『3種類のポップコーン』と、犬族の兄弟とマト村の不名誉な不の名産品
その日すでに梅雨入りした様子の朝倉村は、晴れやかな天候ながら、少しジメジメして蒸し暑く。
暑さに弱い山背がマイ桶に浸かり。連日のように涼を1人楽しむなか。
万次郎茶屋では、朝倉村ギルド職員の犬族のシオが自身を訪ねて村へとやって来た兄弟を連れ。何やら『とある物』を持ち、万次郎茶屋へと足を運んでいた。
◇◇◇◇◇
「はい、愛満。前に話していた『ポプポプの実』だけど…………何に使うの?
うちの村じゃ、生でも干しても美味しくないから家畜の餌にしかならないよ。
それからお願いされた通り、弟のトウとショウを村から呼び寄せたけど…………。
ほら!トウもショウも愛満に挨拶して、こちらが朝倉村の村長の愛満だよ。」
「は、はじめましてふ~、僕は犬族のトウふ~。よろしくお願いしますふ~。」
「こ、こんにちはふー。僕は犬族のショウふー。よろしくふ~。」
顔にまだ幼さが残り。シオの里のなまり(方言)になるらしい独特の喋り方のシオの弟トウとショウが大変緊張した様子で愛満へと挨拶する。
「はい、こんにちは。初めまして、僕が朝倉村の村長、愛満になるよ。」
緊張した様子のトウやショウに優しく微笑みかけて挨拶を返し。シオが村から取り寄せてくれた『ポプポプの実』を確認するのであった。
◇◇◇◇◇
と、何故愛満がシオの弟達や『ポプポプの実』を取り寄せ、呼び寄せてもらったかと言うと
実は何ヵ月前にシオと愛満が話していた時、愛満がシオの生まれ育ったマト村の不の名産品になる『ポプポプの実』に興味を持ち。わざわざマト村からポプポプの実を取り寄せてもらい。
他にも貧しいマト村の現状を聞いて、仕事を探しているシオの弟2人も村へと呼び寄せてもらったのだ。
◇◇◇◇◇
「…………うんうん、これがポプポプの実だね。………………ふんふん、成る程成る程、………………よし!やっぱり僕の予想は間違ってなかった!」
シオから手渡された『ポプポプの実』を何やら入念に確認しながら、何かを確信した様子の愛満は、突然ガッツポーズと共に不適な笑みを浮かべ始め。
そんな愛満の姿を不思議そうに見詰めていた。まだ幼いトウやショウが
「えっ?村長さん、どうしたふ~か?ポプポプの実なんて全然美味しくもないし、使い道なんて無い物ふ~よ?」
「そうそう、そうふーよ。いったい何に使うふーか?
それに村長さん、突然変な笑い方し始めたふーけど、何か変な物でも食べたふーか?
ねぇねぇ、シオ兄ちゃん。村長さん大丈夫ふーかねぇ?」
自分達の兄になるシオへとコッソリと、また心配そうに問い掛け。
今だ『ポプポプの実』が入った袋を握り締め。少々悪い笑みを浮かべている愛満を不思議そうに見詰めていた。
◇◇◇◇◇
そもそも愛満が興味をもった『ポプポプの実』とは、作物がなかなか育たない。犬族が住む小さなマト村だけに生息する作物になり。
しかもマト村でしか育たない不思議な作物になるのだ。
しかしその味は不味く、悲しいくらい不味く。どうしょうもなく不味くて、…………。はっきり言ってポプポプの身とは生でも、干しても、知恵をしぼっても、料理しても美味しくはなく不味く。
マト村の者達でさえ進んで食べようとは思わない程の不の作物になり。
よって、いくらマト村でしか育たない。摩訶不思議でいて、大変と言う程でもないものの。それなりに珍しくなる作物であっても人気は出ず。
良い所、家畜の餌にしかならない。マト村不名誉な名産品になる。
その為、シオの生まれ育ったマト村は、いつまでたっても貧しいままで、ある程度の年になった若者は職を求めたり。家族を食べさせる為にと村を離れ。
村に残した家族へと仕送りを送ったりと、本当に貧しいながら細々と暮らしているのが現状で、年々過疎化が進んでしまっているらしいのだ。
◇◇◇◇◇
「ジャアジャアジャーアン♪皆お待たせ!見て見て、この機械!」
あの後『ポプポプの実』を不適な笑みと言うか、悪い顔して見ていた愛満が何やら思い出したように急に立ち上がり。
奥の部屋からゴソゴソと見慣れぬ小型の馬車?荷馬車?ワゴン車?みたいなのを引いて戻って来て。
自信満々の様子でシオ達へと、シオ達が見慣れぬ馬車風の押し車?、………………何か良く解らない物を披露する。
「えっ!何それ?何か新しい1人乗り用の乗り物なの?
………う~ん、僕にはただの小型でオシャレな馬車?荷馬車風の何かしか解らないや。」
「何だふ~?可愛い押し車ふ~か?」
「それ何ふーか?とってもカラフルでいて可愛いふーよ♪」
愛満が披露した見た事もない。見慣れぬカラフルな馬車?荷馬車風の何かを前にシオ達が不思議そうに首を傾げ。
そんなシオ達の姿を見た愛満は、またもや不適な笑みを浮かべて、おもむろにカラフルな何かを操作し始め。
「この機械はね。シオ達の村でしか採れない『ポプポプの実』を美味しい食べ物に変身させる為の魔法の機械になってね。
朝倉村に住んでるピルクにお願いして造ってもらった機械になるんだ。
じゃあ、僕の話より食べてみるのが1番だと思うから、まずは見ててよ。」
愛満がポプポプの実を美味しく変える為の魔法の機械だと言う物の扉を開け。とある部分に適量の『ポプポプの実』を入れたら、今度は赤いスイッチをポチっと押し。
「…………………うん?何もならないよ?」
「………故障したふ~か?」
「………………何も聞こえないふーよ?」
「ほんとじゃ?何もならんぞ、愛満!」
万次郎茶屋の店番をしてくれているガウン姿の山背が、何やらポプポプの実に興味を持った様子で愛満達の側へとやって来たのだが、何も起こらないとイチャモンをつけ始め。
次の瞬間、無音だった機械から香ばしい香りや何かが弾けるような音が聞こえ始め。
中が見えるように透明な板で囲まれた馬車風な機械の中に白いフアフアした物が見え隠れし始め。
それがいつしか馬車で言えば人が座れる場所になる。そんな透明な板に囲われた部分へと貯まっていき。
「えっ!?何これ!面白い!」
「うわ~~~!あれは何ふ~か!?」
「何かポンポン飛び出してくるふーよ!それに良い匂いするふー♪」
「うぉ!!何じゃこりゃ~!?」
シオ達がポンポン弾ける。何やら良い香りのする白い物体に目が釘付けの中。
まさかその白い物体が『ポプポプの実』とは思わないシオ達は、不思議そうに馬車風の機械を見詰め。
愛満は、そんな4人の反応を満足そうに見つつ。おもむろにケース下のレバーを引き。3つのボールに白い変身した『ポプポプの実』改めて『ポップコーン』を入れ。
1つにはシンプルに塩をふりかけ。残り2つには、それぞれ茶色い粉等を振りかけたり、混ぜ合わせたりして、シオ達に試食するように進める。
しかし最初は目の前に置かれた物が『ポプポプの実』だと思わないシオ達は、少々食べるのを躊躇すると言うか、何か高価そうにも見えた。自分達が知らない見慣れぬ食べ物をタダで食べさせてもらうのは悪いからと言って遠慮し。
けれど目は、初め見た白いフアフアした物に興味津々の様子で見つめており。
そんなシオ達のいじらしい姿に愛満は『それはポプポプの実だよ』と教えて上げ。
遠慮せずに食べるように改めて進めると、シオ達は初め驚きながらも見た事もない物に変身した『ポプポプの実』に美味しいふーか?、食べられるのふ~か?と兄弟で不安そうに小声で相談しあいながら、その美味しそうな香りに釣られて、一口食べてみた所。
「……!!……ウヮ~~~、美味しいふ~!コレ、本当にポプポプの実ふ~か!?ビックリふ~~ねぇ♪
…モグモグ……モグモグ……それにしても本当に美味しいふ~ね♪シンプルな塩味がまた良いふ~!
後、軽い口当たりで、今まで食べた事のない食感が面白いふ~よ♪………モグモグ……………モグモグ………本当に美味しいふ~♪」
「こっちの茶色ポプポプの実も美味しいふーよ!
そっちのしょっぱいポプポプの実と違ってふーね。何やら甘いのに何故かほのかな塩気もあるふーよ♪
……モシャモシャ………モシャモシャ………ふーー♪止まらない美味しさふ~!それにこの鼻をくすぐるような甘い香りが最高ふ~♪」
犬族のシオの弟、ショウやトウが初めて食べた『ポプポプの実』を使った『ポップコーン』に感動した様子で話し。止まらない様子でモグモグ、モシャモシャと塩味や塩キャラメル味の2種類のポップコーンを食べ進める中。
ショウ達と一緒になってモシャモシャ、モグモグとポップコーンを食べている山背が
「……モシャモシャ……モグモグ………う~~~ん!この茶色の粉末がかかったポップコーンも甘じょっぱくて、独特の風味や旨味があり旨いのじゃ!
愛満、これは何味になるのじゃ?」
自身が食べてる『ポップコーン』の味付けが何味になるのかを質問。
「あぁ、それはね。醤油の粉末を振りかけてあるんだよ。」
「醤油じゃと?」
「そう、醤油の粉末。この前愛之助と仕入れに行った時、九州の方の甘い醤油の粉末が物産展に置いてあってね。
うちの実家では母さんの要望で九州の甘い醤油を普段から使っていたんだけどさぁ。
醤油の粉末なんて、そうそうお目にかかれないし。しかも食べなれた九州の醤油版でしょう。
だから、ちょっと面白そうだと思って仕入れてみたんだ。
どう?九州の醤油だから甘口の味付けで美味しいでしょう?ポップコーンに合う?」
「合うぞ!大変合うのじゃ!
それにこの軽い食感のポップコーンに甘じょっぱい醤油の味付けが憎らしい程に合っておって、止まらんくらい旨いのじゃ♪
しかし醤油1つにしてもこうも種類が有るとは、愛満の里とは本当にスゴいのう~!
……モグモグ……モシャモシャ……う~~~ん♪ダシや醤油の旨味がギュッと効いておって、これは本当に止まらんくらいの旨さじゃのう!カァーー!酒のつまみにも合いそうなのじゃ!」
愛満と山背の2人が『九州醤油味のポップコーン』の話をしていた所。
3種類のポップコーンを夢中でモグモグ食べていたシオが空になったポップコーンケースを置き。一息ついた様子で
「ハァ~~~♪ビックリするくらい3種類とも美味しいかったよ!
しかし本当に驚いた!あの不味くて、どうにもならなかった『ポプポプの実』が、こんなに美味しいお菓子になるんだもん!
しかもそれぞれ味付けが違ったのに、それぞれで違う味が楽しめ。それをポプポプの実が邪魔をしてなくて、本当考えられないくらいのビックリだよ!」
頬にポップコーンのカスを付けたまま。かなり興奮した様子でシオが『ポプポプの実』の事を話し。
「ねぇねぇ愛満、ところでこの『ポプポプの実』を使ったお菓子の作り方を知ってるくらいだから、このお菓子の名前がなんて言うか知ってるんでしょう?」
里の不の名産になる『ポプポプの実』を使ったお菓子に興味津々の様子で愛満へと矢継ぎ早に質問する。
「うん。このシオ達の里の『ポプポプの実』を使ったお菓子はね。『ポップコーン』と言う名前のお菓子になり。僕の故郷の方では大変ポピュラーなお菓子になってね。
この前シオの話を聞いてたら『ポプポプの実』が僕の故郷では有名なお菓子の1つになる『ポップコーン』になるんじゃないかと思ったんだよ。」
少し前に愛満がギルドを訪れたさい。ギルド職員になるシオと世間話をしていて、何かのキッカケでシオの故郷や家族の話を聞き。愛満がフッと思いつき、考えた事を改めてこの場でシオ達へと話し始め。
「それにね。シオのお母さんとお姉さんはいくつかの魔法が使えると言ってたし。
しかもそれが容量はかなり少ないものの。短期間の簡単な魔法袋だと聞いてね。
今回シオ達に『ポプポプの実』を持って来てもらって、このピルクが作ってくれたポップコーン器で上手くいけば、シオ達の村でも『ポップコーン』を作り。
シオのお母さんやお姉さん達が造り出せる。短期間でも時が止まる魔法袋に入れて販売すれば、少しはマト村も豊かになるんじゃないかと思ってさ。
あっ、後ね。今日作った『塩味』と『塩キャラメル味』、『醤油味』なら粉末だがら朝倉村からマト村まで送るのも簡単だし。
振りかけるだけで簡単になるでしょう。
だから村に残ったお年寄りや老若男女問わず誰にでも出来る作業になるし。
どう?ポップコーン美味しかったでしょう?シオ達の村でも売れると思わない?」
愛満自身の生まれ育った村も悪く言えば周りの人から見れば過疎化一歩手前と言われていてもおかしくなく。
そんな自身の生まれ育った故郷に何気に被る所がある。年々過疎化になっていくマト村の暮らしを少しでも豊かにしたいと考えた愛満は、自身の考えをシオ達に伝え。
そんな愛満の話を聞いたシオ兄弟は、感激した様子で涙ぐみ。
「…………ぅっう………そ、そこまで考えてくれたんだ。愛満、ありがとう、本当にありがとう。
うん!愛満の言う通り、こんなに美味しい『ポップコーン』なら、きっとオヤツにもエールのツマミにもなって子供から大人まで幅広く人気が出ると思うよ!」
「……グッスン……身も知らずの僕達の為にふ~、そこまで考えてくれるなんて本当にありがとうふ~~~!」
「……ぅっう……うっぅ……ぁりがとうふー!」
最後の方は涙ながらに愛満の考えに同意するようにシオが力強く答え。シオの弟のトウやショウ達2人も感激した様子で、涙ながらに愛満へと感謝の言葉を述べる。
そんなシオ達3人の様子を微笑ましそうに見ていた愛満が何気無い様子で、更に続けて爆弾話をサラリと話し初め。
「それからね。トウとショウの2人には、ここ朝倉村で、この『ポプポプの実』を使った『ポップコーン屋』さんを開いてもらおうと考えてるんだ。」
「……えっ!?」
「………ふ~!?」
「……ふっ、ふーーーーーー!!?」
「あっ、もちろんマト村でも販売するからマト村のポップコーンと同じにならないよう。朝倉村では『キャラメルソース』を絡めたり『チーズソース』を絡めたりと、粉末系じゃなくソース系で攻める。朝倉村独自のポップコーンを販売する予定だよ。
それにマト村からポプポプの実を買い取る予定だから、更にマト村も潤うだろうし。
……………実はね、ここだけの話。もう3人が安心して住める店舗兼自宅も用意してあるんだ。えへへ♪ビックリした?
あっ、勿論!シオも一緒にトウ達と住んだら、今借りてるギルド寮の家賃も節約出来るでしょう?
どう?トウとショウの2人、朝倉村で働かない?」
シオ達が予想もしてなかった。驚くような爆弾話を次々と持ち掛け。
「えっ!お店に自宅!?」
「ぼ、僕達のお店ふ~か!?それに自宅って、…………ふ~~~!?」
「ポ、ポップコーン屋ふー!?それにシオ兄ちゃん達と一緒に住む家までもふーか!?」
シオ達3人を軽く過呼吸になる一本手前までパニック状態へと陥らせた。
その後、友達の花夜達の家に勉強&遊びに行っていた愛之助達が茶屋へと帰宅し。
目や鼻がとても利く愛之助達が目敏く……………いや、鼻を敏感に起動させ。美味しそうな香りを放つ『ポップコーン』に気付き。
残り少ない3種類のポップコーンにガックリと膝から崩れ落ちるよう倒れ項垂れていたのだが、何やら悪い笑みを浮かべる山背から耳打ちされ。
手早く立ち直ると一直線に愛満の元へ駆け寄り。お代わりのポップコーンをおねだりして、愛満からポップコーンの作り方を習った。初対面になるショウやトウ達にもおねだりして、沢山のポップコーンを作ってもらい。
シオがマト村から取り寄せてくれた『ポプポプの実』を全て使いきり。大盛りの『ポップコーン』を、先程悪い顔していた山背を含め。食いしん坊の愛之助達はモグモグ、モシャモシャ、ムシャムシャと嬉しそうに全て食べ尽くした。
◇◇◇◇◇
その後、シオを含めた3人やマト村から呼び寄せたシオの両親、姉夫婦(観光を兼ねた旅行としても)にポップコーン機の使い方を教えたり。ポップコーンの味付け。お店を開く為の資金、お店をやる為の注意点等を纏めた本を手渡したり、教え。
良くて家畜の餌にしか使い道がなく。マト村の不名誉な不の名産の『ポプポプの実』が子供から大人まで人気をはくす『ポップコーン』へと姿を変え。
マト村と朝倉村で大人気の美味しい『ポップコーン屋』さんが開店するのであった。
《『3種類のポップコーン』と犬族の兄弟とマト村の不名誉な不の名産品、の登場人物》
・シオ=朝倉村ギルド職員、犬族、マト村出身
毎月の給料のほとんどを実家に仕送りしていた苦労人
今回マト村の不名誉な不の名産品を使ってミラクルが起きる。
・トウ=マト村出身、犬族、シオの弟
兄のシオに呼ばれ朝倉村へ、マト村の方言の『わ~』が口癖
まだ幼さの残る少年
・ショウ=マト村出身、犬族、シオの兄弟
マト村の方言『わー』が口癖、兄のシオに呼ばれて朝倉村へ
まだ幼さの残る少年
・愛満=シオの故郷マト村の現状を知り、何か力になりたいと行動する
・山背=ここ最近の暑さでバテバテ、暑さにスゴく弱い
最近の日課はマイ桶での水風呂、その後ガウン姿になる
・愛之助、タリサ、マヤラ、光貴=目や鼻が利く、食いしん坊




