初夏限定「お茶の新芽天ぷら」と八十八夜と茶摘み
その日、朝から眩しすぎるほどの太陽がサンサンと光輝き。ポカポカ陽気の穏やかな天候が朝倉町を優しく包むなか。
まるで山彦のように何処からともなく
『夏も近づく八十八夜~♪野にも山にも若葉が茂る~♪
あれに見えるは茶摘みじゃないか~♪あかねだすきに菅の笠~♪』
優しい歌声が聞こえてきていた。
◇◇◇◇◇
キ~~~~ン♪コ~~ン♪カ~~~ン♪コ~~ン♪
朝倉学園のお昼を知らせる鐘が朝倉町が成り立つ。大きな山全体に鳴り響くなか。
「ウォーーーー!!腰がバキバキいうぜぇ、イテェ~~~!」
「おぉ~~~!!!」
自身がオーナーを勤める美容室『流れ星』をわざわざ定休日にしてくれ。
今日の茶摘みを手伝ってくれていた美樹や山背の2人が、お昼の金の音色に茶摘みの手を止め。
前屈みになる同じ体制での長時間の茶摘み作業で凝った腰や首、膝等をストレッチしながら吠える。
そしてそんな美樹達の近くでは、摘み立て大量の一番茶のお茶の葉が入った。愛満お手製の魔法袋に集めている。万次郎茶屋メンバーの愛之助や黛藍に加え。
つい最近朝倉町の町民に仲間入りした。何処と無く日本人に似ている。中肉中背のホリの薄いニジャホ族の者達や愛満や山背の友達、八太郎が久しぶりの重労働後の清々しい気持ちに包まれた様子で微笑んでいた。
「それにしても茶摘みとは本当に楽しいものだなぁ!!知らず知らずのうちに一心不乱にお茶の葉を摘んでしまうよ。」
何やら服の下にうっすら見える。腰全体を守るような、特殊な白いベルトを巻いた中年の男性が、清々しい微笑みと共に額から流れる汗を首に巻いたタオルで拭いながら話し。
そんな男性の言葉に共感するように初老の男性が口を開き。
「本当じゃのう。ワシも久しぶりに仕事に性を出したからか、こぅ~身体中が喜んでいるようじゃ!」
嬉しそうに話すと、ニジャホ族・族長になる八太郎の父親や祖父を中心に取り囲んで集まっていた。ニジャホ族やニジャホ族の者を家族に持つ。他の男衆達も口を開き。
「族長や爺様の言う通り、汗水垂らして働くと清々しい気持ちになるな~!」
「そうですな。やはり働くと言う事は、いろんな意味で生きる事に繋がりますから、身体中がイキイキしてきますね。」
「本当じゃ本当じゃ!」
お茶摘みを終えた男衆が頬を緩めて話し。同意するように大きく頷く。
そして、愛満や愛之助に何処と無く似た雰囲気も相まり。すっかり他の万次郎茶屋メンバー達とも仲良くなった八太郎や、八太郎の姉達がお茶の葉が入った魔法袋を1つに集めながら
「しかし本当に不思議よね。あの独特の香りと共に濃厚な旨味や甘みが感じられる『玉露』や、他のお茶達の正体が、この1つの葉っぱになるなんて!」
「本当よねぇ。初め風呂屋・松乃のロビーで飲んだ。高級茶葉になるらしい『玉露』には、あまりの美味しさに安子姉さんと一緒に感動したけど
後で松乃の売店で販売してる『玉露』のお値段に驚きと共に、売店のお姉さんが教えてくれた。朝倉町にやって来た王都の貴族御用達と聞いて、思わず納得しちゃったもんね。」
何やらすっかりお茶葉の中の最高峰『玉露』のファンになった様子の、八太郎の一番上の姉、長女の安子と3番目の姉、喜子達が話す。
するとそんな玉露ファンの安子達の話に次女の佳子が
「そうそう。安子姉さんと喜子、玉露の茶葉を使ったお茶があんまりにも美味しいからって、無料な事をいい事に何度も風呂屋・松乃のロビーに飲みに行ってたし。
私的には少々手間隙かかる玉露茶の淹れ方を風呂屋・松乃のロビーで玉露茶を淹れてたロビーのお姉さんに何度も質問して、今ではバッチリマスターまでしちゃって
最後の方は、逆にロビーで玉露茶を振る舞うお茶さんって言うの?その仕事をしないかとスカウトされてたもんね!
あっ、けどさぁ。私はどちらかと言うと、万次郎茶屋で飲んだ『煎茶』の方が、爽やかな香りと共に渋味の中にまろやかな甘味が感じられて美味しかったかなぁ~♪
それに一番は、煎茶のお手頃価格が気に入ったし!
玉露茶に比べて簡単にお茶が淹れられる所がまた良いのよねぇ。」
最高峰茶葉『玉露』に比べ。少々ランクは落ちるものの、味も美味しく。お値段もお手頃価格で、手軽に淹れられる『煎茶』を気に入った様子の佳子の話に、5女の真子も
「解る解る!私も玉露茶好きだけど、お茶を飲み慣れた今では、前みたいに水や愛之助が教えてくれた白湯て言うの。あの生活には戻れないし。
もはや、お茶は無くてはならない生活の一部だから、普段飲みで気軽に飲める『煎茶』がお気に入りだわ。
それに佳子姉さんも言ってたけど、お茶独特の爽やかな香りや鮮やかな黄緑色の色合いがまた良いのよねぇ♪」
次女の佳子と同じ『煎茶』がお気に入りだと話す。
すると今度は、姉妹の中で一番おっとりした性格の4女の仁子が
「う~ん、なら私はね。愛之助が点ててくれた『お抹茶』の方が大好きだなぁ~♪
何か旨味って言うか~ぁ、苦味がそこまで感じられなくて、スゴく美味しかったの!」
つい前日、父親のギックリ腰が風呂屋・松乃の効能で良くなり。八太郎達ニジャホ族・族長家族が万次郎茶屋へと愛満に感謝の言葉を伝えに来たさい。
気をきかせた愛之助が抹茶を点てあげ、八太郎家族へと振る舞った『抹茶』が気に入った言うと
またまた、今度は姉妹1の働き者6女の理子と7女の和子が
「あっ、解る!私はお抹茶じゃないけど、どちらかと言うと味わいサッパリした味わいの『ほうじ茶』の方が大好き!
ほら、私どちらかと油っこいと言うか、肉肉しい肉料理が好きじゃない。
そしたらさぁ、そんな肉料理の時にほうじ茶を一緒に口にすると、なんだか口の中がサッパリして肉料理に良く合うのよ!」
「私も煎茶より、どちらかと言うとスッキリした喉ごしや香り高い『玄米茶』の方が好きだな。
サッパリした口当たりだから、私的には仕事した後にゴクゴク飲める気がするの。」
年若い八太郎の姉達が楽しそうにお喋りするなか。
7人居る姉達のお喋りに慣れている八太郎や、それに抵抗なく加わる愛之助や黛藍達も彼女達の話に加わり。
「うんうん!お茶は良いでござるよ~!!
なんたって拙者も兄者の愛満から聞いたでござるが、拙者や兄者の故郷、日本茶にはござるね。
カテキン、ビタミン、テアニンなどが含まれているそうで、口臭予防、虫歯予防、整腸作用、疲労回復、抗がん作用!
更には更には!女性に嬉しい!美肌・老化防止等々のたくさんの効用が有るのでござるよ!」
「そうそう!それに愛満が教えてくれたけど、お姉ちゃん達が話してたお茶の旨味や渋みと言うか
お茶の旨味成分のテアニンは、太陽に当たると渋み成分のカテキンに変わるそうなんだ。
だからさっきお姉ちゃん達が不思議がってた。半分の茶畑には太陽の光が当たらないようにしてる訳はね。
あっち半分の茶畑は安子姉ちゃん達好みの、太陽の光を浴びず育てた旨味たっぷりの高級茶葉になってね。
逆にあっち半分が太陽の光を浴びて育った茶葉は、理子姉ちゃん達好みの、爽やかな渋みがあるお茶葉になるんだよ。」
「それにアルね。今日は八十八夜と言う、朝倉町独自の季節感になる、春から夏へと季節が変わる境目になるアルよ。
で、今日皆で摘んだ新茶のお茶の葉の芽には、冬を越してくる間に蓄えられた旨味成分のテアニンなるものが豊富に深まれているらしいアルから、八太郎や姉上達同様、お茶好きの黛藍も、今からこの新茶を使ったお茶を飲むのが楽しみアルよ♪」
「そうそう、それにでござるね!
今日、八十八夜に摘んだ茶葉は、昔から不老長寿の縁起物とされてるそうでござるよ!」
自身達も茶摘みの最中などに愛満から聞いたお茶の効用等の話を披露し。愛之助達10人がお茶の話で大いに盛り上がるなか。
愛満やニジャホ族の奥様衆と茶畑近くの作業場兼休憩所にもなる建物で、本日のお昼ご飯の準備のお手伝いをしていたはずの
元気一杯の様子のタリサ達が、何かが乗った皿をコッソリ持ち。愛之助達の元へとやって来て
「愛之助、愛之助!あのねへけっ。愛満がお昼ご飯のご飯が炊き上がるのが、もう少しかかるへけっから、もうちょっとだけ待っててね、へけっだって!」
「そうそう!何かね、今日のお昼ご飯用に『いなり寿司』を大量に作って来てたんだけど、その『いなり寿司』が入ったお重が見当たら無いんだって!
それで愛満が言うにはね、きっと家に忘れて来たんじゃないかなぁと言ってた!
まぁ、愛満お手製の『いなり寿司』は食べれないけど、おかずがギッシリ詰め込まれたお重は有る事だし。
『いなり寿司』のお重が無い変わりに、急きょ『豚汁』が作られてるから、僕的にはプラマイ0だよ!」
「ほんちょ、ほんちょ!」
何やら愛満が今朝早くにこしらえた。5段になるお重いっぱいに詰められた『いなり寿司』が見当たら無いというか、愛満いわく、家に忘れて来たと思われる。うっかり事件が起き。
自宅と茶畑が少々距離がある事から、愛満が普段持ち歩く魔法袋にたまたま入っていた。『お米』を新たに炊いたり、『豚汁』を作ってる事を少々興奮した様子で伝え。
愛之助達が『それはしょうがないでござるね』や『大丈夫アルよ』、『そんな事、僕なら日常茶飯事ですよ!』と口々に話。お昼ご飯が遅れる事を納得するなか。
タリサ達3人は、少々悪い顔を浮かべ
「それでねぇ、愛之助。みんなお茶摘みを頑張って、腹空いたでしょう?」
「空いたへけっよねぇ?」
「すいたでしょう?」
タリサ達3人が少々悪い顔を浮かべ話と、手に持っていたお皿や使い捨ておしぼりをズイッと愛之助達の前に出し。
「これね、僕達や愛之助達がさっき摘んだばかりの『お茶の新芽天ぷら』になるんだ!
さっき揚げたばかりで美味しいから、愛之助達も食べてみてよ!」
「そうへけっ!そうへけっ!
この『お茶の新芽天ぷら』沢山あったへけっから、僕達がコッソリへけっね。こぉ~抜き足差し脚ならぬ、頑張って持って来たへけっよ!
だからみんなに揚げたて熱々のうちに是非とも食べてみてほしいへけっ!」
「はい、おしぼりあげるにぇ!」
少々、食べて良いのだろうかと疑問に思う言葉が交じるなか。
朝早い時間からの茶摘みで、すっかりお腹を空かせた愛之助達は、マヤラがくれたおしぼりで手を拭き。
お皿に盛られた『お茶の新芽天ぷら』を各々取って、口にすると
「ホォ~~!お茶は飲むだけと思っていたでござるが、この『お茶の新芽天ぷら』爽やかな苦みと共に、ほのかな甘みが感じられて美味しいでござるね!」
「うんうん!お茶の葉の天ぷらながら何処と無く、山菜みたいにほろ苦くて、食べると口中に良い香りが広がるアルよ!」
「本当だ!このお茶の葉の回りのサクサクした食感も面白いけど、お茶独特のほろ苦さが食欲をそそるね。」
「ホゥホゥ!これはこれは、また酒に合うような一品じゃのう~♪このお茶の葉独特のほろ苦さやほのかな甘みが実に良い!
う~ん、ここは程好く冷えた冷酒が合うかのう~…………いやいや、それともビールかのう!
…………いや!冷たく冷やした白ワインと言う手もあるのう~♪」
何やら『お茶の新芽天ぷら』に合う酒を1人考え始めた山背がいつの間にか、ちゃっかり加わり。
愛之助達が初めて食べる『お茶の新芽天ぷら』の感想を話していると、八太郎の姉達も初めて口にした『新芽天ぷら』に驚き。
茶畑近くに建てられた東屋で、冷たく冷えたお茶を飲みながら休み。何やら朝倉町で人気の酒の話で美樹と盛り上がっている父親達を呼び寄せ。
お皿にこんもりと盛られた『お茶の新芽天ぷら』を皆で味わうのであった。
そしてその後、無事ご飯も炊き上がり。愛之助達お待ちかねのお昼ご飯の時間が始まる。
ちなみに愛満の力を使い。手早くご飯を炊けば良かったのだが、いなり寿司が詰められたお重を忘れてしまうという。久しぶりの失敗に愛満は少々テンパり。
自身の力を使い。お米をパパッと炊き上げる事が出来る事をコロッと忘れてしまっていた。
◇◇◇◇◇
そうして、いろんな意味ですっかり『お茶』が気に入ってしまったニジャホ族の面々は、度重なる話し合いの末。
朝倉町でお茶農家として生活していく事を決め。愛満から朝倉町外れに有る広大な茶畑を譲り受け。
愛之助が愛満宅書庫から仕入れた。日本茶の加工方法などを教えてもらい。
更には、新たに茶畑近くにニジャホ族の為の日本家屋風の新居を各々の希望を取り入れ。また建ててもらい。
更に更には、朝倉町内にニジャホ族の者達が手作りした。お茶の葉を販売する事になる『お茶屋』も建ててもらい。
朝倉町の新たな名産品として、日本人にはすっかり慣れ親しまれた日本茶が、異世界の朝倉町でも生活の一部として親しまれるのであった。
《初夏限定「お茶の新芽天ぷら」と八十八夜と茶摘み、の登場人物》
・安子=八太郎の姉、族長家長女
家族思いの心優しき女性、近々幼なじみのニジャホ族の男性と結婚予定
朝倉町に来て、風呂屋・松乃のロビーで無料で振る舞われる『玉露茶』に心を奪われた様子
・佳子=八太郎の姉、族長家次女
姉弟1のしっかり者
味も見た目も納得のお値段『玉露』より、庶民価格で簡単に淹れられる『煎茶』が気に入った様子
・喜子=八太郎の姉、族長家三女
姉の安子同様、『玉露茶』を大変気に入った様子
・仁子=八太郎の姉、族長家四女
おっとりした性格
愛之助が振る舞ってくれた『お抹茶』がお気に入りの様子
・真子=八太郎の姉、族長家五女
姉弟1のオシャレさん
姉の佳子同様、色鮮やかで黄緑色の色合いが美しい『煎茶』がお気に入りの様子
・理子=八太郎の姉、族長家六女
姉弟1の働き者、食いしん坊、体を動かす事が好き
肉好きな為、油っこい料理と相性の良い『ほうじ茶』がお気に入りの様子
・和子=八太郎の姉、族長家七女
万次郎茶屋で飲んだ『玄米茶』がお気に入りの様子
・八太郎=ニジャホ族、族長家嫡男
少々人見知りながら、すっかり万次郎茶屋メンバーと打ち解け、仲良くなった様子
・愛之助=今回、前々から愛満とお世話していた茶畑の初になる、茶摘みを楽しんでいる様子
・黛藍=小柄なパンダに見えるがササ族の男性
今回、わざわざ自身がオーナーを勤めるお店を休み
お茶好きの祖母のため、不老長寿の縁起物とされる八十八夜の茶摘みを頑張る
・美樹=今回、わざわざ自身がオーナーを勤める美容院を休み
自身も大好きなお茶(緑茶割りが好き)のため、茶摘みを頑張る
・山背=今回、自身大好きな唐草柄で全身フルコーデし、茶摘みを頑張る
・タリサ、マヤラ、光貴のチビッ子3人組=今回、早朝からの茶摘みながら元気一杯に自身初の茶摘みを頑張る……のだが、後に何やら少々悪さをするご様子
・愛満=今回、八十八夜の不老長寿になる縁起物の一番茶を女神様一族を祀る『朝倉神社』へと奉納する為、朝早くから茶摘みを頑張る
………のだが、何やらポカをして、後に少々テンパるご様子
・ニジャホ族の皆さん=今回、人生初の茶摘みを大いに楽しみ、すっかり『日本茶』の虜に




