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五種類のかき餅と武道家の赤鬼族



「ふぅー、ここが克海が言っていた朝倉村ですか、話に聞いた通り見事な街並みですね。」


そのあまりの美しい街並みに、ついつい見とれてしまっていると何かを思い出したらしく。


「………あっ、そうでした!村に着いたら万次郎茶屋の愛満さんと愛之助さんを訪ねるでしたね。」


武道家で鬼族の大鵬(たいほう)は、ある事を相談するため、修行の旅の最後に立ち寄った。

幼馴染みで同じ鬼族の照海(てるみ)が住む大吉村で、照海(てるみ)の息子の克海に紹介された朝倉村にたどり着き。

克海の教え通りに万次郎茶屋の愛満と愛之助を訪ねるため、万次郎茶屋の方へと歩み出す。



◇◇◇◇◇



チリーン、チリーン♪


「ごめんください。大吉村の克海から紹介を受け、訪ねて参りました鬼族の大鵬という者なのですが、愛満さんか愛之助さんは、ご在宅でしょうか?」


大鵬が無人の店内に声をかける。

すると店の奥から何か作業中だったのだろうか、前掛けをつけた黒髪黒目の小柄な人物と黒髪を一つ結びにした人物の2人が店内へと出て来て


「は~い、いらっしゃいませ。すいません、お店が無人で………えっと、自分がこの茶屋の主人 愛満と言います。

隣が弟の愛之助になりますが、克海の紹介と聞きましたが…」


「はじめましてでござる。拙者、愛満の弟の愛之助と申すものでござるよ。」


茶屋の奥から出て来た愛満と愛之助の2人が自己紹介をしてくれたのだが、大鵬は鬼族の自分を見て、全く驚いた様子のない2人に驚く。


実は大鵬、鬼族の中でも僅かしか居ない珍しい種族の赤鬼族の生まれになり。

鬼族特長の大柄な体格に加え、赤鬼族特長の赤い肌をしており。その数少ない種族のためか、初めて会う者達には赤い肌を大変驚かれ。

最悪の場合には化け物だと勘違いされてしまい。旅の途中で何度か命を狙われたりして、大変な思いをしてきたのだ。

(ちなみに克海の父の照海は、ただの鬼族になる。)


そのため、そんな2人の様子に好感を覚えながら、克海が書いてくれた手紙を手渡し、大鵬が村を訪ねた用件を伝える。


「はじめまして、お忙しいなか申し訳ありません。

私、少数派ではありますがイキア道なる武道の修行の旅をしております。大鵬と申します。

大吉村に住む克海の父親 照海とは、里を同じにした幼馴染みでありまして、その縁で修行の旅を終えた後の事を相談をするために大吉村を訪ねたさい。克海から朝倉村を紹介され、訪ねさせてもらたしだいであります。」


大鵬が話しているとお茶と和菓子をお盆にのせた愛之助が戻り、それぞれの前にお茶やお茶菓子を置いてくれる。


そして、大鵬の話を聞きながら克海の手紙を読んでいた愛満が


「大鵬さん。克海と照海さんの手紙から、大鵬さんの人柄や相談された内容の事などはだいたいの事は解りました。

それに生意気かもしれませんが、茶屋にやって来てから、今までの言動で大鵬さんが悪い人では無い事もなんとなくですが解ります。」


突然、話し始め。展開についていけない大鵬が呆気にとられるなか


「 それにちょうど兎族の親御さん達から、悪戯や兄妹喧嘩ばかりするわんぱく盛りの子供達の有り余るエネルギーを何か体を動かす習い事をさせて発散させたいと相談もあったので、逆に村を訪ねていただいて助かりました。

なので、うちの村で良かったらイキア道(イキア道=合気道みたいなの)の道場を開いて下さって構いませんよ。

それからイキア道の道場も大鵬さんが暮らされる自宅もこちらでご用意しますので、何の心配もなく。身一つで朝倉村に来てくださって大丈夫ですよ。」


大鵬が本題の相談をする暇もなく、いつの間にか朝倉村への道場開設や自宅の確保等があっという間に決まり。

今だ大鵬が呆然と呆気にとられ、他の様々な事などを愛満とどこかぼんやりしたまま話していると、奥の部屋から兎族の幼子の2人がやって来て


「愛満、愛之助。かき餅まだ?タリサ待ちくたびれたよ!」


「よしみちゅ、あいのちゅけ、まだ?マヤラおなかちゅいた。」

※『愛満、愛之助、まだ?マヤラお腹すいたよ。』


やや不貞腐(ふてくさ)れた様子で、愛満と愛之助の2人に話しかける。


「ごめん、ごめん。けど2人とも、お客さんの前なんだよ。何か言う事はないのかなぁ?」


「…あっ!ごめんなさい。はじめまして、こんにちは。僕は兎族のタリサです。横にいるのが弟のマヤラになります。」


「ごめんちゃい。はじめまちてこんにちは、マヤラでしゅ。」


愛満に促された2人は、慌てて初めて会う大鵬に挨拶をする。

それを見た大鵬は、貴族でも無いのにきちんと挨拶ができ、教育の行き届いた兎族の2人の振る舞いに驚く。


「はじめまして、上手な自己紹介ありがとう。私は赤鬼族の大鵬と言います。よろしくお願いいたしますね。」


大鵬がタリサとマヤラの2人に挨拶を返していると愛之助が


「そうでござる!ねぇ、愛満。

大鵬殿(たいほうどの)も一緒にかき餅を作り、一緒に食べようではござらんか!

どうせ後で村の皆を呼び、『かき餅』の試食会を開く予定でござるし。村の皆に大鵬殿の事や新しく開く道場の事も紹介でき、一石二鳥でござるよ!

それに皆で作って食べたら、楽しくて美味しさも倍増するでごさるよ!」


愛之助の発言後、タリサとマヤラの賛成もあり。

大鵬も含め、今だ台所で真面目に愛満達の帰りを待つ黛藍も含めた6人で、『かき餅』作りを始める事になるのであった。



◇◇◇◇◇



「はーい、次のかき餅が揚がったよ。次の味は大鵬さんとマヤラ担当のピリ辛マヨエビ味だよ。手早くかき混ぜてかき餅に味を絡ませて下さいね。」


愛満が乾燥させた1.5cm角の切り餅を揚げ油で、どんどんカラッと揚げながら、決まった味の各担当者が五種類の味の『かき餅』に味付けをしていく。


すると自分の担当する抹茶塩の味付けが終わったタリサが、大鵬とマヤラが作業する場所に近づき。美味しそうな匂いを漂わせたかき餅を見ながら


「いい匂い。愛満、このピリ辛マヨエビ味すごく美味しいそうだけど、何が入ってるの?

僕の抹茶塩味は、自分で抹茶と塩を混ぜたから解ったけど、ピリ辛マヨエビは見てないから解んないや。」


最後のかき餅を揚げきった由満に質問する。


「はい。これで最後だよ。黛藍、ナッツ塩味の味つけお願いね。

それからタリサお待たせ。質問のピリ辛マヨエビ味はね、乾煎りして粉末にした桜えびと塩、マヨネーズ、一味唐辛子を混ぜ合わせたソースになるよ。

タリサ達も食べるから、ちゃんと一味唐辛子は控えめにしてあるし、黛藍が終わったら村の皆呼んで試食会しょうね。」


今だ忙しそうに動き回る愛満は、タリサの質問に答えてあげる。


「うん。楽しみ!早く食べたいね!

えっと…かき餅の味は、僕の作った『抹茶塩味』と大鵬さんとマヤラが作った『ピリ辛マヨエビ味』、黛藍が作った『ナッツ塩味』、愛之助が作った『醤油味』と『ペッパーチーズ味』の五種類だったね。」


試食会が楽しみなタリサが目の前に並ぶ、完成したばかりの色とりどりの『かき餅』を幸せそうに見つめる。


そうして、自身の作業を終えた愛之助達は黛藍を手伝い。かき餅作りが終わると、新商品の試食会だと村の手が空いている人や暇をもてあましてるチビッ子達を万次郎茶屋へと呼び集め。

短い時間ではあったが、かき餅の試食会が開かれ。タリサ達や村の人達に喜ばれた試食会が終わり。

万次郎茶屋の新商品になる、お茶請けやお酒のおつまみにもなる『五種類のかき餅』が誕生する。


大鵬の方も試食会の間、愛満達から集まった村人一人一人に丁寧に紹介され。

早速、何人かの兎族の親達や香夢楼達からイキア道の習い事への申し込みが沢山有り。


試食会後、愛満チートで建てられた兎族の住む住居場や神社近くの空き地に100人は入れる、広々した立派すぎる木造の道場を建ててくれ。

更には同じ敷地内に1人暮らし用の住居には見えない。大きく立派な平屋の日本家屋も建ててくれ。

想像を越えた立派さと広さに大鵬は困惑しながらも、愛満の優しさを有り難く頂戴する。


そしてその後、たくさんのイキア道を習う子供達に囲まれ。大鵬は朝倉村で、のんびりと楽しく生活し始めるのであった。



◇◇◇◇◇



ちなみに、大きく立派過ぎる道場や自宅を見た大鵬の困惑気味な顔には気づかなかった愛満は、実に素晴らしい笑顔で、何やら一仕事やり終えた達成感に酔いしれ。


「うん、うん。やっぱり、道場や師範が住む家はこんくらい威厳や風格がなくちゃね。

前にアニメで見た師範が住む家や道場もこんな感じだったもんね。いや!もっと瓦が……」


などの事を呟き。その後、屋根の上にある鬼瓦をわざわざ魔法で落ちないように頑丈に固定し、大きく立派な鬼瓦へとチェンジする。




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