祝菓子『千歳飴』と七五三とは?
11日14日のその日。
朝倉神社に続く桜並木通りの一角に建つ。愛満の力をフルに使用された。
とある蔵のような建物内奥では、沢山の『白い綿帽子』が入った段ボール共に子供用の『袴着』、色とりどりの『振り袖』がそれぞれ一式セットにされ。専門の衣紋掛けに掛けられ綺麗に並んでいて
そんな『袴着』や『振り袖』が並んだ列を愛満や愛之助、山背、美樹、黛藍達5人が何やら資料片手に在庫確認をしていた。
「えっとじゃのう~、赤地に松竹梅鶴亀柄の97番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケーなのじゃ。
ピンク地に花束に波柄の98番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケーなのじゃ。
青地にねじ梅柄の99番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケー。
そして最後の黄地に犬張り子柄の100番、汚れほつれ、不備無し、最後確認オッケーなのじゃ!」
「100番も汚れほつれ、不備無し、在庫確認マーアル(○)と、うんうん。資料ともバッチリ合ってるでござるよ。
はぁ~~~!それにしても今年も在庫確認がちゃんと合って一安心でござるね。
去年『七五三』終わりの返却時に慌ただしくバタバタしてたでござるから、見落とした汚れやほつれ、一式セットの不備等が合ったりして、ちょっとバタバタしたでござるもんね。
うんうん、コレで七歳児の振り袖はバッチリ!何があっても大丈夫でござるよ。」
「本当じゃのう。ワシも自分が担当した列の在庫確認が無事終わり一安心なのじゃあ!」
七歳児用の振り袖の在庫確認と共に汚れやほつれ、不備がないか等、確認していた愛之助と山背コンビの2人は、自分達が担当した列の振り袖の確認を無事終えれた事にホッと胸を撫で下ろし。
「それにしても着たい振り袖が被り。子供達が喧嘩したりしないようにと愛満が気を使い。今年の新作も含め。
100着の振り袖が一同に並ぶ姿を目にすると、まさに圧巻の一言につきるのうー……………はぁ~~~」
「本当でござるね。彩り鮮やかな振り袖達が並ぶ光景などなかなか目に出来ぬ事でござるから、ある意味ラッキーな事かも知れぬでござるが、何と言うか……………………はぁ~~~」
目の前に並ぶ圧巻の振り袖の数に自分達でも良く訳の分からないタメ息を2人がつきつつも何とか気を取り直し。
他の3人の作業の様子を見に行く事にした所。
「うし!この3歳児用の袴着の列、全部制覇してやったぜ!確認完了!」
との美樹のその場に倒れこむ音と雄叫びが蔵内に響き。
「はいはい、頑張ったアルね、よしよし。
じゃあ、次は気を取り直して五歳児用の袴着の確認始めるアルよ!」
「………えっ!?ま、まじで」
「マジも何も1秒でも早く在庫確認終わらせて、お昼ご飯皆で食べに行きたいアルから頑張るアルよ!
ほらほら、重い腰上げて立つアルよ!五歳児袴着列にレッツゴーアルよ!」
少々おざなり感が感じられる褒め言葉&頭ヨシヨシを黛藍から受けた美樹が、何やら虚ろな瞳で新たな五歳児用の袴着列へと在庫確認にドナドナされて行くなか。
そんな美樹と黛藍のコンビを無言で見送りつつ。
愛之助と山背の2人は、1人3歳児用振り袖の在庫確認をしている愛満の元へお手伝いに向かうと
「ええっと、赤地に八重桜柄、52番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケー
白地に宝尽くしの丸柄、53番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケー」
見落としや間違いがないよう。資料片手に1人声だし、指差し確認をしながら在庫確認をしている愛満がおり。
そんな愛満に自分達が担当した七歳児用の振り袖の在庫確認を終えた事を伝え。
自分達も愛満のお手伝いをすると申し出ると、愛満は作業を終えた2人を労いながらも嬉しそうに2人の申し出を快く了解してくれ。3人で3歳児用の振り袖を確認していく。
「次はピンク地の松竹梅鶴亀柄、77番、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケーでござるよ。」
「こっちの78番、黄地に牡丹と蝶柄、汚れほつれ、不備無し、在庫確認オッケーじゃぞ!」
3人でテキパキと確認作業をしていると、何やら不思議そうな表情を浮かべた愛之助が
「愛満、確認作業の途中で悪いでござるのだが、どうして3歳児用の振り袖には一枚一式が多いのでござるか?
それにこの着物と言うか、着物の上に羽織っている物は何でござるか?」
3歳児用の振り袖の上に着せられた物を指差し。愛満へと質問する。
そんな愛之助からの質問に本来在庫確認作業で忙しいなか、愛満は嫌な顔1つせず。
「あぁ、それはね。僕も詳しくは知らないんだけど『被布』と言う上着でね。
3歳児の女の子が七五三のお宮参りをする際、着物の上に上着として『被布』を羽織る習わしがあるんだ。
って、こんな簡単な事しか説明出来ないんだけど、………本当ゴメンね。」
簡単な説明しか出来ない事を申し訳なさそうにしながら愛之助の質問に答えてくれ。そんな愛満の話を聞き。
「ほぉほぉ、なら『七五三』とはどういう意味なのじゃあ?それに段ボールいっぱいある『綿帽子』も何か意味があるのかのう~?」
との山背からの質問があり。
確か去年、愛満から1度説明を受けたはずの『七五三』や段ボールいっぱいに用意された『綿帽子』の意味を話始め。
「あのね、『七五三』を簡単に説明するとね。
そもそも『七五三』とは僕の故郷では昔、乳幼児の死亡率が高くて、子供の成長を願って様々な儀式が行われてたんだ。
で、『七五三』もそんな儀式と言うか、行事の1つになってね。
もともとは公家や武家で行われていたものが一般に広まっていき。
三歳、五歳、七歳の節目に無事に育ってくれた事に感謝して、今後の健やかな成長を願って氏神様にお参りをするんだ。」
簡単ではあるが『七五三』の説明をしてくれ。更に続けて
「まずあそこの段ボールいっぱいに有る『綿帽子』は、明日『七五三』に参加する三歳児の男の子、女の子達に配る物でね。
三歳のお祝い『髪置き』と言って、昔それまで剃っていた子供達の髪を伸ばし始める儀式の1つで
その昔、白髪頭になるまで子供達が長生きする事を願って、白髪に見立てた『綿帽子』を被せていたんだよ。
で、僕もこの朝倉町に住む子供達に白髪頭になるまで幸せに長生きしてもらいたいから『髪置き』の儀式にあやかって、三歳児の男の子や女の子達に白い『綿帽子』を配るする事にしているんだ。」
『七五三』のお祝いの場に『白い綿帽子』が置いてある理由を説明して、愛満の説明に『ほぉほぉ』、『そうでござるか、そうでござるか』と相づちを打つ2人に
「次にね。美樹と黛藍達が在庫確認してくれている『袴着』や愛之助や山背達が在庫確認をしてくれた『振り袖』を簡単に説明すると
まず五歳男の子が明日着る『袴着』は、数え年で五歳を迎えた男児のお祝いで、初めて袴を着る『袴着の儀式』になり。
男児にとっては男として社会の一員になるという意味合い何かがあるんだよ。
で、明日七歳児の女の子が着る『振り袖』は、数え年で七歳を迎えた女児のお祝いで、それまでは『付けひも』というひもがついた着物を昔着ていたんだけど
七五三と言うか、数え年七歳を迎えた女児は、はれて『丸帯』という大人の女性と同じ帯を結んで着物を着る事が許される事になり。
『ひも解き』や『ひも落とし』等。正確には『帯解き』と言われる七歳のお祝いの儀式の1つになるんだ。」
七五三で男の子や女の子達が『袴着』や『振り袖』を着たり、氏神様にお参りする訳を教えてくれ。
最後に付け加えるように11月15日に何故『七五三』を行うかまで説明してくれ。
「あっ、それからどうして11月15日に『七五三』を行うかと言うとね。
まぁ、諸説あるんだけど、二十八宿という暦上の『鬼宿日=鬼が出歩かない日』にあたり。何事も最良とされる日だった為とか
徳川家の将軍が病弱だった息子の健康を祈り『袴着の儀式』を行った為だとか
旧暦の11月15日に収穫の感謝と子供の成長の確認をお祝いした為だとか、いろいろあるんだ。」
と話終え。三歳児女性の振り袖確認作業を始めようとするのだが、何やら『七五三』繋がりで最近愛満がマジックバッグへとせっせと作り貯めている。
七五三には付き物の『千歳飴』の事を思い出した様子で、味見としょうして千歳飴を食べていた愛之助や山背の2人は、口々に『千歳飴は美味しいでござるよね♪』や『優しい甘さでちょっとした口寂しい時に良いのじゃよなぁ~♪』と頬を緩め話。
気がつけば『千歳飴』の事も質問してきて、愛満は苦笑いを浮かべながらも
「そうだね。2人が美味しいと言ってくれた七五三に欠かせない『千歳飴』は、江戸時代に浅草で売り出したのが始まりとされていてね。
長く延びる飴に子供達の長寿の願いが込められていて、縁起の良い紅白のセットになっているんだ。
他にも千歳飴の袋には『鶴亀』、『松竹梅』の縁起の良い絵柄が描かれていて、昔は内祝としても贈られていた事もあったそうなんだよ。」
明日朝倉神社で開催される『七五三』のお祝いでも配られる予定の『千歳飴』の誕生秘話等を説明し。
「あっ、そうだ。今日のお昼ご飯の後に出すデザートはね。そんな千歳飴を使用した『ミルクプリン』になるんだけど
この列の確認作業が終わらなかったお昼ご飯も食べれないし。
お昼ご飯が遅くなるかもしれないから3時に小腹も空かなくて、今日の3時のおやつ無しになるかもしれないね。」
お昼ご飯後の千歳飴を使用したデザートで2人のやる気スイッチを押しつつ。更には3時のおやつが無くなるかも知れない事を伝え。
何とか2人の意識を『振り袖』在庫確認作業へと向けさせる事に成功した愛満は、無事『七五三』前日に終えなければいけない作業をし終え。
後は明日の『七五三』を迎えるだけだどホッと胸を撫で下ろしつつ。
明日から11月終わりまで開催される事になる。愛満主催の七五三イベント最終日まで、臨時で雇った町のパートの奥様方と力を合わせ。七五三イベントを乗り切るだけだと己に渇を入れる愛満なのであった。
◇◇◇◇◇
ちなみに親や保護者の仕事関係などから平日に七五三を行わなくてはいけない家庭が多々あり。
朝倉学園では『七五三休み』なる学園をお休みする事が愛満の下認められており。
その日ばかりは『袴着』や『振り袖』姿におめかしし。親や保護者、兄や姉達へと甘える子供達の姿を目にする事になる。




