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和菓子『お萩』と秋の彼岸入り


「愛満、今日は本当に晴れやかな天気で良かったでござるね!

最近連日のように雨や曇りの日が続いたでござるから、秋のお彼岸の間、秋の彼岸入りの初日が一番、家族や息子・娘夫婦、孫達何十人かの休みが合い。

他はトント休みが合わず、皆の都合が合う日が無いとアルフ殿やアコラ殿達が頭を悩ませて話していたでござるよ。」


今日もマ○メロちゃんコーデでバッチリ決めた愛之助が、茶屋内のミニキッチンで、まるでハムスターのように(せわ)しなくウロチョロと働いている愛満に話しかけ。

作業の手を止め、振り返った愛満が相づちを打つ暇も与えないまま、饒舌気味に。


「それでアルフ殿とアコラ殿の2人が考えてた考えた結果でござるね。

アルフ家一族の休みが一番合う秋の彼岸入りの初日に、せっかくのチャンスだからと参加出来るアルフ家一族の皆が集まり。

隣山へとお墓参りに行く事に決めたとアルフ殿やタリサ、マヤラ達が嬉しそうに教えてくれたでござるよ。

だけどでござる。拙者、ここ何日か雨や曇り空が続いていたでござるから、せっかく皆で行けるお墓参りでタリサやマヤラはもちろん。アルフ殿やアコラ殿、アルフ家皆が雨に濡れて体調を崩したり。風邪を引いたりしたらどうしょうかと心配していたでござる。」


今日仕事が休みの両親や、遅番出勤などの兄や姉達家族と一緒に朝倉町が有る隣山に最近建てられた。

先祖達が眠るお墓へとアルフ家一族でお墓参りに行っているタリサやマヤラの事を心配していた愛之助が、ホッとした様子で愛満が入れてくれた『イチゴミルク』をズズッと豪快にストローで飲み干す。


そんな愛之助の隣の席に座り。首を大きく上下させながら話を聞いていた光貴も


「他にもへけっね。お墓参りに行く町の人達がお供え物にと愛満が作った『お萩(おはぎ)』の詰め合わせを沢山買っていってくれるへけっから、何だか愛満が誉められてるみたいで、僕スゴく嬉しいへけっよ!」


大事な先祖へのお供え物に愛満お手製の『お萩(おはぎ)』が選ばれた事が誇らしい光貴は、嬉しそうに満面の笑みで話し。コップに残る『苺味のカルピス』を飲み始める。


そんな愛之助や光貴達の話に愛満も嬉しそうに微笑みを浮かべ。


「そうだね。愛之助が言うように、今日は秋の彼岸入りの初日でお墓参りに行くと話してた人が多かったから、町の人達が雨に濡れなくて本当に晴れて良かったね。

それに光貴が言うように、皆がお供え物にとうちの『お萩(おはぎ)』の詰め合わせを買っていってくれて、僕も嬉しいよ。

けどね、ここだけの話。そもそもお彼岸にお墓参りするのは、僕の住んでた故郷の仏教的な風習ではないんだ。そもそも他の仏教国にも、そんな風習はないから。

ただね。春分には豊穣を、秋分には実りを祈願する故郷(日本)の自然信柳が、先祖を思う気持ちと融合した行事なのかなとも僕は思うから、遠く離れた所(異世界へと)に来ちゃったけど、そんな一つ一つの行事を大切にしていきたいと、今では強く思ってるんだ。」


愛之助と光貴の2人に話しながら、何やら照れくさそうに笑い。


「そうだ!2人共朝早くから茶屋の手伝いで小腹空いたでしょう?黒胡麻糖を作りすぎて一口サイズの『お萩』作ったから食べない?」


お皿に盛られた一口サイズの『お萩』を愛之助と光貴の前に出してあげる。

するといつもは嬉しそうに感激の声を上げる愛之助や光貴が、何やら後ろめたい表情を浮かべつつ。


「えっ!良いでござるか!?………そ、それならば愛満の真心を無駄にも出来ぬし、拙者も光貴も遠慮せずにいただくでござるよ。(ボソボソ……こんなことならば、あの時秘蔵菓子を沢山食べなければ良かったでござるよ………)」


「あっ、黒胡麻糖のお萩へけっか!

醤油味や塩味の煎餅も美味しかったへけっが、黒胡麻糖のお萩も美味しそうへけっね。…………あっ!これ言ちゃいけなかったへけっ。

…………え、えっとへけっ、エヘヘヘ。あーぁ、美味しそうへけっ!頂きますへけっ。………モグモグ………モグモグ……うん、うん。やっぱり愛満お手製のお萩は美味しいへけっね。」


「本当でござるね。愛満お手製の黒胡麻糖のお萩は、お萩のまわりの黒胡麻糖も美味しいでござるし。

何より秋限定の黒胡麻糖のお萩の中に、白餡と合わさったさつま芋餡が包まれているでござるから、春のお彼岸の餡子が包まれた黒胡麻糖の牡丹餅と味の違いが楽しめ。実に美味でござるよ。

うん、うん。やはり、さっきこっそり食べた秘蔵の煎餅や金平糖をガバガバと食べ過ぎず、少し我慢したら良かったでござる。

………けど、あのしょっぱい物を食べたら甘い物、甘い物を食べたら、またしょっぱい物を食べたいと思う貪欲な欲望の無のループから抜け出すのは、まだまだ未熟者の拙者には、厳しいのでござる。

はぁ~、これではこの美味しい一口サイズのお萩を、後20個から………う~ん、そうでござるね。…………せいぜい25、6個しか食べられないでござるか………失敗したでござるよ。」


「本当へけっね。煎餅も金平糖も美味しかったへけっが、僕ももう少し我慢してれば良かったへけっよ。

この頬っぺたが落ちそうなほど美味しいお萩をお腹一杯食べられないへけっなんて………僕のバカバカバカ!」


何やら2人でコソコソと秘密話をしたり。途中、愛之助達は少ししょんぼりした様子をみせながらも、黒胡麻糖のお萩を一口食べると最後は幸せそうに微笑み。

秋限定のさつま芋餡が包み込まれた黒胡麻糖のお萩を口一杯に頬張った。



◇◇◇◇◇



そうして黒胡麻糖のお萩をお腹一杯堪能した愛之助と光貴の2人は、愛満が入れてくれた緑茶をまったりと飲みながら、パンパンに膨れたお腹を落ち着かせていた所。

何やら思い出した様子の愛之助が、隣の席に座る光貴へと、少々食べ過ぎずて動くのも苦しそうに首だけを動かし。


「そうでござる、光貴。

光貴は、どうしてさっき食べたお萩がお萩と言い。春に食べたこし餡の牡丹餅が牡丹餅と言うか知ってるでござるか?」


自身も愛満に聞き。知り得た牡丹餅とお萩の呼び名の違いを問いかける。

そんな愛之助の突然の質問に、まだお腹一杯で苦しながらも暇をもて余していた光貴は、牡丹餅とお萩の呼び名の違いを一生懸命考え始め。それでも解らなかった様子で、頭を悩ませながら愛之助に答えを問う。


「えっ??………えっと、お萩と牡丹餅の呼び名の違いへけっか?…うーーーーーーん?……………………………どうしてへけっだろう!?牡丹餅もお萩も、どちらも見た目もあんまり変わらないへけっよねぇ……………う~~ん、考えても解らないへけっ。愛之助は知ってるへけっか?」


「光貴も解らないでござるよね。拙者もどうして牡丹餅もお萩も見た目は似てるでござるのに、何故『春は牡丹餅、秋はお萩』と呼び名が変わるのでござるかと不思議に思い、愛満に質問したのでござるよ。」


「えっ!愛之助も知らなかったへけっか!?」


「そうでござるよ。拙者も愛満に教えてもらうまで解らなかったでござるよ。

それで、愛満に教えてもらったらでござるね。

どちらも餅米とうるち米をこねた餅を使うでござるが、こし餡をまとった『牡丹餅』は、牡丹の咲く春のお彼岸に。

つぶ餡をまとった『お萩』は、小豆の粒が萩の小さな花を連想させる事から、秋のお彼岸に食べるんだよと教えてくれたのでござるよ。

どう思うでござるか?ただつぶ餡か、こし餡かの違いで呼び名が変わるでござるよ?

拙者の頭が悪いのかも知れないでござるが、不思議過ぎな和菓子でござるよね。」


「へけっ~!そん理由へけっからか??……………愛之助の頭が悪いんじゃないと思うへけっが、本当に不思議な和菓子へけっね。」


2人は頭をかしげ。パンパンのお腹を抱えながら、もう1度、愛満に牡丹餅とお萩の違いを聞きに行く事にするのであった。



◇◇◇◇◇



こうして、今年もまた朝倉町も愛満の話などから町の人達に浸透した行事の一つ、秋の彼岸入りし。

町の人達は愛満が建ててくれた先祖が眠る隣山に有るお墓へと、お花やお供え物、掃除道具等を持ち。家族仲良くお彼岸の期間中にお墓参りに行き。

お墓参り後、お墓近くに作った公園等で、皆で仲良く持参したお弁当やお供え物のお萩を食べたり。

先祖を敬い、なくなった大切な人達を偲ぶのであった。






すいません。一日遅れの更新になってしまいました。申し訳ありませんΣ(ノд<)

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