◆ある女の嫉妬
「………えっ!?ちょっと何なんですのこれは、ちょっとお待ちなさい、そこの馬車!お客の私を置いて行ってるですわよ!」
朝倉町へと走行する馬車便から何の前ぶれも無く。突然気がついたら山道脇へと荷物と一緒に立っていた。王都の貴族の御令嬢でもあるエマは、初めて体験した出来事に驚き。
慌てて追いかけ。自分が乗っていた馬車を停めようと、貴族の御令嬢にしてみればはしたないと言われてしまうかも知れないのだが、少し大きな声で馬車を呼び止めるために声を出す。
「ちょっと~~~私がココにいるですわよ!お止まりなりなさい~~~!」
しかし、まるでエマの声や姿など見えていないかのごとく。無情にも馬車はそのまま走り去ってしまう。
「全くなんですのコレは!これだから田舎者は無作法で信じられないのですわ。
それにこの山道、周りには建物や人影も無く。森林が生えてるだけの田舎丸出しでは有りませんか本当に最悪ですわ。王都ならばこんな事、絶対ありえない事ですわよ!
………………ふぅ~けれどしょうがありませんすわ。
こんな所でボヤボヤしてたら日も暮れてしまい。大変な事になってしまいますわね。ココは歩いて街まで向かいましょうか。」
エマは馬車の運転手の事や田舎の事を悪態つきながら、しぶしぶと徒歩で朝倉町を目指し始める。
するとしばらく山道を歩いていた所、当然何か見えない壁に阻まれたかのようにエマは、そこから先へと進めなくなってしまう。
「えっ!?」
◇◇◇◇◇
「もう本当に何なんですの!これは何かの高度な術でココから先へと進めなくなっている事は解りましたが、どうして1度もこの場所を訪れた事の無い私が弾かれ、通れないようになっているのですか!?全く意味が解りませんわ!」
あれからしばらくの時間がたったのだが、一向にその場から先へは進めない事にエマは珍しくイライラしていた。
「本当に困りましたわね。コレじゃあ、あの方に文句の1つも言う事も出来ないではありませんか……………」
実はエマ、リサが王都に住んでいた時の勤め先でも有る医局部の元同僚になり。更にはリサと同い年で学園やクラスも同じだった同級生になる。
そしてそれはエマやリサの祖母達の代から続き。
エマの祖母や母親達がリサの祖母や母親達と様々な事で順位を争い負けたよう
(ちなみにエマの祖母や母親が勝手にリサの祖母や母親をライバル視していて、1人で勝手に争っていた。
なのでリサと一緒で医学馬鹿のリサの祖母や母親達は、エマの祖母や母親達が自分の事をライバル視していた事に、今現在も気付いてなく。仲の良いお友達の1人だと思っている。)
祖母や母親達に似て、幼い頃から容姿端麗、頭脳明晰で、ずっと学年1~3位の間の順位から落ちた事のないリサに対し。
日々勉強など様々な事をエマは頑張ってきたのだが、どうしても学年5位の順位の壁をなかなか突破できず。
他にも祖母や母親譲りの眼力有る切れ長の瞳、貴族の令嬢なのに平民に多い赤毛髪。
朝早くから夜遅くまでしていた勉強のしすぎで視力が悪くなり。なおさら目付きが鋭くなってしまい。
背丈が平均女性より高い176㎝とニョキニョキと伸び。
成長期の不摂生で女性らしさの欠けた体格などもコンプレックスで、祖母や母親達からは毎日のようにリサと比較され。
叱咤される毎日に知らず知らずの内にリサに対して強い対抗心を持つようになってしまい。
エマが好きになる人達も、皆ことごとく何処と無く可愛らしい顔立ちのリサの事を好きになる人ばかりで、ますます対抗心と共に憎らしさも覚えてしまい。
決定的だったのがエマやリサが受けた就職の際の面接で、リサは見事希望していた難関の医学部内に有る、新しい治療魔法を研究する研究所へと配属になり。
一方エマは、希望していたリサと同じ研究所では無く。患者さんと接しながら治療する医部の方に配属され。更なる憎しみを抱く事になったのだ。
しかし今回リサが研究所から退職した事に伴い。前々から研究所に移動したいと届け出ていた移動願いが受理され。
エマは見事、医部から希望していた医学部内でもエリートコースで、花方職でも有る研究所へと移動になったのだ。
そのため研究所での仕事にもある程度慣れた今の時期、わざわざ長期の休暇を申請し。
朝倉町へとやって来て、医学部でも花方職になる研究所勤務になった自分の輝かしい姿を見せ。
田舎街へと引き込んだリサへと今までの積年の恨みと共に、こんな田舎に来るために辞してまで捨てた仕事は偉大で、愚かな事だとリサを嘲笑いに来たのだ。
◇◇◇◇◇
そうして道脇でどうする事も出来ずにエマが頭を悩ませ不貞腐れていると、エマの近くに一台の荷馬車が止まり。
「あれ、エマさんじゃない?どうしたのこんな所で?」
荷馬車からひょっこり顔を出した、同じ学園の同級生で医学部の薬部で働いていたはずのシェリーから声をかけられる。
突然の同級生との再会に驚いたエマであったが、そこは令嬢としての意地もあり。何事も無いかのように立ち上がり。
「あら、お久しぶりですわね、シェリーさん。そう言う貴方こそ、こんな場所で何をしてらっしゃるの?
それに曲がりなりにも貴族の御令嬢でも有る貴方が、どうして荷馬車なんかに乗ってらしゃるの?」
「御令嬢って!アハハハ~~~♪
うちの家は一応貴族になるけど領地も持ってないし。子沢山だから万年貧乏貴族になるのよ。だから馬車なんて高価な物、そんなホイホイと乗れる訳無いわよ。
それにこの荷馬車?コレは移動病院荷馬車て言うの?
それを愛満に造って貰ったから、今日は隣街のお爺ちゃんやお婆ちゃん達への毎月の飲み薬や塗り薬を処方してきた帰りなのよ。」
『い、移動病院荷馬車?愛満?』
初めて聞く名前にエマの頭の中で?マークが飛び交うなか、シェリーは話を続け。
「ほら!だだでさえ毎日暑いのから、体力のないお年寄りに無理をさせられないしね!」
邪魔になら無いように荷馬車を道脇へと止めつつ(移動させつつ)、荷馬車から降りたシェリーはエマの問いに答える。
すると考えても考えても往診や移動病院荷馬車の意味が解らなかったエマがシェリーに問いかける。
「往診?移動病院荷馬車?それはなんですの?」
「あぁ、そうよね。初めて聞いた人には解らないわよね。
往診て言うのはね。私もあんまり詳しくは解らないんだけど、病気で病院まで来れない人や、病院じゃなく家で治療していきた人の元へ医師の私達が訪ねて治療する事を言うのよ。
ほら、庶民には貴族様のようにお抱えの医師を自宅に呼びつけるなんて、お金のかかる事出来ないでしょう。
それに移動病院荷馬車と言うのは、荷馬車の荷台を改造して怪我した人や具合が悪い人を治療や、その人に合った薬を配合して渡せる乗り物なのよ。
それに特殊な乗り物だから馬も要らないからスゴく便利で楽チンなのよ!」
王都にも無い高度な技術満載の乗り物にエマが驚き、ビックリしていると、シェリーがエマへ
「それよりエマさんこそ、こんな所で何しているの?
いくら森林地帯と言っても、もう少ししたら日も暮れて、ますます蒸し暑くなるわよ。」
「そ、それは…………」
「あっ、もしかしてまたリサを構いに来たの?もぉ~貴方本当にリサが大好きね。」
「そ、そんな事ありませんは、逆に私は毎回リサさんに文句を言ってるぐらいなんですから!」
「はいはい、文句と言う名のお世話ね。」
エマは本人は、自分ではリサに文句を言ったり。意地悪しているつもりでいたのたが。周りから見ていると、少々…………いや、かなり抜けてるリサが何日も同じ服を着ているとエマが目敏く気付き。文句と言う名の身だしなみや服装など気を付けなさいと注意し始め。
医学を学ぶものならば、自身の身を清潔に保つ事を心がけ。身だしなみを気にすると共にお風呂に入りなさいと世話を焼き。
まるで乳母のように細々とリサの生活を手助けし。
気になる事が有るとその事に気を取られ。集中し過ぎてご飯を食べる事をよく忘れてしまうリサを食堂に連れて行ったりと、何かと世話を焼いている。リサの仲が良い友達と認識されていたのだ。
「そ、そんな事していませんわ!現に今日だって、リサさんが研究所を辞めて私が研究所勤務になった事を自慢しに来たのですから!」
顔を真っ赤にしたエマがシェリーに食って掛かるのであった。
◇◇◇◇◇◇
その後2人は、シェリーがリサが経営する街に有る病院に勤めてる事や、同じ同級生のマリアが病院横に住んでる事などをいろいろ話し。
そうして2人が話し込んでいると、ますます蒸し暑くなってきた事もあり。
それに加え、エマからそれとなく聞き出して解った。街への続く道を進めないエマを1人残す事が出来ないシェリーは(心配して)、風と水魔法がきいて涼しい荷馬車内の運転席へとエマを案内する。
暑さや感情の起伏で顔が真っ赤になっているエマへと持参した冷たい緑茶や、万次郎茶屋で購入した。いつもバックに忍ばせている。シェリーのおやつ兼非常食でもある『黒糖饅頭』を分けてあげる。
「はい。とにもかくにも、まずはこの冷たい緑茶飲んで水分補給ね。」
「あ、ありがとうございますわ。」
「いえいえ、どういたしまして。
で、次はこの私イチオシで美味しい黒糖饅頭を食べてみてよ。きっとあんまりの美味しさに元気百倍になるわよ!」
某茶屋のチビッ子組から教えてもらった言葉を話し。エマに一口サイズに作られた。10個入りの『黒糖饅頭』が入ったパックを手渡す。
初めは、王都では目にした事が無い茶色一色のシンプルな見た目に、カラフルな色合いや華やかな見た目が重視される王都のお菓子とまったく違う事に驚き。
初めて目にした小さな小山型のお菓子や、饅頭が詰められたパックを不思議そうな顔をして見ていたエマであったが、隣でシェリーが勢い良くモグモグ食べ進めている姿を見ていて
恐る恐るではあるが、シェリーから手渡されたお饅頭の一つを手に取り食べてみる。
「……!!!!」
するとしっとりしていて、なおかつふんわりしたお饅頭の皮の食感や優しいこし餡の甘さが口中に広がり。
貴族御用たしの王都の甘さだけを追い求める菓子しか食べた事がなく。庶民の甘味や、朝倉町限定の饅頭やこし餡など食べた事が無いエマは、初めて味わう優しい甘さに、ただ純粋に頬を緩ませ。
「なんて優しい味で美味しいんでしょう。初めて食べた美味しさですわ。」
「そうでしょう!やっぱり愛満が作るお饅頭は、国一番の美味しさなのよねぇ♪
それにこの美味しさで1個 銅貨1枚の激安なのよ!信じられる!」
「えっ!たったの銅貨1枚ですの!?コホ!ゴホゴホー!」
シェリーの話に驚き。エマが喉に饅頭を詰まらせ咳き込んでいるとシェリーが緑茶を差し出してくれ。
「そう!きっとたくさんの砂糖を使ってるだろうに銅貨1枚なのよ!スゴいわよねぇ~~!
だからと言う訳じゃないけど、貧乏で甘い物に飢えてた。うちの家のおやつにうってつけなのよ。
まぁ、朝倉町に越して来てからは住む家や着る物、食べる物なんかが格段にグレードアップしたから、今は貧乏を脱出してプチセレブになったんだけどねぇ。」
顔の赤みが少し引き、落ち着きを取り戻した様子のエマとシェリーの2人は、美味しい緑茶を相棒に『黒糖饅頭』を食べ進めていった。
◇◇◇◇◇
そして、その後も町へ入れないエマため。シェリーが荷馬車内を説明しながら何気ない話をしていると。説明の最中、何やら思い詰めた表情をし始めたエマがポツリポツリと話し出し。
「…………………どうしてなのでしょうね。私が心の底から欲しい物やいくら努力しても手に入らない物をリサさんは簡単に手に入れてしまうんですね。
それに私がやっと手に入れたと思っているとリサさんはその上をいく価値の有る別の物を手に入れてしまっている。
……………………やはり、どんなに努力しても天才と呼び名の高いリサさんには凡人の私は到底叶わないのですよね。
そもそも天才のリサさんをライバル視する方が可笑しいのですわね。
……………ネミヤ先生が昔私に話てくれましたわ。私達凡人が必死に勉強して解らない事を天才とはたいした努力をせずに簡単に解いてしまうのだと……………たがら天才のリサさんに挑む私は愚か者なのだと。」
まるで体をガチガチにおおっていた目に見えない鎧がハラハラと崩れ落ちていくようにエマが静かに涙を流す。
すると黙って話を聞いていたシェリーが怒った様子で
「そんな事を生徒を導く指導者でもある教師のネミヤ先生が言ったの!それは間違いよ!それにエマさん、本当にそう思う?
……………もしエマさんがそう思うのならば、天才とは便利な言葉だよね。
だって天才と言ったら、たいした努力もせずにもって産まれた物だけでやってきたように思われるんだから……………。
けどさぁ、そんな人滅多にいないと思うよ。皆気付いていないだけで大なり小なり努力をしているんだよ。
それを周りの人や他人が気付くか気付かないだけなんだと思うよ。」
「そんな!現にリサさんはたいした努力をせずに難関でもある医学部の研究所勤務に1回で合格したではありませんか!」
シェリーの話を聞いて、自身の考えが揺らぎそうになりエマに詰め寄る。
「あぁ、それね、それ本当は裏があってね。
リサが本当に勤務したかったのはエマさんが初めに勤務してた。患者さんと向き合い治療出来る医部だったんだ。」
「えっ!」
「そう、驚きだよね。けどリサの希望や夢は、研究所のお偉いさん達の考えに呆気なく握り潰されたんだ。
研究所で5年頑張って結果を出せば、希望する医部に移動させてあげると言われていたんだけどね。結局、それさえもうやむやにされたんだ。」
「………そ、そんな、だってあんなに研究に没頭してたのに」
「そりゃそうだよ。5年で結果をださなきゃ医部に移動できないだから、誰だって自分の夢がかかったら必死に頑張るでしょう。」
エマが知らなかったリサの夢や真実を聞き。エマは強いショックを受け。そのまま言葉をなくしてしまう。
◇◇◇◇◇
そうして、自分が知らなかったリサの真実や医学部内上層部の見えなかった汚さにエマがショックを受け。黙りこんでいると、何やらしびれを切らした様子のシェリーが
「はぁ~~~!あのね、貴方が気にしている切れ長の瞳や女性らしさを感じられないと思ってる体型や身長は、他の人達からしてみればスッとした気品が感じられる綺麗な顔立ちや、立ち振舞いから羨ましがられているのよ。」
「そ、そんな事ありませんわ!」
「はいはい、そんな事有るのよ。
エマさんは知らないでしょうけど、王都の貴族の間では綺麗所で三色兼備を輩出する。
曲がった事が大嫌いで真面目すぎるエマさんの家と、医学の事にはスバ抜けて天才的なんだけど、その他の事が抜けてる。
可愛らしい顔立ちの年齢不詳の老若男女を輩出するリサの家のやり取りなら有名すぎる話なのよ。」
エマ達が知らなかった。王都の貴族の間では有名すぎる話を伝え。さらに続けて
「それにね。リサが研究所を辞めた本当の訳は、私に対する上司からの暴言やアクシデントを装って、毎日のように体を触ってくる事などをおかしいと上に直訴してくれたからなのよ。」
「えっ、……………や、薬部内ではそんな事がまかりとおっていたのですか!……………私、全然知りませんでしたわ」
シェリーからの自分が知らなかった新たな話にエマが驚き、動揺する。
「エマさんが知らないだけで、薬部でも医部でも身分にものをいわせた貴族の人達からの下の者への嫌がらせは結構あるのよ。
今はこうして普通に話せてるけど、あの当時は本当に苦しくて、誰にも相談できなかったの。」
「ど、どうしてですか?上層部には沢山の女性の幹部もおられるから、相談してみたらよろしかったではないですか?」
エマが上層部や上に立つ者達に憤りを感じながらシェリーに詰め寄る。
「そんな簡単にはいかないのよ。それにね、私みたいなぺーぺーの平社員では上層部の方々には簡単に会えないし。
……………最初は、上司が家より位の上になる貴族の三男坊だから誰にも相談できずに毎日我慢してたの。
それに家に残る幼い弟や妹達に私のようにお金の苦労をさせたくなかったし。給料の良い王都での薬部の仕事を離れる勇気が出せなくてね。
だから両親や家族に必死でその事を隠して、誰にも相談しないで平気なふりして働いていただけど………………
ある日ね、日に日に様子のおかしくなっていく私の変化にリサが気づいてくれて、密かに1人で何が起きてるのか調べあげ。上の幹部や理事達に他の被害者の証拠品と共に直訴してくれたの。」
「そうだったんですか…………シェリーさん、ごめんなさいね。
同じ時に同じ学舎で学んだ同級生なのに、あなたがそんな大変な目にあっていた事に私、全然気づかなかったわ。
自分の小さな世界にこもり。自分の事ばかりを考えて…………部が違うとはいえ、同じ医局で働いていながらシェリーさんの事も含め、周りで苦しんでいる人がいる事に気づかなかったなんて…………………あまりに自分本意な考えで、本当に恥ずかしいわ。」
エマが頭を下げ。自分の周りで苦しんでいる人がいたかも知れない事に気づかけなかった事を恥じる。
そんなエマの謝罪に慌ててシェリーが止め。
「いやいや、エマさんのせいじゃないんだし。そもそも部所が全然違ったんだから気づかないのは当たり前だよ。本当に気にしなくて大丈夫だから
それにね。その後、私は職場に居り辛いだろうからと職場を移れたし。上司は左遷の事例が下った後、噂が広まり自主退社したんだ。」
被害のその後を話し。
「だけどリサは薬部や医部内の被害を知り。そんな職場に嫌気がさしたんだろうね。
ある日急に仕事を辞めて、友達のマリアさんが住む。この朝倉町に引っ越すと言って、そのまま引っ越していちゃたんだ。
そしたら何ヵ月後かには病院を開いたから一緒に働かないかと手紙が来てね。さらには家族も一緒に移住して来ると良いとも書かれていて、私も心機一転したかったし。
私のせいで家族が元上司の家族から嫌がらせや、何かあったら嫌だったから、思いきって家族皆で朝倉町に引っ越して来たのよ。
だからね、エマさん。あなたも今日を区切りに、自分の目や耳にした真実だけじゃなく。あなた自信が感じて思った素直な気持ちで生きた方が楽になれると思うわよ。」
「シェリーさん……………。」
「まぁ、私もあんまり人に偉そうに言える素晴らしい生き方をしてきたわけじゃないから、偉そうな事を言えないけど………………」
シェリーは黙り混み。突然その場に立ち上がると、気合いをいれるかのように自分の頬をバチんと叩き。令嬢らしからぬ姿で叫び。
「あ~~~~~~ぁ!だめダメ駄目!辛気くさい話は終わり!
辛気くさい話ばっかりしてたら悪い運が寄って来ちゃうかもしれないもの!愛之助が言ってたわ。
そうだ!ここは最近私が気に入っている美味しいラーメンを一緒に食べて元気パワーをチャージするわよ!」
運転席内にある棚をゴソゴソあさり始め。
密かに隠していたシェリーの非常食でも有る。朱冴のお店で買ったお気に入りの期間限定特盛サイズの豚骨カップラーメンにお湯を注ぐのであった。
◇◇◇◇◇
そうしてその後。エマは最後まで朝倉町へと足を踏み入れる事は出来なかったが、シェリーと一緒に荷馬車内の運転席後ろにある仮眠室(ちょっとした横になれるスペース)で一夜を過ごし。
結局リサには会えなかったのだが、次の日王都へと帰るエマのその表情からは、何かを成し遂げようとする者が放つ。独特の力強さやヤル気がみちあふれいて
「私、バカでしたわ。リサさんと自分を比べたり。薬部や医部など小さい事に囚われている場合では無かったのです。
…………………そう、私は私。
この世にたった1人しかいない人なんだから、私が私の頑張りを認め。私の事を愛してあげないと、誰が私の頑張りを認め、愛してくれると言うの?
それにせっかく日々の仕事を頑張り。毎日一生懸命1人でも多くの人を助けようと頑張って働いてる人達を身分で左右し。理不尽に苦しめる事は、本当におかしい事よ!
そんな事間違ってるし。そんな事、1日も早く終わらせるべきだわ。
だから、その為には誰かが立ち上がらなければいけない…………………そう、私が変えてみせるのよ。
シェリーさんのように苦しむ人を1人でも多く助ける為に!」




