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不思議な塔にまつわるあれこれ。  作者: ちびやな@やなぎ
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40-1 新装備導入計画発動?

ここからしばらく枝番が続きます。

物語はちゃんと時系列通りですので気にしないでください。

 夕方というには少し早いくらいの時間にディノが帰ってきて、ザームさんが入れ替わりに帰って行った。


「今日はずいぶん早かったけどいいの?」


 基本的には夕飯の直前くらいまで仕事をしてくるらしいディノに尋ねると、あっさりとうなずかれた。


「私の仕事はあまり期日がないものが多いですから。

 日々処理しなくてはいけないのは、ミュルカの活動報告くらいですからね。

 それに、今日はちょっと思いついたことがあって、相談したかったものですから」


「……相談?」


 思わぬ切り返しに首を傾げると、ディノがうなずく。


「昨日話をした魔術符に関して、今日考えてみたんですが、発火を防ぐよりも問題の液体を被らずに済む方法を考えた方がよくないですか?

 可燃性があるということは、その場で発火しなくとも危険ですし、他のものと一緒に洗濯するわけにもいかないでしょうから」


「それはそうだけど……。けっこうなみなみ入ってるから、どうしても殴るとあふれてくるんだよねぇ。

 倒すと結構な確率で横倒しになるから中身だだ漏れだし」


「……それでよく塔の中が火の海になりませんね……?」


 私の返事に、ディノが頭痛でもしたのか額をおさえた。


 確かに、下手に引火したらそこらじゅうに燃え広がりそうだよねぇ。


「まぁ、今現在塔が燃え落ちたりしてないんだから、塔自体は大丈夫なんじゃないかな?」


「塔そのものが平気でも、あなたが平気でなければ意味がないでしょう?

 それに、簡単に引火するのであればミュルカだけを魔術で守っても、結局中にとどまれなくて帰ってくることになってしまいませんか?」


「……あぁ、そう言われてみれば」


 確かに一理ある。


 塔が燃えなくても、中にいる私は蒸し焼きになっちゃいました、じゃどうしようもない。


「なので、遠距離から一撃で倒せればその危険も下がるでしょう?」


「そうは言っても、私武器とか全然使えないし?」


「ですから、何か魔術具を用意してはどうかと思ったんです」


「……なんだか余計に難易度高そうなんだけども」


 私に魔術具って……。乳幼児にパソコン、みたいな感じじゃなかろうか。


「何を言ってるんですか。

あれだけ派手に魔術をばらまける上、昨日の治療魔術を見た限りでは魔力の総量もかなりのものですよ」


「……いや、使い方のところでね……?」


 あっさりと流されてしまったので苦情申し立てをしておく。


 確かに昨日はなんだか使えたけど、そもそもあれが意識して使った人生初魔術だっていうのを忘れてないだろうか、こいつは。


「魔術具というのは、基本的に魔術の発動や制御を助けるためのものです。

 あなたの状態にあわせて調整すれば、魔力が枯渇しない限り簡単に扱えますよ」


「調整、ねぇ……」


「はい。魔術具には遠距離攻撃用のものも多数ありますし、既存の物をいくつか試してみて、そこから相性の良さそうな物をベースに調整すればいいかと思います。

 急げば十日もかかりませんよ」


 割合熱心なお誘いに、そんなものかなぁ、と首を傾げる。


 でもまぁ、使える武器が増えたら塔の探索も便利になりそうだしなぁ。


「ええと……予算の方は?」


 手持ちに余裕があるわけでもないので、ついそれを確認すると、ディノがおかしそうに笑う。


「こちらで申請して、経費として落とせるようにしますからご心配なく。

 それに、既存の魔術具から発展形を検討するのは私の仕事でもありますから。

 どちらかからは予算を取れますよ」


 あ、それはたすかる。


「じゃあ、お願いしていい?」


 ここは甘えることに決めて返事をすると、ディノが笑顔でうなずいた。


 うん、なんだかとっても頼りになる人に見えてきたよ。


「それでは、実際に魔術具に触ってみるのは明日以降にするとして、今日のうちにいくつか確認させていただいてもいいですか?」


「確認って何を?」


「おおよその方向性ですね。

 たとえば、攻撃用の魔術具は大雑把に分けると武具の形をした物と、そうでない物にわけられます」


「ふむふむ」


 私が魔術に関することはからっきしなのを知ってるディノの説明は、本当に基本中の基本らしきところから始まった。


 まぁ、わかりやすくて助かりますが。

 教えてる方は小学生以下相手にしてる気分になりそうだね。


「武具の形をしている物は今度は武器の形態の物と防具の形態の物にわけられます。

 大体ですが、武器の形をしている物は攻撃用、防具は防御や補助の魔術を込められていることが多くなりますね。

 これは、やはり見た目の形状と魔術の方向性が近い方が使いやすいという理由ですが」


「何となくわかるなぁ。

 剣を振り回して防御よりも、盾に隠れて防御の方がわかりやすい」


「まぁ、中には例外もありますね。

 あなたの持っているマーシェル・ウィードも例外の部類ですが」


「これ?」


「はい。マーシェル・ウィードは防具の体裁ですが、基本はスペルバンクですから」


「……スペルバンク?」


 聞き覚えのない言葉を聞き返すと、ディノは一つうなずいた。


「一つの魔術具に複数の魔術を刻み込んでおいて、多数の魔術の発動できる代わり、個々の威力は多少犠牲にしたもののことです。

 一つに対して多くて三つの魔術を刻みます。

 たとえば、一般的なアイテムボックスには盗難防止に所有者認証がついているんですが、これは本来別の魔術なので、二つの魔術を刻んでいることになりますね」


「ふむぅ」


「マーシェル・ウィードにはわかっているだけでも、着脱不可能、アイテムボックス、身体能力強化、地図表示、自身の状態確認、帰還魔術発動、魔力強化、魔術発動補助の八個の魔術が込められていることになりますね」


「相変わらず常識破りのスペックだねぇ」


 その八個もかなりやたらめったらな威力な気がするんだけど……?


「まぁ、マーシェル・ウィードの能力は完全に解明されているわけではありませんから、まだ知らない能力がある可能性も否定できませんけどね。

 わかっている性能からすれば、手甲の形よりもアクセサリー形状の方が使いやすかったのではないかと思いますが」


 ここでは少し苦笑い。


 確かに、ディノがあげた能力から防具である必然性はあまり感じられない。


「少し話がそれてしまいましたが、魔術具の形状も魔術発動の難易度に影響する部分があるということですね。

 ですから、あなたが使うとしたら、どんな形状であれば魔術を発動させやすいと思うのか、お聞きしようかと思ったんです」


 少しそれ気味だった話をまとめたディノの説明にうなずく。


 うぅん……。

 ぶっちゃけ、攻撃って概念が日常になかった身としてはどんな形状がいいか聞かれても想像しにくい。


「なんか、使う魔術の種類に左右されそうだよね。

 遠距離だから投げる物だとわかりやすいのかなぁ?」


「とは言っても、ボールの形にして毎回投げつけるのでは効率が悪いですよ。

 それではむしろ使い捨ての魔術符にしたらどうかという話になってしまいますし」


「魔術符だと駄目な理由でもあるの?

 帰還符は使えたんだし、魔術符なら使えそうな気がするんだけど」


「魔術符だと効率が悪いんですよ。

 一枚ずつに魔術陣を刻まなければいけませんからね。

 一枚にかかる時間は魔術具を作るより短いですが、何十枚何百枚と用意するのであれば、魔術具をあつらえる方が早いですし安くつきます」


「そういうもんなんだ……」


 聞いてみると魔術って面白いなぁ、なんて思ったりしちゃう。


「そこが難しいところなんですよね。

 帰還符も、発動場所と帰還場所の距離制限があるので魔術符の形で使い捨てにせざるを得ないんですが、ミュルカのように固定の短距離を頻繁にというのであれば本来は魔術具にする方が効率はいいんです。

 しっかりとした魔術具の方が魔力の消費もおさえやすいですし、発動条件も身につけておいて起動呪文を唱えるだけ、特定の触れ方をするだけ、のように融通しやすいので安全確保の点ではるかに勝りますし」


「そういう魔術具はできないの?」


 安くて安全、の言葉にひかれて尋ねると、ディノは小さく頭を振った。


「できなくはありませんが、マーシェル・ウィードにその能力がついていますからね。

 下手に同じ魔術を込めた魔術具を複数持っていると、多重発動で危険を伴うトラブルが起きる可能性がありますからお勧めできません。

 やるのであれば、マーシェル・ウィードの帰還魔術を発動できるようになる訓練をする方がいいと思いますよ」


「ん? でも帰還符は何枚か持ち歩いた方がって言ってなかった?」


「アイテムボックスに収納している状態では発動しませんからね。

 一枚ずつ取り出して使う限りは何の問題もありません。

 逆に言うと、複数をまとめて持っている時に発動させるのは危険だということになります」


 ……複雑だ。


 でも、なんかこういうの好きかも知れない。

 こっちの世界に定住することになったら、その辺勉強してみるのも面白いかも知れないなぁ。


 ……先に塔を攻略しろ?


 …………はい、その通りでございます。

お読みいただきありがとうございます♪

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