『贅沢・丸ごと白桃タルト』と白桃の日とヴァンモ族
「いらしゃい、ハンナ。
あぁ、それ?そのケーキはね。白桃料理・菓子専門店『桃太調理店』イチオシシリーズの白桃丸ごと一個使ったシリーズの1つになってね。『贅沢・丸ごと白桃タルト』って言うんだ。
お一人様用のタルト菓子になるんだけど、下のタルト台の中にアーモンド生地を入れて焼いてあってね。
その上に生クリーム、種を取り除きピーチゼリーで回りを薄くコーティングした白桃が贅沢に丸々一個のってるんだ。
しかも白桃の中にはリキュールで風味付けしたカスタードクリームが詰め込まれていてね。スゴく美味しいだよ!
うん、そうそう。……………ヘェ~!そうなんだ!
えっ?甘い物があんまり得意じゃない旦那さん用に他の丸ごとシリーズでオススメ?
………う~ん、ならこっちの『丸ごと白桃のコンポート』が甘さ控え目でオススメかなぁ?」
「いらしゃいませでござるよ!
はい?女性に人気のケーキでござるか?
そうでござるね……………それならこちらの『白桃とヨーグルトのムースケーキ』がオススメでござるよ。
まず見た目からして白桃のコンポートを花びらに見立て、ケーキの上に可愛らしい花を咲かせているでござるし。
ケーキの味にしても、暑い夏でもサッパリ食べられるレアチーズ風の味わいでござって、ペロリと食べきってしまうでござるよ。
更には水切りヨーグルトを使用しているでござるから、女性が喜ぶカロリー抑え目になっているでござるよ!
あっ!こちらのムースケーキを10個お買い求めでござるか?
ありがとうございますでござるよ。
直ぐにお包みするでござるから、少々お待ち下さいでござる。」
「い、いらしゃいませピ!
は、はいピ。こちらのコーナーはお持ち帰り用のお惣菜コーナーになりますピ。
えっ?今日の夜にお友達と開かれる女子会で食べるお酒に合い、チーズを使ったお惣菜をお求めでございますピか?
そうですピね。…………それならば、良ければコチラの『白桃モッツァレラ』はいかがですピか?
贅沢に白桃とフレッシュモッツァレラチーズをたっぷり使用ピし。
そこにすし酢、オリーブオイル、粗挽き胡椒等で味付けした白ワインに良く合う、当店イチオシの1品になりますピ!
あっ!もしコチラの品がお気に召さなかった場合は、隣の『白桃とクリームチーズの生ハム巻き』も見た目も美しくピですね。
お酒とも良く合い。女性のお客さまに人気を博してるピですが?
どういたしましょうピか?
えっ!2つ共お買い求め頂けるピですか?
あ!ありがとうございますピ!はい!直ぐにお包み致しますピから、少々お待ち下さいピ!」
「いらしゃいませピ~、いらしゃいませピ~♪
只今オープン記念にて、当店自慢の濃厚桃ジュース『ターピ』の無料試飲を行っておりますピ~♪
お時間に余裕が有るお客さまは、是非とも試飲をして下さいませピ~♪」
真新しい和モダンな造りの店内へと、種族や老若男女問わず大勢のお客さんが訪れる中。
何やら白桃を使用した菓子を見慣れぬ人物と共に愛満や愛之助達が販売していた。
◇◇◇◇◇
「フゥ~~!今日も何とかの午前中のお客さんの大波を乗り切ったでござるね、メモイ!」
「本当ピね、愛之助。
それにしてもピ、一昨日から昨日、今日に引き続き僕達のお店のお手伝いしてくれ本当にありがとうピね!」
「いやいや、何を言ってるでござるか!
拙者とメモイは友達でござろう?友達とは、友達が困っている時に何も言わずに助け合うのが誠の友達でござるよ!
だから遠慮せずとも大丈夫でござるよ。それより1日も早くメモイ達ヴァンモ族の皆が元気になる事が1番でござるよ!」
「……愛之助………そこまで考えてくれてたピか……本当にありがとうピ。愛之助に愛満、朝倉町の皆には感謝してもしきれないピよ。……しくしく………しくしく」
「あっ!コラコラ。こんなめでたい日に涙は似合わないでござるよ、メモイ。
ほら、涙を拭いて、このヴァンモ族大好物の『ターピ』を飲んで、またこの後からの販売の英気を養うでござるよ!」
少々涙が零れる場面があったりしたのだが、午前中の1番忙しい時間を何とか無事乗り越えた。
『白桃』をモチーフにした白やパステルピンクを基調にした販売服をマイ◯ロちゃん風に(勝手に)リメイクした服を着た愛之助と
白桃のようなほんのりピンク色したパステルピンクの髪色、白い透き通るような肌
敵対心を起こさせないような幼い容姿のヴァンモ族のメモイの2人は、休憩室に設置された『桃太調理店』イチオシの濃厚桃ジュース『ターピ』をチビチビ飲みながら疲れた体を休める為、ボッーとした様子で休憩していた。
「ハァ~~~、それにしても今でも信じられないピ。
満足に食事も取れずピ。これから先の人生を悲観してた僕らヴァンモ族がピ、今では毎日3食の食事にありつけピ。
雨風耐えれる豪華で頑丈な家に家族みんなで住めピ。
更には誰からもバカにされたり、気味悪がられたりしないピもん。」
何やらボッーっとした様子だったメモイが突然、昔の事を思い出した様子で話し始め。
昔の事を思い出し感情が高ぶったのか、話を続けると共に、さっきほど止まったはずの涙が今度は大粒の涙になって零れ始め。
「ヒック……………ヒック……………うぇ~~~ん!それに見知らぬ僕らが開いた店ピなのに……………ヒック………あ、あんな大勢のお客さん達が沢山来てくれるピなんて、………………ほ、本当に感謝感謝だピよ!」
その後、愛満が心配して休憩室にやって来るほどメモイは大粒の涙を流し、今ある幸せを噛みしめ感謝する。
◇◇◇◇◇
と、この大粒のを流し、大泣きするヴァンモ族のメモイや、白桃専門店になる『桃太調理店』が何かと言うと
まずヴァンモ族とは、白桃のようなほんのりピンク色したパステルピンクの髪色(体毛)に透き通るような白い肌
笑うと口から飛び出す八重歯がチャームポイントで、敵対心を起こさせない(ためなのか)可愛らしい幼い容姿をした種族になり。
他にも基本、ヴァンモ族は果実や果汁が主食になり。
少しずつ戦争の影響から復興してきているとは言え。
戦争の影響をそれほど受けず。ぼちぼち栄えていたはずの大きな町に住んでいたヴァンモ族のメモイ家族が住む町にしても慢性的な食料不足なのは否めず。
特に悪くなるのが早いヴァンモ族が主食とする果実等は特にで
上がるばかりだった果物の値段が、少しずつ落ち着いたのはありがたい事なのだが、それでも家族でお腹一杯にご飯を食べる事が出来ず。
お腹を空かせ涙を流す幼い弟や妹を見ているのは心苦しく。
両親と共にメモイや上の兄妹達が食べる分を減らし。幼い弟、妹達へと分け与えたとしても、まだまだ足りず。
日々頭を悩ませていた所。父親の兄家族から新鮮で格安な果物がお腹一杯食べれる町が有ると聞き。
更にソコに母親の古からの友人が住んでいる事も分かり。
その人物事、町役場に勤める兎族のラスカに連絡を取り。そこからあれよあれよと言う間に領主からの移住の許可も貰え。
父親の兄家族を含め。父方の祖父母、父親の弟、妹家族
近くに住む母方の祖父母、妹家族を含めたヴァンモ族で朝倉町へと移住して来た。
そうして愛満からの紹介で住む家や働き口が決まり。ヴァンモ族の者達が幸せに生活していた所。
朝倉町で生活していくうちに朝倉町名物の1つになる。朝倉神社へと続く歩道脇にたわわに実り。
採っても採っても、いつの間にやら大きな桃の実が、また実っており。
一年中収穫出来る『白桃』の甘い果汁あふれ、とろけるようなジューシーな果肉等からヴァンモ族の口に良く合い。
いつしかヴァンモ族の大好物になっていき。
『白桃』が大好きになったメモイは、命の恩人にあたる愛満に憧れ。
いつしか自分達が大好き『白桃』を使った料理やお菓子を調理した店を持ちたいと考え始め。
愛満や友達になる愛之助達に相談した結果。
大賛成のなか。何やら桃から生まれたスゴい男の子になるらしい。勇敢な戦士『桃太郎』から名前を貰い。
愛満とお店で出す料理やお菓子を四郷錯誤で頭を悩ませ考え。そして皆で力を合わせ頑張り。
『桃太調理店』なる白桃料理、菓子を販売するお店を両親や家族と共にオープンさせる事が出来たのであった。
◇◇◇◇◇
「いらしゃいませピ~♪いらしゃいませピ~♪
開店オープン記念の無料試飲『桃太調理店』自慢、濃厚桃ジュースの『ターピ』の試飲はいかがピですか?」
あの後、何とか愛満の力を使い。大泣きして膨れたあがった瞼や、赤くなってしまった目の回りを元に戻してもらったメモイは、小さな体でちょこまかと動き回り。
元気良く声を張り上げ。『桃太調理店』自慢の濃厚桃ジュース『ターピ』を行列に並ぶ人達に無料配布しつつ。
自身が初めて手にした店の為。また大切な家族。
この3日間を含め、大々的に力を貸してくれた愛満、愛之助
茶屋を離れる愛満のため万次郎茶屋の店番を頑張ってくれている山背
応援してくれた友達の美樹や黛藍、光貴、タリサ、マヤラ達
日々何かと心配して力を貸してくれる、心優しき朝倉町に住む皆の為にと、今一度頑張ろうと強く心に決めたメモイは、今自分が出来る事を精一杯頑張り。着実に一歩一歩前に足を進める。
◇◇◇◇◇
「フゥ~~!愛満、この3日間、本当に疲れたでござるがメモイの桃のお店の開店オープンが成功して良かったでござるね!」
「本当だね。メモイ達もだけど愛之助がスゴく頑張ってくれたから本当に助かったよ。
愛之助、ありがとう。」
「いやいや、友達のメモイもござるが、兄者の愛満を弟の拙者が助けるのはあたりまでござるよ。へへへ~♪
愛満、お疲れ様でござる。」
3日間になるメモイの『桃太調理店』への開店オープンのお手伝いを終えた愛満と愛之助の2人は、自宅の有る万次郎茶屋への帰り道。お互いの頑張りを労いながらお喋りを楽しむ。
「それにしても愛満。拙者、この夏の暑い時期にメモイの店をオープンしたでござるから、お客さんが来てくれるか心配してたでござるが、店の前で雪を降らせるパフォーマンスをしたのが良かっでござるか、沢山のお客さんが店を訪れてくれて本当に良かったでござるね!」
「そうだね。夏の暑い時期に大行列の列に並ぶのは僕も嫌だけど、冷風と共に淡雪のようなあの雪を降らせたのが、また幻想的で良かったんだろうね。」
「本当でござるね。
あっ!けど愛満、どうしてこの暑い中、8月にメモイの店をオープンさせてたでござるか?
確か、本当の桃の食べ頃は7月、8月、9月だとは知ってるでござるが…………。」
まだまだ暑い猛暑の時期。何故わざわざ8月にメモイの『桃太調理店』をオープンさせたのかが気になった愛之助は、愛満へと問い掛ける。
するとそんな愛之助の問いかけに愛満が
「あれ?愛之助には説明してなかったけ?
あのね、メモイの『桃太調理店』の開店を8月に決めたのはね。
8月の8、9、10日の3日間は8、9、10の語呂合わせから『白桃の日』にあたってね。
白桃を使用した店繋がりで、どうせなら『白桃の日』にメモイの店を開店させたら分かりやすいんじゃないかと思って提案したんだ。」
メモイの『桃太調理店』を8月8日に開店させた訳を教え。
「ヘェ~!8月8、9、10日の3日間は白桃の日になるのでござるね!拙者、知らなかったでござる。
それにしても………うんうん!ここ3日間不思議に思っていた拙者達のオヤツやデザートに桃を使った菓子ばかりが続いておったでござるが、そういう訳であったのでござるね。納得でござる!」
愛之助は大きく頷きながら納得した様子で話。何やら思い出したとばかりに
「あっ!けど、愛満から習った白桃を選ぶ際『ふっくら丸みがあり、全体にうぶ毛があるもの』は忘れておらんでごさるよ!」
鼻の穴をふくらませながら自信満々の様子で、愛満から教わった白桃を選ぶ際のコツを話し。
ついつい愛満の口から笑みがこぼれるなか。2人は仲よく万次郎茶屋へと帰りつくのであった。
【『贅沢・丸ごと白桃タルト』と白桃の日とヴァンモ族、の登場人物】
・メモイ
ヴァンモ族の青年、愛満に強い憧れを持つ
白桃のようなほんのりピンク色したパステルピンクの髪色(体毛)に透き通るような白い肌
笑うと口から八重歯が見える
敵対心を起こさせないような可愛らしい幼い容姿の種族
基本・果実や果汁が主食になる
朝倉町にやって来てから食べた町自慢の白桃にドハマリし、白桃が大好物に
後に白桃を惣菜やお菓子に料理した『桃太調理店』の店主になる
・愛満
今回、友達のメモイの為、1番忙しい開店3日間お手伝いする
・愛之助
今回、友達メモイや兄者の愛満の為、メモイのお店を3日間お手伝いする
ちなみにメモイの店の名前を考えたのは愛之助になり。
最近マヤラの為に読んだ『桃太郎』からヒントを受けたご様子
・山背、丈山
今回、メモイの店のお手伝いに出掛けた愛満達の為、友達の丈山を交え、万次郎茶屋の店番を頑張ったご様子




