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和菓子『カステラ』とカステラは和菓子?



チリンチリン~~~♪


「はいはい、いらしゃいませ、いらしゃいませなのじゃ。

はいよっと、お待たせしましたのじゃ。ご注文の品はお決まりかのう?

……………って、なんじゃ凱希丸じゃないか、お茶休みに来たのかのう?

あっ!そうじゃあ、愛満には内緒なのじゃが。

最近、愛満が『カステラ専門店』を開店させるシャリテの為。ここ何日かカステラ作りの教室を開いておるのじゃよ。

で、じゃからと言う訳じゃないのじゃが、その教室で作られた『カステラ』を分けてもらっておってのう。

種類様々な美味しい『カステラ』をワシが凱希丸に『カステラ食べ放題』で振る舞うからのう。

良ければ暇をもて余している同士、ちょっくら一打ち将棋でも打たんかのう?

あっ、もちろん!ちゃんと飲み物の『緑茶』やお好みで『カルピス』も大盤振る舞いでサービスするぞ!」


自称万次郎茶屋看板ボーイの山背が、顔見知りでもあるドワーフ族の凱希丸が茶屋へと来店して来た事を良い事に一方的に話しかけ。

愛満から茶屋の店番を任されているにも関わらず。プラスお客さんが居ない事もあり。仕事そっちのけで、山背趣味の一つ。将棋を打とうと誘い。


「えっ!?カ、カステラだっぺか!?それも食べ放題!…………………いやいや、やはり……………ダメっぺ、ダメっぺ!………………………けどだっぺなぁー…………………………ダメダメだっぺ!

けど………………いやはや何と言うだっぺか……………………あっ!それより愛満や愛之助は何処だっぺか?」


将棋好きの山背に捕まると一打ちでは終わらない事は有名な事で、ちょっとした仕事の息抜きに大好きな和菓子を食べに来ただけの凱希丸は、山背が提案した『カステラ食べ放題』に心惹かれながらも、何と言ってこの場を逃げ切ろうかと頭を悩ませ。

『カステラ食べ放題』なる煩悩と戦っていた。



◇◇◇◇◇



「でね。そもそも『カステラ』とは、僕の住んでた国の室町時代に別の国の(スペインやポルトガルからやって来た)南蛮人と呼ばれた人達が伝えたとされる南蛮菓子が基になっててね。

その後の長い歴史の中で、オリジナルのお菓子とは形や味わいの異なる進化を遂げてきたんだ。

あっ、ボウルの中の卵白が白くなったらこし器で振るっておいた上白糖を2~3回に分けて加えてね。」


茶屋内で山背が凱希丸を『カステラ食べ放題』なる言葉で誘惑している事など全く知らない愛満は、茶屋に繋がる台所場でとボウルの中の卵白を高速に設定したハンドミキサーで泡立てながら、隣で同じように卵白をハンドミキサーで泡立てているシャリテへと指示を出しながら楽しそうにお喋りしていた。


「うん、上白糖を2から3回に分けてだね。

それにしても、……へぇ~!『カステラ』って、愛満が住んでた故郷で誕生した菓子じゃないんだ。

あんなに繊細で美味しい和菓子を生み出した国だからカステラもそうなのかなぁと勝手に思ってたよ、………驚いた」


パートナーのユグトや義父のアルフも含め。自身も大好きな『カステラ』が愛満の生まれ育った日本と言う。

あの繊細でいて、下手したら一口で食べ終えてしまうような小さな和菓子一つに見た目や味にも細心な気を使い作り出す。

美しい和菓子を生み出した国で誕生したお菓子でない事を聞き。シャリテは驚きビックリする。


すると愛満達の側で薄力粉を万能こし器で振るってくれていた愛之助がシャリテの驚いた様子に大いに同意しながら


「本当に驚くでござるよね!

あっ、けどねでござるね。よくよく申すのであれば、『カステラ』とは日本独自に進化した菓子でござるから日本で誕生した菓子とも言えなくはないのでござるよ!

それに一見、洋菓子のスポンジケーキに似ているのでござるが、スポンジケーキが膨張剤を使って生地を膨らませているのに対し、カステラは膨張剤も使用せず。

あのふんわりとした生地は、全て卵のなせる業なのでござるよ。スゴいでござるよねぇ~!卵とは偉大でござるよ!」


我が事のように自信満々の様子で話し。

愛之助の話を微笑ましそうに聞きつつも、手はしっかり作業しながら卵白を泡立てたボウルに上白糖を加えた後

ハンドミキサーを低速に変え『メレンゲ』を作っている愛満の姿を嬉しそうに見つめ。愛之助は笑みを浮かべながら


「だからねござるね。カステラと言う菓子は、混ぜる際の力の入れ方やタイミング、粉との割合、焼いてる間の泡の抜き方等々。

書先輩方の頑張りで生み出された。様々な技術を駆使して、ふっくら焼き上げる日本独自の和菓子とも言っては良いのではないかと拙者は思うのでござるよ!」


その昔、スペインやポルトガルから伝わったとされる南蛮菓子が基の『カステラ』は、既に日本独自に形や味を変え進化した行程から、もはや日本誕生の菓子と言っても良いんじゃないかと宣言し。

何やらテンションが上がった様子で話を続け。


「それにでござるね。『カステラ』の基の南蛮菓子ポルトガルは、パ、パン…………………?

(コソコソ 愛満、何て言ったでござるか?)」


「パン・デ・ローだよ。」


きめ細かいメレンゲを作り上げ。ソコに卵黄を2回に分けて加えながらハンドミキサーでカステラ生地(玉子液体)を泡立てている愛満へと、自身が忘れてしまったポルトガルの南蛮菓子『パン・デ・ロー』の名前を教えてもらったりしつつ。


「そうそう!パン・デ・ローでござるよ、パン・デ・ロー!

その『カステラ』の基ともされる『パン・デ・ロー』はでござるね。

拙者達が普段見慣れたカステラと違い。スポンジケーキのように円状の丸い形でござって、アチラでは修道院で作られ。

クリスマスや結婚式など特別な日に食べるものだったそうでござるよ。」


何やら自身が知るプチ雑学を披露し。


「ほぉほぉ、『パン・デ・ロー』か!カステラ好きの自分としては、それは一度食べてみたいものだね!」


カステラ好きのシャリテが『パン・デ・ロー』に心惹かれるなか


「そうだね。なら明日は『パン・デ・ロー』って言うか、だいぶ前にアッチで流行った『パン・デ・ロー』に少し似た『半熟カステラ』を作ってみようか?」


「えっ!?半熟カステラ!何々それ?

それに明日もカステラ教室開いてくれるの?」


シャリテが始めて聞く『半熟カステラ』との名前と共に、明日もシャリテの為に『カステラ教室』を開いてくれると言う愛満の言葉に驚いた様子のシャリテが問い掛けると


「もちろん!僕の作った『カステラ』を食べてカステラが好きになり。『カステラ専門店』を開いてくれると言ってくれるシャリテの為だもの!

お店を開くまでの間、少しでもシャリテが安心できる為ならいくらでも力を貸すよ。

頼りないかも知れないけど、任せてよ!」


あまり…………いや、ちょっとプニプニした厚みない(非筋肉質)の胸板を叩き。愛満がシャリテを安心させるように白い歯をニコッと見せながら微笑みを浮かべ。

シャリテが気になった『半熟カステラ』の事を話。


「『半熟カステラ』はね。『パン・デ・ロー』みたいに円状に作るカステラでね。

僕も『パン・デ・ロー』と言う南蛮菓子の事詳しく知らないから、どうこう言えないんだけど、たぶん南蛮菓子の『パン・デ・ロー』とは違う気がするものの。

向こうで流行った時に母や姉達から何度かお願いされて、何回かしか作った事ないんだけど

半分に切ると真ん中からしっとりカステラ生地と共に半熟のカステラ生地と言うか、カステラ液が出てきてね。

僕はカステラ液のタイプが苦手だったから、毎回半熟タイプのカステラ生地にして作ってたんだ。」


愛満が知る『半熟カステラ』の事を簡単にではあるが教えてくれたりしながらハンドミキサー(泡立て器)を使い。

泡立てたカステラ生地(玉子液)で、生地の表面()に『の』の字をかき。

しばらく生地の上で『の』の字が消えないくらいまで泡立てたカステラ生地(玉子液)に蜂蜜を少しずつ加え混ぜ合わせた愛満は、同じ作業をしているシャリテへと『カステラ』を作る際のポイントを伝え。


「昨日も言ったかも知れないけど、メレンゲに卵黄を加える行程は、きめが細かくなるまで良く混ぜるのが生地をしっとりさせるコツなんだ。

じゃあ、蜂蜜まで加え終えたから、次はハンドミキサーからゴムへらに持ち替えて、愛之助が振るっておいてくれた薄力粉を加え。型に流し入れ焼いちゃおうか!」


「了解!確かカステラ生地(玉子液)に薄力粉を加えたら、底からすくうようにして切るように混ぜ。

大きな泡がなくなって全体がきめ細かくなり。ヘラですくうと、ゆっくりとリボン状になって落ちるくらいになったら生地の完成だったよな?」


「そうそう、さすがシャリテ!カステラ作りバッチリじゃん!」


「バッチリでござるね、シャリテ殿!」


3人は楽しそうにお喋りしながらカステラ作りを進めた。



◇◇◇◇◇



「はい、これがさっき皆で作ったシンプルでいて、オーソドックスな基本になる『カステラ』だよ。

それにこの1週間の間にシャリテと一緒に作った。シャリテのお店の商品になる。

『人参カステラ』に『チョコカステラ』、『苺カステラ』、『抹茶カステラ』、『チーズカステラ』になるよ。」


本日の『カステラ教室』を終えた愛満達は、何やら小上がりの畳につぷし。悔し涙を流す山背と、そんな山背を可哀想に見つめながらもカステラをモグモグと食べている凱希丸の姿を不思議そうに見ていたシャリテと愛之助の2人に声をかけ。

持参した味わい様々な『カステラ』と『緑茶』を振る舞い。更に話を続け。


「それから万次郎茶屋で春夏秋冬の季節折々に販売して人気が高かったカステラを一応参考に持って来たよ。」


自身が押して来たワゴンの下の段から彩り豊かなカステラが乗った皿を取り出し、シャリテ達に進めながら


「まずこのお皿のカステラがね。春限定のカステラで人気を泊したシリーズになってて

桜色のカステラ生地に桜の花を加えた『桜カステラ』

メープルシロップをプラスしたカステラ生地にドライ苺を加えた『苺のメープルカステラ』でしょう。」


桜の花が描かれた春らしいお皿に乗ったカステラを紹介し。お次に夜空に打ち上げられた花火が描かれた皿に乗る。


「夏限定の牛乳にすりおろしチーズを溶かして作ったチーズ液を加えて作ったチーズカステラ生地に

キャラメル、オレンジ果汁、オレンジの果肉を煮絡めたキャラメルオレンジを加えた『キャラメルオレンジのチーズカステラ』

紅茶カステラ生地に果肉ゴロゴロの桃ジャムを加えた『白桃の紅茶カステラ』

檸檬の皮を混ぜ混んだカステラ生地にホワイトチョコのチョコチップを加えた『檸檬とホワイトチョコのカステラ』だよ。」


夏限定のカステラ達を紹介していると、何やら甘味大好き、甘味王の凱希丸を始め。泣きべそかいてた爺ちゃんの山背

とある出来事から顔見知りになった。隣町に住む孤児院の子供達にクリスマスプレゼントとして渡すのだと朝早くから編み機でマフラーら帽子を黙々と頑張って作っていた

(編み機とは=子供用玩具ながら立派なマフラーや帽子が取っ手をクルクル回すだけで編める玩具になります)

マヤラ、タリサ、光貴達3人も疲れた体を休める為。朝から酷使していた手を止め集まって来て、皿の上に乗るカステラ達に舌鼓を打ち出し。


シャリテが真剣な表情で凱希丸やタリサ達の意見をノートにメモを書き取っていくなか。

先程の春夏カステラが乗った皿より一回り大きな紅葉が描かれた皿をワゴンから取り出した愛満が


「秋限定の黒糖カステラ生地に蒸かしたさつま芋を加えた『さつま芋の黒糖カステラ』

紫芋パウダーを加えた紫芋カステラ生地に蒸かしたさつま芋、小豆を加えた『芋豆カステラ』

抹茶カステラ生地に栗の甘露煮、小豆、うぐいす豆、白豆の甘納豆を加えた『栗と豆の抹茶カステラ』

チーズカステラ生地に甘く煮た林檎を加えた『煮林檎のチーズカステラ』

カボチャを加えた南瓜カステラ生地に蒸した南瓜を加えた『南瓜カステラ』

黒ゴマペーストを加えた黒ゴマカステラ生地に白胡麻、黒胡麻を加えた『胡麻ごまカステラ』

ちょっと変わり種で、カステラ生地に白餡と白味噌を混ぜ混んだ『白餡と白味噌のカステラ』になるよ。」


やはり食欲の秋の為なのか人気を博したカステラが多いなか。秋限定のカステラを皆に紹介。

最後に雪や雪だるまが可愛らしく描かれた皿を取り出し。


「で、これが最後になる冬限定のカステラ達でね。

黛藍が好きな、カステラ生地に柚子(ジャム)を加えた『柚子カステラ』

チョコカステラ生地にバナナとチョコチップを加え。チョコの濃厚さをプラスした『バナナとチョコのWチョコカステラ』

チーズカステラ生地に苺、ホワイトチョコチップを加えた『苺とホワイトチョコのチーズカステラ』

クリスマスカラーをちょっと意識して作った。ピスタチオカステラ生地にラズベリーを加えた『ラズベリーのピスタチオカステラ』だよ。」


実は今朝早くから万次郎茶屋で販売する和菓子や料理の傍ら、自身が使える(チート)をフルに使って作り出した数々のカステラ達を全て紹介し終え。


愛満お手製のカステラをきっかけに始まった。シャリテのカステラ専門店に少しでも力に慣れればと、先程紹介したカステラのレシピを気前良くシャリテへと手渡しつつ。

僕もまだまだ頑張らなくちゃと、新たに心に誓う愛満なのであった。



◇◇◇◇◇



こうして愛満が甘味倶楽部メンバーの願いを聞き入れ新たに建築した甘味ロード内の1つ。

『カステラ専門店』こと、愛之助が教えてくれた(ちなみに愛之助は愛満から終わったようです)


「日本の菓子『カステラ』の名前の由来はござるね。

諸説あるのでござるが『カスティーリャ(スペインの事)』のお菓子として伝わった為。

『カスティーリャ』が時代と共に変化していき『カステラ』になったそうなのでござるよ!」


との話から、何やら『カスティーリャ』の言葉を気に入ったシャリテは、自分が営むカステラ専門店の店名を『カスティーリャ』に決める。



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