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『和ッフル』と、苺忍者隊本拠地と『はりぐるみ』



「よっと!………どうだ!」


「わぁーー、タリサすごいへけっ!

タリサのベーゴマが、どんどん敵のベーゴマを弾き落とすへけっよ!」


「あっ、タリサちくしょう!よくも俺のベーゴマ落としてくれたなー!この~~~リベンジだ!」


「いいよ!何度やっても負けないんだから!」


興奮気味の光貴が、目の前で対戦されているベーゴマ対決を観戦する中。

何やら得意気な笑みを浮かべたタリサが、タリサ達の友達になる。

右理(ゆうり)家長男(四つ子)、魔族の東風(とうふう)と2人。とある小屋の、白色の板張りの一角で楽しそうにベーゴマ対決をしていた。



◇◇◇



そうしてそんな小屋の中の別の一角では、板張りの上にパステルピンクの畳が敷かれ。

モフモフとした肌触りの良いマイ○ロちゃんと苺柄が描かれたカーペットと共に、苺やマイ○ロちゃんの可愛らしい形をしたクッション、座布団等が置かれ。

ぬくぬく(あった)かでいて、寒さ対策バッチリの。何やらメルヘンチックな空間が出来上がっており。


そんなメルヘンチックな可愛らしい空間では、何やら愛之助達が形切られたフェルトやウール、針金、綿等を使い。

チマチマ、チマチマと、小さなぬいぐるみのような物を工作ボンドで張り付けたりしながら、せっせと製作していた。



「ふぅ~、これで10体目完成~!

はぁ~~~、ちょっと疲れちゃった。少し休憩しょっかなぁ!

よし、休憩休憩♪

愛之助や遥南(はるか)達も休憩しょうよ。」


何やら10体目になるらしい。モサモサとしたフリンジの(たてがみ)や、少しすっとぼけて見える表情。

(かし)げた首か愛嬌たっぷりの、キーホルダーやブローチサイズの小さな『ぬいぐるみ』を作っていた(張り付けていた)らしい北瀬(きたせ)が、『めいぐるみ』ならぬ。『はりぐるみ』を作っている愛之助達へと、少し休憩しょうと声をかける。


「やったー!賛成賛成~!」


「僕も賛成!何か甘いもの食べようよ。

ずっと作業してたから、ちょっと小腹空いちゃった!」


「そうでござるね。ちょっと疲れたでござるから、ここで一旦(いったん)、お茶休憩でもしょうでござるか?

あっ、それで悪いのでござるが北瀬。あっちでベーゴマで遊んでいるタリサ達にも、お茶休憩だと声を掛けて来てくれないでござるか?」


『はりぐるみ』作り作業をサボり。ベーゴマで遊んでいるタリサ達にもお茶休憩をと声をかけてあげるように北瀬(きたせ)に頼んだやさしい愛之助は、愛満が持たせてくれたお茶やお茶菓子の準備をし始めるのであった。



◇◇◇◇◇



「お待たせしたでござる。愛満お手製『苺茶』と、お茶菓子の『和ッフル』でござるよ。

この『()ッフル』はでござるね。餅粉を使ったワッフル生地に、愛満お手製の粒あんを混ぜ混んだ生クリーム

それから皆が大好きな苺をホワイトチョコでコーティングして、丸々1個一緒に挟んだ。拙者オススメの1品になるでござるよ。

さぁさぁ、みんな遠慮せずに食べるでござるよ♪」


愛之助が三段お重にぎっしりと詰め込まれた『和ッフル』なる、薄力粉の変わりに餅粉を使用した。

和風番の『ワッフル』ならぬ『()ッフル』なる茶菓子を皆の前に差し出し。

苺忍者隊本拠地備え付けの、苺忍者隊・隊員一人一人の名前入り湯飲みへと、愛満と一緒に製作した(作った)

自身(愛之助)が育てた苺をドライ苺にして、お茶の葉などと合わせて作る。

ドライ苺と茶葉を使用した。スッキリした喉ごしと共に、フルーティーな香り等が楽しめる『苺茶』を水筒から注ぎ入れ。

それぞれの前に湯呑みや取り皿を配ってあげると、嬉しそうに『和ッフル』を見ていた北瀬(きたせ)遥南(はるか)達の可愛い物好きのおしゃまな女の子2人が


「えっ~~~♪苺が入っての!それは嬉しい~♪

私達にとって、苺は正義だもん!

それにこの『和ッフル』見た目も可愛くて、本当に美味しそうだねぇ♪

ねぇねぇ北瀬(きたせ)北瀬(きたせ)もそう思わない?」


「本当本当!それに遥南(はるか)が言うように、この『和ッフル』の見た目がねぇ。

白い和ッフル生地の中に、つぶ餡が混ぜ混まれた生クリームでしょう。

そこにホワイトチョコレートに包まれていながらも存在感を示す。丸々とした大きな苺が見え隠れしていて、これから食べるのが楽しみな見た目をしているし。

更に更に!何と言っても苺の形に焼かれた和ッフルの生地が可愛い物好きの女心をくすぐるのよねぇ~♪

うんうん、さすが愛満!女心を解ってる~♪」


「本当だよねぇ~♪

普通ならさぁ、何も考えなくて、ただワッフル型で和ッフルの生地を焼き上げる所。

やっぱり目配り気配りが出来る愛満だから、そこは食べる人の事を考えて、見た目も可愛らしく、手間隙かけて作ってくれる所が良いのよねぇ~♪」


「そうそう!本当にあの愛満の目配り気配りは、女の私達でも見習いたい所だよねぇ!」


幼いながらも、そこは女。

まずは『和ッフル』の見た目などを目敏(めざと)く観察して2人で嬉しそうに話。


「あっ、愛之助。ねぇねぇ、もうこの『和ッフル』食べても良い?」


最後には、愛之助へとお重の中の『和ッフル』をもう食べて言いかと聞き。


「うん、良いでござるよ!

それに愛満が拙者達の為、沢山の『和ッフル』を作ってくれたでござるから、お代わりも沢山有るでござるし。

皆、遠慮せずにどんどん食べるると良いでござるよ。」


「ヤッタ~♪

ではでは、まずはこの『和ッフル』を作ってくれた愛満と共に、『和ッフル』を持って来てくれた愛之助に感謝しつつ。いただきま~す。

……モグモグ……モグモグ………う~ん、美味し~~~い♪

何これ美味し~い!この和ッフルの皮がね、すんごいモチモチしてて、モチモチがスゴいの!」


「本当だ!何これ!スゴい美味しい~♪

それにね、北瀬(きたせ)の言うとおり和ッフルの皮がモチモチしてる所もモチモチ好きの女子には良いし。

つぶ餡が入ってるクリームの中には、つぶ餡と共に小さく砕かれたドライ苺も混ぜ込まれていてね。

そんなドライ苺入りの生クリームと言うか、和ッフルを一口食べると口の中でほのかな苺の良い香りがして、本当に美味しいんだよねぇ~♪」


「うんうん!それにさぁ、遥南(はるか)

このモチモチ食感の生地の、何とも言えない和ッフル生地と共に香り豊かなつぶ餡とドライ苺の生クリームでしょう。

そこにホワイトチョコに包まれた(コーティングされた)。果汁溢れる苺のパリパリジューシーな食感が口の中で一度に楽しめて、本当苺好きの私達には堪らないお茶菓子になるよねぇ。」


北瀬(きたせ)遥南(はるか)の2人が器用に3個目の『和ッフル』を(しょく)しつつ。饒舌に『和ッフル』の感想を話す中。


そんな二人の兄妹になる負けず嫌いボーイの東風(とうふう)などは、両手に『和ッフル』を持ち。モグモ……?……いや、ガツガツと豪快に食べ進めながら


「うめぇ~!」


と、実にシンプルに『和ッフル』の感想を話すだけで…………………

まぁ、東風(とうふう)以外の西鶴(さいかく)や幼い弟・左和(さわ)の2人は、嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべ。味わうようにゆっくりと『和ッフル』を一つ手に取り、食べ進めていて


そんな北瀬(きたせ)達の話を聞きつつ。先程から何やらニヤニヤと笑みを浮かべていたタリサが突然立ち上がり、話し始め。


「そうでしょう、そうでしょう!この『和ッフル』美味しいでしょう!

この『和ッフル』ね。僕達がまた食べたいって昨日愛満にお願いして、わざわざ今日のために作ってもらったお茶菓子になるんだ!

それにさぁ、この中に入ってる苺もね!

僕達が苺が大好きだからって、わざわざ苺の水分でクリームや生地がベチャベチャにならないようにって愛満が考えてくれて

更には、苺の瑞々(みずみず)しさが失われないようにって、ホワイトチョコで苺を薄ーくコーティングして『和ッフル』の中に入れてくれたんだ。

ねぇ、マヤラ、光貴。そうだよねぇ!」


あい(うん)ちょう(そう)なんじゃよ♪

にいたん(兄ちゃん)がねぇ、よしみちゅ(愛満)おにぇがい(お願い)ちてくれたの!」


「そうへけっ、そうへけっ!

この『和ッフル』はへけっね。この前おやつで愛満が作ってくれて食べてへけっ。

すごく美味しかったへけっから、タリサが東風達に食べさせてあげたいって言ってへけっね。

今日のために昨日、愛満にお願いしたへけっよ。」


「ちょ、ちょっとタリサに光貴!それは言わない約束だったでしょう!

ち、違う違うよ!ただ愛満が作ってくれて『和ッフル』が美味しかったから、また食べたいと思って!

ただ昨日、今日のお茶菓子を『和ッフル』にしてとお願いしただけなんだから!

別に東風(とうふう)西鶴(さいかく)北瀬(きたせ)遥西(はるか)左和(さわ)達の為じゃないんだからね!」


大慌ての様子のタリサが、何やら照れくささを隠すように『違う違う』と話し。

そんなタリサの様子をニヤニヤ笑みを浮かべ見つめる東風(とうふう)を始め。

西鶴(さいかく)北瀬(きたせ)遥南(はるか)左和(さわ)達からのお礼の言葉を受けたりしつつ。


その後、タリサ達は幸せそうに笑みを浮かべ。次々とお重の中の『和ッフル』を食べ進めていく。



一方、喉が弱い花夜の為。可愛らしいマイ○ロちゃんカップに豆乳クリーム(豆乳の生クリーム)や、一口サイズの小振りに作られた苺味のマカロン

果汁溢れる瑞々(みずみず)しい苺が盛り付けられた『苺のムース』を食べている花夜(かよ)の補助をしている愛之助が


花夜(かよ)、どうでござるか?美味しいでござるか?」


人肌に冷まされた『苺茶』入りの、取っ手が付いたプラスチック製のカップを手渡しながら花夜(かよ)へと話し掛ける。


「……ぅ、うん。……だい…す、きな…い…ちご、が…たく…さ、ん…は…いっ、て…て、ぉ、おい…し、い…よ。」


「そうでござるか、それは良かったでござるよ。

まだまだ『苺ムース』沢山残っているでござるから、ゆっくり食べようでござるね。

あっ!それとも花夜(かよ)も少し『和ッフル』食べてみるでござるか?

愛満がねでござるね。この前、花夜(かよ)が愛満の施す治療を日頃頑張っているでござるから、最近かなり喉の調子が良くなっていると誉めていたでござるし。

『和ッフル』を作っていたさいも、少しぐらいなら固形の物を食べても大丈夫だとも言っていたでござるから、拙者と半分個して『和ッフル』少し食べてみようではござらんか?」


「…ほ、ん…と…に?」


「うん!本当でござるよ。

その証拠にでござるね。最近花夜、前よりお喋りが沢山出来ているでござるし!

それに今年に入ってから少しづつでござるが、確実に良くなっている花夜の喉が成長出来るようにと愛満が右理さんと相談してでござるね。

今までの柔らかいペースト状の食べ物から、固形物の固さを感じられるような料理へと少しづつ変えていっているみたいでござるし。

ねぇ、花夜。愛満が作っている花夜用の朝昼晩のご飯、最近少しづつ食感等が変わってきているでござらんか?どうでござる?」


確実に花夜(かよ)の生まれつきの持病が治ってきている事を伝え。

子沢山でいて、男で一人で子育てや家の家事、仕事、花夜のリハビリのお手伝いにと忙しい右理の為。

少しでも助けになればと、喉が弱い花夜の為。朝昼晩3食のご飯作りをかってでている愛満お手製の花夜のご飯が、少しづつ変化してきている事を花夜に聞き。


そんな愛之助の質問に驚いた様子の花夜が嬉しそうに微笑みを浮かべ。何やら思い出した様子で


「……!!!、ぅ、うん!そ、そ、う、か…も!

ぉ、お、しょ、う、が…つ、に…ね。た、た、べた…、よ、し…み、つ、が…つ、くっ、て…く、れ…た、だ…て、ま…きを、ちょ…ちょっ、と…だ、け…た……べら、れ…た、ん……だ。

す、す…ご、く…お、い…し、かっ、た…よ!」


嬉しそうにお正月に愛満お手製の『伊達巻き』を(固形で)少しだけ食べれた事を話し。


「おっ!伊達巻き食べれたでござるか!それは良かったでござるねぇ♪

スゴいスゴい!少しづつでござるが、花夜が頑張り、良くなってきている証拠でござるよ!」


愛之助と花夜の2人が楽しそうにお喋りしていると、2人の近くで『和ッフル』をモリモリと食べていた光貴やタリサ達が話に加わってきて


「えっ!花夜もあの『伊達巻き』食べたへけっか?それは良かったへけっね!

へけっへけっ!あの愛満お手製の『伊達巻き』は、本当に美味しかったへけっから花夜も食べれてラッキーだったへけっよ♪」


「えっ!花夜も愛満が作った『伊達巻き』食べたの!

エヘヘヘ~~♪僕もマヤラも『伊達巻き』食べたんだよ。だからね、僕達と同じ『伊達巻き』を食べた花夜は、僕達とお揃いだね♪

う~~~ん♪それにしても、本当に愛満が作ってくれた『伊達巻き』は美味しかったなぁ~♪」


「マヤラもちゃべた(食べた)んじゃよ♪

よしみちゅ(愛満)じゃてまき(伊達巻き)、おいちかっちゃよにぇ~~♪」


愛満お手製の『伊達巻き』の話に盛り上がり。

更には、口いっぱいに『和ッフル』を詰め込んだ東風(とうふう)


「そぅ…(モゴモゴ)なんだぜ!(モゴモゴ)花夜、スゴいだぜ!(モゴモゴ)俺達と一緒に(モゴモゴ)伊達巻き食べれたんだもんな!」


口をモゴモゴさせて、誇らしげに花夜が『伊達巻き』を食べれた事を話。


そんな東風(とうふう)の姿に、東風の隣に座っていた西鶴(さいかく)が己の頭や顔に飛んできた。

東風の口から飛び出した『和ッフル』の食べかすを迷惑そうな表情を浮かべ。顔を洗うため。何やら少々ぎこちない歩きで、黙って洗面所へと移動して行き。


「ちょっと、東風!!お口に食べ物が入ってる時は、お喋りしちゃいけないんだよ!お父さんが言ってたでしょう!」


「そうよそうよ!口の中の食べ物が周りに飛び散ったら汚いし、周りの皆の迷惑かかるでしょう!」


女の子組の北瀬(きたせ)遥南(はるか)の2人に東風が注意される中。


かなり賑やかにでいて、ここだけの話。在庫がまた沢山貯まってしまった。苺忍者隊が生産する『苺』を消費する為。

苺を盛り沢山に使用した『和ッフル』や『苺茶』、『苺ムース』等を食べたり、飲んだりしたりしながら、楽しいお茶休憩の時間は過ぎていく。



◇◇◇◇◇



「それにしても愛之助。この苺忍者隊の本拠地、本当に良いわねぇ!

初めはトイレ、小さな水場と、この広い板張りの部屋の一室しかないのが、ちょっとアレだと思ってたんだけど。

今では大鵬(たいほう)先生の道場に似た造りの外壁も気に入ったし。

逆に一部屋だけのこじんまりとした造りが何だか落ち着くわ。

ねぇ、遥南(はるか)。遥南達もそう思うでしょう?」


あの後、お茶休憩を終え。ベーゴマ遊びをしていたタリサ達も大人しく『はりぐるみ』作りへと加わり。

皆で『はりぐるみ』作り作業を再開していた所。

突然、北瀬(きたせ)が愛之助へと苺忍者隊本拠地になる建物の事を話題に話しかけてくる。


「そうね、北瀬(きたせ)。私もそう思うわ。

しかも私達、苺忍者隊の隊員だけしか使えない本拠地て言うのが、またポイントなのよね♪

だからか、愛之助からこの苺忍者隊の為の本拠地の話を聞いた時、私とってもワクワクしちゃったもの!

西鶴(さいかく)東風(とうふう)花夜(かよ)左和(さわ)達もワクワクして眠れないって言ってたもんね。」


「おう!俺、あん時は魂が震えるくらい興奮したぜ!

だって本拠地て事はよぉ。男の憧れの秘密基地と同じ事だろう!

それに他の奴等から邪魔されない秘密基地が持てるなんて、本当幸運な事だし!まじラッキーだぜ!」


北瀬の問いに、何やら最近喋り方がかなり変わった様子の東風が答えると

そんな東風の話を聞いていた西鶴が、可笑(おか)しそうにクスクスと笑いそうになるのを堪えながら


「も、もう東風(同調するように)

いくらタイタンおじさんに憧れたからといって、喋り方までタイタンおじさんの真似をしなくても良いんだよ。

それに今年に入ってから急にそんな喋り方にし始めるから、僕毎回東風が話す出すたびに驚いちゃうやら可笑しいやらで、笑いが止まらなくなって、お腹が痛くて大変だよ!

だから今日だって、昨日笑いすぎてお腹が筋肉痛みたいに痛いから、あまり動けないし。皆ともお喋り楽しめないんだから!」


今年になって東風が、憧れるタイタンの真似をして喋り始めた話し方を止めるように言い。

今日一番の長さのお喋りで、痛くなった筋肉痛の自身のお腹を撫でつつ話すと


「えっ~~~、だってよ!

俺もタイタンおじさんみたいに1日も早く、でっーかくて、立派で、懐の深いカッコいい男になりたいんだよ!

そしたら何があっても、父ちゃんや朝霞(あさか)姉ちゃん、花夜や西鶴達、家族みんーなを守ってやれるだろう!」


少し不貞腐(ふてくさ)れた様子の東風が話すと、おかっぱ髪のおませな北瀬が


「東風、そんなに急いで大人にならなくてもいいんだよ。

それにね。家族ていうものは、誰か一人の頑張りだけで成り立つものでもないんだし。皆で力を合わせて一つの家族になっていくものなんだから

あと私、見た目か弱い女の子だけど、守られるだけの何も出来ないお姫様にはなりたくないの!」


途中、西鶴や東風が『うん?』と首を傾げる『見た目か弱い女の子』と言うフレーズ(言葉)が飛び出す中。

北瀬の話に同調するように遥南も


「私も!東風の気持ちは本当に嬉しいんだけどね。

最近、トヨ先生の図書館で借りて読んだ。王子様が助けに来てくれるまで自分では何もせずに待ってるだけのお姫様にはなりたくないの。

だって今の時代、女性もアクティブにいかなくちゃ、待ってるだけじゃ誰も助けてくれないもの!

それにそもそも私、悲劇のヒロインぶる女が大嫌いだし!

悲劇のヒロインぶる暇があるなら、自分でピンチを切り抜ける力をつけろよとも思うわけ。

あんた一人を助け出すために何人の人が苦しみ。悲しい思いをしたと思ってるのよとも、声を大にして言ってやりたいしね!

それにね………私。もう絶対、あの時みたいに何も出来ずに後悔したくないから………………。

誰かの足手まといにもなりたくないし、誰かの重荷にもなりたくない!

だから、……だからこの街でいろいろ学ばさせてもらって強くなるって決めたし!

将来私も東風達と一緒にお父さんや朝霞姉ちゃん、花夜達を助けられるような。

安心して生活させてあげられる、強い女性になると決めてるの!」


北瀬と遥南の自称か弱い乙女達が、自身の考えを熱く語り。


そんな2人の圧に少々圧倒された様子の東風が、いまいち2人の話した内容の意味を良く解っていないながらも、ぎこちない笑みを浮かべ。

助けを求めるように周りを見渡すのだが、突然の北瀬達の話に驚き。まだまだ幼いチビッ子組達は、ポカンと口を開けて北瀬達を見ているだけで………………。

逆に愛之助などは、北瀬達の考えに感動した様子で『スゴい、スゴい』と拍手を贈っていて助けにならず。

何とかその場を切り抜けようと考えた東風は、場の空気を変えようと


「おっ、おう。そ、そうか、解ったぜ。

…………えっと、何の話だっけ。あっ!苺忍者隊の本拠地の話だったな。

さ、西鶴(さいかく)。西鶴は、苺忍者隊の本拠地の事どう思ったんだ?」


「えっ、僕?僕なの!

え、えっと、……そうだね。僕も遥南達と一緒に、この苺忍者隊専用の本拠地の話を聞いた時、何だか秘密基地みたいに聞こえて、ワクワク興奮して、なかなか寝つけなかったかなぁ。

あっ!それからなんと言っても、花夜が使いやすいバリアフリーだっけ?

それに本拠地全体がなっているから、ここ最近家でしか遊べなかった花夜(かよ)や、幼い左和(さわ)達の気分転換にもなるし。本当に良い本拠地だとも思ったかなぁ。

ねぇ、花夜、左和。最近なかなか家以外で遊べなかったから、お出掛けも出来て、気分転換にもなって嬉しいよね。」


「……ぅ、うん。…おで…か…け…た、のし…い、よ!」


「ちゃわもちゅきー!」


苺忍者隊本拠地の感想を各々が教えてくれ。

右理家兄妹絶賛の感想を聞かせてもらい。何やら瞳を潤ませた愛之助が肩の荷が下りたようにホッとした様子で


「本当でござるか!?……………あ~~~ぁ、良かったでござるよ!

実はずっと花夜やタリサ達、苺忍者隊の皆が使いやすいかどうか心配してたでござるし。

前々から皆で(くつろ)げる苺忍者隊の本拠地が欲しかったでござるのだが、拙者がなかなか候補地を決定出来ず。

隊員の皆には迷惑をかけていたでござるから、少し(本当はかなり)不安だったでござるよ。」


「えっ!そうだったの?そんな事心配しなくても良かったのに」


「そうよ。いくら愛之助が苺忍者の隊長だからといって、何もかも一人で背負い(しょい)こんで解決しなくて良いのよ。」


「そうだぜ、愛之助!俺達同じ苺好きの苺忍者隊の仲間だろう!

遠慮せずにガンガン頼れよ!」


「そうだよ、愛之助。みずくさいんだから!

困った事や大変な事は、皆で力を合わせて解決したら良いんだよ。」


「そうへけっ!それに愛之助が毎日、街中にある苺畑の管理のお手伝いして事も僕知ってるへけっよ。

それにそんな忙しい中。わざわざ時間をさいて僕達の為に、こんな立派な苺忍者隊専用の本拠地を考えてくれへけっ。

逆に僕達の方が愛之助にお礼を言うのが筋へけっ!

愛之助、こんな立派な苺忍者隊の本拠地を建ててくれ、本当にありがとうへけっ!」


「本当だよ。愛之助、いつもありがとうね。」


「「「「「愛之助!ありがとうー!」」」」」


「「あいのちゅけ、あいがとう。」」


「…あ、あい、の…すけ、…あ、り…が、とう。」


「み、みんなー!!拙者の方こそ、いつもありがとうでござるよ!

今回、愛満の力を借りでござるね。こんな立派な本拠地も持てる事になり。

皆からも、こんな心がこもったお礼の言葉を貰い。拙者………拙者は……本当に感無量で胸が熱くなるでござるよ!

あ、ありがとうでござるよ~~~!!!」


和装店を営む右理家兄妹7人やタリサ、マヤラ、光貴達の苺忍者隊の隊員達から、口々に感謝の言葉をかけてもらい。

念願の苺忍者隊の本拠地を持てた事も(あい)まって、愛之助がポロポロと男泣きする中。

そんな愛之助の姿にタリサや光貴、東風、西鶴達の男子達ももらい泣きし始め。


そんな感動的な場面なのだが、最近ますます口が達者になってきた。クールな自称乙女の遥南(はるか)北瀬(きたせ)の2人が突然。場の空気を読まずに


「ところで愛之助、今作ってる『はりぐるみ』だっけ?これ本当に売れるの?ライオンや兎、猿に亀だっけ?

そりゃあ、今まで見た事ない愛嬌のある表情の可愛い作りだけどねぇ~………。」


「そうよね。私もそれが心配なのよ。

自分達の手で1日も早く。この苺忍者隊・本拠地の手付かずの板の間をもっと過ごしやすくしたいのはヤマヤマなんだけど…………。お金かかるでしょう?本当に大丈夫なの?」


まだまだガラーンとした殺風景な本拠地内を整えるための苺忍者隊の資金集めの1つ。

『はりぐるみ』なる物を作っていて、不思議に思っていた事を今だ男泣きしている愛之助へと質問する。


「…ぐっすん………し、心配しなくても大丈夫でござるよ。

建物だけは愛満にお願いして建ててもらったでござるが、甘えすぎるのも悪いと思ったござるから、室内の物は自分達の手で集めたり、手作りしていきたいでござるし。

この縫わずにできる『はりぐるみ』にしても、愛嬌のあるブサかわの表情が、若い女性や老若男女を選ばず。ハートをギュむっと掴むでござるし。

他にも、今タリサが作ってくれているでござるね。

普段使いできるようにフェルトをランダムにグルグル巻き上げ、顔や嘴、足を着けた。

ぽてっとお腹の『ぐるぐる鳥』なんかは、この後キーホルダーに加工する予定でござるし。

同じランダムに巻き上げた色とりどりのフェルトに千鳥格子柄の『つむつむカタツムリ』や『ライオン』なんかはブローチにして販売する予定でござるよ。」


今だ涙声でスンスン言いながら、自身の計画を北瀬(きたせ)達に説明し。


「へぇー、それなら売れるかもね!

だって私、このケットシーをモデルにしたブサ可愛だっけ?このブローチ欲しいもの。」


「あっ、なら私も!このアルパカだっけ?このモフモフしたブローチが欲しいなぁ~♪」


「おっ!北瀬達がそう言うなら、俺はこのライオンのが欲しいぜ!」


「えっ~、なら自分は、そのキーホルダーになる予定の『ぐるぐる鳥』が欲しいですかねぇ。」


各自お気に入りの『はりぐるみ』を言いつつ。ワイワイガヤガヤとしながら、念願の本拠地を手にいれた苺忍者隊達の騒がしい1日が過ぎていくのであった。




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