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お支払いは異世界で  作者: 恵
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第二十四話 魔女の使い、店を開く ~開店~

 フェミナと琴美の料理(兵器?)によってマルコと勇が意識を失った翌日。

 意識を取り戻した二人はまだ昨日の料理が体に残っているのか、少し調子悪い様子。


「はぁ~、やっと少しは戻った」

「だが、まだ少し胃がムカムカする」

「すいません……」

「もう、勝手に料理は作らないわ」


 勇達が意識を失っている間にクルトとエーシャがフェミナと琴美に料理禁止令を出したのは言うまでもない。


「それはもういいよ。今はこの後について話し合おう」


 机を囲んで全員で話し合いを始める。


「食材も十分集まって、後は屋台の組み立てだけだ。その間に俺はパンや野菜とか買ってきて料理するから、みんなで屋台を組み立ててくれ。組み立て終わったら昼飯のついでに試作品の味見を頼む。味が良ければ今日中に売り始める」

「分かった、早速俺達は屋台の組み立てにとりりかかるぞ」


 おーっ、とかけ声と共に自分の仕事を始めた。

 勇は街に出て、いつも買うパン屋からパンを買い、他の店で卵や調味料を買い込む。結果、魔女の使いの資金は底をついてしまう。

 だがこれも仕方ないことと思いながら両手一杯に紙袋を抱えて帰る途中、聞き覚えのある声が勇を呼び止めた。


「お、勇じゃないか。そんなに荷物抱えてどうしたんだい?」


 勇が振り返ると、そこにいたのは短い間ではあったが勇の師匠ライザがいる。


「ライザさん、おはようございます。店をやるつもりなんです。ほら、ライザさんが前にーー」

「勇の料理を売るのか!? いつ! どこで! 早く教えろ!」


 息を荒くし興奮するライザがグイグイと勇に迫る。勇は迫られるたびに後ろに下がっていく。


「は、早くて今日の昼には」

「なら、今の内に仕事終わらせないと……じゃあな勇! 後で行く!」

「え、ちょ、ライザさん!?」


 ライザは風のようにライザ工房に向かって走り去って言った。


「はぁ、これは昼に開店させないといけないな」


 勇は苦笑しながら自分の家に戻る。

 家の前では屋台の組み立てが終わり、後は看板に店の名前を書いて組み付けるのみとなっていた。

 近くにいたクルトが勇に気づき、近寄ってくる。


「おかえり勇のアニキ」

「ただいま、みんなは?」

「もうやることないからみんな家の中に入ってる」


 勇とクルトは家の中に入る。

 クルトの言う通りやることがないのか、みんな椅子に座っていた。


「もう、やることはないのか」

「ん? ああ、勇か。後は看板とお前の料理だけだ」

「なら、ちゃっちゃと作ってくる。みんな待っててくれ」


 勇は両手に持っている紙袋を台所に置き、食材を取り出す。


「スプーンとかを使わない料理がいいか。……屋台……屋台……!」


 勇は何か思いついたようで、すぐにみんなのいる広間に行く。


「エーシャ、頼みがあるんだけど」

「え、待って勇。僕まだ心の準備が、それにみんながいる前だよ。……でも勇が望むならボクは」

「勝手に妄想を膨らませない」


 隣にいた琴美が顔を赤くして恥ずかしがっているエーシャの頭を垂直にチョップする。


「で、エーシャに何の用?」

「ちょっと串を作ってもらおうかと思って。出来るか」

「うん、出来るよ」


 エーシャは立ち上がり余っているデビルツリーの木材に疾風を放つと、木材が数十本の木串に早変わりした。

 その後エーシャはいくつかの木材を串にした結果、二、三百本の木串が出来上がる。

 勇はエーシャに感謝して、その木串を台所に持っていった。


「よし、作るか」


 勇はリザードバードの手足を切り落とし、羽毛と皮を剥ぎ取った後、綺麗に骨と内臓を取り出す。

 キラースパイダーの脚はカニの脚を向く要領で取り出す。肉はとてもキラースパイダーのものと思えないほど透き通るほど綺麗なピンク色でしっとりとしている。

 そしてリザードバード、キラースパイダー、タウルスの肉、腸、心臓、肝臓を適当な大きさに切ると、人数分を串に刺し、火をつけて次々に焼いていく。

 焼き終わったものにカーマルをベースにしたタレをかけ完成。

 もう一品はライザ工房で作った卵とマヨネーズのサンドイッチと肉のタウルスの肉のサンドイッチを作り上げ、全てをさらに乗せた後みんなのところに持って行った。


「さぁ、出来たぞ! 串もの六種、サンドイッチが二種だ!」


 待ってましたと言わんばかりに勇の料理に群がる魔女の使いのメンバー達だが、ちゃんと席に座って食事の挨拶をする


「「「「「「いただきます」」」」」」


 食事を始めた直後に異世界組は手を伸ばし玉真固まった。やはり内臓が気になってしまうようだ。


「勇、これはなんだ?」


 マルコが指したのは串ものの腸だ。


「え、タウルスの腸」


 平然と答える勇にマルコは苦い顔をする。


「こ、これはなんですか?」


 フェミナが指したものは串ものの肝臓だ。勇はこれも平然と答える。


「タウルスの肝臓」


 フェミナは青ざめながら小刻みに震え始める。

 クルトとエーシャが持ってきたものだが、本人達は本当に使ってしまったと思いながら持ってきたことを後悔している。

 しかし、そんなメンバーをよそに嬉しそうにタウルスの腸を頬張る琴美。


「う~ん、プリップリで美味し~」


 勇を除く他のメンバーはその姿に唖然するが、ゆっくりと内臓の串に視線を向けて手を伸ばし、意を決してそれを頬張る。

 その瞬間、何故こんな美味しい部位を食べようとしなかったのか、自分達の今までの人生を後悔したくなった。


「う、うまい!」

「おいしいです~」

「なんでボク食べようとしなかったんだろ」

「勇のアニキ! うまいよこれ!」


 みんな勇の串ものに満足した様子。

 勇も自分の作った串ものを頬張る。


「うん、しっとりしててうまいな、このキラースパイダー」


 勇の発言を聞いて、エーシャとクルトはのどに詰まらせ、マルコと琴美は咳き込み、フェミナは持っていた串を落とした。

 流石に虫を調理するとは思っていなかったらしい。


「勇! ボク達が持ってきたキラースパイダー調理しちゃったの!?」

「え、あったからもしかしたら食えるかなーと思って」


 不思議そうに答える勇に呆れるメンバー達だが、結局は美味かったのだから良しとすることにした。

 食事を終えた勇はみんなに感想を聞く。


「で、味の方はどうだった?」


 もちろん満場一致で美味いと答え、琴美がそこにつけたす。


「使ってる材料はあれだけど」

「問題がそれだけなら十分出せるな」


 あと残った問題は価格設定と看板なのだが、まだ屋台の名前が決まっていない。


「で、看板の名前をどうするんだ勇?」

「え!? 俺が決めるの!?」

「当たり前だ、お前の案だろ」


 みんなの視線が自分へと集まり動揺してしまう勇だが、必死に名前を考える。


「……俺達魔女の使いがやる屋台……魔女のキッチンって感じかな」


 勇のネーミングセンスに吹き出す一同。笑われた勇は恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていく。


「ご、ごめんごめん。いや悪くないと思うわよ。ねぇ、みんな」


 笑いながらもしかっりと首を縦に振る。


「……まぁいいや。じゃあ、看板に店の名前を書いて取りつけるぞ」


 すぐさま看板を仕上げて、外の屋台の上に取りつける。勇はその間に串を料理を作って外に持っていく。

 値段も勇が独断で決め、サンドイッチは二つ一セットで七百ジーグ、串ものは肉は一本二百ジーグ、内臓は百五十ジーグに設定した。

 一般家庭の一食の平均が約六百から千ジーグぐらいと考えると妥当か少し贅沢な食事である。だが、味は値段以上であることは確かである。

 これで全ての準備は整った。後は開店するのみだ。


「もう後は店を開店するだけだ。みんな準備はいいな」


 勇はみんなの顔を見回すが、みんなやる気に満ち溢れていた。


「よし……魔女のキッチン……」


 勇が手を前に出し、みんながその上に手を乗せる。


「開店だ!」


 おー! と言うかけ声と共に前に出していたて大きく上に上げて気合を入れた。


「勇! 店を開いたのか!? なら、買わせろ!」


 魔女のキッチンを開いて数秒後に全力疾走で走ってきたライザが砂煙を立てながら急ブレーキをかけて店の前に止まる。

 来ることを聞いていた勇でもポカーンと口を開けている始末だ。


「あ、あの、ライザさん。仕事は?」

「もう終わらせてきた! 値段は……他の店よりもちょっとばかし高いが、あの味なら安いぐらいだ。内臓なんて売ってるのか!?」


 確かに勇はライザ自身の口からすぐ終わらせると聞いたが、本当に仕事を終わらせて店を閉めるとは思っていなかった。


「よし、串を全種類四本ずつとサンドイッチを一セット!」


 キラースパイダーの肉とタウルスの内臓に臆することなく大量に買い込むライザに圧倒されるが、すぐに魔女のキッチンの店主として接客をする。


「肉の方は塩とタレの二種類ありますけど、どうします?」

「なら、半分ずつにしてくれ」

「分かりました。ライザさんにはお世話になりましたし、こんなに買ってくれたんでおまけで好きな串をもう二本選んでいいですよ」


 それを聞いたライザの目は光り輝く。


「本当か!? なら、タウルスの肉のタレと塩をくれ!」


 ライザのオーダーを聞いた勇は出来上がったばかりの串を用意した紙袋にタレと塩に分けて入れ、サンドイッチも別の袋に入れて手渡す。

 ライザは受け取ってすぐにタレの串が入った袋に手を入れ、無作為に串を取り出すとタウルスの腸をしょっぱなから引き当てる。


「これが腸か……あむ」


 気にした素振りを見せずにライザは頬張ると、目の輝きが増していき、勇に鍛冶師について教えている時に真剣な顔をしていた人物とは思えないほど嘘のように顔がだらしないほどにとろけていく。


「プリップリで脂がうま~い」

「よ、喜んでくれて嬉しいです」

「あれ、勇くん。お店を開いたの?」


 ライザが頬張っている横で現れたのは勇達の恩人でもあるシエルだった。


「お、シエル! 勇の串食うか?」

「じゃあ、貰おうかな」


 ライザに手渡されたタウルスの肉(タレ)を頬張ったシエルは片手で頬を押さえ、ライザ同様に顔がだらしなくとろけていく。


「やっぱり勇くんの料理はおいしいな~」

「ちょっと手を加えれば誰でもおいしく出来ますよ」


 謙遜する勇だが、褒められること自体はやはり嬉しいのか少し照れた様子を見せる。

 ふと、勇の視界の端に最近見たばかりの青年を見つける。その青年は前回会った時と違って鎧を身に纏っておらず、勇達と変わらないシンプルな服を来ている。そのためか、近寄りがたい雰囲気が消えて少し穏やかになっているように感じる。


「お、レクスか!?」

「君に言われた通り来てあげたよ、感謝してくれ」


 冗談ぽく少し笑みを見せるレクス。まだ出会って間もない二人だが、あの大会で勇とレクスは戦友と呼べるまでの仲になったと言える。


「はいはい、お礼としてこれやるよ」


 さっと勇は串をレクスに手渡す。

 レクスは不思議そうに見ながら串を貰うがよく見るて食材を確認すると少し引き気味に食材を勇に訊いた。


「こ、この食材は何?」

「タウルスの心臓。大丈夫、魔女の使いみんなで味見してるから」


 それを聞いても口に入れるのに勇気はいる。レクスは少しずつ串を口に近ずけていき、口元まで来た心臓を一つ口の中に入れ噛む。

 心臓のコリコリとした食感と旨み、そして心臓の旨みを十分に引き出しているタレに目を白黒させながら黙々と心臓を食べ続けていく。


「どうだ、うまいか?」


 レクスは食べ終わった串を手に持ったまま屋台の中にいる勇を見る。


「勇…………毎日僕のために飯を作ってほしい!」

「………………………………は?」


 長い間思考停止の後、勇から発せられた言葉はその一文字だけだった。

 近くで見ていた琴美がボソッと何かを言っている。


「…………レクス×勇」

「やめろねえちゃん!」


 琴美の言葉を敏感に聞き取り、背筋がゾッとした勇は真っ向からその言葉を叩き落とした後、レクスに経緯を聞く。


「レクスも急に何言いだすんだよ!?」

「す、すまない。自分でも突拍子もないことを言ったと思ってる。しかし、こんなにおいしいもの僕は初めて食べたよ」


 気に入ってくれたことは素直に嬉しいがあんなことを突然言われたら近くにいるかもしれない腐の人達の妄想が止まらなくなりそうだ。

 そう思うと勇の冷や汗は止まるどころか、かく量が増えていく。


「勇、全種類の串を一本ずつ。サンドイッチも一セット欲しい。ちゃんとお金は払う」


 レクスが注文したおかげで勇の頭から気分を害する内容がすっぽりと抜け、冷や汗が止まった。

 すぐにレクスの注文の品を袋に詰め、レクスに渡す代わりに金を受け取る。

 総額は二千三百五十ジーグ。ライザの総額四千九百ジーグよりも値は小さいが一般家庭の倍以上の金を払っている。

 串とサンドイッチ一つ一つの量は少々少ないかもしれないが、二人が頼んだ量が多すぎるのは一目瞭然だ。


「勇くん、私は肉の串を一本ずつとサンドイッチ一セット頂戴」

「分かりました」


 シエルの分も袋に詰め、千九百ジーグを受け取った勇はシエルに袋を渡した。

 量的にはちょうどいいか、少し多いぐらいだが、値段がやはり高くなってしまう。


「あと、用意してもらえればなんだけど、椅子貸してもらえるかな? ここで食べたいから」

「いいですよ。誰か持ってきてくれないか?」

「俺が持ってくる。クルトも手伝ってくれ、レクスとライザさんの分も持ってくから」

「任せてマルコのアニキ」


 マルコとクルトは家に戻り、二人分の椅子をマルコが両手で持ち、残りの一人分の椅子をクルトが両手で抱えて持ってきた。

 フェミナと琴美とエーシャは自分達はこの後どうすればいいか分からない。

 二人ははとりあえず串を焼くだけでもした方が良いと思い、台所に向かおうとする。

 それを察したエーシャが家の中に入っていった二人の首根っこを掴みながら引きずらせて外に出した。


「エーシャ、流石の私でも焼く位は出来ると思うの」

「そうですよ、わたくしもそれぐらいは」


 キッと二人を睨みつけ真顔になるエーシャ。


「あんな酷い料理を見せられた後で、台所に立たせるわけないよ。それに、二人は昨日から禁止令を出しているはずだけど」


 一言一言に凄みを感じ、ビクビク震えるフェミナと琴美。これ以上二人が何か言う事はなかった。

 クルトから渡された椅子を受け取ったシエルはクルトの頭を撫でまわしながら他人事のようにその様子を一部始終見ていた。


「勇くんから琴美ちゃんのことは聞いているけど、焼く位いいと思うよ」


 クルトは幸せそうにされるがまま撫でまわされ続けられる。

 二人に向けていた目線をシエルに移し、表情をエーシャはピクリとも変えない。


「シエルさん、目の前でこの二人の料理を食べたマルコと勇の顔が蒼白になって泡を吹いて倒れたところを見ても同じこと言えますか?」

「…………琴美ちゃん、フェミナちゃん。おとなしくしようね」


 シエルは二人を養護しきれなかいまま、袋の中の串を取り出し頬張った。

 レクスとライザの二人も同様に椅子に座って食べる。この二人に関しては食事の最中常に目を輝かせて食べていく。

 ライザはともかく、試合ではクールな雰囲気を醸し出していたはずのレクスが今ではそのかけらもないほどだ。

 そんな状況に少し戸惑うも、自分の料理をここまで喜んでくれたことが嬉しく自然と勇の顔は笑顔になり、メンバーもにこやかになる。


「お、店やってるの? 私にもくれる?」


 魔女のキッチンに新たなお客が来店。

 腰まで伸びた漆黒の髪は毛先が跳ね上がり、頭のてっぺんには自己主張が強いアホ毛が感情を持ったようにぴょこんと動く。

 猫のような瞳、可愛いとも美人とも取れるよう顔立ちでほのかに褐色した体は主張する凹凸がないスラッとしたスタイルの女性。

 布は胸だけを隠し、ショートパンツぐらいの丈を穿いた必要最低限の服装は目のやり場に困るほど露出度が高い。


「な、何がいいですか?」


 勇も最初は目線をどこにやればいいが困っていたが、次第に頭のてっぺんにそびえ立ち、ちょいちょい動くアホ毛に視線が移っていく。


「んー……タウルスの肉のタレで。あ、袋はいい。そのまま頂戴」


 作り置きの串をそのまま手渡し、代金を受け取る。


「ありがと。……ところで君、あとそこのショートの子」

「え、私?」


 急に指で指されて、少し動揺する琴美。


「君達……異世界の人だよね」

「「「「!?」」」」


 勇、琴美、マルコ、エーシャの四人は女性の発言に驚きを隠せない。

 シエルは動揺をするどころか何ごともなかったように肉を食べ続け、残りの四人は女性の言っている意味をしっかりと理解していなかった。


「勇さん、どういうことですか? 異世界とはいったい……」


 隠していたつもりはないが勇達が異世界から来たことはシエル、エーシャ、マルコの三人しか知らない。

 しかし、この女性は迷うことなく二人を指してのこの質問をしている。


「君達は大会の時から見てたんだよねー」


 意味深に勇と琴美に笑いかける女性に対して勇、琴美、エーシャ、マルコの四人は不信感を覚える。


「あなたは一体……」

「フフフ……そんなに私の正体が知りたい?」


 四人は体が緊張して動けず、女性から視線を外すことが出来ない。

 女性は意味深に口角を上げると串から一切れの肉を咥え、そのまま口の中に含んだ。


「みゃ! 何これ! おいしすぎ! ウチ、こんなの食べたことない!」


 さっきまでのシリアスな雰囲気を爆弾で吹き飛ばす勢いでキャラが変わり、一人称すらも変わってしまう。勇達は唖然と言うかなんと言うか、上手く自分の心情がうまく表現出来ない。


「あ、あのー」

「串まだある!?」

「え、一応焼いた串は全部で十本ぐらいは」

「それ全部頂戴!」

「は、はい」


 肉系の串六本と内臓系の串を四本、合計金額千八百ジーグのお買い上げをした女性はその場で食事を始める。


「これに座る?」

「お、ありがとうね」

「よろしければ水もどうぞ」

「君ら気が利くね」


 クルトは家から持ってきた椅子を、フェミナは水を女性に渡して気を利かせている。店員としては満点の行動だ。

 女性の変貌に琴美は釈然としないまま、質問をする。


「あの、話はどうなったんですか?」

「あ、ごめん。ちょっと後にしてもらっていい?」

「「「「あ、はい」」」」


 四人は一斉に返事をして、心の中で一つの結論を出した。


((((この女性ひとは無害だ))))


 そんな四人の心情を知らない女性は椅子に座りながら両手に串を持って笑顔で頬張る。

読んでくださり、ありがとうございます。


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