『バナナチップ』と効能いっぱい実芭蕉
「♪~~~♪~~♪~♪…………っと、これで完成と!
どう、愛満?これで完成して大丈夫だよね?私ちゃんと出来てた?」
朝も早い万次郎茶屋の台所で、何やら天板の上に並ぶスライスされたバナナと言うか、バナナチップを前に
猿族の女性、結花理が、側で彼女の作業を見守ってくれていた愛満に問いかける。
「うんうん!結花理さんバッチリですよ!これで『バナナチップ』の作り方はマスターしましたね。
あっ、そうだ。どうです。今日作った『バナナチップ』、いつものように自宅に持ち帰るとして、少し味見してみませんか?」
「えっ、良いの?」
「はい、今日はバナナをスライスして乾燥させるだけでしたから、いつもより時間に余裕があるんですよ。」
愛満が話し。
ここ最近の早朝。日中、石鹸工事の仕事も頑張りつつ。自宅の家事を手早く終え。
家族が起き出す前の朝早い時間帯に万次郎茶屋へとやって来て、バナナ菓子を習いに来ていた結花理をダイニングテーブルへと案内。
【手早く『バナナ菓子』を習った結花理は、その後自宅へと帰り。家族を起こし朝ご飯を食べさせたり。仕事、学校へと送り出しています。】
先程作り終えたばかりの『バナナチップ』を持ち帰りやすいように袋に詰め替えながら一部を木ボールに入れ。結花理に進める。
「……パリパリ………パリパリ………うん!美味しい!
やっぱりバナナは偉大ね。どんなお菓子にも支えて美味しいわ!
しかし不思議よねぇ~!学のない私でも使える生活魔法の2つで、こんなに美味しい『バナナチップ』が簡単に作れるんだもの!
考えてくれた愛満には感謝感謝でいっぱいだし。この先、頭が上がらないわ。」
味見を通り越し。バリバリ『バナナチップ』を美味しそうに食べている結花理は、比較的簡単な生活魔法の2つを使い。簡単に『バナナチップ』を作り出す事を考えてくれた愛満を誉め称える。
するとそんな結花理の言葉に愛満は照れ臭そうに笑い。
『そんな事ないですよ』と恥ずかしそうに言いながらハニカミ。結花理へとお茶を煎れてくれ。
愛満が煎れてくれた美味しいお茶を飲み。一息ついた様子の結い花理は、愛満の心優しい気が利く息子が欲しいと心の底から思いながら
「ハァ~~~!しかし本当不思議だわ。
あんな初歩的な風魔法と火魔法の2つで、こんな美味しい『バナナチップ』が作れるなんて……………。
ハァ~~~、まさか組み合わせしだいで何とでもなるなんて
それにスライスしたバナナを乾燥させていると言うか、まるで揚げたみたいな食感になるんだもの。本当ビックリよ!」
自分が先程作り出した『バナナチップ』を持ち帰りの分までモリモリ食べ進め。驚きの声を上げる。
◇◇◇◇◇
この猿族の女性・結花理が誰かと言うと、朝倉町で『油屋』や『石鹸店』を営む次郎の兄嫁になり。
とある事情から『風呂屋・松乃』等に卸す石鹸を朝倉町で生産する事を愛満が決め。
【ちなみに愛満が日々の石鹸の補充がめんどくさい等では………………ないはず……………。】
石鹸を作る技術等を油を取り扱う猿族の次郎や匂袋を作る竜人族の真香達へと教え。
無事石鹸を作り出す事に成功した次郎達は、先の戦争で仕事や家を失い。日々の生活にも事欠いてた兄家族を始め。次郎の親族達を朝倉町へ呼び寄せ。
石鹸工事で働きたいと希望する。竜人族でありながら色落ちと、同じ竜人族の者達から迫害されていた悲しい歴史を持つ香夢楼達が支援する。
世界各地に散らばる竜人族の色落ちの子達を愛満の力を使い集め。
迫害や暴力に怯える事無く。のびのびと仲良く暮らす事が出来る。白梅の花に囲まれた『白梅園』の孤児院出身になる子達と一緒に
愛満が建てた石鹸工場で、仲良く働いている女性になり。
他にも朝倉町に来て以来。甥っ子に教えてもらった村名産の果物の『バナナ』に家族共々すっかり魅了され。
甘い物好きな事もあり。町にある『甘味倶楽部』に加入していて
家事に育児に仕事にと、大好きなバナナや甘い物を食べ。日々のストレスを発散していたのだが
この度、見事『甘味倶楽部』メンバーの夢でもある。自身イチオシのお菓子のお店を持てる事になり。
結花理イチオシの『バナナ』を使った『バナナ菓子専門店』をオープンする運びとなっていた。
◇◇◇◇◇
そうして持ち帰りの分の『バナナチップ』を綺麗に食べ終え。すっかりリラックスモードの結花理は自身を含め。
すっかり家族を魅了したバナナの事等を含んだ世間話をしていて
「けど、本当にバナナって美味しいわね!
うちの家なんてテーブルの上にバナナ一房置いてたら、気付いた瞬間にはアッという間に無くなちゃうわよ!
あっ!このバナナのジュースも美味しい♪
愛満、悪いんだけど後でレシピ教えてくれない?」
愛満が朝ご飯変わりに結花理リクエストのシリアル入り『バナナヨーグルト』と共に。バナナを使用した『蒸しパン』
バナナ、豆乳、黒ゴマ、メープルシロップ入りの『バナナと黒ゴマのソイシェイク』に舌鼓をうちながら、家では滅多に味わえない上げ膳据え膳を味わいつつ。
『美味しい、美味しい』とお喋りに花を咲かせ。
そんな結花理の姿を微笑ましそうに見ていた愛満が、結花理からこんな美味しいバナナなのだけれど、バナナを食べると何か良い事やバナナの話をこれからお店を始めるに辺り。
お客さんに聞かれても答えられるように何か有れば教えてと頼まれ。
「えっと、ですね。僕も簡単な事しか解らないので申し訳ないんですけど
『バナナ』と言えば、昔僕の住んでた故郷では高級食材になったらしいんですよ。
けど、いつしか栽培技術等が進化し。今ではポピュラーな市民の味方の果物になってるんですよ。
あっ、後、体を動かす方が体を動かす前や途中でバナナを良く食べたりしていて
バナナの速効性と持続性を兼ね備えたエネルギー源でいて、果物の中でも種が無い事。皮をむくだけで食べやすい事。
持ち運び便利で、甘くて美味しいと良い事ずくめな事も相まって、人気を博しているんですよ。」
自身が知るバナナの雑学等を話始め。
「他にもバナナは効能いっぱいで、エネルギー補助には五つ星をあげれるくらいのスゴい果物になり。
バナナにはカリウムや食物繊維がいっぱいで、大腸がんのリスクを下げ。腸内環境改善の効果もあり。
豊富なポリフェノールによる抗酸化作用もあったりして、免疫力を高める効果や、精神を安定させるセロトニンも含まれているんです。」
結花理がちょっと良く解らない話も交じりつつ。
何やら結花理が見た事ないバナナが交じった。大小様々なバナナをテーブルの上に並べ始め。
「まずこのバナナは『キャベンディッシュ』と言うバナナになるんですけど
僕と言うか、朝倉町の人達がもっとも日常的に食べている系統のバナナになり。
なめらかでサッパリとした食感で、日持ちも優れ。僕の故郷の方では5割のシェアを誇るバナナになるんです。
ちなみにカーブの大きいものは、木の外側で育った物になり。生育が良いポイントなんですよ。
後、バナナは下の方ほど甘く。皮を向いた方から順に食べるスタンダードな食べ方が、バナナを美味しく食べるオススメなんです。」
愛満のお陰ですっかり異世界の朝倉町でも親しまれているバナナの種類『キャベンディッシュ』の事を説明。
「ちなみに体を動かす方向きのバナナもあって、『ラカタンバナナ』と呼ばれているんですが、小ぶりでずんぐりした携帯しやすい大きさになり。
爽やかな酸味がスポーツ時にピッタリと言われていて、ミネラル類、クエン酸等も多く含まれ。アスリート向きと言えるそうなんです。
あっ、お1つ味見にどうぞ。」
何やらアスリート向きになるらしい『ラカタンバナナ』を味見としょうし。先程から見慣れるバナナに熱い眼差しを向ける結花理へと手渡し。
今度は可愛らしく見た目の小ぶりのバナナを味見用に前に一本づつ差し出しながら
「で、こっちの一般的なバナナより半分ほどの大きさのバナナは『島バナナ』と言われていて、フルーティーな芳香とクリーミーな食感が魅力なんです。
あっ、こちらのバナナ達も味見にどうぞ。
次にこっちの赤い皮のバナナは『モラード』と言われ。
赤い皮が特徴で、食感はモチモチしていて、甘さ控えめで、ほのかな酸味もあり。サッパリした味わいになるそうなんです。
そして次にこちらの『台湾バナナ』は、その多くが『北蕉』と『仙人蕉』と言う品種になり。
肉質でねっとりした濃厚な食味のバナナになるそうなんです。
最後に別名『モンキーバナナ』と言われ。正式名が『セニョリータ』になるこのバナナは、長さが10cmにも満たない極小の品種になり。果肉が柔らかく、甘味が強い品種になり。
見た目も小さく可愛らしく。小ぶりシリーズのバナナ達になるので、この前、結花理さんに教えた『バナナパイ』に良いんじゃないかと思い。準備してみたんですけど、どうですか?
これなら食べやすいサイズの『バナナクリームパイ』になると思うけど」
結花理の店で販売する事になるメニューの1つ。
バナナを丸々一本、ナッツが練り込まれたパイ生地でカスタードクリームと一緒に包み。焼き上げる『バナナクリームパイ』に使えないかと愛満が提案し。
結花理が満足するまで全種類のバナナ、一房を食べ比べさせてくれ。
更には『バナナケーキ』を作る際、重要になる『シュガースポット』なる事を改めて教えてくれ。
「それにですね。この前も説明したかも知れませんがこのバナナにポツポツと見える黒い点は『シュガースポット』と言われ。でんぷんが糖化した証なんです。
だからホクホクの食感とサッパリした甘さがお好みならば、バナナの皮が黄色いうちに食べ。
逆に甘さと免疫力をお求めならば、シュガースポットの出たバナナを食べた方が良いんですよ。
だからこれから結花理さんがお店でケーキやマフィンを作る際には、このシュガースポットが有るバナナを使ってケーキやマフィンを作る方が、より美味しいバナナケーキやマフィンが作れるんです。」
と話し。空になったカップにお変わりのお茶を煎れてくれるながら、その日早朝のバナナ菓子教室は無事終わった。
◇◇◇◇◇
こうして、猿族の結花理が営む『バナナ菓子専門店』のメニューが決まり。
たまに愛満に泣きついたりしながら、後は店で自主連を日々頑張りつつ。
元の勤務先でもある石鹸工事の引き続き作業を無事終え。
12月頭のオープンの日を楽しみに待つだけなのであった。
ちなみにバナナを漢字で書くと『実芭蕉』になり。
愛満からその事を教わった結花理は、自身の『バナナ菓子専門店』のお店の名前を『実芭蕉』に決める。




