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フレンチトーストと母の日の朝ご飯



「朝だ~♪朝だ~よぅ~♪希望の朝だ~~♪」


その日いつものように山背が自作の歌を歌いながら、朝ご飯を食べるために自身の城から愛満宅へと坪庭を歩き。

茶の間の部屋に入ると、普段この時間帯は台所で朝ご飯の支度をしているはずの愛満と出会(でくわ)した。


「おや?愛満どうしたのじゃ!?朝ご飯はもう出来たのかのう?それとも何処か具合でも悪いのか?」


思わぬ時間に思わぬ所で愛満と会い。山背は愛満の体に何かあったのかと心配して声をかける。


「ううん。体は何ともないから心配しなくて大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、山背。」


「なら、どうしたのじゃ?それに愛之助達の姿も見えんが、………も、もしかして、今日の朝ご飯は無いのかのう!!」


「そんな焦らなくても大丈夫だよ。朝ご飯はちゃんと有るから心配しなくても大丈夫だよ。」


「ならいったい全体どうしたのじゃ?」


いつもの朝と違う家の雰囲気に、山背は頭をひねりながら愛満に問いかける。

すると愛満は嬉しそうに微笑み。台所を指差すと


「実はね、今日の朝ご飯光貴が作ってくれているんだ。だから僕は、ここで待機してなくちゃ駄目なんだって」


「ここに待機かのう」


「そう、光貴から今日の朝ご飯は完成してからのお楽しみだからと、僕はここで待っててほしいとお願いされたんだ。」


愛満が山背に話していると、台所から愛之助達の声と共に美味しそうな甘い匂いが漂ってきて



「そうそう、ソコでひっくり返すでござるよ。頑張れ、光貴!」


「……へ、へ、へっけ!」


「おっ!光貴、上手くひっくり返せたなぁ。焼き色も綺麗だぜぇ」


「本当、上手アルね。光貴が頑張ってるアルから、黛藍も光貴がちぎってくれたレタスや切ってくれたトマトを使ってサラダを飾り付けるアルよ!」


フライパンやお皿等が動くカチャカチャとした朝ご飯を作る音が聞こえてくる。

そんな話し声や朝ご飯を作る音を聞きながら、愛満は更に嬉しそうに笑みを浮かべ。


「ねっ。皆で頑張ってくれてるから、僕はここで待ってるんだ。」


「そうか、そうか。ならワシもここで愛満と一緒に待つことにするかのう」


山背は愛満の隣に座り。2人は静かに台所の音に耳をすませるのであった。



◇◇◇◇◇



「愛満、美味しいへけっか?」


「うん!とっても、とっても美味しいよ。フレンチトーストの焼き色も綺麗だし。カリふわでスゴく美味しい。」


「そ、そうへけっ。エヘ♪ヘヘへへへ~♪♪」


自身が作ったフレンチトーストを食べる愛満へと何度目かになるか解らない質問をして、光貴は照れくさそうに微笑む。

するとそんな光貴にフレンチトーストを食べている山背達も


「光貴、このフレンチトースト本当に旨いぞぅ~!こんな旨いフレンチトーストを作れる光貴は、フレンチトーストのプロじゃな。」


「本当に焼き色もバッチリで、美味しいでござるよ!」


「そうそう。この光貴が作ってくれた苺ミルクもスゴく旨いぜ!」


「それを言うなら、この光貴が下ごしらえしてくれたサラダも美味しいアルよ!」


『フレンチトースト』や、朝摘みした苺や牛乳、練乳をミキサーで混ぜ合わせて作った『苺ミルク』、レタスやトマト、茹で玉子など下ごしらえを頑張った『サラダ』等を頑張った光貴を口々に誉める。


そんな皆の声に光貴は更に照れくさそうに微笑み。愛満に抱き付きつくと、ポツリポツリ。


「愛満、いつも美味しいご飯やおやつ、僕の御世話をしてくれてありがとうへけっ。

あっ、愛之助や美樹、黛藍、山背もいつもありがとうへけっ。本当に感謝してるへけっよ。

それに、…皆が町に訪れる人やギルドで僕の家族を必至で探してくれてる事も本当に感謝してるへけっ。ありがとへけっ。

けど、あんまり無理しなくても大丈夫へけっよ。

………僕、知ってるへけっ。僕の種族が住む場所は、ここから何個も国を挟んだ遠くだって事も……。」


「……光貴…」


「光貴、知ってたござるか………」


「……光貴、お前………」


「光貴、心配しなくても大丈夫アルよ!きっと光貴の家族探しだしてあげるアルから。

それに黛藍のお父さん達にもお願いしてるアルから、心を強く持つアルよ!」


「そうじゃあ、光貴。落ち込むことは無いのじゃぞ!」


光貴の突然の話に、5人は何と声をかけたら良いか言葉がつまる。

すると愛満に抱き付いたまま。抱き付かれた愛満の服がじんわりと濡れるなか、光貴は何か吹っ切るように話を続け。


「だ、だけど、僕が少しでも寂しいと感じると愛満達がギュッと抱き締めてくれるから大丈夫へけっ!

だから今日は、母の日だけど第2の家族でもある愛満達に。特にいつも美味しい朝ご飯やおやつを作ってくれて、朝早くから夜遅くまで僕達のために働いてくれている愛満へと感謝の意味も込めて朝ご飯を作ったへけっ。

皆、たくさん作ったへけっから、お腹いっぱい食べてほしいへけっ!!」


話し。それからしばらくして落ち着いた6人は、瞳を赤くしながら残りの朝ご飯を仲良く食べ進めるのであった。



◇◇◇◇◇



こうして万次郎茶屋の母の日の1日は、今日もまた過ぎていく。





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