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和菓子『鵲の橋』と催涙雨の七夕祭り



ザァー、ザァーと、どこか遠くの地面に降り注ぐ雨音が微かに聞こえてくるなか。

その日朝倉町では、朝倉町の飲食店が加盟する『朝食(あさしょく)組合』と朝倉町でお店を営業する店主が加盟する『愛倉(あいくら)組合』の合同主催になる。


7月7日の夜の天の川を渡って1年に1度だけ会うことが許される。彦星(ひこぼし)織姫(おりひめ)の星伝説をモチーフにした。

町のどこかに隠れているケットシー族のコテツ&ミム夫妻をモチーフにした。彦星と織姫のぬいぐるみを町中に散らばったヒントを集め、それぞれ探しだし。

見事探しだした人には、七夕限定の記念品と交換できる。『七夕祭り』が開催されていた。



◇◇◇◇◇



そんな七夕祭りが開催されてる中。組合店として祭りに参加している万次郎茶屋では、大事なお店の要員として正式に雇い。シフトにも組み込まれている。

新調したおニューの浴衣と前掛け姿の山背が、カウンター席のスツールにちょこんと座り。実に残念そうにしみじみと


「それにしても愛満、今日は本当に残念じゃのう。

皆であんなに頑張って準備した。せっかくの七夕祭りなのに昨日の夜から雨が降ってしまって、今年の七夕祭りは生憎の雨模様になってしまったのじゃ。」


愛満が出してくれた。夏限定の冷たい『水だし緑茶~抹茶入り~』を美味しそうに飲み干し。「はぁ~冷たくて美味しいのう♪愛満、すまんがお代わりなのじゃ」と緑茶のお代わりを頼む。


そんな山背に緑茶のお代わりをそそいであげながら、いつもの祭りと違い。大繁盛とまではいかなくてもボチボチとあった客足がピタッと引き。一段落した愛満は客足が無くなった事も有り。

少々暇そうな様子の山背のため、七夕限定の『(かささぎ)の橋』と言う名前の葛とこし餡を使った和菓子を出してあげながら少し話しをする。


「本当だね。皆であんなに頑張ってヒントや謎を考えたんだけど、昨日の夜から大粒の雨が降っちゃって、今日はお客さんが少ないのが残念だね。

あっ、けどリーフさん達が祭りに参加してくれる人達のために朝早くからわざわざ来てくれて、本道理の道に大きな星空が映し出される屋根を魔法でかけてくれたんだよ。

だから雨が降ってると言ってもお客さん達が濡れる事はないんだけどね。」


「えっ!そうじゃったのか!?」


「そうだよ。はい、七夕限定の和菓子で『鵲の橋』と言う葛を使った茶菓子だよ。食べてみて。

それからリーフさん達が屋根をかけてくれたのは、山背が起きてくる前の朝早い時間だったから、きっと気づかなかったんだろうね。…………けど山背。あんなにお客さん達が天の川や流れ星が屋根に映し出されて流れていてロマンチックで綺麗だって話してたのに、本当に気付かなかったの?」


客足は少ないながらも祭り参加者のお客さん達が嬉しそうに話していた事を、厨房にいた愛満でも気付いたのに店内にいた山背が知らなかったと言う事に少しばかり疑いの目を向ける。

そんな愛満の姿に何やら少々後ろめたい事がある様子の山背は、何やら焦った様子で


「そ、それは、ほれ、ワシは接客を頑張っておったから全然聞こえんかったのじゃよ。

それにお客さん達の話に耳を傾けるのは失礼じゃろ!

そ、そうじゃ、そうじゃ!じゃから決して大鵬(たいほう)と愛之助が入手してくれた。新刊の将棋雑誌に載っておったスーパー将棋少年の話に盛り上がり、話し込んでた訳じゃないんじゃぞ!」


山背の将棋仲間でもあり。朝倉町に有るイキア道の道場長で、武道家でもある赤鬼族の大鵬(たいほう)とついつい話し込んでしまっていた山背が墓穴を掘る。


「へぇ~、大鵬さん来てくれてたんだ。僕も挨拶したかったなぁ~。

あっ、けど今朝 急な『きな粉麩餅』の大量注文が夕方受け取りで入いちゃったから、店内の事山背に任せちゃってたもんね。忙しくて気付かなかったし、無理か」


愛満の何やら含みの有る笑顔に山背が墓穴を掘ったことに気付き。大慌てで茶菓子を食べ始め。


「うん、うん。この『鵲の橋』と言うのかのう。葛菓子独特の食感や舌触りが良いのう。それに葛皮に包まれた愛満お手製の小豆のこし餡が優しい甘さで、葛皮に良う合っとて上手いのじゃ!」


べた褒めしてくれ。更に続けて


「見た目も笹の葉で包んでおって、夏らしい涼しげな見た目でグッドじゃし。

小判型の食べやすい形や大きさで、さりげなく表面に散らしてある金箔がまた良いのじゃ!」


和菓子『鵲の橋』の見た目までもべた褒めしてくれながら、力強く力説してくれる。

そんな山背の姿に愛満は少々驚きながらも、自分が真心込めて作った和菓子を誉めてくれた事は純粋に嬉しく。お礼の言葉を伝える。


「そ、そお。それは山背の口に合ったみたいで良かった。沢山誉めてくれてありがとう。」


「うむ!気にしなくても大丈夫なのじゃ。

それにじゃ、最近すっかりむっとする肌にまとわりつくような気温の時間が増えてきて。ワシが思うに、そんな時に最高な夏菓子なのじゃ!」


「そっか、そんなに山背が気に入ってくれたとは、ますます嬉しいね。ありがとう。

あっ、そうだ。あと実はね、この『鵲の橋』と言う和菓子。七夕の逸話に登場する(かささぎ)にちなんだ和菓子になるんだ。

ほら、この前七夕祭りの調べものしたでしょう。その時にたまたま七夕関連の本に時候の和菓子として書いてあるのを見つけてね。

葛皮で小豆のこし餡を包み。夏の夜空を表していて、他にも星に見立てた金箔を散らしてある見た目がシンプルながらも綺麗だと思ってね。今年の七夕祭りの限定和菓子として作ってみたんだ。」


今日作った七夕限定和菓子の説明をする。

すると山背が反応が良かった事もあり。気を良くした愛満は続けて


「それに他にもね。旧暦の7月7日だったら梅雨も明けていて、雨を心配することもなく天の川を眺められるんだけど

今の七夕は新暦の7月7日で行うから梅雨の最中になちゃってね。

今日みたいな雨の日や曇りの日なんかが多々あるんだ。

だからなかなかハッキリとした天の川を見れることが少ないんだよ。

そのため昔の人は、七夕に降る雨の事を『催涙雨(さいるいう)』とも呼んで。七夕に降る雨の事を織姫と彦星が流す涙だとも伝えられていたんだよ。」


愛満と山背の2人が話していると茶屋の扉のベルが鳴り。

朝倉神社の大竹に皆の分の短冊を吊るしに行ってくれていた。真新しい浴衣姿の愛之助やタリサ、マヤラ、光貴達4人が帰って来て、賑やかになるのであった。




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