和菓子『雀どら』と、雀隠れと金鳥城
「師匠、美味しいでござる?」
「師匠、美味しい?」
「小次郎も美味しいへけっか?」
「おいしい?」
その日万次郎茶屋では、カラフルな色合いの苺柄が描かれた。お揃いの忍者服を着用した苺忍者隊の愛之助達が1人の老人と、その老人の横にチョコンと座る一匹の小鳥を囲み。
何やら2人の前に置かれた和菓子を2人が口にする姿を見詰め。
少々不安そうな表情を浮かべ。『美味しい?美味しかった?』と、しきりに話しかけていた。
そんな愛之助達の問い掛けに、口の周りに『雀どら』の生地を付けた。
小鳥改め。小次郎が少々………いや、かなり偉そうに上から目線と言いますか………お兄さんぶった様子で
「おう!しっとりモチモチでいて、やわモチ生地と言うか、甘さ控えめのつぶ餡と、小さな丸餅か?そんなのが生地の中に優しく包み込まれていて、最高に旨かったぜ!
…モグモグ…………モグモグ………うんうん!丁寧な仕事してるぜ!」
話して、お皿に残った『雀どら』を小さな嘴を豪快に開け。啄み始め。
「えぇ、愛之助君、タリサ君、光貴君、マヤラ君
君達が作ってくれた。この『雀どら』という和菓子。甘さもちょうど良く、本当に美味しかったですよ。
それにこの『雀どら』の見た目が、貴方達4人が教えてくれた通り。
小次郎が羽根を広げた姿にどことなく似ていて、始め珍しくも思いましたが、見ているうちに可愛らしくも感じられ。ついつい笑みが溢れてしまいますね。
愛之助君、タリサ君、光貴君、マヤラ君。こんなに美味しい和菓子『雀どら』を食べさせてくれて、本当にありがとうございます。」
元冒険者で、アサシンの大五郎が嬉しそうに笑みを浮かべ。
目尻のシワを深めながら、微笑ましそうに愛之助達の頭を撫で、感謝の言葉を述べる。
すると大五郎から優しく頭を撫でてもらい。
感謝の言葉を貰ったタリサ達は、照れくさそうに照れ笑いを浮かべ。お互いの顔をチラチラ見合わせながら、まだまだ幼いタリサ達等は、隠しきれない嬉しさを表すよう。その場で小さくピョンピョン跳び跳ねて
「本当!?ヤッター♪
あのね。今日、大五郎師匠が山背と将棋を指しに万次郎茶屋に遊びに来るって山背から聞いたからね。
愛満にも手伝ってもらって、この和菓子『雀どら』、皆で作ったんだ!」
「そうへけっ、そうへけっ!
それにへけっね。この『雀どら』って言う和菓子へけっ。
タリサ達と一緒に焼けてる方の面の皮にへけっね。つぶ餡と求肥を乗せてへけっ。半月状に包んであるへけっよ。
それに大五郎師匠がさっき言ったへけっけど、実はこの和菓子の『雀どら』はへけっね。
(コソコソ)本当は小次郎をモデルにした和菓子じゃなくてへけっね。
元々、雀と言う小さな鳥さんへけっか?
そんな愛満の故郷に居る雀さんが、羽根を広げた姿をモチーフにして作られた和菓子になるそうなんだへけっよ。
小次郎には秘密へけっよ。」
何やら自分がモチーフになった和菓子とすっかり勘違いしてしまっている小次郎に聞こえないようにと気遣い。
後半の話は、光貴が大五郎に耳打ちで打ち明け。
「マヤラもはんぶんにつちゅんだんだよ!」
「そうでござるね。それに拙者と一緒に洗い物までお手伝いしてくれたでござるもんね。
後、『雀どら』の皮を愛満と一緒に薄く丸く焼くさい、生地を焼いた時に出来る気泡が要の皮の為、キッチンペーパーで表面の生焼けの生地を取ったりしたでござるもんね。」
3人が『雀どら』を作る際、お手伝いした事を大五郎や小次郎に少々誇らしげな様子で照れ臭そうに話。
そんなタリサ達の話に、大五郎や小次郎達がチビッ子3人組の頑張りを誉めてくれる中。
気を良くしたタリサ達チビッ子3人組は、愛之助の手助けを受けながら、自分達自身も愛満から今朝教わり。知り得た和菓子『雀どら』の情報や『雀どら』に使われている新鮮玉子の事等を嬉しそうに話し始め。
「それにね、大五郎師匠。この『雀どら』の生地には、サナ兄ちゃん家の新鮮玉子をたっぷり使ってあるんだよ!
後、『雀どら』の中の餡子や求肥にしても愛満お手製の、僕大好きな『つぶ餡』を使用していてね。
求肥なんかは、今朝蒸し器で蒸した後、愛満が鍋で一生懸命練りまとめした求肥になるだ!
だから美味しいのは当たり前の事だし!美味しさ倍増なんだよ♪」
「しょうしょう!
よしみちゅのつくるあんこやわがちがおいちい~のは、あたりまえにゃのことにゃの♪」
「そうへけっよ!
それに『雀どら』の皮は、和菓子用語?技法だったへけっかなぁ?
確か『逆こね法』なる技法を使っているそうでへけっね。
一般的に生地を作る際、卵を先にほぐして砂糖を入れ。最後に粉を入れるそうなんだへけっよ。
けど、この『雀どら』の皮は水と粉を先に合わせてこねてへけっね。
粉の粘りを十分に出してこねる事で粘りが消え。さらっとした状態まで練り続け、コシを抜きへけっ。独特の表状を作っているそうなんだへけっよ。
まぁ、僕も良くは解らないへけっが、愛満曰く『逆こね法』により粉の粘り気を出す事で、モチモチした食感の皮に仕上がるそうなんへけっよ。
ねぇ、愛之助。そうだったへけっよね?」
「そうそう、そうでござるよ。
それに『逆こね法』を怠ると、生地を焼いた時に穴が大きくなってしまうのでござるよ。
後、『雀どら』の生地と先程から言っているでござるが、本当は『艶ぶ紗』と言う和菓子の生地を今回使用しておってでござるね。
別にちゃんとした『雀どら』用の生地が有るのかもしれないでござるが、急遽大五郎師匠や小次郎用への和菓子を作りたいと皆にお願いされた事から、愛満が実家で何度か作った事のある。
重曹等の膨張剤の作用によって表面に小穴ができ、蜂の巣のような見た目に焼き上がる『艶ぶ紗』の皮をアレンジして『雀どら』を作ったのでござるよ。」
と、何やら愛満の今朝の苦労が見え隠れする話が判明する中。愛之助は『艶ぶ紗』なる和菓子の説明をし始め。
「そもそも『艶ぶ紗』と言う和菓子はでござるね。
美しい若草色と表面の凸凹が特徴の焼き菓子になり。
生地を焼いた時に出来る気泡を利用していて、材料は『どら焼き』とあまり変わらないのでそうなのでござるが、先程光貴が説明してくれた通り。『逆こね法』により粉の粘り気を出したモチモチ食感の和菓子になるのでござるよ。」
愛之助達の『雀どら』の話に小次郎が大きく頷き。4人の頑張りプラス、心の中で愛満の頑張りを褒め称え。
「あっ、この辺りの『雀どら』の皮は拙者が焼いた皮でござるよ。
師匠も小次郎も是非、拙者が焼いた『雀どら』を食べてほしいでござるよ。」
愛之助が自身が焼いたと言う。少々歪な外皮を使用した『雀どら』を師匠の大五郎や小次郎へと照れ臭そうに笑いながら手渡し。
6人は楽しそうに和菓子『雀どら』を食べ進めていくのであった。
◇◇◇◇◇
と、愛之助達が師匠と慕う大五郎と小鳥の小次郎が何者かと説明すると
まず、人族になる『大五郎』は元冒険者のアサシンになり。
見た目は何処にでも居るような。人畜無害そうで、実に特徴が例えにくい。………………本当に何処にでも居そうな見た目の。
少々ヨボヨボした見た目のお爺ちゃん(お年寄り)になるのだが、動きも頭も現役バリバリの時と全く変わっておらず。
大五郎を昔から知る人達からは、相も変わらず頭のキレる凄いお人だなと言われ。
仕事を引退して暇になった時間を利用し。
苺忍者隊なる愛之助達へと、大切な苺を狙う不届き者を捕らえる時に活躍するであろう。
忍び足や、気配を消して隠れる技等を無料で教えてくれていて
実は愛之助達が大好きな苺を狙う。不届き者が度々実現していた事があり。
ある日を境に愛之助達の大切な大切な苺畑の食べ頃の苺だけをアレもコレもと啄む。
実にけしからん、不届き者の輩が現れるようになってしまい。
《※レム達用の八百屋に下ろす苺畑には、苺泥棒用の対策がバッチリして有り。
愛之助達用の苺畑には、苺忍者隊メンバーや苺忍者隊関係者なら誰でも採取出来るよう対策など特にしていなかった為》
愛之助達も鬼では無い為。
毎日端正込め。苺忍者隊の隊員達と世話をしている。可愛い苺を最後まで丸々一粒食べてくれるなら怒りも沸かない所。
その輩は、せっかく実った可愛い苺達を侮辱するかのごとく、アレもコレもと苺の実の美味しい所だけを食べていき。
その後には、無惨にも食い荒らされた苺の実があちらコチラに残っているだけで…………。
そんな事に苺忍者隊・隊長の愛之助始め。苺忍者隊の面々が、腸を煮えくり返りそうになる程の怒りが沸く中。
犯人を捕まえようにも愛之助達の気配や足音を敏感に察知してか、毎回一足違いに犯人に逃げられてしまい。
愛満に頼るのは最終手段だと心に決めていた愛之助達は、何度も何度も悔しい思いをしていたにであった。
すると、そんな苺忍者隊の様子を見聞きしていた山背が、将棋仲間の大五郎へと相談してくれ。
大五郎も山背から相談された苺忍者隊への指導を快く引き受けてくれ。
大五郎と苺忍者隊の付き合いは、そこから始まり。
愛之助達は尊敬の念を込め。大五郎の事を師匠と呼んでおり。
ちなみにその後、苺忍者隊の面々は大五郎の指導のもと苺泥棒なる犯人の小鳥をバッチリ、苺忍者隊の手で捕らえ。
その苺泥棒事、小鳥の小次郎は、魔獣ながらも知恵が有り。
苺泥棒のさいも苺畑近くの芽が伸びた。(日本の)雀の姿に良く似た小鳥の小次郎が隠れられる程度の草木に上手に隠れ。
小次郎いわく『忍法・小鳥隠れ』の術を使って逃げ回っていたと後に白状し。
口がかなり悪いものの。愛之助達とも普通に話す事等が出来。
愛之助達からの強い願いから、大五郎の元で教育的指導をビシバシ受けさせてもらえるよう頼み。
すっかり大五郎になついた小次郎は、今では大五郎の家に勝手に住み着き。大五郎と一緒に毎日楽しく暮らしていた。
◇◇◇◇◇
そうしてその後、『雀どら』を堪能した愛之助達が、何やら小次郎の為の部屋を手作りしたと話し始め。
せっかくだからと、今日プレゼントするねと話。
小次郎の部屋が置いて有るらしい。愛之助の自室へと4人が小走りで取りに行き。
「ゆっくり取りに行って大丈夫ですよ。こらこら、そんなに急いで走ったら転びますよ。気を付けて下さい。」
「おう!急いで走ってスッ転ぶなよ!気を付けろよ、チビ達!」
お前の方がチビだろうとツコまれやしない事を小次郎が口走りながら、大五郎と共に愛之助達を見送り。
愛之助達と入れ違いになるよう。立派で重ったそうな将棋道具一式を持った山背や、愛満が大五郎達の元へとやって来て
「大五郎さん、小次郎、お待たせしました。アレ?愛之助達、何処に行きました?」
先程まで話し声が聞こえていたはずの愛之助達の姿が見えない事に愛満が不思議そうに首をかしげ。大五郎達に声を掛ける。
「えぇ、ありがたい事に。何やら手作りした小次郎の部屋をプレゼントしてくれるらしく。皆で愛之助君の自室へと取りに行ってくれたんですよ。」
「そうそう、しかも走って行ってたぜ!」
小次郎が何気に愛之助達が走って行った事を愛満へとチクる中。
「えっ!そうなんですか、………な、何かすいません、慌ただしい子達で………ありゃ、それにお茶やお茶菓子も空っぽですね。
ちょっと待ってて下さい。今、お代わり持ってきますね。」
苦笑いを浮かべる愛満が愛之助達の振る舞いを謝りつつ。
大五郎や小次郎の前に置いてある湯呑みや菓子皿が空になっている事に目敏く気付いた愛満は、またまた苦笑いを浮かべながら、お代わりのお茶やお茶菓子を取りに行く。
一方、山背は将棋の準備をテキパキと始め。何やら不適にほふく笑むと
「フッフフフ~~~!大五郎、待たせたのじゃ!さぁ、約束の将棋を指すぞ!
しかしのう~大五郎や、今日のワシはいつもとひと味違うのじゃ!今日という今日こそは、絶対お主に負けんからのうー!」
最近、連敗続きの大五郎との将棋の結果を悔しがり。山背が大五郎へと吠え。
「何言ってんだよ、爺さん!お前いつもそう言って大五郎に負けてるじゃねぇかよ。
ハァ~~~、また今日も大五郎に負けた後の爺さんの『もう1回、もう1回』を聞くのかと思うと、……………ハァ~~~、俺、爺さんのガッツに脱帽すると共にタメ息が止まらないぜ。」
すかさず口の悪い小次郎が悪態をつくのであった。
そして小次郎がため息をついてしまう。山背と大五郎の2人が将棋を指していると、慌ただしい様子の愛之助達が2階から戻り。
テーブルの上に小次郎へのプレゼントを置き。矢継ぎ早に嬉しそうに話し始め。
「師匠も小次郎もお待たせでござるよ!
はい、コレが小次郎が前から欲しがっておった。小次郎専用の個室になる部屋になるでござるよ。
大五郎師匠の家は人サイズでござるから、小さな小次郎には広すぎて、たまに落ち着かないと言っていたでござろう。
ほらほら!小次郎、お主の部屋になるのだがら、良く見て見るでござるよ!
あっ、そうでござる!この出入り口でござるね。小次郎だけが出入り出来る大きさになるでござるよ。
更に出入り口でも、ちょっと小次郎が一休み出来るよう、三角形をした特殊な形の出入り口になるのでござるよ!」
愛之助達お手製の小次郎専用の個室になる。部屋と言う名の城を小次郎に見せながら、愛之助が少々興奮した様子で説明を続け。
「ヘェ~~~♪良いじゃあねぇか!
それに山背の城に何処と無く似た。俺の部屋になる、この部屋の姿て言うか、形て言うか、全て気に入ったぜ!
…………アレ?けどよう、何かこの城の形や見た目、前に見た事有るような、無いような…………………まぁいいか!
………おっ!うんうん、細かな部分まで良く行き届いてるじゃあねぇか!」
小次郎が満足げな様子で、自身の部屋になる城の外壁をウロチョロと歩き、見て回っていると
突然!小次郎の部屋事、城の屋根を愛之助がガッシと掴み。
小次郎が『何するんだ』と瞳を見開き。驚きと共に小刻みにプルプルと震え。両手(両羽)を頬に当て、恐怖に怯え、愛之助の言動を無言で見詰める中。
愛之助は笑顔を浮かべたまま。小次郎の城の屋根を…………取り除き。
「オゥ~~~~~~~~~ノォ~~~~~~~~~~~~!!!」
頬に当て両手(両羽)を震わせながら、小次郎が驚きや恐怖が混じった。心からの叫び声を上げ。
そんな小次郎の心の叫び声が茶屋内に響き渡る中。
「ほらほら、小次郎!そんな気絶したフリ等せず、良く見るでござるよ!
この小次郎の部屋の元はでござるね。
前に小次郎が『お城図鑑』を見て、気に入ったと話していた。別名『鳥城や金鳥城』と呼ばれる『岡山城』のフィギュアを拙者が見事探し出し。
それを基にいろいろカスタマイズしたり、強化しまくった部屋になるでござるよ。
特に1番のオススメが、この掃除がしやすいように部屋の屋根が取り外し出来るようにした所や
3層6階の城の床をぶち抜き、広々した畳張りの部屋に改造してあげたでござるよ。」
愛之助は、小次郎の心の叫び声など全く聞こえていないかのよう。
……………恐ろしいかな、真っ白に燃え尽きた様子の小次郎を片手に乗せ?掴み?。城内の内部を小次郎へと見せつつ。
白目を向いた小次郎へと城内の説明をし続け。
小次郎が燃え尽きてる事など知らないタリサ達も愛之助に続き。自身が手作りした小次郎へのプレゼントを嬉し恥ずかしそうに取り出し。
「僕とマヤラはね、小次郎の為に雀柄の和布を使ってね。
小次郎サイズの布団一式や来客用の座布団セットを愛満に手伝ってもらいながら一生懸命作ったんだ!
あっ、それからこっちは愛満からの小次郎サイズの桐タンスとちゃぶ台、1人掛け用のソファーだって。
ソファーはビーズクッションをリメイクして作ってあるから、きっと座り心地バッチリだと思うよ♪」
「マヤラもね、わたつめおてつだいしちゃんだよ!」
「僕はへけっね!最近僕がハマってるフェルトを使って、プスプス刺してへけっね。
小次郎と同じサイズのフェルト人形の雀を作ってあげたへけっよ!
ほらへけっ!これなら夜一人で眠っていても寂しくないへけっし、怖くないへけっよ♪」
小次郎の部屋の中にプレゼントの品々を次々に置いていき。
何やらタリサやマヤラ、光貴達からの優しい声やプレゼントの品々に意識を取り戻した小次郎が感動や嬉しさから、先程とは全く違う意味でプルプル震え始め。
「おぉーーーー!何だこの、俺好みの渋くてカッコ良い部屋はよ!スゲじゃねぇか!
ウォ~~~~~~♪マジ、感動で泣きそうだぜ!」
小鳥の小次郎に膝が有るかは解らないが、まさに膝から崩れ落ち。男泣きしてタリサ達に慰められ。
同じ城持ちになる山背が、小次郎の城をしげしげと観察し。
何やら興味深げに頷き。愛之助の近くにソソッと近付いてくると
「愛之助、あの城は良い城じゃのう~♪
しかし何故、城の出入り口が三角の形をしておるのじゃ?
小次郎の為とは言え、丸や四角じゃ駄目じゃったのかのう?」
小次郎が出入りする事になる。城の出入り口の形が三角な事を不思議そうに質問すると
「あぁ、それはでござるね、山背。
拙者も、いつぞかに愛満から聞いた話でござるが、昔の愛満や美樹の故郷の家では、瓦葺きの家が多く。
軒先の瓦の下に三角の隙間が有ったそうでござるよ。
するとそこに小次郎に良く似た雀と言う鳥が飛んで来て、今頃の3月の時期になると番で巣を作っておったそうでござるよ。
それで、その三角の隙間の出入り口の事を、人々は『雀口』という名をつけ、呼んでいたそうなのでござる。
で、小次郎の部屋をカスタマイズしているさい、三角の『雀口』の事を拙者が思い出し。
どうせなら『雀口』にかこつけ。雀に良く似た小次郎の部屋の出入り口を三角の形にしたのでござるよ!」
何やらイタズラが成功したかのごとく。愛之助はニヤニヤと笑みを浮かべ。
山背へと小次郎の部屋の出入り口が三角な訳をコソコソと内緒話で教えて上げ。
「………しかしでござるね。今では『雀口』を塞いでしまう事も多く。瓦葺きの家自体も減ってきてしまったでござるから、年々雀の数も減ってきていると愛満が教えてくれたでござるよ。」
先程までのニヤケた様子が嘘のよう。今度は何処かションボリとした様子で、寂しそうに『雀口』の現状を伝える愛之助なのであった。
「………そうなのか………それは何やら生き物達が暮らしにくい、世知辛い時代になっておるのう…………。」
◇◇◇◇◇
そうしてその後、皆の分のお茶やお茶菓子のお代わりを持った愛満が茶屋内へ戻り。
愛之助達が手作りしたプレゼントの数々を微笑ましそうに見つめながら、万次郎茶屋の1日は和気あいあいとした雰囲気のなか過ぎていく。
《和菓子『雀どら』と雀隠れと金鳥城、の登場人物》
・大五郎=見た目ヨボヨボのお爺ちゃん、元冒険者のアサシン
年を重ねながらも頭も体も現役キレキレの凄いお人
山背の将棋仲間、苺忍者隊の師範(師匠)
・小次郎=元フリーの小鳥の魔獣、口は悪いが知恵は有る
日本で良く見かける雀にとても似ていて、少々あざとい
とある事件の後、大五郎になつき、大五郎宅へと勝手に住み着く
・山背=将棋仲間の大五郎へと最近負け越している
・愛之助=今回少々エキセントリックな一面を見せる
・タリサ、マヤラ、光貴=癒しのチビッ子3人組
・愛満=今回も安定の働き者




