卵かけご飯と大寒と寒仕込み
「そうそう、樽の中に味噌玉を空気が入らないように投げ入れて、空気を抜くんだよ。」
「こう?」
「うん、そうそう。それでバッチリだよ。」
その日 愛満達の姿は、味噌汁大好きがこうじて、味噌作りまで手をのばしたコプリ族のソメト達とあった。
「そう、投げ入れ終わって上まで詰めたら、表面を平らにならし。カビ防止のための塩を表面にふって………」
「愛満、塩はこんなふうコプか?」
「そうそう、まんべんなくね。」
「解ったコプ。しかし不思議コプね。大豆と塩と米麹で、あんなに美味しい味噌が出来るコプもんね。」
「本当だよね。しかも味噌は醤油なんかの他の調味料と違って、言い方は悪いけど、仕込んでしまえば勝手に熟成してくれる手間があんまりかからない、ありがたい調味料なんだよね。」
愛満指導のもと、茶屋の休みを利用して味噌作りをしている。
「けど愛満、どうして今日 味噌作りすると決めたコプか?前々から味噌作りを習いたかった僕達には、ありがたい申し出だったコプが……。」
「あぁ、それはね。今日が大寒の日をかねてるからなんだ。
1年で最も寒い時期に汲まれた水が「寒の水」と言われてね。寒の水は雑菌が少ないことで知られ、1年で一番質が良く、保存に適しているといわれてるんだ。
また柔らかな味わいから、この時期に仕込まれるお酒などを「寒仕込み」と呼ばれ。希少価値があるといわれているんだよ。
それをこの前、マリアさんが茶屋にお茶しに来てくれた時にポロッと話したら、すごい興味津々で聞いてくれてね。
だぶんシャルさん達の酒蔵では、今日は朝早くから酒を仕込んでるはずだよ。
他にも醤油や凍り豆腐、寒天などもこの時期の寒さを利用して仕込むと味が良くなるといわれてるから
僕達も便乗して、味噌を漬けるのもどうかなと思って計画してみたんだ。ヘヘヘッ。」
「へぇ~、そうだったコプか!今日は、寒いだけかと思ったコプが、そんな意味もあるコプね♪」
愛満やソメト達は仲良く話ながら、漬け込んだ味噌樽を皆で味噌蔵へと移動させるのであった。
◇◇◇◇◇
「ふぅ~♪終わったでござる、終わったでござる。
しかし味噌作りとは、結構体力使って疲れるのでござるね。」
「ちゅかれちゃね。けじょ、みそじゃねバーンとちゅるのおもちりかちゃ♪」
「本当へけっ。けど楽しかったへけっ。ねぇ、ソメト。」
「そうコプね。何日ヶ前の米麹を作るために蒸した米と麹菌を刷り込む作業も面白かったコプし。
今日の湯がいた大豆を潰す作業も大豆と米麹で味噌玉を作るのも面白かったコプ。
けど一番楽しかった作業は、マヤラのいうとおり。味噌玉を樽に投げ入れところが面白かったコプ♪」
「そうだよね。僕も樽に味噌玉投げ入れ時、なんかスカッとして、スゴく楽しかったもん♪」
味噌作りに参加していた愛之助達が楽しそうに話しているとお玉を片手に持った割烹着姿の山背がやって来て
「みんな待たせしたのう~。
味噌作りを頑張ったご褒美のお昼ご飯が完成したのじゃ。みんな食堂に移動するのじゃ♪」
と声をかけ。愛満が味噌作りをしたいとのソメトの願いから建ててくれた味噌作りの作業場や味噌蔵
この先ソメト達が手作りした味噌を販売する事になる店舗、ソメト達の住居部分などの広々した日本建築の食堂室へと皆を連れて行く。
「みんな味噌作りお疲れさま。今日のお昼ご飯はね。ソメト達が大好きな白菜や鶏団子入りの味噌汁と大寒の日に産み落とされた卵を使った『卵かけご飯』だよ。
大寒の日に産み落とされた卵は『寒たまご』と呼ばれていて、風水的には金運をアップする効果があるといわれてるんだ。
だから大寒の日に卵を食べるのは金運アップに繋がると言われ、これから『味噌屋』を始めるソメト達の金運や商売繁盛を願って、卵かけご飯を食べようね。」
炊きたて熱々の白ご飯や卵かけご飯専用の醤油、木グズ入りの籠に優しく丁寧にこんもり盛られた生卵、お漬け物の盛り合わせが準備されたテーブルで、みんなで仲良く。
来年完成する事になる、先ほど漬け込んだお手製味噌を楽しみに卵かけご飯をモリモリ食べ。おかわりして、一仕事終えた後のご飯を楽しむのであった。




