つだと話し。
普通子供があまり興味を示さない掃除方の話なのに笑顔を浮かべ。嬉しそうに愛満の話に耳を傾けるタリサ達の姿を愛しげに見つめつつ。
「なんかね、湿度の多い明け方や曇り空の日に窓拭き掃除をすると空気中の湿度が汚れを浮き立たせてくれ。婆ちゃん曰く、簡単に窓についた汚れなんかが落とせるそうなんだ。
それに逆に日差しが強い晴れた日なんかに窓拭き掃除すると湿度が少なくて、ガラスにも光が反射してね。
汚れの箇所が見づらくて、何度か窓掃除を終えた後に汚れを見つけた事があったそうなんだよ。
で婆ちゃん曰く、窓掃除をするなら曇りの日が最適と導き出した訳なんだ。
だからね。マヤラ達が今日頑張って窓拭き掃除してくれたから今年も無事大仕事を終えれそうだし。
本当に助かったんだよ。ありがとうね、マヤラ、タリサ、光貴。」
本日頑張ってくれたマヤラ達の頭を優しく撫でてあげながら、改めてマヤラ達3人に感謝の気持ちを伝え。
そんな愛満からの感謝の言葉にマヤラ達が嬉しそうに照れ笑いを浮かべ。
その後、体と共にお腹の芯から温まり炬燵で眠り込んでいた愛之助も起き出してきたりして、愛満達5人は山背が万次郎茶屋の店番を1人頑張ってくれる中。
今年最後の大掃除とばかりに日頃なかなか出来ない箇所の掃除を含め。
年神様を『待つ』と言う意味も込められ。年神様が迷わず家にたどり着けるための案内役でもある『門松』と共に愛満お手製の『鏡餅』
ココは神聖で、年神様にふさわしい場所である事を示す『しめ縄』や『しめ飾り』を玄関、神棚、床の間等に飾り付け。
皆で力を合わせて、今年最後の大掃除と正月飾りを無事終えれたのであった。




