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厚切りハムカツと山背の苦しみ、食べ合わせ



「うーーーーぅ!腹が痛いのじゃ~!!……………………お腹ピーピーなのじゃ~」


その日の万次郎茶屋では、普段はお昼ご飯を食べ終え。それぞれが思い思いののんびりした時間を過ごしているはずが、山背が1人トイレにこもり、苦しみの声を上げていた。


そんな山背の苦しそうな声がかすかに聞こえる。今だ準備中の札が下がったままの茶屋内では、心配顔のタリサや愛之助達が愛満に群がり。


「よ、愛満、山背大丈夫なの?」


「何か悪いものでも食べたへけっか?」


「だいじょぶ?」


今だ苦しそうな声を上げている山背の事を同じく心配顔でトイレの方を気にしている愛満に問いかける。


「そうだね………………お昼ご飯を食べてしばらくした後に、突然お腹が痛いって言い出してから、ずっーとトイレにこもりぱなしだから心配だよね。………けど、いったい全体どうしちゃったんだろう。

………………今日のお昼ご飯、何か悪かったかなぁ…………。」


愛満も何が何だか解らない様子で、終いには自身が作った今日のお昼ご飯が悪かったのかと悩み始め。

今まで一言も喋らなかった愛之助も


「…………も、もしかして、これが世に言う食中毒でござるか!?…………今日、拙者が作った、お盆の間に取得した、婆ちゃん直伝の『玉子焼き』が駄目だったでござるか!?

山背~ごめんでござるよ~!!許してたもう~!!」


大粒の涙を流し、山背がこもり、苦しみの声を上げているトイレの扉を叩いて許しをこう。

そんな軽いパニック状態におちいった愛之助の姿に、少々ビックリしたタリサ達であったが


「えっ!?食中毒!?そ、そんな事無いよ!だって愛之助が作ってくれた玉子焼き、スゴく美味しかったもん!」


「お腹ピーピーはイヤへけっが、愛満や愛之助のご飯が原因では絶対無いへけっよ!!」


「おにゃかピーピーくるちいからきちゃイヤじゃけど、じぇちゃいごはんのせいちがうよ!!」


食中毒は嫌だ、お腹ピーピーは嫌だと話ながら、愛満や愛之助が作ってくれた美味しいお昼ご飯が原因では無いと口々に話。落ち込む愛満や愛之助を慰めてくれる。



◇◇◇◇◇



と、そもそもの愛満や愛之助が落ち込む原因にもなった今日のお昼ご飯の時間まで遡って思い出してみると



◇◇◇◇◇



「みんなお待たせ~、今日のお昼ご飯のメイン料理『ハムカツ』だよ。

さっき揚げ上がったばかりの揚げたて熱々だから、みんな火傷しないように気を付けてね。」


愛満が皆に注意しながら山盛りに盛り付けられた。分厚い厚みに、丸い形のきつね色の衣に包まれた『ハムカツ』が乗った大皿をテーブルの真ん中に置く。


すると先程から待ちきれない様子で箸と小皿を両手に持ち。ずっとスタンバっていた。腹ペコのタリサ達が


「うゎ~ハムカツだ!それに分厚い!」


「美味しそうへけっ!」


「おいちょうじゃね!」


「う~ん♪良い匂いでござる!」


嬉しそうに口々に話。自分達の小皿にこんもりと『厚切りハムカツ』をとり。思い思いにソースや愛満お手製のタルタルソースをかけると、大きなお口を開けて『ガブ』っと食べ


「あっ!熱い……………………う~~~ん美味しい~!!衣がね、スゴいサクサクしてて、一口食べたら止まらなくなる美味しさなの!

それに愛之助が作ってくれた玉子焼きも甘くて美味しいね!」


「………あふあふ…………………ふぁ~~美味しいへけっ!ハムカツがジューシーで厚切りだから、これ1枚でお腹一杯になりそうへけっ!………あっ!けど愛之助の玉子焼きもまだまだ食べたいへけっから、愛之助の玉子焼きも愛満のハムカツもお代わりするへけっよ!」


「………あちゅい……………モグモグ………うん、おいちいね!サクサクうまうまにゃの♪あいのちゅけのちゃまごやきもおいちい!」


「………あつあつ、あふいでござる…………モグモグ、モグモグ…………………うん!本当に美味しいでござるね。

それに厚切りに切られたハムをハムカツにしてるでござるから、普段より食べごたえが有るでござるし。衣もサクサクで、一口食べると口中にハムの旨味が広がるでござる。

それに拙者が作った『玉子焼き』を誉めてくれて、タリサもマヤラも光貴もありがとうでござる。

この玉子焼き。この前の帰省中に婆ちゃんから習った『玉子焼き』になるでござるから、皆が誉めてくれて本当に嬉しいでござるよ。」


口の端にソースやタルタルソースを付けたまま『美味しい、美味しい』とお昼ご飯の感想を話してくれ。

お盆の帰省中に愛之助が愛満の祖母から習い。今日のお昼ご飯のおかずにと作ってくれた『玉子焼き』を『スゴい、スゴい』と話し。ご飯やお味噌汁も含めて、たくさんお代わりしてくれる。


そしてハムカツの熱さにも負けず、先程から黙々と食べている山背や美樹、黛藍達も


「本当にハムカツは旨いのう~~♪

愛満が普段作ってくれるポテトサラダやチーズ、タマゴサラダなどが挟まれたハムカツも十分旨いのじゃが

今日の厚切りハムを使ったハムカツは、分厚くて、何だかセレブになった気分なのじゃ!

それに愛之助が作ってくれた。ワシが大好きな玉子を使った『玉子焼き』や『胡瓜の漬物』も有り。おつまみ一杯で、ここにキンキンに冷えたビールが有れば最高なんじゃが……………美樹が飲めんのにワシ1人で飲むのは忍びないからのう~。ここは冷たく冷えたお茶で我慢じゃ!

………………ゴクゴクゴク、ゴクゴク、ゴクゴク………うぇっぷ!ヤバいヤバい。ついつい茶飲み過ぎて、ハムカツや玉子焼きと共に、朝のうちに丈山とこで食べたスイカが上がってきたのじゃ。

ふぅ~~、今年最後のスイカじゃと進められたからのう。冷たく冷えておって美味しかった事もあり、ついつい欲張って食べ過ぎたわい。」


「はぁ~~旨いなぁ!

本当、揚げたて熱々の揚げ物とソースは合うな!それにさりげなく置かれた千切りキャベツも口直しにピッタリだぜ。

はぁ~~、午後から仕事じゃなきゃ。キンキンに冷えたビールと楽しめたんだけど………………それに愛之助が作ってくれた『玉子焼き』も旨い事旨い事。…………この玉子焼きにマヨネーズと醤油をちょろっとかけて食えば、甘い砂糖味の玉子とマヨ醤油のコラボが口の中の広がって…………いくらでも飲み食い出来るはずだったのになぁ~」


「うんうん、美味しいアルね。愛満が作ってくれた厚切りハムカツも揚げたて熱々でソースやタルタルソースが良く合い、とっても美味しいアルよ。

もちろん愛之助が作ってくれた玉子焼きも丁寧に焼かれていて、甘い味付けで見た目も味もパーフェクトアルよ!」


各々の感想を話し。先程から『ビールが飲みたい、飲みたい』と悔しそうに話していた美樹は、愛満から『夜の晩酌用にチェダーチーズを挟んだ。豪華版の厚切りハムカツをちゃんと取ってあるよ』と教えてもらうと大喜びして機嫌が良くなり。

先程までの悲しそうな表情から一変、ニコニコとした清々しい笑顔で


「ほんと、久しぶり食べる厚切りハムカツは旨いなぁ~!

俺 あっちに居た時、良く仕事帰りに近くのコンビニに寄ってさぁ。

値段も手頃で、小さめなんだけど食べごたえ有る厚切りのハムカツや千切りキャベツの袋入りを買って、晩酌のつまみとして、多目に貰ったソースをドバーっとかけて食ってたんだよ。

まぁ、職場の先輩に言わせれば、ハムカツとは薄いハムを揚げたの物で、厚切りハムカツなんて外道だと言ってたけど。

で、この前愛満達の帰省の土産の中に御中元のハムを貰ったと愛之助から聞いてさぁ~。土産のハムの詰め合わせを見てからは、久しぶり昔良く食ってた、あの厚切りのハムカツ食いてえと思ってたんだよ。」


日本に居た時の事を懐かしむようにしみじみと話し。


「けど、くそ暑い夏の時期に揚げ物のハムカツを揚げてくれとは、愛満になかなか言い出せないだろう。

だからどうしょうかと悩んでいたら、9月になって急に涼しくなったから良いかなぁと思って、今朝に愛満に厚切りハムカツが食いたいんだけどって、お願いしてみたんだ。

あっ、もちろん!タリサとマヤラも一緒に食える昼飯でとお願いしたんだぜ」


「えっ、そうだったの!美樹ありがとう~!」


「よちき、あいがとう♪」


タリサやマヤラにお礼の言葉をもらうなか。今日のお昼ご飯が厚切りハムカツな訳が解った。



◇◇◇◇◇



と、お昼ご飯の時間を思い出していた愛満は、何か山背の腹痛の原因を解く事になるかも知れない。山背の話した言葉をもう一度良く思い出し。


『朝のうちに丈山のとこで食べたスイカが上がってきたのじゃ』


『食べたスイカ』


『冷たく冷えたスイカ』


「あっ、なんだ!山背の下痢や腹痛の原因、スイカのせいだったのか!………………そっか、スイカかぁ………………」


何やら山背の下痢や腹痛の原因が解ったらしい愛満は、ホッとしたやら、少し心配していた食中毒ではない事が判明したやらで、思わずその場に膝から崩れ落ちる。


「よ、愛満、どうしたでござるか?やはり拙者の作った玉子焼きが原因だったでござるか?」


「愛満、どうしたの?それにスイカって何?」


「愛満、大丈夫へけっか?」


「よしみちゅ、だいちょうぶ?チュイカおいちいよね♪」


愛満の姿に、少し落ち着きを取り戻した愛之助やタリサ達が驚き声をかける。

すると何やらトホホ顔の愛満がゆっくり立ち上がり。


「いやね。多分山背の腹痛や下痢の原因はね、冷たく冷えてスイカと揚げ物料理のハムカツを食べた事が原因だと思うんだ。

だから愛之助の玉子焼きが原因じゃないし。食中毒でも無いから安心して大丈夫だよ。」


話しかけるも、愛満が話すスイカとハムカツでお腹を壊す意味が解らず。皆(はてな)顔で首をかしげ。


「えっ!?チュイカとハムカチュ??」


「スイカとハムカツが原因でござるか?」


「スイカとハムカツへけっか?」


「そもそもスイカとハムカツでお腹壊しちゃうの?」


スイカとハムカツで、お腹を壊す意味を問う。


「そう思うよね。けどね、それが壊しちゃうんだ。

僕も昔婆ちゃんから『スイカと天ぷらは食べ合わせが悪い』と昔からの言い伝えを聞いて育ったから知ってるんだけど

水分の多いスイカを冷やしてたくさん食べるとね。胃酸が薄くなり、一時的に体温が下がって消化機能が低下しちゃうみたいなんだ。

それで油っぽい天ぷらや、今日のお昼ご飯のハムカツみたいな揚げ物料理を食べると山背みたいに下痢しちゃったり。胃腸の調子が崩れやすくなるそうなんだよ。」


スイカとハムカツでお腹を壊す意味を話。下痢が少し落ちついてトイレから出て来た。少々げっそり顔の山背のお腹を自身の不思議な(パワー)を使って治してあげた。



◇◇◇◇◇



そうして、ちょっとしたハプニングが有りながらも、無事山背のお腹も愛満のおかげで回復し。冷たく冷えたスイカを食べた後は、油っぽい揚げ物料理などは食べない!食べ過ぎない!と、山背のように苦しみたくない愛之助やタリサ達は、肝に命じるのであった。




登場人物


・愛満

今日も仕事に家事など頑張る働き者


・愛之助

帰省中に婆ちゃんから習った、甘い『玉子焼き』を作る。


・タリサ、マヤラ、光貴

毎日元気に勉強に遊びに頑張るチビッ子3人組


・山背

今回の話で、少々大変な目にあう。


・美樹

日本での懐かしいのおつまみの1つ。『ハムカツ』をリクエストする。


・黛藍

今日も元気にお仕事頑張ってるアルよ!



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