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「桜の花弁丼」とイースター祭、復活祭とは?



バーーン、バン、バン!


今年も朝8時の朝倉町の空に3発の花火が打ち上がり。例年のように朝倉学園・学園長リーフのイースター祭開催宣言の放送が流れるなか。街主催の1日限定のイースター祭が始まり。


町中に隠された彩り鮮やかにペイントされた『イースターエッグ』を探しだす。『エッグハント』に参加するイースター限定のコスチュームに身をつつんだ人々やボランティアの人達が町中に溢れていた。



◇◇◇◇◇



「おぉ~~♪ちょいちょい、愛満や。ちょっと作業の手を止めて外を見て見るのじゃ~!

この前配ったイースター用のコスチューム姿の者達ばかりじゃぞ。ハァ~~、みんな可愛いのう~~♪」


自身も兎耳のカチューシャや黄色のチュチュ等の兎をモチーフにしたイースター限定のコスチュームに身をつつんだ山背が、少々行儀が悪いのだが、茶屋の窓に顔をベタリとつけ。

興奮した様子で、顔は外を向いたまま、愛満に話し掛け。


「おっ!あそこを歩いておるのは、ワシとお揃いのイースター祭のコスチュームに身をつつんだ愛之助達じゃ!

ホォ~~、今年は花夜の乗る車椅子もイースター風に飾り付けしたのかのう~♪うむうむ、実に可愛いのう~♪

しかししかし!ワシの事には気づいておらんようじゃ。…………う~ん、よし!ここは一丁、ワシが手を振ってやらねばいかんのう!」


愛満からの返事が返ってきてない事に気付かぬまま。

大通りを友達の花夜達と歩く愛之助達を発見した様子の山背は、自分と同じ兎がモチーフのイースター限定コスチュームに愛之助達が身をつつんでいる事に満足そうに顔を緩ませる。


だがしかし、次第に自分の事に気付かない愛之助達に焦れ。

やおら体全身を茶屋の窓へと張り付け。手足をバタバタさせて、自分の事に気づいてもらおうと頑張り。

結果、愛之助達には気付いてもらえなかったのだか、大通りを歩く若い女性達からは「可愛い、可愛い」と言ってもらい。


そもそも今の時間、茶屋で勤務中になるはずの山背は、少々鼻の下を伸ばし。何やら自信満々の様子で自身が勤務中な事も忘れて、また愛満へと話し掛けるのであった。



◇◇◇◇◇



そして、そんな山背が何度も話し掛けている愛満が何をしているかと言うと、タイミングが悪いかなぁ。

愛満は真面目にお客さんを接客中で、そんな山背の様子に苦笑いを浮かべながら


「もう~~!…………テネト、ゴメンね。後で山背叱っておくから。

あっ、そうだ、はいこれ。テネトご注文の軽食の『まぐれセット』イースター限定バージョンになるよ。」


1人カウンター席に座る。長期の仕事を終え。少し長い休みをとって、朝倉町へと骨休めに来ている。

隣街に住む冒険者のテネトへと注文の品の軽食の『まぐれセット』が乗ったおぼんを置く。

(ちなみに軽食セットと名が付くものの。愛満のサービスから軽食とは名ばかりの大盛りセットになっている。)


すると目の前に置かれた白い湯気上がる。お腹を刺激する香りや見た目にテネトが嬉しそう頬を緩ませ。


「おぉ~♪今日の『まぐれセット』も旨そうだなぁ~!

それで今日は何って言う丼なんだ?後さぁ~、さっき話したイースター限定てどう言う事だ?」


目の前に置かれた料理に目は釘付けながらもイースターと言う聞き慣れない言葉の意味を質問する。


「あれ?テネト、去年や一昨年のイースター祭来てなかったの?」


そんなテネトの質問に、逆に愛満が不思議そうに質問をし返し。

テネトがたまたま去年や一昨年のこの時期に護衛の依頼で隣街を離れていた事を聞き。

納得した様子で愛満が大きく頷きながら、うっすら涎を垂らしそうになってるテネトへと、食べながら話を聞いてとお願いする。


「あのねぇ。イースター祭とは別名『復活祭』とも言われていてね。ほら、僕の住んでた故郷には沢山のいろんな神様が国々にいると前に話してたでしょう。

で、イースターとは僕の昔住んでた故郷の別の国に誕生した神様の1人になって、僕の住んでた国にもその神様を崇拝する(信者)人達が居るんだけど。

その神様が昔十字架にかけられて処刑された後、復活した日になるらしいんだ。

だからその神様を崇拝する(信者)人達にとっては、イースター(復活祭)とは重要な行事であり。

『春分の日のあとの、最初の満月の日の翌日曜日』がイースターの日で、盛大にお祝いする日になるんだよ。」


少々オブラートに包みながら日本で知られているイースターこと、復活祭の事を解りやすいようにかいつまんで説明し始め。


「そしてね。それと同時に、春になって、冬眠していた動物達が動き始め。枯れていた植物達が甦ってきた事を祝う、春らしいお祭りでもあるそうなんだ。

だからうちの街でも春に向けて、僕達が住まわせてもらっている。この大切な山が春に向けて頑張ってくれている(復活する)事をお祝いして、イースター祭(復活祭)をイースターの日の1日限定で行っているんだ。

と、そもそもイースター祭は1日限定のお祭りになるから、テネトが知らなかったのもそのせいだと思うよ。」


朝倉町が有る(成り立つ)お山を大切に考える愛満が、そもそもイースター祭を町で開会する訳を話。

テネトの空になったコップにお代わりの冷たい緑茶を注いで上げ。

テネトが口一杯に詰め込んだご飯で、頬をパンパンにしたまま、お代わりを注いでくれた事に頭を下げる中。


「あっ!それから今日の『まぐれセット』の丼は、新しい命が生まれ出てくる事から、復活の象徴とされる卵を使った丼になってね。

イースターの今日は、人々は玉子料理を食べてお祝いするらしいんだ。だからそこに花見の時期という事もプラスして、僕の故郷の西の方(関西)発祥の丼の1つ。

薄く切った蒲鉾を卵で閉じ。具材の舞い散る様子が木の葉のように見える事から由来した『木の葉丼』をアレンジした。

桜の花弁に見立てて作った桜色の蒲鉾と白ネギ、油揚げ、椎茸、鶏ひき肉の具材を白だしベースで甘辛く味付けし。玉子でとじた『桜の花弁丼』になるんだけど、どう?味や見た目は悪くなかった?」


気が付くと、あっという間に残り一口、二口になっている。大盛りの『桜の花弁丼』を食べ終えようとしているテネトへと愛満が質問する。


すると頬っぺたにご飯粒を付けたテネトが満面の笑みで、空になった丼から顔を上げ。


「おぅ!この丼、スゴく食いやすくて美味しかったぜ!

味付けもいつも通りバッチリだし。特に見た目が桜の花弁に見立てた蒲鉾が丼内に散りばめられていて、蒲鉾からの独特の旨味も出てたし。

玉子の黄色い色合いも菜の花の花の色と相まって、そこに仕上げに程好く散らされた青ネギが組合わさり。女子受けする事間違いないと思うぜ。

この丼さぁ、イースター限定と言わず。これからも店で軽食として出してみたら俺は良いと思うぜ。」


テネトは僅かな時間で大盛りの『桜の花弁丼』をガツガツ食べ終えた男の言葉とは思えない感想を教えてくれ。更に続けて


「まぁ、肉好きの俺にとってみれば、もう少しガッツリ肉感を味わいたかったけど。

えっーと、ヘルシー思考って言うの?そんな女子達にしてみたら鶏ひき肉を使ってる方が好評かなのかも知れないけどな!

それにイースター祭?復活祭って言うの?朝倉町の祭りは毎回何かしらの意味が有って、種類豊富でスゲーなぁ~!

うちの隣街なんて年に1回か2回の祭りが開催されるだけで、こおぅ~いまいちパッとしないと言うか………。

あ~~ぁ、朝倉町で不定期で開催される肉祭りが羨ましいぜ!」


肉好きのテネトらしい感想を述べながら、最後は自身の住む隣街の年に1、2回開催されるお祭りの事等を思い出したのか、本当に羨やましそうな様子で話す。


そんなテネトの話に、朝倉町で開催される主な祭りの主催者や幹事になる事が多々ある愛満が


「いやいや。アルフさん達に聞いたら普通一般の村や街のお祭りなんかは、年に2~3回位が普通らしいよ。

逆にね、うちの町がお祭りや行事事が多すぎると言うか…………。僕自身が前の職場で季節折々の行事関係の仕事に携わっていた事も有り。

一つ一つの行事が誕生した訳なんかを微妙に調べて知ってるから、僕の故郷の事で、本当に悪いんだけど。そんな季節折々の僕の生まれ育った場所の歳時記や七十二候を町の皆に知ってもらって、楽しんでもらいたいって気持ちの方が大きすぎるんだ。

それに元々、僕の産まれ育った国の祭り好きの血が騒ぐと言うか…………エヘヘヘ!」


照れ笑いをしながら、テネトへとデザートの冷たく冷えた『あんみつ』を手渡し。何やら先程自分が話した事を補うと言うか、照れ隠しするように


「それに素敵なお祭りならドンドン取り入れる事は良い事だと思うんだ!

今日開催しているイースター祭にしても、そもそも僕の故郷とは違う国(外国)で行われていてね。

イースターの日に向けて、家族みんなで卵をカラフルにペイントしたりして、楽しく『イースター・エッグ』を作ったりするし。

そのイースター・エッグを使って、探したりして『エッグハント』を楽しめるし。

今日子供達やイベント参加者達が着てるコスチュームにしても、イースターの象徴となる兎や卵から生まれるヒヨコをモチーフにしてあって。毎年変わるコスチュームに皆楽しみに待ってくれているし。

卵同様イースターの象徴の兎にしても、イースター・エッグを運んでくるイースター・バニーと呼ばれているんだから!」


少々興奮した様子で、今日開催されているイースター祭の事を交えて話。

話してる内容が所々支離滅裂になりながら話終えるのだが、丼同様、大盛りサイズのデザートの『あんみつ』を食べる事に夢中なテネトは、そんな愛満の話を聞いておらず。


気が付けば、頭に兎耳のカチューシャを付け。黄色いチュチュや黄色いスパッツをはいた山背がテネトの隣のカウンター席の椅子に座り。『カルピス・ミックスフルーツ味』入りのブランデーカップ片手に、無言で頷きながら愛満の話を聞いてくれているのであった。



◇◇◇◇◇



こうして、今年のイースター祭も愛之助達は花夜を含めた町の友達達と心の底から1日中楽しみ。

一方愛満は、その後 少々熱くなり過ぎた事を反省し。さらに夜になると後半のテネトや山背とのやり取りをフッと思い出し。恥ずかしさのあまり自室の床の上を転がる事になる。

そんな第3回目になるイースター祭の1日が、今年も無事終わる。





愛満=万次郎茶屋主人


山背=自称万次郎茶屋、看板ボーイ………らしい。


テネト=隣街に住む。凄腕冒険者。

タリサやマヤラ、凱希丸達に続き。開店したばかりの万次郎茶屋へとやって来たお客さんになる。



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