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『青梅の甘露煮』と「梅サワードリンクの梅サイダー」と、とある梅雨の日の1日



「あーーぁ!急に雨が降ってきたでござるよ!

こ、これでは花夜の所に遊びに行けないでござる。昨日から楽しみにしてたでござるに…………うぅーーーーー!悔しいでござる!」


「あっ!本当だ!!えぇ~~僕達が来る頃には雨降ってなかったのに…………あぁ~、この雨じゃ遊びに行けないね。」


ほんとじゃ(本当だ)おちょと()あめ()ふちぇ(降って)きちゃね(きちゃったね)。」


「本当へけっね。…………しかしこう言っては悪いへけっが、よく降る雨へけっ。ハァ~~、早く梅雨があけてくれないへけっかなぁ…………。」


その日万次郎茶屋では、突然降りだした雨に愛之助やタリサ達チビッ子4人組が口々にブツブツと文句を言っていた。


しかし降り注ぐ雨を止める事は、愛之助達には到底出来ない事なので


「ハァ~~、コレばかりはしょうがないでござる。乙女心とお天気は、何とか言うものでござるものね。

かえすがえすしょうがないでござるがココは気を取り直すでござるよ。」


自身も今だ花夜の所に遊びに行けなくなった事に落ち込むなか。

同じく突然の雨や花夜と遊べなくなった事で落ち込むタリサ達を慰め。話題を変えるよう


「………あっ、そうでござるよ!雨繋がりではないでござるが、タリサ達、この前の雨の時の雷見たでござるか?

あの雷はスゴかったでござるよね~!拙者も光貴もあまりのスゴさに驚いてしまったでござるよ。

あぁ~~、今日も同じ雨空でござるが、この前のように雷が鳴らないでほしいでござるよ。」


今日と同じく、雨空の日に轟いた雷の話をすると


「あっ!あの雷へけっね。へけっへけっ、あの雷は音も光も凄かったへけっもんね!本当に今日は雨だけで勘弁してほしいへけっ。」


「愛之助も光貴もこの前の雷見たの?

あの雷、本当にスゴかったね!僕もマヤラもあの光や音にビックリしちゃって、家中ピョンピョン跳び跳ねちゃったんだ!……………本当に今日は雨だけで良いよね!」


かみにゃり()!?かみにゃり()、|こわかたね!!

マヤラ、あんまりにもこわかたから、にゃい()ちゃった!」


つい数日前の雷を思い出したのか、3人とも顔をしかめ話し。


愛之助達4人は、外で降り注ぐ雨が通り雨のように止まないかと僅かな希望を込め。

合間合間に茶屋の窓ガラスに顔をピタリと張り付けては、ドンドン強くなる雨足の様子や、雷が鳴り出さないか等と期待と不安が混ざった心境のなか。心配そうに外の様子を観察していくのであった。



◇◇◇◇◇



そんなこんなしていると万次郎茶屋の出入口のベルが鳴り。


カランコロ~ン♪


「ふぅ~~~、急な雨で困ったのじゃ~!

あぁ~~、ビショ濡れに濡れてしもうた。お~~い!スマンけど誰かタオルを取ってくれんかのう。」


丈山の所に遊びに行っていた山背が、急な雨でビショ濡れになりながら帰って来て、体を拭くためのタオルを求める。


「山背、お帰りでござるよ。はい、タオルでござるよ。」


「山背、ビショ濡れじゃん!傘持っていかなかったの?」


「山背、ビショ濡れへけっよ。そんなに濡れてるへけっなら、風邪を引く前にお風呂に入った方が良いへけっよ。」


やまちぇ(山背)からじゃ()つめたくなちぇる。だいちょうぶ(大丈夫)?」


そんなビショビショに濡れて帰って来た山背を愛之助達が心配し。各々が取って来たタオルで、雨に濡れた山背の体を優しく拭いてあげる。


するとそんな小さな騒ぎを聞き付け。台所で作業していた愛満が茶屋内に出て来て


「どうかした?何か大きな声が台所まで聞こえてきて、騒いでるみたいだけ?………あれ?山背帰ってきてたんだ。おかえり。

それにしてもビショ濡れじゃないか、大丈夫?

しっかりタオルで拭くか、お風呂に入って体を温めなきゃ風邪引くよ。

けど、…アレ?山背、今日 傘持って行かなかったけ?

ほら、今朝この前、愛之助からプレゼントされた亀型の傘と長靴を持って行って、丈山に見せてあげると話してたでしょう?

なのに、そんなビショ濡れになるくらいの雨だったら、なんで帰りに傘ささして帰って来なかったの?」


朝食の時に愛之助から、ついこの前プレゼントされた。

可愛らしい亀さん柄の傘や長靴を嬉しそうに美樹や黛藍達など、皆に子供のように披露し(見せびらかし)。

こんな素敵な傘や長靴を多分持ってないだろう。友人の丈山へと見せてあげるのだと嬉しそうに山背が話していた事を覚えていた愛満が、不思議そうに問いかける。


すると何やら思い出した様子で、朝の様子が嘘のようションボリとショボくれた山背が


「傘と長靴……………あぁ、あの傘と長靴はのう………………丈山にプレゼントした(取られ)たのじゃ。

…………ハァ~~~、そうじゃのう。話せば長くなるのじゃが…………。

実はのう、ワシが少々調子にのってしもて、1時間【嘘です。本当は2時間です!】ばかり、自慢や傘と長靴の機能を丈山に話しておったのじゃ。

そしたら丈山が、竹林の作業する時に便利だと傘と長靴を気に入ってしもてのう。

こんなに説明してくれると言う事は、自分へのサプライズプレゼントなのじゃろうと大喜びしだしてしもたのじゃ……………………。

じゃから、ワシも男じゃ!まさか違うとは言えないじゃろう。

だからのう~、そのまま丈山の話にのり。サプライズプレゼントじゃ言うて、プレゼントしたのじゃよ。」


哀愁感を漂わせながら、実に悲しそうにポツリポツリと呟く。


「そうだったんだ。それは、なんと言うか……」


山背の話を聞いた愛満が、山背も可哀想なのだが、山背の長話に付き合わされた丈山も大変だっただろうと密かに心の中で思いながら、そんな山背にかける言葉を探していると

その横で山背の話を聞いていた光貴とタリサの2人がコソコソと


「僕知ってるへけっ。そうゆうのって『身から出た錆』て言うへけっよね!」


「違うよ、光貴。『自業自得』て言うんじゃない?」


「えっ!自業自得へけっか?」


「うん、そうそう!自業自得!」


「こら!光貴にタリサ!

いくら2人が考えてる事が真実でも、そうしてまた思っていても、口にしない優しさもあるのでござるよ。

拙者も山背の話を聞いていて、長時間山背の自慢話に丈山が嫌気がさし。

きっと次第に腹が立ってきたと言うか、怒ったのだと思ったでござるが、そこは拙者も大人でござるから、こぉ~グッと我慢したでござるよ!」


愛之助が自身の持論を話しながら、タリサと光貴の2人を諭すのだが、少々愛之助の話にピンときてない。天真爛漫の無邪気な光貴やタリサ達は


「それにしてもへけっ。愛之助、この前も山背、雨に打たれへけっが、今日も雨に打たれてビショ濡れに濡れるなんて、山背よほど雨に好かれてるへけっね!

あっ、確かそういう人の事を『雨男』と言うんじゃなかったへけっか?」


「えっ、雨男?雨男て山背みたいな出来事にあった人の事を言うんだっけ?

う~ん、前に愛満から聞いた雨男の説明とは違うような?」


追い討ちをかけるようタリサ達が無意識に山背の心にダメージをあたえるなか。愛満が気をきかせ


「あっ!それより山背。そんなに濡れたんだから風邪を引かないよう、早くお風呂に入ってきなよ。

それにね。(コッソリ)今日の山背の男気を表彰して、また今度山背用の傘と長靴仕入れてきてあげるから、そんなに気を落とさなくて大丈夫だよ。」


最後にコソコソと内緒話で、新しい山背用の傘と長靴をプレゼントする事を約束し。

そんな愛満の話に山背が驚き、少し復活した様子になるなか。

今月2度目になる、雨に負けたと言うか、ビジョ濡れになった山背はウキウキと風呂場へと移動するのであった。



◇◇◇



「みんなお待たせ。もう少しでお昼だから、ちょっとしたオヤツになるんだけど」


お風呂上がりの山背も加わり。愛満がこの前梅干しを漬けるさいに作った『青梅の甘露煮』と梅サワードリンクの炭酸水割りの『梅サイダー』を皆の前に置いてくれる。


「うわ~艶々して美味しそう!もう食べていいの?」


「うん、良いよ。あっ、そうだ。青梅の甘露煮には種があるから気を付けてね。」


「は~い!」


「了解したでござるよ!」


「解ったへけっ!」


「あ~~い!」


「うむ、気を付けるのじゃ!」


愛満が『青梅の甘露煮』の種に気を付けるようにとタリサ達に声をかけ。それに皆がお行儀良く返事を返すなか

待ちきれなかったのか、最後の山背が返事をしている時には、少々フライング気味に

タリサと光貴の2人は梅を使ったプチオヤツを口に頬張り。


「んーっ!甘露煮美味し~い!」


「本当に美味しいへけっ!なんだがトロ~~リしてるへけっ♪」


口にした『青梅の甘露煮』の美味しさや感想を話し。

少し出遅れてしまった山背も負けじと『青梅の甘露煮』を食べ。


「うんうん、コレは良い味じゃのう~♪ほのかな酸っぱさとトロ~リとした甘さが口の中に広がり旨いのじゃ!」


『青梅の甘露煮』の感想を愛満に教えくれ。『梅サイダー』を飲んでいた愛之助も


「こっちの梅サイダーも美味しいでござるよ!

炭酸のシュワシュワした喉ごしと、氷砂糖と酢で漬け込んだ梅シロップの風味が合わさり最高でござるよ♪」


「本当だ!梅サイダーも美味しい~~♪

それにこんなジメジメした時に飲むから、何だかまた一段と美味しく感じるね!」


「どっちもおいしいね♪」


口々に話し。『青梅の甘露煮』と梅サワードリンクを使った『梅サイダー』を幸せそうに堪能している5人の様子を微笑ましそうに見ていた愛満が


「それは良かった。じゃ、もうしばらくしたら美樹や黛藍がお昼ご飯を食べに帰って来るから、ソレを食べ終わったら皆で仲良くお昼ご飯のテーブルの準備お願いね。」


お昼ご飯のテーブル準備のお手伝いをお願いして


「了解したでござるよ!」


「はいへけっ!」


「は~い!」


「あい!」


「解ったのじゃ。」


との、またまた5人の元気良い返事を聞きながら、愛満はお昼ご飯を仕上げに台所へと移動する。



◇◇◇◇◇



そうして雨に悔しがったり、雨にビショ濡れになったり。いろんな意味で心にダメージを受けた者が居たりと

何気無い万次郎茶屋の梅雨の日の1日は、まったりとした時間のなか過ぎていくのであった。






《『青梅の甘露煮』と『梅サワードリンクの梅サイダー』と、とある梅雨の日の1日、の登場人物》


・愛之助=今回、当然の雨に不満満々ながら、数日前のように雷が鳴らない事を願う


・タリサ=今回、当然の雨で友達の花夜の所に遊びに行けなくなり不貞腐れるものの、後にその無邪気さで、とある人物の心にダメージを与えるもよう


・光貴=今回、当然の雨に不満満々なものの、後にその無邪気さで、タリサと2人、とある人物の心にダメージを与えるもよう


・マヤラ=現在、少しずつ赤ちゃん言葉が抜け。ハッキリお喋り出来るようになってきているもよう


・愛満=今回も、とある人物の自業自得ながら大人の対応をするご様子




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