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じんわり溶け出す「黄金味噌スープ」と、合う合わない、人それぞれの味覚



「ハァ~~~……でさぁ。この前『味噌スープ屋』を開店する前に何組かの知り合いの冒険チームの人達に声かけしてね。

僕達コプリ族が大好きな『味噌』をベースに使用した具沢山の『食べるスープ』事。

大根や人参、ゴボウ、里芋、南瓜、蓮根、白ネギ、豚肉、豆腐、油揚げ、蒟蒻

白玉粉と豆腐で作った白玉団子が具沢山にたっぷり入ってね。

更には小ネギや一味唐辛子をお好みで散らした『団子汁』を試食してもらったんだ。

そしたら女性の人達や少食の人達からは、お椀一杯でお腹イッパイになるし。

具沢山の野菜やお肉が栄養バランス良くとれそうとか、ダイエットに良いよねって、基本的には好評だったんだけど…………。

何人かの人達の口からは、独特の風味や味がちょっとって遠回しに言われてね。

どうやら『団子汁』がと言うか、『味噌』が口に合わなかったみたいなんだ………………。」


1日1日と寒さを感じる今日この頃。

大粒の雨が朝倉町へと降り注ぐその日。愛満が亭主を勤める万次郎茶屋では、愛満の友人の1人になるコプリ族がイーツが、何やらヒドクしょげた様子で、自身お気に入りの『コーヒー牛乳』が入ったコップをイジイジさせ。


「そもそもさぁ~。この町に住む人達はみんな、最初っから味噌に抵抗がなかったし。

皆『美味しい、美味しい』って食べて(呑んで)くれていたから気付かなかったんだけど………………良く良く考えたら発酵食品になる『味噌』が駄目な人もいるんだよね。

…………………ハァ~~~、困ったなぁ~……お店、オープンまで1週間きってるのに、どうしたものか………………。」


大きなため息をつきながら、朝からの生憎の雨で閑古鳥が鳴く万次郎茶屋内で、暇をもてあました様子の自称茶屋の看板ボーイになるらしい山背へと愚痴を溢していた。


そんなイーツの話に仕事中ながらイーツ以外客が居ない事を良い事にイーツの隣の席のカウンター席に座り。

優雅に『カルピスソーダ』を飲みながらイーツの話を聞いていた山背が大きく頷きながら


「そうじゃよな………(みな)(みな)、味噌が好き等と言う都合が良い話なんてないからのう………。

う~ん、イーツ念願の『食べる味噌スープ屋さん』オープン前に頭を悩ます話になるよのう~…………………。」


暫くの間、イーツと一緒に頭を悩ませていたのだが、何やら閃いたとばかりに立ち上がり。万次郎茶屋奥の台所へとトコトコと歩いて行くと

戻ってくる時には、今度は自信満々の様子で、困った時の神頼みとばかりに

イーツお持ち帰り注文で、帰ってから同じアパートに住むコプリ族の者達と一緒に食べる予定の大きな栗の甘露煮が丸々一粒、つぶ餡、求肥と一緒に仲良くどら焼きの皮に挟まれた。

大人の手のひらサイズの大きな大判『栗どら焼き』の詰め合わせを作っていた。

山背必殺技の1つ。愛満をカウンター席へと連れ出して来ると、イーツの悩み事の解決策を愛満へと華麗に丸投(まるな)げし。

一仕事終えたとばかりにお代わりした『カルピスソーダ』を美味しそうに飲み始め。

そんな山背の姿に愛満は苦笑いを浮かべつつも、今だ頭を悩ませるイーツへと優しく声をかける。


「イーツ、大丈夫?さっき山背から聞いたんだけど『味噌』が駄目な人達が居たみたいだね。」


「そうなんだよ、愛満!どうしょう!?どうしたら良いと思う?

後1週間で、僕達コプリ族が真心込めて作り上げた味噌を使用した『食べる味噌スープ屋さん』がオープンするのに………こ、これは開店前から難問膨大だよ!」


自身念願だった『食べる味噌スープ屋さん』開店1週間前のイーツが酷くテンパった様子で愛満へと泣きつき。更には顔を真っ青にして


「あ~~~ぁ、本当どうしょう!!

只でさえ、お店のコンセプトが被るかも知れないのに、快く僕の店の開店を祝ってくれたコペイとタマネの2人に顔向け出来ないよ!

そもそもさぁ!先にお味噌汁を店の看板に提供する『お握りとお味噌汁の店』を営んでいるコペイとタマネの2人に迷惑かけないようにって、お店の名前も少し工夫して『食べる味噌スープ屋さん』って無い頭を振り絞って考えたのに!

それに更に更に言わせてもらえるならば、コペイとタマネ達のお店のコンセプトと被らないようにって、頭から湯気が出るくらいまで考えに考えて!

大中小から選べるサイズに加え。お椀一杯の季節折々の具沢山の野菜や肉、旬の魚、豆腐等々

更にはコプリ族お手製の『米』、『麦』、『豆』から作り出した。無限の組み合わせと言うか、可能性が有るお味噌達から選べる。

組み合わせ自由の、お味噌汁でお腹イッパイになるお店のコンセプトを考え出したのに!

………………ぼ、僕はどうすれば良かったの………………あんなに美味しいお味噌が駄目な人が居るなんて………………僕はもう、お手上げだ……………」


力無い様子で、涙をポロポロ、鼻水をズルズルさせながらカウンターテーブルへと倒れこむ。


「ちょ、ちょっとイーツ。そんなに泣かなくても大丈夫!大丈夫だから元気だしてよ!

それにね。前にも話したかも知れないけど、僕の故郷の調味料の1つでイーツ達コプリ族が大好きな『味噌』はね。

僕の故郷でも異国の人と言うか、別の国の人や味噌を食べなれていない人達の口に合わない事が多々あったんだ。」


「…………へっ!!?ほ、本当に!?」


「うん、本当本当!それに僕が知ってる限りでは『味噌』の他にも『醤油』が駄目な人も結構居てね。」


「えっ!醤油も?」


「そう、味噌に続き醤油も!」


「しょ、醤油もだなんて、……………ど、どうしょう……………オープン前からうちの店倒産確定だよ!うゎ~~~ん!愛満、本当にどうしょう~~~!!」


「ちょ、ちょっい!イーツ落ち着いて、落ち着いてったら、そんなに襟首締めたら、……………山背の首が絞まって白目向いてるから!」


イーツがテンパりにテンパり。興奮のあまり隣に座る山背の服の襟首をガッチリ掴み。更には前後にガクガクと揺さぶり。白目向いてる山背をイーツの手から解放させながら


「ほらほら、イーツ落ち着いて

はい、ティッシュ…………ほら、鼻かんで。お茶飲んで一息つきな」


愛満の話に悪い方悪い方へと妄想を膨らませてしまった様子のイーツの涙を拭いてあげつつ。

少々時間はかかったものの。イーツを落ち着かせる事に成功した愛満は、改めて先程の話を続け。


「それでね、お父さんの仕事関係者と言うか、お父さんの作品の熱烈なファンになる。外国(フランス)出身のピエールさんって人が居たんだけど

そのピエールさん、とにかく『お米』が大好きでさぁ~。

爺ちゃんが良く食べる家の家族用にって作ってた米畑から新米が採れる時期には、何だかんだと理由をつけては、秘書さん達をまいて必ず家に訪れてたんだ。

それに家に来た時なんかは、必ずといって良いほど家の離れの和室に泊まっていってくれてね。

ピエールさん自身に急ぎの仕事がない時なんかは、下手したら半月から1ヶ月程度は軽く連泊してて、朝昼晩3食、僕達と仲良く食卓を囲んでご飯を食べてたんだよ。」


何やら愛満の画家を生業にしている父親の熱烈なるファンになるピエールなる人物の話をすると


「お米好きのピエールさん?」


今だ鼻をスンスンさせているイーツが不思議そうに愛満が話すピエールなる人物の事を訪ね。

イーツからの『お米好きのピエール』なる命名を聞いた愛満は、毎回愛満家で器用に箸を使い。大盛の白米を幸せそうにかきこむピエールの姿を不意(ふい)に思い出したのか、思わず吹き出してしまい。笑いを我慢できない様子で大声で笑い。


「プッ!プププ………アハハハ~~~!そうそう。お米好きで子供好きの心優しいピエールさんだよ。

ピエールさんは本当に優しくてね。昔 幼かった子供の僕達を対等に扱ってくれたし。意見も聞いてくれた。

それに仕事柄世界中を飛び回る関係から世界中の面白い話や、自身が食べた美味しかった料理、これはちょっとて言う料理なんかの話を面白おかしく。毎回家に来るたびに僕達に話してくれたんだ。」


昔を懐かしむようにピエールの事を思い出した様子で話し。

その経由でとある事も思い出したのか、次の瞬間には少々困った風苦笑いを浮かべながら


「けどほら、さっきも話したと思うけど、『味噌』や『醤油』が苦手な人が居るって言ったでしょう。

それがまさにピエールさんでね。ピエールさん『味噌』や『醤油』の風味や味が苦手だったんだ。

けど『味噌』や『醤油』を食べ慣れた僕達にとって、『味噌』や『醤油』を使った料理はお米に合う最高の相棒と共に、無くては成らない調味料に成る訳だし。

まぁ、1日や2日は何とか我慢出来たとしても、丸々1週間『味噌』や『醤油』無しの生活は思いの外辛くて……………。

だからさぁ、そんな僕達やピエールさんの為に、昔婆ちゃんがいろいろと考えてくれてね。

『醤油』を使う時は『酒(料理酒)』や『砂糖』、『バター』をプラスして醤油の独特の風味を和らげたり。

『味噌』を使った料理や、味噌汁好きのお父さんの為に(実家)では毎日1日1回は食べてた『味噌汁』何かにもバターを各自お好みで適量すくい入れて、味噌汁に溶かし入れて食べていたんだ。」


自身が知る『味噌』や『醤油』が苦手な人こと、ピエールの事を話した。

すると何やら酷く驚いた様子のイーツがポカリと口を開け。口をワナワナさせつつ。


「えっ!?み、味噌汁に、バ……バババ、バター!?

味噌汁にバターって、そ、それって美味しいの!?み、味噌汁への冒涜(ぼうとく)にならない!?」


「ホォ~~~!味噌汁にバターか!…………うんうん!それは実に乙じゃのう~~~!

それで愛満や、バターと一番良く合う味噌汁の具材はなんになるのじゃ?

う~~~~ん、…………そうじゃのう。ワシの直感では、今朝食べた『白菜とホタテの味噌汁』と合う気がするのじゃが」


いつの間にか復活したのか、イーツと違った意味で興味津々の様子の山背と共に、イーツ達は愛満へと詰め寄って来て

2人の様子に驚きつつも、またまた苦笑いを浮かべた愛満は


「いやいや、2人共ちょっと落ち着いて!ほら、一先ずクールダウン、クールダウン!

それにイーツもそんな風にしかめ面しないの!

それに山背!口元からタレてる涎拭いて!もう少しでテーブルの上に落ちそうで、こっちがハラハラしちゃうよ!」


先程イーツの涙や鼻を噛むため使用した箱ティッシュを取り。2人の世話を焼きつつも、フゥ~~~っと一息つき。


「まぁ、味噌汁にバター!?って思うかも知れないけど、青那の店の『袋屋』メニューの『味噌バターラーメン』を例にとっても味噌とバターの相性は証明されてる訳だし。

少々お時間を貰えるならば、2人共ちょっと想像してみてよ。」


2人に瞳を閉じて、白い湯気上がる。各自が好きな具材のお味噌汁を思い浮かべるようお願いし。


「白い湯気上がる美味しそうな『味噌汁』にね。一欠片(ひとかけら)のバターをポトリと落とし入れるんだ。

すると味噌汁の中にプカプカと浮かぶバターがね。ひとりでに味噌汁の熱でじんわり溶け始め。

じわりじわりとお椀の中で、小さな黄金色の泉が広がっていくんだ。

そして頃合いを見計らった頃に、その黄金色の小さな泉と味噌汁をお箸で軽くかき混ぜ合わせると!

次の瞬間には味噌とバターと言うか、味噌と乳の香りが混ぜ合わさった独特の風味がフンワリ立ち上がり。

普段の『味噌汁』とひと味違う。新たな出会いの『味噌汁』が誕生してるんだよ。

あっ!ついでに付け加えるならば、ピエールさんはバターを落とした。具沢山で食べごたえある婆ちゃんが作る『豚汁』が大好きでね。

ピエールさんが家に来た時には毎回、婆ちゃんに豚汁ならぬ。ピエールさん命名の『黄金豚汁』を作ってとリクエストしてたんだよ。」


「……………豚汁にバター………黄金色に輝く豚汁…………そ、それはアリだ!うん!それアリだね!」


「………豚汁にバター…………………それはそれは最高なのじゃ!まさにミラクル!、いや、マーベラスの組み合わせ!激アツなのじゃ~~~!!!」


愛満の話を聞いた山背とイーツの2人が熱く握手をし始め。立ち上がり拍手喝采をくれるなか。

その日のお昼ご飯の汁物が『豚汁』ならぬ、旬を取り入れた。

今が旬のさつま芋や茸類を豪華にたっぷり使った。仕上げに『バター』を落とした具沢山のピエール大好き『黄金豚汁』になり。

食後と言うか、ちゃっかり3時のオヤツの『さつま芋の茶巾絞り』までご馳走になっているイーツといろいろと話し合い。


更には朝9時からお昼までの時間の間。タリサやマヤラ、光貴達4人と一緒に『苺忍者隊』の本拠地内を快適にする為。

『苺忍者隊』お手製雑貨になる。アクセサリー類等の内職作業を苺忍者隊本拠地で

(苺忍者隊の本拠地とは、愛満宅の庭の一角に建つ建物になります)

コツコツと制作、頑張っていた。『さつま芋の茶巾絞り』のお皿を片手に持つ愛之助も話し合いの場に加り。


「そうでござるね。有難い事にこの町では小鼠族のササやノノ、ムム達家族に加え。

モーモー達のお陰で、お手軽にと言うでござるか、お手頃価格でモーモーのミルクを使用して作り上げた『バター』が購入出来るでござるし。

ここは1つ!『味噌』の風味や味が苦手と言う客さんの為にでござるね。バターを含めた乳製品をプラスした。イーツ独自の食べごたえある具沢山の『味噌スープ』をお店のメニューに加えたら良いと思うでござるよ!」


「おっ!それ良いのう、愛之助。ナイスアイデアじゃあ、良い事言う~~~!

そうじゃあ、そうじゃあ!それならいっそうの事、今からバターや牛乳、更には豆乳等を使った。愛之助が言うイーツ独特の新たな味噌スープを作り上げてみるのじゃあ!」


「いいね、いいね!僕、味見頑張るよ!」


「僕も味見頑張るへけっ!」


「よしみちゅ、マヤラもあじみがんばりゅよ!」


と話す愛之助や3人の話を盗み聞きしていた。何やら魂胆が見栄隠れする山背達の意見を聞きつつ。

後日、バターや牛乳、豆乳等を使用した『味噌スープ』を開発する事になり。

すっかりヤル気を取り戻した様子のイーツは、残り1週間を切る開店日前日まで愛満と力を合わせ。自身念願のお店の為、作戦を練り上げ。


見事、独自路線と言うか………季節折々の具沢山の野菜に加え。お肉や旬のお魚、豆腐等をバランス良くとれ。

『味噌』が苦手なお客さんも大満足する。お椀一杯で1日分の栄養がとれる。自身命名の『食べる味噌スープ屋さん』を繁盛させるのであった。




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