スペアリブの炊き込みカレーと素泊まり宿と飯盒メシ
「ふぅ~ぇ、あちぃー!何なんだよ、この暑さ!毎日毎日暑くて嫌になるぜ!
ジュイイエ、そんな暑苦しそうなローブ着てるけど暑くねぇのかよ?見てるこっちが暑苦しいぜ。
おっ!そういやシチリ達も今日は全然汗かいてないよなぁ。何でだ?」
「えっ!言ってなかったっけ。この前ピルクのお店で首から下げれて、スイッチ押すだけで冷たい冷風がでる小型冷風機を買ったから今ローブの中スゴく涼しいんだ。ねぇ、シチリ。」
「うん。ジュイイエ達と一緒買ったんだ。スゴい涼しいんだよ。」
「そうそう。この小型冷風機、僕達みたいな貧乏冒険者にも手が出せる。お財布に優しいお手頃価格だし。
小さいだけじゃなく、軽くて音もしないから本当に買って良かったよね。」
「……コレ……涼しい……買って……良かった…………。」
ルッリオ以外のチームメンバー4人のジュイイエ、シチリ、フリオ、ユーリ達が紐が色違いの小型冷風機をルッリオに見せながら教えてあげる。
するとそんな4人の話に、小型冷風機の事を知らなかったルッリオが暑さもあいまってイライラした様子で怒り出し。
「はぁ!何自分達だけ涼しい思いしてんだよ!俺の分は!!」
「ハァー、そう言うと思ったよ。馬鹿ルッリオ。
あんたねぇ~!コレ皆で買いに行くって言った時、フリオ達がわざわざ誘ってあげたのに1人眠いから家で寝てるって言って駄々こねて、そんなのいらねぇよ!って馬鹿にしたの覚えてる!」
ルッリオの傍若無人ぶりの怒鳴り声にキレたジュイイエが、ルッリオ以上の声音で怒鳴り返す。
そんなジュイイエの怒鳴り声に、怒鳴り返された瞬間イラッとした様子のルッリオであったが、何やら思い出した様子で少ししおらしくなり。
「ち、ちくしょう!何いちゃ………………あっ!あん時か………ちぇっ、俺が悪かったよ。
あん時 前日の依頼でスゴく疲れてて、眠くてイライラしてた事もあり。ついつい文句いっちまちゃたんだよ。………悪かったよ、ゴメンな。………だから俺にもソレくれよ。」
ふてくされた様子ではあるが、ルッリオがメンバーのジュイイエ達に小声で謝り。自分にも小型冷風機をくれとお願いする。
そんなしおらしい態度のルッリオの姿に、ほだされた心優しき(チョロすぎる)シチリとユーリ、フリオの3人は
「もちろんだよ。ルッリオの分も買ってあるんだよ。ねぇ、ジュイイエ。ルッリオの分の小型冷風機を出してあげて。」
「…ルッリオ…大丈夫……皆で…お金出しあって……ルッリオの分……買って…ある…。」
「そうだよ。ジュイイエもあんなに怒鳴っているけど、ジュイイエが提案して皆でお金を出しあってね。
ルッリオの分の小型冷風機をちゃんと買ってあるんだから安心しな。ほら、ジュイイエ優しいんだよ!」
ルッリオに声をかけ。ジュイイエにルッリオの分の小型冷風機を渡してあげてとお願いし。ジュイイエが大きなため息をつき。
「ハァ~~~!3人とも甘いんだから、もうちょっとルッリオに厳しくしなきゃ。いつまでたっても付け上がってワガママなガキんちょのままなんだよ。本当にもう~!ルッリオ解ってる!
…………………まったく、はい。これが小型冷風機ね。
この紐を首に下げて、このスイッチ押したら冷風が出るよ。止める時は、またスイッチを押したら止まるよ。
この心優しきジュイイエ様がパッパラパで、おつむが少し足らない脳筋馬鹿のルッリオの為に、わざわざ自分達の身銭をきって買ってあげたんだからね!
これから1週間。毎日1回は僕達に感謝の言葉をのべて心から感謝してね、解った!」
ジュイイエが自分のバックから新品の小型冷風機を取り出しながら、少しルッリオに見せびらかすよう。バックから取り出した小型冷風機を手に持ち。
少々ルッリオを諭すように話していると、暑さでイライラした様子のルッリオが
「解った!解った!
心の底から感謝してもしきれません。ジュイイエ様、どうかこの哀れでパッパラパなルッリオめに、その小型冷風機を恵んで下さいませ。(棒読み)
ほら、これでいいだろ。感謝の言葉を言ったんだから、その冷風機早くくれよ!クソアチいんだよ!」
「はぁ!あんた何なのその態度。ぶん殴るよ!
ほんと脳筋馬鹿のくせに、いっつも態度がデカくて頭にくるんだから!あーぁ、本当にムカッく!」
「うっせなぁー。毎回毎回同じ事言わなくても解ってるよ!」
「ちょっとアンタねぇ~!マジぶん殴るからねぇ!」
「ち、ちょっとルッリオもジュイイエも喧嘩は止めようよ。周りの皆の迷惑になるよ。ねぇ、ねぇたら!」
「本当だよ。ルッリオも暑くてイライラするのは解るけど、ジュイイエにあたらないでよ。ジュイイエも落ち着いて、ねぇ。」
いつものように突然始まった口喧嘩に、基本争い事が嫌いなシチリとユーリが目にうっすらと涙を浮かべ。半泣きになりながらルッリオとジュイイエの2人を落ち着かせようと頑張り。
そんなシチリとユーリを援護するように。愛満達への手土産の丸々して大きな西瓜を持った口下手なフリオも尻尾を元気なくしおらせ。
「……喧嘩……駄目……シチリとユーリ……困ってる。………それに…お土産の…西瓜……早く…持って……行かなきゃ……悪くなる………。」
ポツリポツリではあるが、強い意思を持って話し。涙目のシチリとユーリの頭を慰めるようにひと撫でする。
「ありがとう、フリオ。
ねぇ、フリオもこう言ってる事だし。ルッリオもジュイイエもその辺で喧嘩止めようよ、ねぇ。
…………あっ!そうだ。喧嘩なんかしてる暇ないよ。早く愛満達の所に行かなきゃ。せっかく買って来たお土産の西瓜も悪くなるし。ジュライも待っているよ。」
「そうだよそうだよ。
だからルッリオもジュイイエも落ち着いてよ。ほら、こういう時は深呼吸だよ、深呼吸。2人とも落ち着いて深呼吸して!」
何とか説得し。深呼吸して怒りを静めた様子のジュイイエが
「そうだったね。こんな脳筋馬鹿の相手してる場合じゃなかったんだ。ついつい脳筋につられてカッとなっちゃたよ。
シチリにユーリ、フリオも迷惑かけてゴメンね。
シチリ達の言う通り、早く愛満達の所に行かなきゃね。お土産も悪くなちゃうし。ジュライが待ってるもんね。
ほら、脳筋馬鹿!早くジュライと愛満達のいる万次郎茶屋へ行くよ!」
愛満達へのお土産採りの帰り道。派手な口喧嘩を勃発させていたルッリオとジュイイエの2人は、シチリ達3人の頑張りで、いつもより早く喧嘩を止め。
ジュライや愛満達が待つ。5人が村で生活している建物を目指し足を進めるのであった。
◇◇◇◇◇
先ほどまで派手な口喧嘩をしていたルッリオとジュイイエの2人に加え。必死に2人の喧嘩を止めようと頑張っていたシチリ、ユーリ、フリオの3人。
今は怪我の為、この場に居ないのだが普段はあと1人加わる。彼ら6人が誰なのかと言うと。
普段は6人組みの『バタナ』と言う名のパーティーを組み。冒険業を生業にしながら稼いでいる冒険者達になり。
チームメンバーの1人ジュイイエから脳筋馬鹿と言われるだけあるルッリオは、チーム内1の問題児にして一番年下の末っ子になり。
年が若く血が騒ぐのか、よく後先考えずに自身の正義感だけで1人つぱしり。
良く言えば行動派。悪く言えば脳ミソまで筋肉なのかよとジュイイエから注意(馬鹿に)される単細胞のお馬鹿ちゃんになるのだが、まだまだ成長期の小柄な体格に幼さが残るヤンチャそうな顔立ち、傍若無人の態度や乱暴な口調が合わさり。
腹が立つ事は多々あるのだが、何故か憎めず。心のそこから嫌いにもなれない。
只今、絶賛反抗期真っ只中の少々手間隙かかる、困ったちゃんのそんな奴になる。
そして、そんな脳筋馬鹿のルッリオと激しい口喧嘩を繰り広げていたジュイイエは、エルフ族の父親と人間の母親を両親にもつハーフエルフになり。
何処と無くエルフ族特有の優雅な風貌を持ち合わせていながら、少々ドSの逆鱗が見栄隠れする。
治療魔法も使えるのだが、矢に自身の魔法をまとわせ弓で敵を全滅させたりと、攻撃魔法を最も得意とする。敵に回すと恐ろしい戦える魔法師になる。
次に毎回ルッリオとジュイイエの喧嘩に巻き込まれ。泣く泣く仲裁役をしなければならない。
なんだかんだと貧乏クジを引かされているかたちのシチリは、ホビット族の父親と妖精族の母親を両親にもち。
両親の種族の特有を色濃く引き継ぎ。小柄な体格、幼い顔立ちの人物で、戦いごとは不得意なのだが、得意の記憶力を使って地理や魔獣、採集するクエスト品等の特徴、特性等を多岐にわたり記憶。
場面場面で的確なアドバイスを仲間にしては、チーム内の縁の下の仕事を一手に引き受ける。チームには欠かせない一員になり。
シチリと同じ毎回仲裁役になるユーリは、人間の父親とドワーフ族の母親を両親にもち。
母親がドワーフの為。髭が無いものの小柄な身長に筋肉質の体格の武器の手入れなどを得意とする温厚な性格の人物になり。
母親の形見の斧を振り回して敵を倒す。お酒大好きの大酒飲みになる。
次に喜怒哀楽がなかなか表情に出ず表すのも苦手で口下手のフリオは、鬼族の父親と犬族の母親が両親なり。
鬼族の父親譲りの大柄な体格に犬族の母親から引き継いだ犬耳と尻尾が特長で
今の見た目からはなかなか結びつかないのだが、昔は体が弱かった為。同じ孤児グループにいたジュライやジュイイエ達の妹達と一緒に縫い物等をしたりして日々の金銭を稼いでいた為。刺繍や小物作りが趣味になり。
旅の途中で端切れ等を使ってはポプリ等を詰め込んだりした。ぬいぐるみやキルト等を手作りし。立ち寄った村の子供達や孤児院へとプレゼントしたり、寄付したりする心優しき人柄になる。
次に怪我の為この場に居ないジュライは、さる高貴な生まれの父親と半神族の母親を両親にもち。
竹を割ったようなサッパリした男気溢れる人柄に、スラム出身ながらしっかりとした金銭感覚をもち。
チーム内の金銭勘定を一手に引き受けるほどの頭脳派で、怪我にしても依頼中に1人つぱしったルッリオを庇う為に怪我をおったほどの頼れるリーダーになり。
いつもメンバーの事を第一に考え。みんなより一歩、二歩先を予想し、チームみんなを守ってくれる心強い存在になる。
そしてこの『バタナ』の6人。ルッリオ以外は長引いた先の戦争で親を無くした孤児になり。
王都のスラム街で育った同じ孤児グループの仲間になるのだが、異種族の両親を親にもつため。その見た目等から差別され、王都の孤児院にいれてもらえず。
行き場を無くした幼い5人とその兄妹は、自然とスラム街に集まり出来た孤児グループになり。それ以来みんなで力を合わせ、たくましく育ったのだ。
しかし成長するにつれ職業を選ぶにしても、色濃く差別が残った王都では、真っ当な仕事やジュライ達にキチンとした金銭をくれる職場はなかなか無く。
スラム出身だと馬鹿にされず。またそこまで酷い差別を受けず。手っ取り早く日々の金銭を稼ぐためには、危険を伴うが冒険者業が一番手っ取り早く。
その為ジュライ達は、自分達孤児グループでチームを組むと同じスラム出身の先輩冒険者達から剣や魔法、文字を習ったりとコツコツと頑張っていったのだ。
ちなみにジュライやジュイイエの妹達も初めは一緒にチームを組んでいたのだが、3年前に相継ぎ良縁に恵まれ。
今では小さな田舎町で、それぞれ子供が2人から3人いる幸せな家庭を築いている。
そしてルッリオとの出会いはと言うと
基本、各地を旅しながら冒険業で食べていたジュライ達なのだが、ある日旅の途中に魔獣に襲われた瀕死の女性を発見し。
ジュイイエを中心に治療魔法や高価なポーションを使い。必死に治療したのだが傷が深すぎて助からず。
女性の最後のたっての頼みにと女性の隣で泣き続ける幼いルッリオを託される。
最初は危険を伴う冒険者業をしながら幼い子供を育てるのは厳しいと考え。何処か近くの町の孤児院等に預けるつもりだったのだが、移動途中に幼いルッリオになつかれ。
更に旅の途中。ルッリオの背中に蝙蝠の用な真っ黒の小さな羽が生えてる事や魔族の血を引く者だと解り。
魔族への差別も根強くある事から下手に孤児院にも入れられず。
しだいに情や弟みたいに思えてきたチームの面々は、皆で話し合いをした結果。満場一致で自分達のチームへと仲間として加える事を決めたのであった。
◇◇◇
そして只今、とある依頼の途中怪我をしたジュライの傷を癒す為。怪我に良く効く温泉があると噂に聞き。
朝倉村へとやって来たジュライ達は、その日たまたま風呂屋・松乃に風呂に入りに来ていた友人の山背と再会し。
久しぶりの再会に喜び話し込んでるうちにジュライの怪我の事をついポロリと話してしまい。
心配した山背の口利きで、愛満が村の一角に建ててくれた部屋数多い宿風の建物にジュライ達が使用した部屋だけを掃除してくれたら良いからと言われ。
愛満の好意で無料で泊まらさせてもらっていて。
更には山背からのプレゼントで、風呂屋・松乃の年間パスを貰ったジュライ達は、毎日風呂屋通いをしながらジュライに怪我を癒してもらいつつ。残りの5人は村近くでギルド仕事をしつつ。
豪華ではないものの。毎日充実した生活をおくり。
ジュライの怪我も今ではすっかりくなり。
ジュライの怪我が治った今、愛満の提案で住まわせてもらっている宿風の建物を使用して。
何やらある事を始める説明と共に、ジュライの快気祝いを兼ねたお祝いをするとのお知らせが昨日の夜に山背から有り。
ジュイイエ達は、そのお祝いにと朝倉村に来てからジュライがすっかりハマって好物になった西瓜等を買い出しに行っていたのだ。
◇◇◇◇◇
「あっ!ルッリオにジュイイエ兄ちゃん達だ!おかえり~!」
「ほんとじゃ!おかえりなしゃ!」
「帰って来たでござるね。お帰りでござるよ。」
「おかえりへけっ。ねぇねぇ、シチリ。この建物面白いへけっね。いろんなお花や葉っぱ、木をモチーフにした部屋が沢山有るへけっよ!」
「本当本当!ちょっとずつデザインが違う部屋が沢山あってね。僕達全部の部屋を探検してたんだ!」
「ちょうちょう!このちゃてものおもちろいにぇ!」
ジュイイエ達が村で生活している宿風の建物内を探検していたタリサ、マヤラ、光貴、愛之助達4人は、ジュイイエ達が帰って来た事に気付き。
建物内の探検を止め。ジュイイエ達の元へとわらわら寄って来て5人を出迎える。
「おぅ!タリサ達じゃん!ただいま。
よしよし!4人とも俺への出迎えご苦労であった。」
「タリサ達もそう思う。僕も愛満から初めてこの建物に案内してもらった時、僕達が普段利用してる宿と造りは似てるもののレベルが違い過ぎるし。
内装も素朴な見た目ながら良く良く見ると高級感があって美しく。なのについつい長居したくなるようなホッとする雰囲気に包まれた素晴らしい建物なんだよ。
あっ!そうだった。タリサ、マヤラ、光貴、愛之助。4人とも出迎えありがとね。ただいま。」
「ただいま。愛之助、悪いんだけどジュライと愛満達はどこにいるのか知ってる?」
「…タリサ…マヤラ……光貴……愛之助…………ただいま…………。お土産に……西瓜……買って……来たよ。………井戸で……冷やして………後で……皆で…………食べようね……………。」
「4人ともただいま。フゥ~~!やっぱりこの建物内は涼しいね。この涼しさを味わったらもうココ以外じゃ生活できないよ!」
5人それぞれ違う反応をしながらタリサ達の出迎えに答え。
「フゥ~~~!ルッリオはいつ会っても俺様だね。
まぁ、しょうがない。今は誰しも通る反抗期真っ只中って愛満やジュライが言ってたし。ココは大人なタリサさんが多目に見てあげなくちゃいけないんだっけ。」
ルッリオの俺様の口調にタリサがボソッと呟いたり。
「本当に涼しいへけっよね。僕もこの村に住んでから愛満お手製の冷風機の虜になったへけっよ!
だから今では冷風機が無い生活なんて考えられないへけっ!」
「ちゅいか?フリオ、ちゅいかかちぇきてくれたの?あいがと!あとじぇ、みんなじぇちゃべようね。たのちみじゃにぇ~♪」
それぞれが思い思いに会話するなか。ジュイイエの質問に愛之助が
「愛満とジュライは庭の外調理場にいるでござるよ!
あっ!それにでござるね。先程愛満が、もう少しで飯盒が炊き上がると言っていたでござるから、ジュイイエ達も帰って来た事だし。山背も居る庭に移動しょうでござるよ。」
先程、愛之助達が建物を探検中に愛満から声をかけられた事を思い出した愛之助は、ジュイイエ達にその事を伝え。
9人は愛満やジュライ達が居る建物奥の庭へと移動する。
◇◇◇◇◇
「フォ、フォフォ♪う~~~~ん、良い匂いなのじゃ~!
愛満、まだ食べられんのかのう。ワシはお腹空いたのじゃ~。」
「ちょっと待ってね、山背。今炊き上がったから後はひっくり返して10分程度蒸らしたら食べられるよ。」
外のバーベキュー台のような焼き場でジュライと2人汗水流しながらキャンプ場で良く目にする飯盒を使い。
『スペアリブの炊き込みカレー』を炊き上げていた愛満達の回りをお腹を空かせてウロチョロする小さな陸亀のおいちゃん。山背へと教えてあげる。
「後10分も待つのかのう~~~。ひ、ひもじいのじゃ………。」
「こらこら山背。美味しい物を食べる為には、時には我慢も必要だよ。
そうだ、愛満。こっちのソーセージの炊き込みカレーも炊き上がったよ。飯盒ひっくり返しておくね。」
少々気哀愁漂う、気心知れた友人の山背を慰めながらテキパキと炊き上がった飯盒をひっくり返すジュライが愛満に話しかける。
「あっ、そっちも炊き上がったの。ありがとう。」
「いいえいいえ。こっちこそ、こんなに良い宿に無料で泊まらせてもらって助かったよ。
それに快気祝いだと言って『飯盒メシ』なる料理も教えてもらったし。これからの冒険業などで役立ちそうだよ。こっちこそありがとう。」
「えっ!どうしたの改まって、それにお礼を言われるほどの事じゃないよ。
僕の育った所では『困った時は、お互い様』て言葉があるんだよ。それに山背の友達なら僕の友達でもあるんだし。気にしないでよ!
この飯盒メシにしても、病み上がりのジュライをこの暑い天候の中、熱い焼き場で手伝わせるぐらいのヒドイ奴なんだから!」
「いやいや、そんなことないよ。
それにさぁ、この飯盒メシだけど。俺達冒険業してる者には夜営する時に食える新しいメシのレシピが増えて、逆に助かったぐらいだよ。
ココだけの話。冒険業は体が主体だから旨いものを食えるか食えないかだけで、その後のテンションがまったく違うんだ。
それに飯盒に入れた研いだ米の上にみじん切りしたニンニク、生姜、大ざっぱに切った人参や玉葱、さつま芋等の野菜類、食べやすい大きさに切った肉
そこに塩コショウとカレーパウダー、醤油を加えて火にかけ炊くだけで完成するんだから、時間に余裕がある夜営の時なんかにアイツらに作ってやったら、めちゃくちゃ喜ぶと思うんだ。
だからさぁ、愛満。今日は本当にありがとう。」
何やら他のメンバー達の顔を思い浮かべた様子のジュライは、嬉しそうに微笑むと愛満が教えてくれた飯盒メシへのお礼の言葉を伝える。
そんなジュライの言葉に病み上がりのジュライを飯盒メシ作りに手伝わさせていた事に心苦しかった愛満は、何やらホッとした様子で
「いやいや!僕の方こそありがとうだよ。それにこの飯盒メシ、皆に気に入ってもらえるなら教えた僕としても嬉しいし。
皆の力になれると思うと誇らしいよ。」
ジュライと愛満の2人が和やか雰囲気のなか話していると、愛之助やジュイイエ達が戻って来る。
「ただいまー!ジュイイエ達が帰って来たから連れて来たよ。それにしても良い匂いだね!もう食べれる?」
「本当に良い匂いへけっ!あ~ぁ、お腹空いたへけっ。」
「おにゃかちゅいた~♪」
「ジュライただいま。調子はどう?大丈夫?無理してない?
まだまだ病み上がりなんだからハリキリ過ぎて無理しないでよ。
…………しかしタリサ達の言うように本当にお腹を刺激する良い匂いだね。」
「…………クンクン、クンクン……………本当に…………良い匂い…………」
辺り一面に漂う。お腹をくすぐる良い匂いに庭に戻って来た者達が次々反応し。
そんなタリサ達の言葉に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた愛満やジュライは、額から流れる汗をタオルで拭いながら
「あっ!お帰り。みんなグットタイミングで帰って来たね。蒸らし時間もバッチリだから、今から炊き込みカレー食べれるよ。」
「本当だな。ナイスタイミングだぜ。
ほらほら!今から俺と愛満お手製の飯盒メシ食えるんだから、皆手洗って食べる準備手伝えよ。」
飯盒メシが食べ時だと伝えると、タリサ達は愛満達の言葉に跳び跳ねんばかりに喜び。手洗い、食事の準備を手伝い。皆で飯盒メシなる物を食べ始めるのであった。
◇◇◇◇◇
「フー!フー!……ハフハフ……お、美味しい~♪
なにこれ!スパイシーな香りに野菜やお肉の旨味もご飯に染み込んでてね!食べごたえもあって美味しいの!」
初めて食べる熱々の飯盒メシを一口食べたタリサが興奮した様子で話し。
タリサの隣で同じくハフハフいいながら熱さに耐えて食べている光貴達も
「この飯盒メシ、前に食べた炊き込みご飯みたいで美味しいへけっね!僕、お米好きだから大好きへけっ♪」
「……ハフハフ……ハフハフ………ほんちょうにおいちね!」
「うんうん!一見カレーピラフのような感じかと思ったでござるが、具材も食べごたえある大きさで、飯盒で炊いているからか具材の旨味やスパイスの風味がお米、具材全体に染み渡り。お米もふっくらモチモチした食感で、実に美味しいござるよ。
それに一番は、拙者はこの底にできたおこげが好きでござる♪」
いつものように口々に始めて食べる飯盒メシの感想を愛満に教えてくれていると。
美味しそうな匂いの中。おあずけをくらっていた腹ペコの山背や、初めて食べる飯盒メシに興味津々のジュライやジュイイエ達『バタナ』達面々は黙々と無言で、熱々のはずの飯盒メシをスゴい早さで食べ進めていて
「本当にうめえなぁ!少しピリ辛の味付けも良いし、ゴロゴロ入ってた大きめな肉も肉汁溢れる旨さで最高だぜ!」
「本当に美味しいねぇ。このスペアリブってお肉からスゴく良い味がでてるよ。」
「そうそう。それにこの少しピリ辛でスパイシーな香りが食欲をそそるね。それに米の一粒一粒に味が染み込んでるのが、また良い!」
「シチリ達の言う通り、この味付けが良いですね。
私はウィンナーを使った炊き込みカレーを食べていますが、ウィンナー独特の風味や肉汁がご飯に染み込んでいて美味しいです。」
「最高ー!この炊き込みカレー、ビールに絶対合うよ!確かキンキンに冷えたビールがあったはず!取ってこよ~!」
「…モグモグ……美味しい……モグモグ………最高……モグモグ………止まらない……。」
「うんうん!本当に旨いな!これはある意味ビックリだぜ!
それになによりレシピも簡単だったし。スペアリブの他にも牛肉や鶏肉、ハムなんかの肉類なら何でもいいと愛満から聞いた事だし。皆がこんなに喜でんくれる事なら、また作ってやるか!」
大変気に入ってくれた様子で、飯盒メシの熱さなんか何のその。冒険者特有の早食いの癖が出てしまい。次々にスペアリブを使用した炊き込みカレーやウィンナーバージョン、鶏肉バージョンの炊き込みカレーを食べ進め。
途中冷たく冷えたレモン水で喉を潤し。箸休めの漬物を食べたりと心行くまでお代わりを繰り返すのであった。
◇◇◇◇◇
そうしてその後、お腹いっぱいになったジュライ達との話し合いで、今泊まってる建物で長期客相手の宿泊宿をやらないかと愛満が持ちかけ。
ジュライ達にやってもらいたい宿は、基本素泊まりで各部屋に風呂・トイレ・キッチンが付いており。
食事等は、客自身が持ち込んだ食材や料理を自分の部屋で好きに食べてもらい。
洗濯なども宿1階にある乾燥まで出来るコインランドリーで客自身にしてもらう事が決まっており。
この宿一番の目玉は、他人の干渉を嫌う客や村への長期の宿泊希望のお客を受け持ってもらう事を目的にした格安の素泊まり宿になり。
ジュライ達にしてもらいたい仕事は、客が帰った後の部屋の掃除や宿内の清掃、受付業などの宿管理になり。
副業で冒険者業を続ける事も出来ると愛満が説明すると、ジュライ達は突然の話に驚きながらも二つ返事でOKサインをもらい。
人一倍飯盒メシに興味津々だったルッリオからは
「あのさぁ、愛満。毎日は出来ないけど俺、ジュライから飯盒メシの作り方習うから、毎週1日ぐらいならこの飯盒メシ宿泊客に販売しても良いか?」
毎週1回、宿で飯盒メシを販売して良いかと問いかけられる。
そんないつにないヤル気に満ちたルッリオの姿に、絶賛反抗期のルッリオの姿しか多々見た事ない愛満は、少し驚きながらもルッリオに質問すると
「う、うん。それは全然良いけど、どうしたのルッリオ?そんなに飯盒メシ美味しかった?」
「おう!旨かったのは旨かったんだけど、俺達元冒険者だろう。それで朝倉村のギルドの依頼には、たまに農作業の手伝いとかあるからさぁ。
その時お礼にと言って、収穫したばかりの新鮮野菜とか貰ったりするんだよ。
それにココなら格安で米と言う穀物や、他の所ならバカ高いスパイス類が気軽に手に入るだろう。
でだ!自分で狩りで仕留めた肉とかを使って、この飯盒メシ作れば少しは金も稼げるし。この宿の目玉になるかも知れないだろう。
……………それにジュライ達に少しは恩返し出来るかも知れないし…。」
後半小声でゴニュゴニュとなりながらも愛満だけに聞こえるような声で照れ臭そうに話す。まだまだ成長途中の素直になれないルッリオなのであった。
◇◇◇◇◇
こうして朝倉村に新たな宿泊宿と共に山背の古くからの友人にもなる。ジュライ達冒険者パーティー『バタナ』の6人のメンバーが村へと仲間入りし。
飯盒を使った飯盒メシと共に村を一段と賑わせる事になる。
ブックマーク、お気に入り、評価・感想・レビューして下さった方、本当にありがとうございます。
誤字、脱字が多々ある作品ですが、どうぞ よろしくお願いいたします。




