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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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052 親子会談は腹黒感充分です。

今回は少しながめです。

 ディノが出したんだろうお茶を一口すすってから、ヴァンさんが口を開く。


「母親からは当時の事はどう聞いている?」


「ほとんど何も聞いていません。

 事実としてあったことを、母の主観抜きで教わった程度です」


「なるほど。……彼女らしい」


 昔を懐かしむような、思いのほかやわらかい声に、私とディノがまたもや目をまたたかせる。


 ……なんか、ヴァンさんとディノのお母さんの間って、私たちが想像していたよりも複雑で親密な何があったのかな。

 少なくとも、相手の人格を無視して一時の慰みにしただけの人間について話してる雰囲気じゃない。


「リラ……お前の母親に恋愛感情があったかと言われれば、否定するしかない。

 ――まぁ、それは彼女も同じだったろうが。

 私とリラの関係を一言で言い表すのなら、共犯、だろう」


 そこで言葉をきったヴァンさんは少し考えるように視線を膝の上で組んだ指先に落とした。


「リラは年の離れた従姉が伯爵家で働いていた関係で、幼い頃からよく顔を出していた。

 メイドたちにも可愛がられていたし、すっかり屋敷に馴染んでいたからな。

 私とは年が近かったのもあって幼馴染みのようなものだ。

 だから、メイドに欠員が出た時、彼女が推薦されたのは当然だと思ったし、みな賛成した」


 あまり感情を交えずにしゃべる声を聞きながら、テンプレきたから、とか思ったのは秘密で。


 さすがにそんなちゃちゃをいれていい状況じゃないのはわかってる。


「実際、伯爵家の仕事は住み込みが嫌でなければ給金のいい仕事だ。

 リラにとっても悪い話ではなかったろう」


「確かに、十四で伯爵家のメイドになれたのは異例の幸運だったと思います。

 普通であれば、下級貴族の屋敷で数年働いた上でそれなりの評価をもらうか、専門の学校を出る必要がありますからね」


 私に対する説明なんだろう。


 ディノが説明台詞で相づちを打つ。


 それにいくらか不思議そうな表情をしたヴァンさんに、ディノが軽く私に視線をよこした。


「彼女は外国育ちの上、事故に巻き込まれたせいでだいぶ記憶が混乱しているんです。

 時々、思いもよらないことをわかっていないことがあるので念のため」


「……なるほど」


 それに対するヴァンさんの返事はどこかおかしそうだった。


 何がおかしいのかはわからないけど、少し部屋の空気がやわらいだかもしれない。


「しばらくは平和だったんだが、うちで開いた晩餐の席に招いた、某国の重鎮がリラに目つけた」


「それってつまり、妾によこせ的な意味で?」


「いや、もっと悪いな。

 貴族以外は人間とも思っていないような輩だ。

 下手な理由で断れば角が立つが、どんな扱いを受けるかわかった上で引き渡せるはずもない」


 ため息と共に吐き出された言葉で、先が読める。


 事態を収めるためにヴァンさんの妾の一人、という体裁を作ったというところだろう。


 でも、だとしたらなんで共犯なんて言葉がでてくるんだ?


 この世界がどんな情況なのかはわからないけど、別にそんなことをしなくても、他に方法はありそうだ。


「その一方で私には正式な婚約こそしていなかったが、それに近い恋人がいた。

 ――こちらも、余計な横槍が入れられていて、彼女に嫌がらせをするために私に求婚してきた王族がいてな」


「泥沼だねぇ」


「まったくだ。

 その状況をなんとかするには、私がリラを囲っていることにするのが一番だった」


 確かに、重鎮とやらも庶民を屁とも思ってなくても、他国の貴族の妾を奪い取るのはまずいだろう。


 一方で、ヴァンさんに言いよったという王族とやらも、彼が庶民を囲っているとわかれば引っ込むだろう。

 目的が嫌がらせなら、彼に妾がいると知れ渡るのでも充分目的は達成できているんだから。


「確かに理にはかなってるんだけど……。

 ディノの性格が母親譲りだとすると、そんなことをできそうにはない気がする」


「どういう意味だ?」


「まわりに気を遣って自縄自縛しがちで、必要悪だとわかってても汚い部分に親しい相手を巻き込みたがらないタイプに見えるから」


「それはつまり、私はそういうタイプに見えないということか?」


「無感動にできるかどうかはともかく、そういう時にためらうようじゃ貴族社会をわたっていけないでしょう。

 あなたが跡取りならなおのこと、ね」


 どこか面白がる風情のヴァンさんに思った通りのことを言う。


 私はそんな社会にいたわけじゃないけど、知り合いから漏れ聞いてきた話から充分想像がつく。


「私が見たところ、あなたはややこしくて腹黒なくせに身内には隙だらけなタイプみたいだしね。

 ディノのそこら辺が父親からの遺伝なら、他の部分は母親だろうっていう単純な引き算よ」


「ミュルカ……。

 あなたは一体、私をどう思っているんですか?」


「今言ったじゃない」


 眉間をもみながら、ため息混じりに聞いてきたディノにあっさり返す。


「もう一回言って欲しいの?」


 かわいいかどうかはともかく、小首を傾げて尋ねると、ディノはだいぶ嫌そうに首をふった。


 それはそれで結構失礼だぞ。


「……まぁ、我々に対する評価はおくとして、だ。


 私とリラはどちらの誘いも断るためにその決断をしたというわけだ」


「その場合、ふりだけにするって選択肢はなかったの?」


「私はそうしたかったんだが、ではうまくそのふりができるかと言われたらな」


「……それって誰が言い出したの?」


 正論だけどひっかかるところのある言葉に、私が口をはさむと、ヴァンさんは記憶を手繰る様子見せた。


「……あれは確か……、ミィハだったな」


「ミィハ?」


「当時の恋人、つまりは今の妻だ」


「なるほどねぇ」


 なんだかもう一つ二つ、裏に事情がありそうな気配が濃厚だなぁ。


 いくら事情があるにしても、恋人に浮気に等しい行為をすすめたりするもんだろうか?


 まぁ、確実で手っ取りばやいのはたしかだから私とか知り合いなら言い出しかねないけど。


 ……いや、一般論としてまずいのはわかってる。

 特殊例な自覚があるから、同じ発想の意見が出たのが不可解だっていうか。


 とりあえず、その辺まで行くと私が踏み込んでいい範囲を超えてそうだから黙っておくことにしよう。


「ミュルカ、何か気になりましたか?」


「ん? いや、なんか違和感があるっていうか」


 せっかく貝になったのにディノが話題を振ってきた。


 話題を振られては仕方がないので思ってたことを口にすると、ヴァンさんが苦笑する。


「リラも最初は同じことを言ったな」


 ……それでも実行したんかぃ。


「言いたいことはわかるが、現実的に考えればそれが一番確実で手っ取り早いだろう。

 ミィハは生まれた時から貴族社会で生きてきたからな。

 そういった駆け引きに関しては、私よりも余程強かで情をはさまない。

 ――それに、私とリラの関係にいくぶん嫉妬していたから、波風を立ててやろうと考えるらいにはひねくれていたか」


 ……?!


 意表を突く返事に飲み物を噴き出した。


「だ、大丈夫ですか?!」


 慌てたディノが背中をさすってくれた。


「何かそんな咳こむようなことを言ったか?」


「いやいや……。

 私も人のことを言えるほど真っ直ぐな性格してるわけじゃないけど……。

 その性格だってわかってて結婚したわけ?」


「知った上でだな。

 貴族社会を渡って行くには頼もしい性格をしていると思ったが」


 ……いい趣味してやがる。


 思わず遠い目になっていると、ディノも同じような心境だったのか、軽くため息をついている。


「ミュルカも大概いい性格をしてると思いますよ?」


「そっちかぃ?!」


 前から思ってるけど、ディノは時々食いつく場所を間違えてますからね?!


「まぁ、私も伯爵夫人の考えはどうかと思いますが。

 さすがはザーム先生と血縁なだけはあるな、と」


「……あぁ、なら仕方ないか」


 なんか、妙に納得できる理屈が出てきた。


 確かにザームさんの血縁じゃあ仕方がない。

 少々発想が突飛でも納得せざるを得ないなぁ。


「――……そういう納得の仕方をされると複雑なんだが」


 私達二人の反応に、今度はヴァンさんがため息をついた。


「まぁ、仕方がないっていうことにして、話を戻そうか。

 ――あなたとディノの母親はそんなに仲がよかったわけ?」


「その辺は主観によるだろう。

 私にとってのリラはあくまでも遊び仲間だったし、抱いたからと言ってそれが恋愛に類する感情に変わったかと言われればそれはない。

 しかし、家族としていっそう大切にしなければならないと思ったのは確かだな」


 ……あぁ、そういうことか。


 恋愛じゃないと言いつつ、ヴァンさんは今の奥さんと同じくらい――たぶん結構な確率で奥さんよりもリラさんを大切に思っていたんだろう。

 だから、その関係を変えてしまえと思って、正論だけど感情的には恐ろしく複雑な影を落としそうな行為を勧めた、と。


 ただまぁ、結果としてヴァンさんには逆効果だったようだけど。


 そこまでわかると、後は予想がついたんで、私はだいぶ話題から興味が失せた。


 もとからそれ程興味があった訳じゃないし、ディノが積極的に絡んでいけないみたいだから、進行を変わっていただけ、という感じだ。


「んで、ディノはずっと黙ってるけどいいの?」


「……黙っているというか……。

 どこで口をはさんでいいのかわからないんですが……」


 呆れ混じりの呟きに、私は小さく肩をすくめる。


「確かにディノにはいくらか黒っぽ過ぎる話題かもね」


「それもありますが……。

 二人はどうしてそんなに動じていないんです?」


「私はもうその事で悩む時期は通りすぎている」


「まぁ、私はミィハさんとやらの考えがわからないでもないからねぇ。

 どういう思考を経てその結論になったのか、想像が付くから別に理解不能だとか混乱したりはしないかな。

 道徳的に間違ってるのもわかるから、いい性格してるな、とは思うけどね」


 たぶん、性格的に似てるんだろう相手の思考をたどるのは簡単だ。


 ただ、私なら合理的だと判断しても実行に向けて動いたりはしないだろう。

 特にミィハさんの立場であれば、逆効果になる可能性を考慮した時点で取り下げるだろうな。

 ……ん? もしかして、逆効果にすることこそが目的だったのかな?

 そうすれば確実にリラさんはヴァンさんの側を離れるだろうし、そうなれば彼もリラさんの意思を尊重してそれ以上かまい付けたりはしないはずだ。

 なおかつ、自分にうっとうしい対抗意識を持っている相手には鼻をあかせたと思わせた上でダメージなし、ヴァンさんも独占めという、一人勝ち状態。

 自分の正妻の座は安泰……。


 ――……うっわ、黒い。黒いけど、合理的だなぁ。


 てか、私の想像通りの性格の人だったら、この二人の間にあそこまで馬鹿素直なヘルベルトさんが生まれたのがもの凄く不思議なんですけども……。


「言っておくが、ヘルベルトは間違いなく私とミィハの息子だ」


 ……あ、何考えてるのか読まれたか。


「あの性格はミィハの教育のたまものだな。

 あれはひたすら、裏表なく真っ直ぐであるようにと育ててきた」


「あこがれたわけでもあるまいに、一体どうして?」


「そうしておけば、何かあった時リラとの間に生まれた子供に手をさしのべるのに反感を持ったりしなかろう?

 後はまぁ、家中が黒い連中ばかりでは空気が重苦しくなるだろう」


 さりげなく、自分も奥さんも黒いと言い切ったヴァンさんの言葉にディノが突っ伏した。


 ……気持ちはわかる。


「それはそれでどうかと思うんですが……」


「まぁ、もとからヘルベルトはああいう性格だ。

 ミィハはそれをうまく伸ばしてやったに過ぎないし、腹芸ができない程馬鹿に育ってもいない。

 あいつはあれでいいんだろう」


 突き放した言葉だけど、どこか誇らしげな色があるヴァンさん。


 まぁ、確かにそう馬鹿でもなさそうな人だったけどさ。


「そちらからどう見えているかは知らんが、私達はそれなりに幸せだ。

 それに対して不満があるかどうかは知らんが、少なくとも我々を利用したければおとなしくそういうんだな。

 飲むかどうかはともかく、話を聞くつもりはある」


「手放したけど可愛い息子には違いないんだから頼って欲しいって、素直に言ったらどうなの?」


「言ってどうなる」


「ディノが盛大に嫌がるところが見られるわよ、きっと」


「ほう?」


 結局はディノを構いたくて仕方がないらしいヴァンさんの言葉を混ぜっ返したら、思いの外乗り気なリアクションが返ってきた。


「やめてください……」


 だけど、脱力しきったディノの言葉にいくらか寂しそうな顔になるヴァンさん。


 ……うん、なんかディノが二人いる気分になってきた。


「で、あとはディノ次第ってところに落ち着きそうなんだけど、確認したいこととか、この際だから頼みたいことなんかはあるの?」


「そうですね……。

 毎年、命日でも誕生日でもない日に、いつの間にか母の墓に花と果物が供えられているんですが、あれは伯爵が?」


「ああ、そうだ。

 リラはうちの庭にあるサルトの実でジャムを作るのが好きでな。

 熟した実を集めては供えさせていた」


「……そうですか」


 ヴァンさんの返事に、ディノが懐かしそうな表情を見せたのは、小さい頃――母親がまだ生きていた頃のことを思い出してでもいるんだろう。


 少しの間、そうしていたけど、やがて視線をヴァンさんに向けた時にはすっかり普段の顔に戻っていた。


「何度か言ったように、私は今更今の生活を変えるつもりはありません。

 領地も財産も不要です」


 けれど、きっぱりと言い切った後、表情を和らげた。


「ですが、お願いしたいことはいくつかあります」


「なんだ?」


「ひとつは、非公式にでもいいので彼女の後見役を引き受けて欲しいんです」


「ふむ?」


「はぃ?」


 予想外の言葉にヴァンさんと私の声がかぶる。


「神殿の外には詳しい情報が出されていないのでご存じないでしょうけど、塔の攻略のために異世界からの召喚が行われたのはご存じですよね?」


「ああ。乱暴な手段だとは思うが合理的ではある、と思ったが、現状塔の攻略が進んだという報告は聞かないから効果はどうだったのやら、だがな」


 ディノの言葉に応じるヴァンさんの声は幾分冷たい。


 どうやら召喚反対派だったらしい。


「伯爵が賛成していなかったことは覚えていますが、私が召喚された人間の保護者役だというのと、問題の人物が彼女だというのは引き受けていただく理由にはなりませんか?」


 続く説明にヴァンさんが軽く目を見ひらく。


「彼女が、か?」


「その縁で私が手元に預かっていますが、私やザーム先生ではそちら側に対する抑止力にはなりませんから」


「……なるほど、な」


 笑顔でのディノの言葉に、ヴァンさんが一つため息をつく。


 ――って、いつぞやザームさんが言ってた不穏な強制排除派が活発化してるのか?

 そっちに貴族側が多くつき始めたとなると、流石にやっかいなことになるだろう。


「最近、その件に関しては不穏な情報がいくつか入ってきている。

 確かにいい抑止力になるだろうが……。

 いくらお前の頼みでも、成果を出せない者のために伯爵家の名前を使うわけにはいかん。

 目処はあるのか?」


「少なくとも塔の攻略回数は近日中に十階前後まで進みます」


 探るような問いかけにディノがきっぱりと断言する。


 まぁ、確かにディノの作ってくれている魔術具の性能とこれまでの経過を見た限り、その位の成果はかたいと判断したのは間違ってない。


 だけど、だ。


「あぁ、ごめん、それ訂正」


「はい?」


 私が口をはさむと、ディノが不思議そうに声を返してきた。


 こういう駆け引きとの時、私が割り込むことはあんまりしなかったから意外だったのかな。

 でも、味方に取り込むと決めたんなら、出せる情報はもう少し出していいだろう。


「十七階」


「……はい?」


「脇目を振らずに階段だけを目指して抜けていけば十七階まではたどり着けた。

 そこで魔術具が破損したから引き返してきたけど、これが完成したらもっといける」


 右手をひらりとひるがして、にんまり笑うとディノがきょとんとしたまま、何度か瞬きをした。


「……って、なんですか、そのでたらめな攻略速度はっ?!」


「誰のせいかというのなら、魔術具の作者であるあんたでしょう」


 一拍おいて叫んだディノにさらりと返す。


 本当、この魔術具、左手の手甲なんかよりはるかに使い勝手がよくて高性能な気がするんだけどな。


「まぁ、五階以降はもう一度丁寧に調べた方がいいだろうけどね。

 ひとまずあの感じだと最速で上を目指すのなら、魔術具の破損がない前提で三十階くらいまではいけるんじゃないかな?」


「そもそもあの塔は十二階までしかなかったはずなんですが……」


「それは私じゃなくて塔に聞いてくださいな?」


 ディノの言葉に小さく首を傾げて返すと、ヴァンさんがおかしそうに笑う。


「ハーフベック伯爵家は正式に異世界から召喚された塔の攻略者を支援する旨、次回の会議で正式に発表しよう。

 それに先だって、つながりを持ったことを周囲に示すために、一度茶会に招待することになるが構わんな?」


 くつくつと笑いながらの言葉に眉を寄せる。


 今の会話の何から、全面支援の決断に足るものを見つけんだ、この人?


「ところで、最初に名乗っていた名前、あれは本名なのか?」


 笑み含みで尋ねられ、苦笑いになるしかない。


 今まで誰にも突っ込まれないから気付かれてないと思ったんだけど、この人実はザームさん以上にくせ者かもしれない。


「偽名ですよ。

 ――さすがにいきなり誘拐された先の得体の知れない人間に本名教えるほど不用心でもないんで」


「その位の自衛は必要なたしなみだな。

 ミュルカというのはこちら風の通称というところか」


「本名にせよ偽名にせよ、どうやらこちらに人には聞き取れないし発音できないようなので、彼につけてもらいました」


 視線でディノを指すと、ヴァンさんが一つうなずいた。


「それで? 言葉遣いが変わったのはなんでだ?」


「話してみた結果、あなたは相応の敬意を払うに値するやっかいな相手と判断したまでですが?」


 軽く腕を組んで、小さく笑みを浮かべて返すと、ヴァンさんが満足そうにうなずいた。


「いい返事だ。

 ――ミュルカ嬢、あなたと手を結ぶのは伯爵家にとっても利のある話になるようだ。

 近々、正式に当家にお招きしたいが、いかがだろうか?」


「保護者付きで構わないのであれば喜んで」


「こちらとしてもその方がありがたい。

 そのように手配しよう」


「楽しみにしておりますわ」


 外面百パーセントの態度での応酬が一区切りしたところで、ディノが盛大なため息をつく。


「なんだか非常にうさんくさく感じるのは……、私の感性のせいでしょうか?」


「金持ち同士のやり取りなんてこんなもんでしょ?」


「まったくだ。

 ――私としてはそれをさらりとやってのけるミュルカ嬢の素性に興味があるが……。

 まぁ、詮索しないのが礼儀だろうな」


「まったくもって。

 こっちの礼儀作法は知らないけど、それなりの対応は期待してもらっていいよ」


「そうさせてもらおう。

 それで? いくつかと言うからには他にもあるんだろう?」


「はい。

 ひとつは母の墓参りについてです。

 直接いらしてないのは周り――私や養父母に気を遣ってくださってのことででしょう?

 次からはご自分でいらしてください。

 きっと、母もその方が喜ぶでしょうから」


「――考慮しよう」


 難しい顔でディノの提案に応じるヴァンさん。


 でもね、口元がゆるんでるの隠しきれてないから。


 ……本当、こういうところ、親子だなぁ。


「後は、言いたいことや聞きたいことはあるんですが、言いにくいことでもありますから、時折、あまり堅苦しくない席で話す時間を取れれば、と」


 どうやら、ディノの側からも少し歩み寄ることにしたらしい。


「大丈夫じゃないの?

 私って口実もできたし、なんなら贔屓の魔術具制作者ってことにすれば?」


 いきなり親子だから、ではお互いやりにくかろうと思って助け船を出すと、両側から同じタイミングでうなずかれた。


 本当、素直じゃないんだから、この二人。

お読みいただきありがとうございます♪


リアル多忙に付き、ストック切れになりました(T-T)

なので、当面更新が滞ります。

書け次第投稿したいと思っていますので、ご容赦くださいませ。

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