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骨付きスペアリブのビール煮と新作ビールのレモンピール入り



ポカポカ陽気の過ごしやすい気候のその日、万次郎茶屋の面々の姿は、獅子族が営むビアガーデンにあった。



「……ゴクゴク、ゴクゴク……プゥハァ~~~!あぁ~~~このビール本当に美味しいアルね!」


「…ゴクゴク…ハァ~~~のど越し爽やかで風味が最高だぜ!さすが獅子族!ビール作りの天才だなぁ!」


「本当に旨いよなぁ~♪」


「う~~ん美味しい♪ビール独特の味わいを残しつつ、レモンピールの爽やかな風味がプラスされていて、このビールならビールが得意でない私でも飲みやすくてゴクゴク飲めるわ♪」


「本当に美味しいわよねぇ♪」


水滴流れる冷たく冷やされたビールジョッキを片手に持つ黛藍や美樹、獅子族の年若い青年やビール独特の苦味が苦手な獅子族の女性達が美味しそうにゴクゴクと完成したばかりのレモンピール入りのビールを飲み干し。

あちらこちらで『美味しい、美味しい』と楽しそうにビアガーデンの新商品になるビールの味を話していた。


一方そんなワイワイと楽しそうに話す若者達から少し離れたテーブル席では、ビール作りで鍛えられたムキムキのビール好きの獅子族の年配のおじさま衆が集まり。空のビールジョッキを片手に何やら面白くないような顔で


「ケッ!俺達が作る基本のビールの方が100倍旨いぜ!」


「本当だぜぇ!それによう、俺達が作った旨いビールを飲み慣れた俺には、このレモンピール入りのビールは少し甘く感じられ。何だが今一つビールを飲んだ感が足りないんだよなぁ……。なぁ、お前達もそう思うだろう?」


「そうそう!ビールというものは独特の苦味とのど越し、コップの中での泡とビールの3、7の黄金比率が一番大切なんだぜぇ!」


「レモンピなんちゃらだったけ?その甘さがこのビールには感じられ、まるで子供のジュースを飲んでる感じだよなぁ!」


面白くなさそうに口々に悪態つき。子供のジュースみたいだと話しているわりにはお代わりを繰り返し、レモンピール入りのビールを悔しそうに飲み干していた。


するとそんな獅子族のおじさま達の振る舞いに獅子族の奥様が近付いてきてガッント1発特大の拳骨を落とすと、楽しそうに騒いでいる若者達に聞こえないよう。それぞれの旦那や息子をその場から連れ出し。


「何言ってんだいあんた達!あんなに毎日ガバガバガバガバとビール飲んでる男達には、この繊細なレモンピール香る爽やか美味しさは解らないんだよ!」


「本当にあんた達はろくでもない事ばっかり話してるんだから!」


「ハァ~~~、これだから獅子族の男達は………良いかい、その耳の穴をかっぱじって良く聞くんだよ!

そもそもこのレモンピール入りのビールは、ビール独特の苦味が嫌いでビアガーデンから足が遠退いてる若いお客さん達をお店に呼び込もうと獅子族の若いビール職人の息子達が愛満に相談し。

わざわざ忙しいだろうにビアガーデンの今後を心配してくれた愛満が集まり。作り出したビアガーデンの新商品になるビールなんだよ!」


「本当だよ!せっかく若いビール職人の男衆が頑張って作り出したビールだと言うのに、変な嫉妬心出してるんじゃないよ!」


悪態をついていたおじさま衆に雷を落とす。

すると、いつもならそれでしおらしくなるところが、今回は何やら妙に男心のプライドが刺激されるらしく。


「で、でもよう母ちゃん、俺達が作ったビールだってスゴく旨いんだぜ!」


「そうだ!そうだ!」


「町に来る冒険者のヤツ達だって旨い、旨いと飲んでくれてるぜ!」


「………そりゃあ、ビール独特の苦味が味が苦手と若者達の足が遠退いてるという噂も聞いてたし。最近客足が少なくなってるのは気付いていたが、また暑い夏になるとキンキンのビールの旨さに客足も伸びるはずだしょう……………。」


悔しさを滲ませながら自身の訴えを話す。

すると獅子族の奥様衆はそんな夫や息子達を微笑ましそうに見つめ。優しく慰め、諭すように


「良いかい、あんた達が作ったビールが美味しいのは私達も子供達もしっかり解ってるよ。

それに愛満もこのビールが出来たのはビール作りを日頃頑張ってる獅子族のビール職人の皆さんの頑張りがあっての事と話してただろう?」


「そうそう、誰もあなた達が端正込めて作ったビールが駄目だと言ってる訳じゃないだよ。

ただビールの新しい可能性を広げ。沢山の人達にビールの可能性や美味しさを知ってもらいたいからとあの子達は頑張っているんだから、父親のあんた達がどっしり構えてなくてどうするんだい!」


「そうよ。息子達だって父ちゃん達が頑張って作り出したビールの美味しさを沢山の人達に知ってもらいたいからと言って、あのビールを作り出す為に不眠不休で頑張ってるんだと話してたじゃないか!あんた、忘れたのかい?」


「そうだわよ!それに美樹達だって、さっきさすが獅子族のビール職人だと言ってたじゃない?聞こえなかったの?」


子供達の頑張りを激励してあげるくらいの心の余裕を持ちなと声をかけるのであった。



◇◇◇◇◇



獅子族の皆が何をこんなに騒いでいるのかと言うと。


去年獅子族のビール職人が異世界初のビールが完成し。獅子族主体のビアガーデンがオープンしたのだが、しばらくの間冷たく冷え、のど越し最高の旨いビールを求めて、日々満員御礼の沢山の客足が有り。

売り上げも右肩上がりの好調だったのだが、だんだん肌寒い季節の冬になると客足も落ち着き。


一定のお客さんが来店してくれるものの若者達からのビール独特の苦味が苦手との声や

つい最近アルフ家6女の兎族のハニーナがとある出来事から、飲み放題の果実酒バーをオープンさせた事から、これではイカンと獅子族の若者達が立ち上がり。

愛満に相談して、ビアガーデンの新商品にとビールが苦手な若者達でも飲みやすいレモンピール入りの新作ビールを作り出したのだ。



◇◇◇◇◇



そんな事やあんな事こんな事が繰り広げられなか、おじさま衆も奥様や母親達の励ましで元気を取り戻し。今だ完成したレモンピール入りのビールの試飲を楽しんでる獅子族の若者達が居るビアガーデン内に戻ってくる。


するとビアガーデン内の料理を一手に取り仕切る獅子族のカロと何やらビアガーデン内のキッチンで新作メニューを伝授していた愛満達が


「皆さ~ん、お待たせしました!こちらがビアガーデンの新作メニュー『骨付きスペアリブのビール煮』になります。」


「さぁさぁ!さっき完成したばかりの出来立てだよ!

獅子族大好物の肉料理だよ!味も見た目も私の太鼓判の1品で、美味しいから皆も食べてみなよ!」


「そうよ!私も味見させてもらったけど、本当にお肉が柔らかくてホロホロしてて美味しいのよ♪」


大皿いっぱいにのせられた骨付きスペアリブをテーブルの上にドンと置き。試飲中の獅子族の皆に声をかける。

するとそこは肉好きの獅子族。骨付きスペアリブとの呼び声に、ビールジョッキ片手にやって来てはムシャムシャモグモグとみんな勢い良く食べ始めた。


「うーーーーん!何これ!?お肉かホロホロで、骨からお肉が簡単に取れて美味しい!」


「何だこの肉!まじ肉が柔らかくて旨いぞ!…………なぁおい、これ、いつも俺達が食ってる骨付き肉と本当に同じお肉か?」


「ハァ~~~幸せ♪本物にお肉が柔らかくて口の中で無くなっちゃう!」


「くぅーーーー!ビールと良く合うぜぇ!」


骨付きスペアリブを食べ、その美味しさに獅子族の者達が感動するなか。

ビアガーデンで働く女性陣や男性陣達からは、ビアガーデンの新作メニューになる事から少々厳しい味や見た目のチェックが行われ。


「うんうん、美味しい!こんなに味がハッキリして、見た目も豪華で美味しそうなら、ビアガーデンの新作メニューとして出してもお客さん達から人気が出るだろうねぇ!」


「そうそう。それに骨付き肉て所がまたインパクトがあって良いよなぁ!」


「それにこのスペアリブに絡んだソースも味がハッキリして、甘辛く、それでいて爽やかな風味もしてビールとの相性もバッチリだわ。」


「あっ、たぶんその爽やかな風味ってオレンジを入れて煮込んでるからみたいよ。さっき愛満に聞いたら、たぶんオレンジのおかげじゃないかなぁって教えてくれたわ。」


「へぇ~!お肉を煮込むのにオレンジを入れてるのか!俺、この町に来て初めてオレンジ食ったけど、オレンジなんて生で食うしか考えがなかったぜぇ。

カッーーーー!さすが愛満、毎日あんなに手の込んだ和菓子作ってるだけあるなぁ。ただの煮込む料理なのに手が込んでるぜぇ!」


「本当よねぇ。まぁ、私から言わせれば、こんなに柔らかくて美味しいお肉料理、ビールのつまみだけで提供するのはもったいない気もするんだけど……………だってね。この前酔っぱらい過ぎたお客さんがボイルウィンナーとおしぼりを間違えて食べようとしたのよ!

信じられる!?ボイルウィンナーとおしぼりよ!何処をどう見たらウィンナーとおしぼりを間違えるのよ?

私、お客さんがブツブツ『何だこのウィンナーは、噛みきれないぞ』って一人言を言ってるのを見つけた時は、冗談か何かでやってるだろうと驚愕したわよ!」


ビアガーデンホール1の元気者、最近妹が授かり婚をした事から結婚を焦り始めた。美人過ぎて彼氏無しのクバラが最近ビアガーデンで見かけた変なお客さんの事を話す。

すると今年から育児も一段落し、ビアガーデンでパートタイムで働きだしたばかりのエリミアが


「えっ!本当にそんなお客さんいるの!?」


「あ~ぁ、エリミアの担当する時間帯は比較的自分の限界を解ってるお客さんばかりだからねぇ。

私達が担当する時間帯になるとちょっと変わったお客さんや飲み過ぎてお酒にのまれて変わった行動するお客さんが多々現れるんだよ。」


「あっ、それ言えてる!私もこの前お客さんから枝豆なのに固すぎるとナッツを見せられて怒られたのよ!」


「えっ、何それ面白い~!フッフフー♪」


「おっ!それを言うなら俺だって、この前お客さんからトイレの前で扉に文句いってるお客さんがいてトイレが使えないと苦情があったから行ってみれば、トイレの扉に肩がぶつかったといちゃもんつけてるだぜ!

俺、なんて声をかけたら良いか一瞬考え込んじまったぜ」


「はぁ!?トイレの扉にか?………それは何と言うか大変だっなぁ」


いつの間にか自身が境遇したちょっと変わったお客さんの話しに盛り上がるなか、テーブルの端の方で獅子族の年配の奥様方達にビール煮を愛満が振る舞っていると


「本当に美味しいわぁ。最近年と共に顎が衰えて噛む力のいるお肉や硬い物がなかなか食べづらくなっていたのよ。

けど、このお肉だと噛む力もたいしていらなくて年寄りの私でもペロリと食べれちゃうわ。愛満、ありがとうねぇ。」


「本当に美味しいわねぇ♪こんなに柔らかくて美味しい肉が食べれるなら、このお肉料理を食べにだけ子供を連れてビアガーデンに来るのも良いかも知れないわね。」


「本当!私達も骨付きスペアリブなら焼いたりして食べなれているのに、なんでこのスペアリブはこんなに柔らかいだろう。本当に不思議だわ~?ねぇ愛満。どうしてこのスペアリブはこんなに柔らかいの?」


調理しなれたお肉なのにこんなに柔らかくて食べやすい事を不思議に思い。愛満に質問する。


「それはですねぇ。たぶんビールで煮てるから柔らかくなったんだと思うんです。

僕も婆ちゃんから習った料理だから詳しくは解らないんですけど、ビールで煮込むことでお肉に何かしらの力が働いて、お肉が柔らかくなったと思うんです。」


「へぇ~~~!ビールで煮込むとお肉が柔らかくてなるのかい?」


「はい。僕も詳しくは解らないんですけどねぇ。

ただ、せっかく獅子族のビール職人の皆さんや獅子族の皆が頑張って作ったビールだから、ビールを味が苦手で飲むのが駄目でも、ビールを使った料理を楽しんでもらえないかと考え。カロ姉ちゃんと相談して作ってみたんですよ。」


愛満は照れくさそうに話し。獅子族達との試飲&試食会は、大盛況のなか終わるのであった。



◇◇◇◇◇



こうしてその後、夏待つ盛りになる前のビアガーデンにビールが苦手な若者達からも人気をはくす。

『レモンピール入り・ビール』と『骨付きスペアリブのビール煮』がビアガーデンの新商品として仲間入りした。




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