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和菓子『シャインマスカット大福』と山背の不覚



連日のように夏独特の暑さに参っていた天候から優しい秋風が頬を撫で、刻一刻と秋空に変わり行くなか。


その日 早朝から山背に万次郎茶屋へと呼び出され。あれよあれよと言う間に気が付けば、何故か山背と将棋を打つ事になり。

愛満お手製のお昼ご飯をご馳走になったりしながら、何戦にも及ぶ、山背と将棋を打ち合う事になってしまっている。


山背の将棋仲間の1人、朝倉町でイキア道の道場長を勤める赤鬼族の大鵬(たいほう)に加え。

たまたま今日仕事が休みだった。朝倉町で冒険者時代のパーティーメンバー5人で、人気ピザ屋を営むアスマの2人。


そして心の底から将棋を楽しんだ様子の山背は、何やら自身が知る。とある果物のプチ雑学を大鵬達へと披露しつつ。トイレ休憩も兼ね。

長時間の将棋の試合で酷使した頭を休める為にと、今から食べる茶菓子を物色しに季節折々の和菓子が並ぶ商品棚の元にやって来ていた。


「での、さっきも話したのじゃが、9月で旬が終わる大鵬が好きな葡萄の果肉にはのう。もの忘れや頭がボーッとするなどの脳披露による脳機能低下を防止する働きを持つといわれるペンタペプチドという物質が、生の状態の『ピオーネ』や『巨峰』など紫色の大粒品種に多く含まれとるらしいのじゃよ!

じゃからこれから食べるお茶菓子には、今月いっぱいで販売が終わる。葡萄の王様と称される。定番の大粒黒皮品種の大粒の『巨峰』を丸々一粒使用した『葡萄大福』に加え。

葡萄繋がりで、9月下旬から10月上旬までの短い時期しか楽しめぬ!

ブドウの女王の名にふさわしい!気品ある豊かな味わいと香りが乙の!『マスカット オブ アレキサンドリア』のシャインマスカットを使用した『シャインマスカット大福』がオススメなのじゃよ!」


自身も愛満から教わった雑学を自信満々な様子で披露しつつ。

商品棚に並ぶ『葡萄大福』と『シャインマスカット大福』を指差した…………………のだが


「……………山背、『葡萄大福』は私も好きで良く食べているから、その大振りと言うか、子供の握りこぶし大の大きさの

葡萄の粒のような見た目の紫色の大福が『葡萄大福』と分かるのですが、山背が先程説明してくれた『シャインマスカット大福』は、どれになるのですか?」


葡萄好きの大鵬が、期待のこもった瞳で山背へと問いかけ。

そんなワクワクした様子の大鵬の隣に立つアスマは、山背が指差す『シャインマスカット大福』なる物を見つめながら不思議そうに首をかしげ。


「あの………山背が指差してる。ほんのりさつま芋色のその大福。

自分の記憶違いでなければ、確かさつま芋が練り込まれたお餅に、さつま芋の甘露煮、つぶ餡が包み込まれた。大福シリーズの秋限定の『さつま芋大福』だと思うんだけど?…………違う?」


万次郎茶屋を訪れるお客さん達からも人気を博す。季節折々で中身が変わる。万次郎茶屋自慢の大福シリーズの秋限定の『さつま芋大福』じゃないかと問いかける。


そんなアスマの話に『えっ!?まじですか!?』と驚いた様子の山背は、商品棚の方に振り返り。商品棚の中身を確認すると、確かにソコには朝並んでいたはずの『シャインマスカット大福』が1個も無く。

変わりに秋限定の『さつま芋大福』が、その場所に並んでいるだけで、慌てた様子の山背が愛満へと駆け寄り、聞いてみた所。

タイミングが悪い事に一足違いで、先程在庫を含め。50個有った『シャインマスカット大福』は全て売れてしまったとの事。


「な、なんて事じゃ~~~!この前、愛満から葡萄の(雑学)を聞き。忘れそうになるペンタペプチドなる物質の名前を必死に覚え。

大鵬やアスマ達へと、その話を披露し。2人から尊敬の眼差しを受けながら『葡萄大福』や『シャインマスカット大福』を食すと、昨日の晩からワクワク、ドキドキと楽しみにしておったのに!

あぁ~~~悔しいのじゃ!あの時!あの時ワシが、ちゃんと愛満に一言声をかけて取り置きしてもらっておけば!くぅ~~~!なんたる不覚!!!」


何やら山背の心の声がただ漏れになるなか。苦笑いを浮かべる大鵬やアスマ達に慰められながら、3人は『シャインマスカット大福』を次回への楽しみに

今ある『葡萄大福』と『さつま芋大福』をお茶菓子にして、将棋の試合で酷使した頭を癒すのであった。



◇◇◇◇◇



一方、山背が心の底から悔しがり、うちひしがれる原因になった。50個にもなる大量の『シャインマスカット大福』の行方が何処になるのかと言うと


朝倉町に在る『朝倉病院』の休憩室では、子供の握りこぶし大の大振りな大福を両手に持つリサが、幸せそうに満面の笑みを浮かべ。モグモグと食べ進めていて

少々はしたないのだが、朝倉病院の医師にして院長にもなるリサは、口の回りに大福の打ち粉の白い粉を付けたまま。


「う~~ん♪この独特のモチモチ食感のお餅と共に甘さ控えめの白餡。そこに食べ進めるうちに餅と白餡、シャインマスカットのフレッシュな旨味が口の中に広がり。このシャインマスカットを使った『大福』本当に美味しいわね!

うんうん!あの時 自分の直感を信じて、茶屋に有る全ての『シャインマスカット大福』の在庫買い占めて正解だったわ!

私、愛満が作る季節折々の果物を使った大福シリーズ大好きだけど、この『シャインマスカット大福』、ここ一番のお気に入りだわ♪」


リサと一緒に、リサが万次郎茶屋で購入(爆買い)して来た。山積みにされた『シャインマスカット大福』を頬張っている。

同じく、朝倉病院に勤める。良く似た顔立ちの茶色い栗色の髪色に、おかっぱヘアーのリンゴ頬っぺが可愛い3人の雀族の翡翠(ひすい)翼沙(つばさ)結翔(ゆいと)達へと話しかけてるのか、一人言なのか分からない様子で話し。

右手に持っている『シャインマスカット大福』へと(かじ)りつく。


するとそんなリサの問いかけ?話しに、良く似た顔立ちや髪型ながら3人の中ではタレ目になる翡翠(ひすい)


「うんうん!本当に美味しいチュよね、リサ先生。

僕、大福と言ったら夏の間限定の梅の甘露煮を使った『梅大福』がスゴく美味しくて、大好きチュなんだったんだけどチュ。

このシャインマスカットを使った大福も、口いっぱいに瑞々しいシャインマスカットのフレッシュ感や美味しさが感じられチュって、スゴく美味しくて何個でも食べれちゃう美味しさチュね♪」


雀族特有の方言?口癖になるらしい『チュ』を連発しながら、自身イチオシの夏限定の『梅大福』にも負けず劣らず美味しいと、初めて食べる『シャインマスカット大福』を誉め。

翡翠に続くよう、翡翠の隣に座る。3人の中では、少々つり目になる結翔(ゆいと)


「そうチュ、そうチュ!それにお餅もチュけど、僕が好きな餡子と共にマスカットの果肉や皮の独特の歯応えが感じられて口の中が面白いチュよ♪

あっ!後チュね。タリサじゃないチュけど、やっぱり愛満が作る餡子は白餡でも黒餡でも美味しくて、やっぱり格別チュよね♪」


愛満お手製の餡子ファンになる結翔が『餡子が美味しいチュ♪美味しいチュ♪』と話し。


皆の分の緑茶を注いであげていた。3人の中ではクリクリお目めになる翼沙(つばさ)が、リサ達の前に緑茶が入った湯飲みを置いてあげながら、目の前に山積みにされた『シャインマスカット大福』を見て


「本当に美味しいチュンよねぇ~♪

それにチュンね。この大きなシャインマスカットの粒みたいな色合いの、大きな黄緑色のどっしりとした大福の見た目や重量感は、何度見てもスゴいチュよねぇ~!

こぉ~~~ついつい瞳を奪われチュね、知らず知らずのうちに大福に手が伸びてしまうチュンよ。」


と話しつつ。お茶を配り終えた翼沙は『シャインマスカット大福』へと手を伸ばし。幸せそうに微笑むと


「チュ~~~ン♪それにしても、このやわモチ触感の大福餅の手触りは、本当に最高チュね♪

こんな手触りの大きなクッションが欲しいチュよ!」


手にした『シャインマスカット大福』へと大きく口を開けて、豪快に噛りつくのであった。


「う~~~~ん♪美味しいチュ♪」



◇◇◇◇◇



こうして今日もまた、朝倉町の代わり映えのないと言うか、のどかな1日が過ぎて行く。






《和菓子『シャインマスカット大福』と山背の不覚、の登場人物》


・山背

今回、何やらほうれん草を忘れ(報告、連絡、相談)不覚をとったご様子


大鵬(たいほう)

朝倉町でイキア道の道場を営む道場長

数少ない赤鬼族になり、赤鬼族特長の赤い肌をしている

大吉村に住む克海の父、照海(てるみ)(鬼族)とは幼馴染になる

朝倉町に来てから初めて食べた葡萄の美味しさにハマり、今では葡萄好きを公言している

山背の将棋仲間


・アスマ

元冒険者で、パーティー仲間5人で、朝倉町で人気ピザ屋を営む

ちなみにピザ屋の建物兼住居は、短い期間ながら元愛満の秘密基地になる

隣町に住む冒険者のテネトの叔父にあたる

山背の将棋仲間


・愛満

今回、自身が真心込めて手作りした『シャインマスカット大福』が、沢山(全部)売れてご満悦なご様子


・リサ

朝倉町に在る、朝倉病院の医師にして院長

仕事に関してはパーフェクトながら、少々ズボラなおちょこちょい

今回、3時のオヤツにと自身の直感を信じて『シャインマスカット大福』を買い占めたご様子


翡翠(ひすい)

王都からやって来た、朝倉病院に勤める看護師さん

お喋り好きのかしまし雀族

3人のなかでは、タレ目になる

愛称『ひぃちゃん』


結翔(ゆいと)

王都からやって来た、朝倉病院に勤める看護師さん

お喋り好きのかしまし雀族

タリサに負けず劣らずの餡子好きになる、愛満お手製の餡子ファンの1人

3人のなかでは、少々つり目になる

愛称『ゆうちゃん』


翼沙(つばさ)

王都からやって来た、朝倉病院に勤める看護師さん

お喋り好きのかしまし雀族

3人のなかでは、クリクリお目めになる

愛称『つーちゃん』




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