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フィッシュバーガーと春分の日と太陽への感謝



「ふぁ~~!」


「ふぁーー!」


「ふぁ~~なのじゃ。」


愛之助のアクビに釣られて愛満や山背が大きなアクビをしているなか。

その日 太陽もまだ昇っていないような薄暗い朝早い時間から、何やら屋根や扉、窓が付いた荷馬車と合体した三輪自転車をこぐ愛満達の姿はあった。


「眠いでござるね、愛満、山背。」


「本当だね。」


「本当なのじゃ。」


「それにしても光貴もタリサもマヤラも良く寝ているでござるよ。太陽が昇る頃には起きられたら良いでござるが……。」


「本当だね。起こすのが忍びないほど良く寝てる。」


後ろを振り向き、荷馬車内に持ち込んだ、寒さ対策バッチリの炬燵やモコモコの毛布、クッションに包まれたタリサ達3人の寝顔を微笑ましそうに見つめる。

すると最近手に入れた黒い革に黄金の刺繍糸で唐草柄の模様が施された革ジャンをカッコ良く着こなす山背が、必死に山背用の三輪車サイズの車輪を回しながら愛満達に話しかけ。


「……ハッ、ハッ、……愛満、この道をまっすぐ行けば、東から昇る太陽が拝めるのじゃな!」


三輪自転車をこぐ足を止めていた愛満と愛之助に謝られるのであった。



◇◇◇◇◇



愛満達がこんな朝早い時間から何をしているかと言うと

とある地方の周辺で『春分の日』や『秋分の日』前後に行われている、ある風習の1つで、太陽の進行を追って歩き。


まだ暗いうちにお弁当を持って家を出、東に歩いて太陽を迎え、午後には西へ向かって歩いて沈む太陽を見送り。

東から西へと天空を移行する太陽に1日お供して、その労をねぎらう。素朴な太陽への感謝が感じられる行事を真似して行っているのだ。


しかし、ここは日本と違う異世界。愛満の周りは不思議な(チート)で安全とは言え。街の近くには少なからず、日本で言う所の鹿や猪に似た少々性格が獰猛な魔獣が生息しているのは事実になり。


まだまだ幼いマヤラやタリサ、光貴の事を心配した心配症の愛満や愛之助達が三輪自転車と荷馬車を合体させた乗り物に乗り、太陽をお迎えする行事を行っているのだ。



◇◇◇◇◇



そして無事、タリサ達3人も起きて太陽をお出迎えしてお供しているなか、愛之助達のお腹を空いたとの催促の音が勢い良くなり。愛満達は持参したお弁当を食べる事にする。


「ほら山背、ちゃんとおしぼりで手を拭かねばお弁当食べれないでござるよ………ココここ!」


「こうかのう?」


「うん!綺麗になったでござるよ。」


愛之助の厳しいおしぼり吹きチェックがあるなか、愛満がテキパキとお昼ご飯で愛之助達からリクエストされた『フィッシュバーガー』や『オレンジカルピス』を配り始め。


「はい、お昼ご飯の『フィッシュバーガー』と『オレンジカルピス』だよ。

他にも『フライドポテト』や『チキンナゲット』、『春キャベツのシーザーサラダ』、『コンポタージュ』もあるから、ちゃんと噛んで食べるんだよ。」


話し、他の食べ物達を取りやすいようにテーブルの上に並べる。


「「は~~~い!」」


「はいでござるよ!」


「はいへけっ!」


「うむなのじゃ!」


最近ハマりのフィッシュバーガーや大好きなカルピスを手渡され。嬉しそうに笑っている愛之助達は、元気良く返事をして『フィッシュバーガー』を食べ始める。


「う~~~ん♪美味しい!

パンの香ばしい匂いと共にホロホロした魚のフライやタルタルソースの美味しさが口一杯に広がるね!」


「おいちい~♪フィチュバーガーちゅごくおいちいね。」


「ほんのり酸味のあるタルタルソースやタルタルソースの中の玉葱も食感を楽しめて美味しいでござる♪

それにこのバンズ全体にトッピングされた白ゴマも良い味だしておって、拙者大好きでござるよ!」


「……モグモグ………モグモグ…………うんうん!いつ食べてもフィッシュバーガーは旨いのう~♪

マヨネーズとみじん切り玉葱のシンプルなフィッシュバーガーも旨いのじゃが、このプチ豪華版のタルタルソースのフィッシュバーガーも旨いのじゃ!

それにこの優しい口当たりの四角い形の白身フライがきつね色に揚げられたいて、見た目からして食欲がそそられるのじゃ!」


「本当にフィッシュバーガー美味しいへけっね!

それにオレンジカルピスも100%オレンジジュースとカルピスジュースを混ぜ合わせてあるへけっから、オレンジジュースの酸味で、いつものカルピスよりサッパリしていて美味しいへけっ!」


みんな『美味しい、美味しい』と話し、お昼ご飯の時間を楽しむ。

すると何やら思いついた様子のタリサが、口一杯に詰め込んだ『フィッシュバーガー』を『オレンジカルピス』で流し込み。


「…んぐ……ねぇ愛満、そもそもどうして今日はお日様のお供をするの?僕もマヤラ達もみんなピックニックみたいで楽しいから良いけど♪」


愛満へと質問する。

そんなタリサの問いにフライドポテトを食べている手を止めた愛満は、『春分の日』や今日行っている『太陽のお供』の訳を話し始める。


「それはね、今日が『春分の日』になるからなんだよ。

僕が住んでた故郷では『春分の日』は『自然をたたえ生物をいつくしむ日』だと決められてるんだ。

だから光と熱エネルギーをもたらし、あらゆる生物を成長させてくれる太陽の恩恵を感謝して、とある地方の周辺では太陽のお供をして労をねぎらうん地域があるんだ。

だから僕達も、こちらの世界のお日様も僕の故郷のお日様と良く似た働きをしているから、そんなお日様の労をねぎらって1日一緒にお散歩をしょうと思ってね。こうして散歩しているんだよ。」


「お日様と一緒にお散歩?」


「そうだよ。皆でお散歩すると楽しいでしょう?」


「うん!皆でお散歩すると楽しいもんね♪」


「まぁ、散歩と言っても今日は三輪自転車こいでるからサイクリングになるのかなぁ?」


愛満とタリサが楽しそうに話していると話を聞いていた愛之助達も話しに加わってきて


「拙者も皆で散歩すると楽しいでござるよ♪」


「マヤラもきょうたのちい!」


「僕も楽しいへけっ!」


「ワシも楽しいのじゃ♪」


6人は楽しげに話をするのであった。



◇◇◇◇◇



そうしてその後、家族で朝倉町に住み、街近くの山々で魔獣狩りをしていた。狩り帰りの冒険者の赳深(たけみ)兄妹達にもフィッシュバーガーなどを振る舞ったりして、お日様のお見送りを終えた愛満達は万次郎茶屋へと帰るのであった。




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