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『おでん』と相手を労る気持ち



「じゃんけん、ポン!『まーるて、ん(丸天)』へけっ!」


「じゃんけん、ポン!『ち、くーわ(竹輪)』でござるよ!」


「じゃんけん、ポン!『が~ん、も、ど、き』へけっ!」


「じゃんけん、ポン!『ぎょ~お、ざ、て、ん(餃子天)』でござるよ!

やったでござる!6文字でござるよ!」


「えっ!6文字へけっか!………くぅ~~~!負けないへけっよ!

じゃんけん、ポン!

あっ、負けちゃった!!」


「光貴、すまぬ!勝負に情け無用!

『うぃ~~ん、なーー、て、ん(ウィンナー天)』の7文字でござる!」


「うぅ~~~う!!!

じゃんけん、ポン!!

ヤッター勝ったへけっ!えっと、えっと、…………あっ!『う~~ず、ら~の、た、ま、ご、てん(うずらの玉子天)』へけっ!

へけっへけっ!!!7文字より多い9文字のおでんの具材へけっ!」


今年初の小雪が降る朝倉町のとある通りでは、片手に傘、片手に大きなお鍋を手に持つ山背と共に

そんな山背の少し前をじゃんけんで勝負仕合ながら、何やらマイ○ロちゃんのカッパ姿に身を包んだ愛之助と光貴の2人が、食材の練り物と言うか、『おでんの具材』を口にしながら、その具材の文字数だけ歩みを進めていて


「はいはい、お二人さん。

もうすぐ真磯(まさき)出帆(いずほ)珠海(たまみ)達の練り物屋さんに着くのじゃけど、勝負の方はそこいらで終えても大丈夫でしょうかのう~?」


との、愛之助と光貴の2人のじゃんけん(ケンケンパ)争いの為。

こんな小雪が降る寒い中。いつもの倍の時間のかかった歩みに対し。少々嫌み混じりの山背からのお声がかかり。


本日3人の目的地でもある。朝倉町内で『練り物屋』を営む。

大吉村から移住して来た。海に面する大吉村産の海の幸『擂り身』を使用して、様々な種類の練り物を作り出す。

長男の真磯(まさき)、次男の出帆(いずほ)、三男の珠海(たまみ)の三兄弟が切り盛りする。

冬の間の期間限定商品『おでん』を買う為。練り物屋さんへと足を踏み入れ。暫しの間、2人の勝負は休止になった。



◇◇◇◇◇



と言うのも、実は愛満が12月頭に一斉にオープンする『甘味ロード』事。種類様々な菓子店を一同に集めた『甘味商店街』のお手伝い兼準備作業にココ最近大忙しで…………。


日々自身の営む『万次郎茶屋』の和菓子&軽食作りに加え。早朝から夕方までの営業と共に。

家族でもある愛之助達の朝昼晩の3食のご飯作り。家の中の家事全般をこなしていて、本人的には全然苦じゃなく。逆に楽しみながらやっているとは言うものの。

いくら自身の(チート)を上手く活用していても、1度にやらなければいけない事が重なると大変なものは大変で…………………。


そんなここ最近、早朝から夜も遅い深夜にかけて忙しく活動する愛満の手助けに少しでもなればと

愛之助や美樹、山背、黛藍、光貴達5人は、いつもより家の家事掃除をお手伝いしてくれてたり。

交代で朝倉町内で営む料理店へと。その日食べる『昼ご飯』や『晩ご飯』、果ては翌日の朝食用のパンやおかずを購入しに行ったりして、愛満の手助けを大いにしてくれており。


本日の晩ご飯のおかず買いは山背の当番になり。

少々茶屋を準備中の看板にしながら、茶屋内奥の台所で『甘味商店街』に店を出す人達に個別で、各々の店で販売するお菓子の相談なり。指導をしている愛満の邪魔にならないよう。

茶屋から出て来た愛之助と光貴達2人を連れ。真磯達が営む『練り物屋』さんへと来ていた訳なのであった。



◇◇◇◇◇



「え~っと、まずオーソドックスに『大根』じゃろう。

それに『玉子』、『厚揚げ』、『丸天』、『竹輪』、『はんぺん』、『がんもどき』、『蒟蒻』、『餅巾着』………あっ、『白滝』も忘れてはならんのじゃあ!

で、後は美樹オススメの『牛スジ串』と『鶏つくね串』、『タコ串』、『銀杏串』の串シリーズじゃろう。

更に黛藍オススメの『餃子天』に加え。『ウィンナー天』、『ロールキャベツ』、『結び昆布』………」


山背が持参した大きな鍋を店の主の真磯に渡し。本日、愛満宅の晩ご飯になる『おでん』の具材を次々に指名し買い付けるなか。


そんな山背達の姿が見え隠れする。練り物屋店奥の茶の間では、自身が描いた。

画用紙いっぱいにはみ出す程。大きく描かれた鍋の中に浮かぶ『おでんの具材』の絵を友達の愛之助と光貴達2人に見せながら、練り物屋店末っ子の珠海が、何やら嬉しそうに一つ一つ絵を指差しつつ。これは何のおでんの具材なのかと説明していて


「でね!この絵は、家の店で人気ナンバー1になる『桜花天』を描いていてね。

隣に描いてる『梅花天(うずらの玉子天)』とセットで、家の店で人気を博しているんだ。

見た目も薄ピンクの桜色の淡い色合いに桜の花の形をモチーフにしていて、中に海老の擂り身を使ったつくねと共に白玉、銀杏の実が1つづつ入ってるんだよ。

しかも味も見た目も最高で!こんな美味しい練り物を考え出すなんて、家の兄ちゃん達本当スゴいと思うでしょう!

あっ、それからね。家のお店に来るお客さん達からは、家の練り物はどれを食べても食べごたえがあって、そのまま食べても美味しいし。

寒い今の時期なんかは、おでんや鍋の具材としても使えて使い勝手良いから、みんな必ず『桜花天』と『梅花天』をセットにして買って行ってくれるんだ。」


『練り物屋』人気ナンバー1商品にして、大好きな兄達が作り出す。町名物の桜の花をモチーフにした。練り物『桜花天』の事を誇らしげな様子で話し。


そんな珠海の話に何度も大きく頷きながら話を聞いていた愛之助も


「ほぉほぉ、そうなのでござるか!

それは珠海が大好きな兄者の真磯と出帆の2人が端正込めて作った練り物達でござるから、お客さん達が喜んでくれる事は、実に嬉しいでござるし。それは本当に良かったでござるね。

拙者も兄者の愛満お手製の和菓子や料理を誉められると心の底から嬉しくなるでござるよ!解る解る、解るでござるよ!」


珠海に負けず劣らず。自身も大好きな兄者の愛満の事を嬉しそうに話。更に続けて


「それにしても、珠海は絵が本当に上手でござるね。

こちらのおでんの具材、竹輪なんて本当に美味しそうに上手に描かれているでござるよ!

うんうん、美味しそうでござる♪」


珠海が描いたおでんの絵を誉めてくれ。愛之助に続くように光貴も


「うんうん、本当に上手へけっね!

あっ、じゃあ、じゃあ!このおでんの具材は何へけっか?」


楽しそうに3人でお喋りしながら、最近なかなか一緒にゆっくりとご飯が食べれていない。愛満と食べるご飯の時間を楽しみに待つのであった。




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