干菓子『胡麻ゴマ落雁』と大忙しの愛満さん
「そうそう。寒梅粉が入ると急に固まって乾燥しやすくなるから、今みたいに手早く作業していってね。」
空を真っ赤に色づけていた夕日もすっかり顔を隠し。辺りを気の早い星空達が光輝くなか。
その日万次郎茶屋の台所では、愛満と、とある人物が2人。
何やらボウルの中の『和三盆』や『寒梅粉』なる物を手早く混ぜ合わせ。細かい目のザルでふるいにかけていた。
「じゃあ、和三盆と寒梅粉を混ぜ合わせた粉類のふるい作業が終わったら、さっき粉類を混ぜ合わせた時に使ったボウルへ。このふるいかけた粉類を手早く戻してね。」
先ほど粉類を混ぜ合わせる作業の際、使用していたボウルの中へと。ふるいにかけた和三盆と寒梅粉の粉を戻すよう説明した愛満は、下準備しておいた『黒胡麻ジャム』を愛満の隣で、愛満と同じく作業をしている。
ふるいにかけた和三盆と寒梅粉の粉類を戻し終えたステリーのボウルへと加え。
とある人物事、愛満の隣で作業している。甘味倶楽部・部長にして、黒エルフ族のステリーへと手早く混ぜ合わせるように説明。
自分のボウルの中には、愛満お気に入りの胡麻ジャムシリーズの『白胡麻ジャム』を加え。
「あぁ、そうそう!昨日作ったピーナッツジャムを使った『落花生落雁』
子供達も『美味しい、美味しい』って言って食べてくれたし。見た目も落花生の形をした落花生の妖怪って言うの?
そんな見た目も可愛かったからか、みんな喜んでくれてたわ。
それに家の夫も『ピーナッツの甘さが口の中で広がり。落雁が口の中で淡く溶けていって、食感も良くてスゴく美味しいよ』って喜んでくれてね。
型から落雁を出す時、悪戦苦闘しながら頑張ったかいがあったわ。ありがとね、愛満。」
ステリーが昨日作って家に持ち帰った。ピーナッツジャムを使用した『落花生落雁』の、家でのその後の事を思い出した様子で教えてくれ。
「本当ですか!?それは良かった!
実はあの落花生の妖怪?と言うか、妖精?の一口サイズの落花生(殻の状態の)に小さな手足と顔が付いた可愛らしい焼き型。
その昔姉に連れられ行った。とあるお店で見つけた物になるんですよ。
で、あの型をお店で見つけた瞬間。こぉ~、体にビビってくるものがあり。
更には是が非でもピーナッツ味のお菓子を作る時に使うべきだとの、何やら天の声も降りてきて…………。
少々と言うか、細かい造りの焼き型と言う事もあって、お値段の方も財布にダメージを与えるくらいしたんですけど、昨日作った『落花生落雁』を見た瞬間。
あの時、本能で焼き型をゲットした自分自身を誉めてあげたいと心の中で自画自賛してたんですよ。エヘヘ~♪」
愛満が茶目っ気たっぷりに昨日使用した落花生の妖怪?妖精の型を購入した際の逸話を照れくさそうに話。
2人で顔を見合わせ、おかしそうに笑い合うなか。
ステリーと同じく。ボウルの中の粉類と胡麻ジャムを手早く混ぜ合わせ。
再度、それぞれのボウルの中身をふるいにかけ。今回新たに準備した。可愛らしい見た目のチョコレートを作るさい使用する型の中に落雁の生地を押し込んでいく。
◇◇◇◇◇
少々お時間をもらえるならば、今日使用している。おニューの落雁を形作っている型の説明をすると
そもそも落雁を作るさい、木枠の型を使って落雁を形作っていくのだが、山奥に暮らしていた一般人の愛満には、和菓子用の木枠の型に出会う機会がなかなかなく。
前々から欲しいなぁ~と思いつつも、少々機械類に弱い愛満には、そんな木枠の型を手に入れる事はなかなか難しく。
その為、なかなか出会う機会がなかった木枠の型変わりに、ちょっとした大型スーパー等で買える。
落雁にピッタリの一口サイズの大きさでいて、種類豊富な可愛らしい見た目のチョコレート型やお菓子の焼き型を使い。趣味で落雁を作っていて。
本日『落雁教室』を開く作業前、いつものように愛満が落雁を形作る型をステリーに選んでもらった所。
ステリーが数有る形の中から一目見た瞬間、一目惚れした型になり。
ステリーの強い希望から愛満の力を使って同じ型を造り出し。
後日、昨日使用した落花生の妖怪?妖精?の型等と合わせて譲渡する約束までしている。
見た目ササ族の笑った可愛らしい顔の型と言うか、こちらの異世界に暮らす獣族になり。
見た目パンダそっくりの可愛らしい一口サイズのチョコレート型でいて、ステリー的にはササ族がモチーフになったと勝手に勘違いしている。
そんな地球に住み。熱烈的な人気を博すパンダの可愛らしい笑い顔の形をしたチョコレート型を今回使い。
黒胡麻味&白胡麻味の落雁を使った『胡麻ゴマ落雁』を完成させていた。
他にも付け加えるならば、そもそもどうしてステリーが愛満と一緒に落雁を作っているかと言うと
和菓子の分類の中では干菓子の打ち菓子にあたり。密かに冒険者達の間で人気を博している落雁をステリーがいたく気に入り。
今回 甘味倶楽部メンバー達の強い願いにより叶った。甘味商店街の一角に様々な味わいや可愛らしい見た目の落雁を専門的に販売する店をステリーが開く事を決め。
家族や子供達の世話を終えたステリーの余裕ある時間帯の夜6時から8時までの3時間の間。
愛満がいろいろ調べて見つけ出した。初心者でも簡単に作れ、様々な味が組み合わせられる。ジャムを使った『落雁』の作り方を試行錯誤しながら2人で考えつつ。
万次郎茶屋の台所で、自身の店で販売する予定の様々の種類の落雁を作っていたのであった。
◇◇◇◇◇
そうしてステリーと一緒に完成させたばかりの可愛らしい見た目の白・黒胡麻味の『落雁』を味わいながら、まだ何か、お客さん達を惹き付けれるような。
この『落雁』に手を加える点がないか等の意見を出し合い。話し込んでいた所。
本日も万次郎茶屋の時計の針が夜の8時を示すなか。
大柄なパンダの見た目のササ族の男性が、幼いパンダの幼児と同じく幼い黒エルフの幼児を両腕に抱き。
そんな3人の前を低学年位の幼い黒エルフの男の子を間に、手と手を繋いだ小柄な子供のパンダ君達3人が、仲良くお喋りしながら合計6人で万次郎茶屋へと来店し。
6人組事、ササ族のステリーの旦那さんを始め。ステリーの5人の子供達が母親の夜道の帰宅を心配し。
ここ最近の日課の1つでもある。母親のステリーを万次郎茶屋へと迎えに来てくれていた。
そして今日もまた、そんな6人にいち早く気付いた愛之助や光貴、美樹、黛藍の4人が嬉しそうに6人を茶屋へと招き入れ。
話し合いに夢中で6人に気付いていない様子の愛満やステリーへと6人が迎えに来てくれた事を教えてくれ。
自分を迎えに来てくれた家族の姿を見たステリーは、苦笑いを浮かべつつ。愛満に手を合わせながら謝り。
まだまだ話し合いの途中ながら今日の『落雁教室』を中断して、嬉しそうに帰り支度を始めるのであった。
ちなみにステリーが帰り支度をしている間、ステリーの家族の6人が何をしているかと言うと。
満面の笑みを浮かべた愛之助を始め。ササ族大好きな美樹達がバッチリおもてなしをしてくれており。
ステリーの旦那さん事。暮云灰は、同じササ族になる黛藍の遠い親戚で、とある事で王都の暮らしに疲れ。
今、密かに王都や各地で話題の朝倉町に住む遠縁の黛藍を頼り。黛藍の紹介から朝倉町へと移り住む事になって、今は朝倉町に在る朝倉学園で教鞭をとる。生徒達から根強い人気を博す教師の1人になる。
そして暮云灰家族が心身ともに疲れ果てる事になる。とある事とは、そもそも暮云灰とステリーの2人は王都の学園で出会い。
紆余曲折の後、大恋愛の末、結ばれた夫婦になり。
異種間の結婚で周りが色々と騒がしかったりしたのだが、互いの両親は快く2人の結婚を認めてくれ。
家族や親族関係を含め。良縁な関係を気づけていたのだが、2人の出身校でもある。王都に在る学園で教授として働いていた暮云灰の仕事上。
家族みんなで王都に建てた、学園近くのお屋敷で暮らしていた所。
口では言わないものの。やはりソコは言い知れぬ苦労が多々あったみたいで……………。
そんな事もあり。暮云灰家族は、人を見かけや種族、肌の色や瞳・髪の色、生い立ちや身分、学、その人が持つマイノリティ等々で差別せずに人間性を重視する。
こちらの世界でも、つま弾きされてしまうような人達が安心して笑顔で生活できる朝倉町へと移住する事にし。
ステリーに良く似た黒エルフの子供達はもちろん。
可愛らしい見た目のパンダに良く似たササ族の子供達もステリーがお腹を痛めて産んだ子供達になり。
大人の暮云灰やステリーは勿論。王都では幼い子供達にも様々な事があり。
朝倉町に来た直後はヒドくおどおどして、怯えて暗い顔をしている事が多々あったりしたのだが、今では毎日楽しそうに笑顔を浮かべ、学校へと通う姿を目にするようになり。
王都時代には1人も居なかった友達が沢山できて。
毎日楽しそうに満面の笑みを浮かべ。友達と駆け回っている姿を見かける機会が増えてきていた。
◇◇◇◇◇
「じゃあ、今日もステリーの頼もしい旦那さんと可愛らしい子供君達がステリーの事を迎えに来てくれた訳だし。
今日の落雁作りで解らない所があったら次回によろしくね。」
本日最後になる落雁作りの指導を終えた愛満は、何やらパンパンに膨らんだ。マ○メロちゃん&苺柄の風呂敷を背中に背負った暮云灰家・子供達と最近日課のサヨナラのハイタッチをしつつ。
自身を迎えに来てくれた家族と帰るステリーを少し茶化しながら愛之助達と見送り。
その後、大急ぎの様子で自宅の方へと移動する愛之助達を見つつ。
手早く自身の力を使い。先程まで使用していた台所はもちろんの事。万次郎茶屋の閉店作業、茶屋内の清掃作業等を手早く終え。
お腹が空いてるだろうに愛満と一緒に晩ご飯を食べるんだと我慢して待ってくれ。
自身の勝手な行動から家の皆に迷惑をかけているものの。文句一つ言わず。今日もまた5人で力を合わせ。美味しそうな晩ご飯を用意してくれている愛之助達に感謝しつつ。
すっかり冬使用に模様替えした。炬燵が鎮座する自宅へと足早に移動するのであった。
◇◇◇◇◇
「でへけっね!僕は淡い紅色のお花の形をして、中にうずらの卵の茹で玉子が隠れされた『梅花天』が、おでんの具材の中で一番好きへけっよ♪」
「おっ!光貴は『梅花天』が好きでござるか!
うんうん、可愛らしい梅の花の形をしておって見た目も可愛らしく。味も美味しいでござるもんね~ぇ♪」
嬉しそうに愛満を真ん中に挟み。両脇に座った愛之助と光貴の2人は、楽しそうに自分達オススメのおでんの具材を教えてくれる。
「あっ、遅ればせながら拙者オススメのおでんの具はでござるね!
王道のおでんの汁が染み染みに染み込んだ『大根』、『玉子』、『蒟蒻』なんかも好きなのでござるが
やっぱり一番は真磯や出帆達お手製の『がんもどき』がオススメなのでござるよ!
こぉ~、がんもどきを口に含んだ瞬間。がんもどきに染み込んだおでんの汁が口中に溢れてくるのがまた乙で、幸せな気持ちになるでござるよ!」
と話し。今度は愛満や黛藍達のオススメの『おでんの具』は何かと、お喋りを楽しむように嬉しそうに満面の笑みを浮かべて質問する。
「う~~~ん、そうアルね。黛藍の好きなおでんの具は何かと聞かれたら………………ここは美味しいおでんの具材を作ってくれている真磯や出帆達の頑張りを評価して、『餃子天』アルかなぁ?
黛藍が作る『包子』に似ている所があるアルし。食べ慣れている味わいで、食べるとホッとするアルよ。
まぁ、一番は中の餃子の具材を愛満と一緒に黛藍が真磯達に教えて上げた訳あるけどアルね!」
何やら『餃子天』なる食材の開発に携わった様子の黛藍が、自身のオススメのおでんの具材が『餃子天』だと誇らしそうに話し。
そんな黛藍の話に『あの時ちょっと大変だったよねぇ』と愛満が懐かしそうに相槌を打ちながら
「そうだねぇ~。僕の好きなおでんの具材は…………う~~~ん、少し変化球を入れて良いならば『海老タコ天』かなぁ?」
何やら『アレは美味しかったなぁ~♪』何度も頷きながら話。
聞き慣れない愛満の話す『海老タコ天』なる物に興味を引かれた食いしん坊の光貴と愛之助の2人が声を揃え。
「えっ?『海老タコ天』へけっ?」
「え?『海老タコ天』でござるか?……………『タコ串』じゃなくてでござるか?」
おでんの具材の『タコ串』なら知ってはいるものの。『海老タコ天』なる物は知らないため首を傾げて不思議そうに聞くと
「そう、『タコ串』じゃなくて『海老タコ天』。
昔ね、僕や姉ちゃん、兄ちゃん達が小さかった頃。家のおでんには愛之助達も良く知ってる。爺ちゃんが好きな『タコ串』がおでんの具材の1つとして必ず入っててさぁ~。
婆ちゃんが子供の僕達でも食べやすいように柔らかく下拵えしてくれてたんだけど、それでも何故か小さな子供の僕達には少し食べずらくてね。
今考えても不思議なんだけど…………………何故だろう?
で、でも爺ちゃんが美味しそうに『タコ串』を食べてる姿を見てたら食べたくなるのは人の性と言うか、………何と言うか………………。
毎回悪戦苦闘しながらもおでんの具材の『タコ串』を食べてたんだけどさぁ、やっぱりソコはなかなか苦戦してね。
でもそんなある日、僕達の為に婆ちゃんが僕達が好きな海老もプラスした。
お手製の『タコ』と『海老』の粗みじん切りが入った『さつま揚げ』を作ってくれてね。家のおでんの具材の1つとして、仲間入りさせてくれたんだ。」
またもや何処か遠くを見つめながら、『ハァ~~~!アレは美味しかったなぁ~♪また食べたいなぁ~♪』と話。
「おぉ、それは何やら美味しそうでござるね!」
「おっ、海老やタコの入った『さつま揚げ』か!
確か北海道の方のおでんには『貝』が具材として入ったりするそうだし。それはそれで有りかもな!
うんうん、おでんの具材としても、焼いて食うのも上手そうだぜ♪」
「何か美味しそうへけっね♪」
「酒のつまみに良さそうなのじゃ!」
「そんに愛満が美味しいと言うアルなら、今度一緒に作っても良いアルね!」
日々の何気無い普段のお喋りを楽しみつつ。
最近なかなか一緒に過ごせないご飯の時間を炬燵で温まりながら、少々遅くなってしまったのだが、家族みんなで晩ご飯の時間を楽しむのであった。




